《良い演奏は、良いチューニングから》VOXのストロボペダルチューナー「VXT-1」

[記事公開日]2020/9/10 [最終更新日]2021/6/28
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

VOX VXT-1

練習でも本番でも、チューニングは素早く、確実に済ませたいですね。キッチリ合わせたチューニングで練習すると音感が鍛えられるほか、耳コピーにたいへん有利です。またレコーディングや動画の収録では、限界までビシっと追い込んだ超正確なチューニングが求められます。その一方でライブの現場では、ヴォーカルがMCを取っている間にチューニング確認は手早くスパっと済ませたいところです。そんなわけで今回は、見やすい表示でビシっともスパッとも合わせることのできる高性能ペダルチューナーVOX「VXT-1」について、まずは博士の動画からチェックしていきましょう。


《ワンランク上のチューニングができる!》VOX VXT-1 ストロボペダルチューナー
表示は見やすく操作は簡単、そして高性能、ということがわかりますね。検出速度もかなり速いようです。ギター博士の言う「場面に応じてディスプレイモードを使い分ける」というのは、参考になる使い方ですね。

「VXT-1」とは、どんなチューナーなのか?

「チューナーなんてどれも一緒じゃない?」って思うでしょうか。しかし、そうはいきません。ギタリストならば、つね日頃チューニングをしないわけにはいきません。いつもやることなのですから、チューニングの道具には「頼れる性能と使い勝手の良さ」が必要なのです。

では、VXT-1の持ち味を見ていきましょう。LED表示のサイバー感と、トップ面の四隅にネジを突き出させたゴツゴツ感がうまく調和した、クールなルックスがまず目を引きます。そしてその内部では、ギタリストがチューナーに求める頼れる性能と使い勝手の良さが、一歩進んだ水準で達成されています。

大きく見やすい「ダイアモンド・ビジュアルメーター」

ダイアモンド・ビジュアルメーター

大きな菱形の「ダイアモンド・ビジュアルメーター」は、光の滑らかな動きによって感覚的にチューニングできます。音名も「#」も大きい、たいへん見やすい表示です。

表示のモードには3つあり、背面のボタンを押すごとに切り替えができるほか、フットスイッチの長押しでも切り替えができます。「ストロボ」以外のモードでは標準的なチューニング精度に設定されていますが、ココがまた重要なポイントです。

ストロボ(Strobe)モード

ストロボモード

「ストロボ」モードでは、光の回転運動でピッチのズレ具合を表示します。入力した音が目標より高ければ時計回り、低ければ逆時計回りです。正確なピッチに接近するにつれて回転はスローになり、止まったらチューニング完了です。現代における最高レベル「±0.02セント」の超高精度でチューニングできます。

ダイアモンド(Diamond)モード

ダイアモンドモード

「ダイアモンド」モードは、ピッチの上下につれて光が左右に動き、真ん中に来たらチューニングが完了する、アナログ時代から連綿と伝わる伝統的な表示です。こちらは標準的な精度「±1セント」でチューニングできます。

バーティカル(Vertical)モード

「バーティカル」モードでは、ピッチの上下につれて光が上下に動き、真ん中に来たらチューニング完了です。こちらも標準的な精度「±1セント」でチューニングできます。

最高レベルのチューニング精度

「ストロボ」モードでは、現代の最高水準「±0.02セント」という驚異的な高精度でチューニングできます。半音(1フレットぶん)の音程を100等分したのが「1セント」です。ピッチのズレ方を半音の100分の1まで表示できる「チューニング精度1セント」が、標準的なチューナーの性能です。

これに対して高性能モデルでは精度が上がっていき、現代の製品として実現できる最も高い精度が0.02セント(半音の5,000分の1)です。精度の高いチューニングを施したギターはとても美しき響き、またピアノやキーボード、打ち込みとも美しく調和します。

シビアなチューニングのためには、シビアに調整されたギターが必要です。ギター本体の精度も求められますが、高精度なストロボモードでオクターブチューニングをしっかり施せば、指板の上から下まで正確なピッチが得られます。

表示モードを切り替えれば、ライブでも心配なし

しかしいくら響きが美しいとはいえ、「半音の5,000分の1」という超高精度のチューニングでは、ペグを慎重に回さなければなりません。また、ピッキングのバラつきまでもがピッチ変動として検出されてしまいます(強いピッキングで弦が大きく振れると、それだけ弦は引っ張られてピッチが上がる)。チューニングの作業に神経も時間も使いますから、ステージ上ではそんな悠長なことを言ってられないかもしれません。

あえて標準的な精度に設定されている「ダイアモンド」および「バーティカル」表示は、そんな場面で真価を発揮します。ボーカルのMC中にチラっとチューニングを確認するといった用途では、このような表示法が有利です。

超速の反応速度

最新機種ゆえの、反応の速さもポイントです。「ストロボ」モードでは検出したピッチがそのまま表示の回転に反映されるため、どんなに気が短いギタリストでもじれったさを感じさせません。

いっぽう「ダイアモンド」と「バーティカル」両モード、およびその他の従来のチューナーでは、一瞬とはいえ入力信号の情報が一定時間ぶん溜まってから 、計測の結果を表示させます。

