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ZOOMは1983年に東京都千代田区で設立された、日本発のエフェクターメーカーです。設立当初は他社の製品開発サポートを中心に事業を展開していました。1990年、初の自社ブランド製品としてギター用マルチエフェクター「9002」を発表。ギターストラップに装着できる、という触れ込みで発表された同製品は、その驚きの大きさや斬新なコンセプト、高い品質で大きな反響を呼びました。その後はレコーディングスタジオに配備されるような、ラックタイプのスタジオ用エフェクター「9010」、そして、押尾コータロー氏が使用していたということでも話題となったリバーブ「9200」などを相次いで発表。ギター用の製品はしばらくラインナップ上に現れなくなります。
ZOOM 505
ZOOMが再びギター用エフェクターの世界に戻ってくるのは1994年。翌年の95年にはギグバッグに入る大きさの「ZOOM PLAYER 1010」などのヒット製品を送り出します。そんな中、同時期に登場した500シリーズは、ZOOM史上最大の売り上げを誇る「505」を擁し、ブランドの看板となりました。505は当時の若いギタリストの中に、使ったことのない人を探す方が難しいほど幅広く使われました。この505で示した、低価格、多機能、小型軽量という路線は、現在のエントリーモデルにもなお引き継がれています。
現在、ZOOMはハンディレコーダーやオーディオインターフェイスなど、ギターエフェクターにとどまらない幅広いラインナップを擁していますが、ブランドの軸を形成するギター用マルチエフェクターのラインナップは、90年代より絶えることなく刷新され続けています。
ZOOMはギター用製品においてはマルチエフェクター専門のブランドと言って差し支えありません。2000年代初頭に「PD-01 Power Drive」などのアナログ設計のコンパクトを一時発売したことがありますが、マルチエフェクター中心に製品開発を進めるスタンスは、ブランド設立当初から概ね一貫しています。また、一般的なマルチエフェクターを凌ぐほどの数の飛び道具系エフェクトを備えていたり、少ないコントロールをうまく使えるように工夫された操作設計を持つものがほとんどで、非常に多機能な製品が多いこともその特徴と言って良いでしょう。
また、500シリーズを展開していた頃から低価格を一つの強みとしており、これは現在でもZOOM製品のイメージに強く反映されています。505が発売された頃、競合他社のマルチエフェクターが安くても25,000円程度であった中、ZOOM製品は1万円を優に切る価格で市場に投入されています。それゆえ、必然的に金銭的に余裕のない学生のプレイヤーに幅広く使用されることになり、ZOOMの知名度と低価格イメージを広げることにおおいに貢献しました。現在でも5万円を超えるほどのハイエンドマシンはラインナップになく、「ある程度の価格で手に入る中で最高の品を」というスタンスをとり続けていることが窺えます。
2000年代の始め頃までは「安かろう悪かろう」と言われることもあったZOOM製品も、技術が進化するにつれてクオリティを徐々に上げていき、現在では完全に老舗エフェクターブランドに比肩するクオリティを得るに至っています。低価格、多機能路線はそのままに「MS-50G」や「GCE-3」など、ZOOMならではの独自路線で作られる製品も多く、日本初のエフェクターメーカーとして、独自の地位を築いています。
「G1 FOUR」は2019年に登場したモデル。小型軽量で安価という、ZOOMの定番エントリーモデルの遺伝子を受け継いでおり、全60種類のエフェクト、13種類のアンプモデルなどが利用可能な最新マルチエフェクターです。インパルスレスポンスを利用したキャビネットエミュレーターは、その低価格から想像できない高音質となっており、音作りのメインとして十分に使えるクオリティを備えています。エフェクトは5つまで同時利用可能で、小型軽量の筐体は単三電池だけで18時間もの長時間駆動にも対応。68のリズムトラック、30秒録音可能なルーパーを搭載し、音楽の構築にも力を発揮するほか、日々の練習にも役立ちます。
「G1X FOUR」はエクスプレッションペダル搭載モデル。ワウやボリュームペダルの他、ワーミーペダルとしても利用できます。初めてのマルチエフェクターとして、またヘッドフォンを使って練習する人にとって最適な機材です。
ZOOM G1 FOUR
ZOOM G1X FOUR – Supernice!エフェクター
