Line 6のエフェクターって?特徴やおすすめモデル紹介

[記事公開日]2021/4/26 [最終更新日]2024/6/23
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

Line 6のエフェクター

1985年、オーバーハイムという楽器メーカーのエンジニアを務めていた、ミシェル・ドゥワディーク氏、そしてピアニストのマーカス・ライル氏の二人によって、Fast Foward Designsという会社が設立されました。Fast Forward Designsは、デジタル技術を使って既存のアンプの挙動を再現する「モデリング」の技術を、実用の域に高めることに成功します。1996年、それが実を結び、世界初となるモデリング・アンプ「AxSys 212」を発表。それとともに、社名を変えて新たなスタートを切ることになりました。Line 6ブランドのはじまりです。

1997年には初代の「POD」を発表。アンプとキャビネットとマイキング、そしてエフェクトを一台に集約した設計、当時としては考えられなかった優れた音質により、シーンに革命を起こしました。PODシリーズは「POD 2」、「XT」、「X3」、「HD」と時代を追うごとに型番を変えながら、今にも続くロングセラーシリーズとなります。PODは世界的なレコーディングスタジオにも配備され、実際にレコーディングに使用されており、普及価格帯ながら高い完成度を誇っていることが、ここからもうかがい知れます。

その傍ら、

  • 世界初のモデリングディレイ「DL4」
  • モデリングアンプ「Spider」シリーズ
  • 真空管アンプとモデリングを融合させた「DT25/50」
  • 唯一無二のモデリングギターVariaxシリーズ
  • PCやモバイル機器との連携を最大限活用した「Amplifi」シリーズ

など、画期的な製品を次々に開発。そして、2015年には最高峰ギタープロセッサーとして「HELIX」を市場に投入。HELIXはその凄まじいポテンシャルでシーンに躍り込み、現在ではラック、フロアタイプの他、エフェクトだけを取り出したHX Effectsや、小型モデルのHX Stompなど、幅広い展開を行っています。

Line 6製品の特徴

Line 6はアンプモデリングのパイオニアといっても良い存在であり、第一号としてモデリング・アンプを開発して以来、そのスタンスは徹底しています。膨大なLine 6製品のラインナップの中でも、核となっているのは、やはり実用を重視したデジタル制御のマルチエフェクター系の製品群。それらの中に搭載されているモデルは実在のアンプ、キャビネット、マイクに基づいたものがほとんどで、エフェクト類も実在の銘機をモデリングしたものが多数含まれます。Line 6オリジナルモデルも完成度が高いものが入ってはいるものの、全体から見るとごく少数であり、やはりメインは銘機のモデリングでしょう。

デジタル機器であるがゆえに、PCとの相性が常に考えられてきており、PCでの音色エディットやオーディオインターフェイス機能の搭載、バンドルソフトウェアの付属などはもちろん、昨今ではBluetoothでのエディット、再生などを行えるものもあり(Amplifiシリーズなど)、宅録などを視野に入れる場合、Line 6製品は魅力的な選択肢となり得ます。

Line 6には常に新しいものを作りだそうという気概があり、ボディ材や形状をシミュレートして音を作り込めるモデリングギターVariaxや、デジタル通信を利用してのワイヤレスシステムRelayシリーズなど、普通とは少し違う視点での製品も生み出されています。

革命的だったPOD

モデリング・アンプAxSys 212で培った技術を、片手で持ち上げられるミニサイズに集約したところにPODの魅力があり、ラインレコーディングにはまさに打って付けの製品として登場しました。アンプ、キャビネット、エフェクターのモデリングの他、レコーディングのためにマイクを立てる部分までもシミュレートした「マイクシミュレーション」の機能をも包括的に内蔵した製品は当時他になく、家で大音量を出す必要がない上、最も複雑で専門知識が要求されるマイキングの作業を省略できるのは、ギタリストにとっては非常に大きな要素でした。内蔵されるエフェクトにもチューブスクリーマーやOD-1などの銘機がモデリングされ、文字通り一台で全て完結できる、類を見ない利便性を備えていたのです。当時、PCでのデジタルでのレコーディングや小型のMTRなどが一気に普及しだした頃でもあり、自宅での録音環境構築に対するハードルが大きく下がっていた事も、売り上げと評価を押し上げた一因にあるでしょう。

現在では当たり前となった、USBオーディオインターフェース機能は2002年発売の「POD XT」の時点ですでに内蔵されており、世界中のユーザーとネットでパッチを共有できるコミュニティ機能も、PODシリーズ最初期にLine 6が提案したものです。現代のマルチエフェクター、ギタープロセッサー界隈の製品に共通する要素の礎は、まさしく時代を先取りしたPODシリーズにより築かれました。

おすすめのLine 6製品

Line 6の製品の多くがアンプモデリングを多数搭載したマルチエフェクターですが、その中でも製品毎にキャラクターが異なります。

POD Go Wireless

POD Go Wireless

現場に応じて柔軟に使える機能性と、使い勝手の良さ、そして最高レベルのサウンドクオリティを、手に入れやすい価格で実現したアンプ/エフェクト・プロセッサー「POD Go」。これにワイヤレス機能が追加され、さらに便利になったのが、2021年3月に登場した「POD Go Wireless」です。サウンドクオリティは同社の最上位機種「Helix」と同レベル、直感的に操作できるような工夫をいくつも採り入れ、また一部の機能をカットしてシンプル化に努めたことで、多機能ながらストレスなく操作できるように設計されています。