その時間は440Hzのサイン波でだいたい50msec(1,000分の50秒)くらいですが、6弦など低い音や倍音が乏しい場合には余計に時間がかかり、1弦など高い音や倍音が豊かな場合にはその時間が短縮されます。これは、メーターが暴れるのを防ぎ、表示を見やすくするために必要な仕様です。とはいえVXT-1はこちらのモードでも超速の反応が見られ、快適にチューニングできます。

各種の操作で、いろいろな設定が使用できる

VXT-1は、このような3種類の表示法のほか、基準ピッチ(キャリブレーション)をA=436Hz~445Hzまで10段階、チューニングモードを10種類、選択できます。乾電池を抜いても使った設定は本体に記憶されますから、最後に使った設定のままで次回もすぐに使えます。各スイッチを確認しながら、機能と設定を見ていきましょう。

VOX VXT-1:コントロール

「ON/OFF」フットスイッチ

フットスイッチの操作で、チューナーのON/OFFを切り替えます。チューナー「ON」でギターサウンドはミュートされ、「OFF」で音が出ます。本体にはトゥルーバイパス回路が組み込まれているので、チューナーを通った音が痩せてしまうようなことはありません。

また、このフットスイッチを長押しすることで、3つの表示法を切り替えることができます。本番前にはストロボでビシっと合わせ、本番中はその他の表示でサッと確認、という切り替えが立ったままできるわけです。

「OFFSET」スイッチ

本体の背面には、設定を切り替える3つのスイッチが並んでいます。指で押しやすいようにスイッチの周りを整えているあたり、日本人らしい心配りを感じさせます。「オフセット(OFFSET)」スイッチを押していくことで、標準的なクロマチック・チューニング(CH)に加え、「G1」以下9種類の「オフセット・チューニング」を選択できます。

  • CH: クロマチック・チューニング(標準の設定。全楽器対応)
  • G1: エレキギターのレギュラーチューニング(多弦非対応)
  • G2: エレキギターのバズ・フェイトンチューニング(多弦非対応)
  • AC: アコースティックギターのレギュラーチューニング
  • BS: ベースのレギュラー・チューニング(6弦まで対応)
  • OD: オープンDチューニング
  • OE: オープンEチューニング
  • OG: オープンGチューニング
  • OA: オープンAチューニング
  • DA: DADGADチューニング

「オフセット・チューニング」は、チューニングや楽器に合わせ、より調和した響きが得られるよう補正(offset)されたチューニングです。普通のチューニングよりもう少し、美しい響きが得られます。対応する弦の番号も表示されますから、始めたばかりの人でも扱いやすい設計です。

「DISPLAY」スイッチ

「ディスプレイ(DISPLAY)」スイッチは、3つの表示法を切り替えます。押すたびに次、その次と変更できます。また、フットスイッチ長押しでも同様の操作が可能です。

「CALIB」スイッチ

「キャリブレーション(CALIB)」は、押すごとに基準ピッチを変更します。標準のA=440hzから、441hz、442hz、443hz、444hz、445hz、436hz、437hz、438hz、439hz、そしてまた440hzと移り変わります。

一般的なロックやポップスのバンド演奏ではA=440hzのままで心配ありませんが、アコースティックピアノや吹奏楽ではA=442hzが使用されるのが普通です。現代のポップスでもA=442hzやA=441hzで収録される例があり、こうした楽曲の耳コピーではギターをそこに合わせる必要があります。

その他、炎天下のブラスバンドでは基準ピッチを下げる、各種民族楽器に対しては柔軟に対応するなど、基準ピッチの変更が必要になる場面はいろいろ考えられます。普段は気にしなくてよいものですが、キャリブレーションについては知っておいて損はありません。

パワーサプライとして使用可能

VXT-1は電源用の「AC IN」端子に加えて「AC OUT」端子を備えており、ACアダプターから電源を取っていれば、他のエフェクターへの電源供給ができます。200mAまでの余裕があるので、分配ケーブル(別売)があれば、いくつものエフェクターに給電できます。ボードの規模によっては、VXT-1だけで全ての電源をまかなってしまうことも可能です。

なお参考までに、アナログのコンパクトエフェクターに必要な電流は、1個あたりだいたい10mA~20mA程度です。デジタルのコンパクトエフェクターやワイヤレスの受信機ではおおむね50mA~100mAほどで、マルチエフェクターでは200mAでは足りないこともあります。

一歩先のチューニングができる

VXT-1

以上、VOXのペダルチューナー「VXT-1」をチェックしました。じっくりと追い込む超高精度のチューニングと、手早く完了できる標準的なチューニングが、フットスイッチの操作で切り替えられます。これはギタリストにとって、非常に便利なポイントです。

ところで、VXT-1はVOXがリリースする初めてのチューナーです。「アンプやギターなら分かるけど、チューナーでは実績のないブランドなのに、大丈夫なのか?」と心配に思う人もいるかもしれません。

しかし、それは取り越し苦労というものです。VOXブランドは現在、デジタルチューナーの第一人者「KORG(コルグ)」の傘下にあるのです。VOXのデジタル製品の設計には、コルグが積み上げてきたノウハウのすべてが注がれるわけです。「コルグより反応が速い」と感じるユーザーもいますが、それもそのはずです。VXT-1は現在、コルグのどのチューナーよりも新しい最新機種なのです。ギタリストのために作られた、一歩進んだ高性能チューナーに、ぜひ触れてみてください。

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