コンパクトエフェクターを並べたように使える、という方向性で人気を博したZOOM G3。そのG3をさらに刷新した新モデルがこのG3nに始まるシリーズで、2016年に発売されました。凹凸が少なく、高級感のある黒をベースとしたデザインはそれまでのZOOM製品ともやや違う趣を持ち、正当派のマルチエフェクターとして必要十分なクオリティを備えています。
アンプ、キャビネットは5種類ずつですが、いずれもアルゴリズムが新たに組み直されており、実機に非常に近い音色となるようチューンされています。キャビネットエミュレーターは2本のマイクでのブレンド具合も設定できるなど、緻密な音作りを行うことができ、エフェクト類は数もセッティングの広さも膨大。自由に決められる接続順序も含め、音作りの選択肢は無限に近いほどです。「G3n」、「G3Xn」は一度に3種のエフェクトが表示でき、同時使用数は7つ。「G5n」は4種のエフェクトを表示でき同時使用数は9つです。ただし、アンプモデルに2つ分、キャビネットに1つ分を割かなければならないのは注意が必要な点。G3n以外の二機種はエクスプレッションペダル付きで、G5nはUSBオーディオインターフェースとしても使用できます。
ZOOM G5n
ZOOM G3Xn
ZOOM G3n – Supernice!エフェクター
G3nに似た外観を持つ、PC接続用のマルチエフェクター。ただし、製品のコンセプトはマルチエフェクターというよりも、エフェクター性能を全て備えたオーディオインターフェイスというのが正しく、PCとUSB接続することで本領を発揮します。同社のPC用アプリGuitar Labに対応し、200以上のエフェクトとアンプモデルを全て利用可能。外観だけはG3nに近いものの、実際のサイズは及びもつかないほど非常に小さく、ノートパソコンとともに持ち運んで出先で録音、などといった使い方も想定されています。バンドルされた「CUBASE LE」を使うことで、すぐにでもレコーディング作業に入ることができるので、これから宅録を始めようというギタリストにこそおすすめです。
ZOOM GCE-3 – Supernice!エフェクター
既存のコンパクトエフェクターのサイズにマルチエフェクターを詰め込んだ、ZOOMの看板モデル。コンパクトエフェクターのサイズに様々なエフェクトが入っているものは、これまでも少なからず存在しましたが、複数のエフェクトをつなぎ合わせ「完全なるマルチ」として利用できるものはこの製品をおいて他にありません。エフェクトチェインも自由に行えるため、絶大な使い勝手の良さを持ち、内部のエフェクトのクオリティも空間系を筆頭に高いものが揃っています。空間系専用機や飛び道具系専用機、あるいはセッション用にひとつ忍ばせるなど、考えられる使用法は膨大。ファームウェアの更新により使えるエフェクトは今でも増え続けており、短命なマルチエフェクター市場において10年近くもトップクラスの売り上げを誇っています。姉妹品に、空間系に特化した「MS-70CDR」、ベース用の「MS-60B」があります。
ZOOM MS-50G – Supernice!エフェクター
冒頭でもお伝えした通り、ZOOMはエフェクター以外にもレコーダーの分野で存在感を示しています。特にビデオレコーダーは、ギター用製品を作っているブランドだけあって、ギタリストやバンドマンに嬉しい機能を搭載したラインナップとなっていて、ハンディサイズ・レコーダーの中では他社を凌駕する音質を誇ります。
2015年にリリースされたZOOMのハンディビデオレコーダーのフラッグシップ「Q8」。「“音”を極められる唯一のビデオカメラ」というコンセプトの本機は、本体にXYステレオマイクを搭載し、最高24bit/96kHzのハイレゾ録音が可能となったモデルです。録音レベルの調節が可能で、大音量のバンド演奏でも音割れすることなくクリアな音質で録音できるため、ギタリストやバンドマンにうってつけです。
本機の大きなポイントとなるのが、2つ搭載されたXLR端子。マイクを2つ繋いでの録音が可能であり、しかもファンタム電源搭載のためコンデンサーマイクを使うことも可能。マイク次第では自宅のギターアンプを使ってかなりの高音質で録音することもでき、よりよい音で動画配信したいと考えるギタリストにとって最適な機材と言えるでしょう。
自宅練習にも適した小型デジタルアンプ「BLACKSTAR ID:CORE STEREO 10 V2」 9:15〜
「Q8」のマイク端子2つを使って録画・録音している
ZOOM製品は非常に工夫されたものが多く、思わず唸ってしまうようなアイデアに溢れています。安価な製品が多い割には、初心者のみならず上級者にも人気のある理由はこの辺りにもあるようです。多彩なプレイスタイルを実現でき、「クリエイターのために」と謳う、ブランドの姿勢をしっかりと垣間見ることができますね。
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