《ワイヤレスの解放感を、最高レベルのサウンドで》Line 6 「POD Go Wireless」アンプ/エフェクト・プロセッサー

AMPLIFi FX100

LINE6 AMPLIFi FX100

Line 6の製品の中ではもっとも利便性に力を入れたモデルがこのAMPLIFi。PODやHelixのような複雑で大がかりな音作りはできませんが、Bluetoothでの音作りや音楽再生、標準で搭載されるプリセットの豊富さなど、家での練習や軽いリハーサルなどの目的であれば、かえって使いやすい機動性があります。幅45cm、3kg以上の筐体はそれでもアメリカ的な大型サイズではありますが、立派な筐体の割に安価なのは嬉しいところ。シリーズはマルチエフェクター的なFX100の他、アンプタイプのAMPLIFi 30/75、オーディオインターフェース兼モデリングアンプのAMPLIFi TTなど、幅広い展開を見せています。

Line 6 AMPLIFi 75(ギターアンプ)/AMPLIFi FX100(マルチエフェクター)徹底紹介

DL4 Modeling Delay

LINE6 DL4

1999年に発売された、この中では異色ともなるディレイ専用マシン。歴史的銘機がモデリングされた15種類のディレイと、ルーパーを内蔵。モデリング元は伝説のEchoplexやRoland Space Echo、Electro-Harmonix Memory Manなど、新旧問わずテープエコーからデジタルディレイまで多岐に渡ります。セッティングをメモリーしてフットスイッチで呼び出せるディレイエフェクター、そしてディレイ単一でのモデリングマシンとしても世界初の機器であり、Line 6の歴史を語る上では外せないモデルです。後にMシリーズのマルチエフェクターにDL4のエンジンが搭載されますが、その後も人気は根強く、開発当初のままに20年以上生産が続けられる、屈指のロングセラー製品です。

Line 6 DL4 – Supernice!エフェクター

M5、M9、M13 Stompbox Modeler

LINE6 M13

通称Mシリーズ・ペダルボード。銘機がモデリングされた、あらゆる種類のエフェクターを100以上内蔵し、その中からいくつかを選んで連結して使えるという、エフェクターボードをそのまま一つの機器にまとめたような製品となっています。Line 6にしては珍しくアンプモデリングがなく、あくまでコンパクトエフェクターの連結という発想で作られたシンプルな設計。各モデルの違いは同時使用できるエフェクトの数で、それぞれ1、3、4種類となっています。M5は1種類しか使えないため、実質単一のエフェクターとなる点に注意。発売は2011年で、見にくい小さなLEDやUSB端子さえ付かない前時代的な仕様ながら、そのシンプル設計とハイクオリティなエフェクトで大変使いやすく、同社の中でも渋い人気を誇るモデルとなっています。

Line6 M5 Stompbox Modeler – Supernice!エフェクター
Line6 M9 Stompbox Modeler – Supernice!エフェクター
LINE6 M13 – Supernice!エフェクター

HELIX

LINE6 HELIX

2015年、Line 6が技術を結集して送り出した最高峰ギタープロセッサー。72のアンプモデリング、194のエフェクトを含み、IRデータの活用による真に迫ったキャビネットのシミュレーション、デュアルDSPによる高い計算能力で、かつてないほどリアルな音色を作れるようになりました。大型で解像度の高いカラーディスプレイは非常に見やすく、タッチセンシティブ・フットスイッチの搭載で、手を使わずに演奏しながらパラメータを変更できる仕様は、同価格帯の他社製品と比べても群を抜いた操作性を提供してくれます。シリーズは初代がHELIX Floor、ラック型HELIX Rackの他、若干小ぶりになったHELIX LTなど、複数に渡って展開されています。

Line 6 HELIX – Supernice!エフェクター

HX Stomp

LINE6 HX Stomp

上記HELIXのエンジンをそのままに、小型のエフェクター二つ分ほどのサイズに収められた超小型プロセッサー。エフェクトボードにそのまま収めることができるサイズになり、実戦での使用法が広がりました。単体でPAやアンプのリターン端子に接続してのライブや、アンプのエフェクトループに繋いだり、歪みエフェクターのみ別製品として空間系専用としても利用可能。外部フットスイッチやエクスプレッションペダルを活用することで、小ぶりなHELIXとして活用することも可能。発売後しばらく品薄が続くほどのヒット製品となりました。姉妹機としてアンプモデリングを省いたエフェクト特化型のHX EFFECTSが存在します。

Line 6 HX Stomp – Supernice!エフェクター

HX Stomp XL

「HX Stomp」を出発点に、フットスイッチを増やして操作性を飛躍的に向上させたのが「HX Stomp XL」です。3基のフットスイッチを8基に増やした事で操作性が跳ね上がり、新しい使い方ができるようになっています。踏み替えの操作にミスが起きにくい仕様となり、フットスイッチの操作だけで様々なパラメータ操作が可能となるペダルエディットモード、指先で触れるだけで操作できるタッチセンサー機能を搭載。システムを総合的に操作するマスター・コントローラーとしても使用できるなど、マルチエフェクター/プロセッサーとしての範疇を超えた、新しい使い方ができる/可能性が広がる機材と進化しています。

《小さくて便利、そして最高の音質》Line 6「HX Stomp XL」


今では当たり前ともなったアンプ・モデリングの技術。パイオニアであるLine 6の製品は、そのブランド名を聞くだけで安心できるクオリティを常に備えています。これもLine 6がパイオニアであることに甘んじることなく、妥協しないものづくりをし続けているからこそなのでしょう。

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