MASTER 8 JAPAN のピックについて

[記事公開日]2019/3/21 [最終更新日]2024/6/23
[編集者]神崎聡

MASTER 8 JAPAN のピック

「マスターエイト・ジャパン」は、日本有数のピック工場「池田工業」とカスタムギターブランド「L’s TRUST」の両社がプロデュースするピックブランドです。「音」のために開発された新発想とクールなデザインで、立ち上げ当初から大いに話題を呼んでいます。さっそく何人ものアーティストが一軍起用しているこのピックに、今回は注目してきましょう。

「MASTER 8 JAPAN」ピックの特徴

「一爪入魂」を社是とする池田工業は、一枚のピックにかける情熱ではだれにも負けません。半世紀のノウハウをもとに満を持して発表されたMASTER 8 JAPANのピックには、どんな特徴があるのでしょうか。

音と感触で選ぶ、4種類の素材

MASTER 8 JAPANの主軸が、新素材「INFINIX(インフィニックス)」の感触とサウンドですが、オーソドックスな素材も登用して、多くの人が愛用しやすいラインナップを構成しています。

INFINIX(インフィニックス)

INFINIXは、世界で初めてピックに採用された新素材です。硬質で張りがあり、かつ弦に食いつき、未体験の気持ち良いアタックが得られます(旧ロットでは割れることもありましたが、現行品でこの課題は解決しています)。

Duracon(ジュラコン)

「D-801」シリーズで使われるジュラコンは、比較的オーソドックスな材料です。頑丈で摩耗しにくいのが最大の利点で、手になじみやすく、明瞭なサウンドが得られます。

PEI(ポリエーテルイミド樹脂)

PEIは、弦に対する滑りの良さと、人間の爪やべっ甲でピッキングするのに近いオーガニックなサウンドが特徴です。半透明イエローの色調で多く使われる材料ですが、MASTER 8 JAPANでは塗料を混ぜて作ることで、カラーリングにも幅を利かせています。

セルロース(セルロイド)

セルロースはピックの素材としては最も歴史が長い、スタンダードな材料です。摩耗しやすさと引き換えの明瞭なアタック感が魅力です。MASTER 8 JAPANでは今の所、アーティストモデルなど特別なピックでのみ採用されています。

「手に吸い付く」グリップの良さ

MASTER 8 JAPANの愛用者が声をそろえて言うのは、「手から落ちない」グリップの良さです。良好なグリップを生む3つの秘密を見ていきましょう。

INFINIX

ノーマルのINFINIXは、表面がツルッツルなのに、手に吸い付くような謎のグリップ感があります。これはこのピックが「非研磨」で製造されるからです。「研磨」の工程を省くことで、成形した時の滑らかな表面が残り、これが指に吸いつくような効果を生むわけです。

HARDGRIP(ハードグリップ)

「HARDGRIP」のピックは、細かいサンド(砂)を滑り止めにしています。滑り止めの感触を好むユーザーにはこのハードグリップがお勧めです。サンドの乗せ方は、ロゴマークの形などデザイン的な主張にもなります。

RUBBER GRIP(ラバーグリップ)

「RUBBER GRIP」のピックは、表裏にゴム状の滑り止めを貼り付けています。サンドのザラザラ感と違うウェットな感触ですが、表裏で異なる素材がセレクトされているのもポイントです。こちらもサンド同様にデザイン的な主張もしています。

「エッジ」で作るサウンド

MASTER 8 JAPANは「エッジ」の処理にこだわりを込めています。研磨のかけ方で、エッジ断面の尖(トガ)り具合に変化を出すわけです。研磨が少なければ少ないほどエッジは鋭く立ち、弦をヒットした時のドライブ感が出ます。逆にしっかり研磨をかけたピックは、ピッキングノイズが抑えられます。

MASTER 8 JAPAN INFINIX
INFINIX 滑り止めティアドロップ 1.0mm

MASTER 8 JAPAN のラインナップ

MASTER 8 JAPANのピックは、レギュラーモデルでは

MASTER 8 JAPAN:フォルム

  • TRIANGLE(トライアングル):正三角形に近い、いわゆる「オニギリ」
  • TEARDROP(ティアドロップ):二等辺三角形に近い、涙型
  • JAZZ TYPE(ジャズ・タイプ):小型のティアドロップ

という比較的オーソドックスな3タイプで展開していますが、総じてシャープなフォルムです。この3タイプと3段階の厚みで、レギュラーモデルは1シリーズあたり9種類のバリエーションを持っています。

Thin Medium Heavy
トライアングル 0.6mm 0.8mm 1.0mm
ティアドロップ 0.6mm 0.8mm 1.0mm
ジャズ 0.88mm 1.0mm 1.2mm

表:MASTER 8 JAPAN ピックの厚み

INFINIX

MASTER 8 JAPAN INFINIX

新素材のサウンド、未体験のグリップ力、そして鋭利なエッジによって大いに話題を呼んだMASTER 8 JAPANを象徴するピック。非研磨のため成形時の「バリ」がやや残りますが、せっかく残したエッジを損なわない範囲で、ていねいに処理しています。

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INFINIX HARDGRIP

上記INFINIXにサンドを乗せたカスタムピック。ザラザラした触り心地でしっかり安定します。サンドがあることでピック本体の「しなり」に違いが出るため、上記の通常版INFINIXよりちょっとだけ厚いピックとしても使用できます。

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INFINIX HARDPOLISH with RUBBER GRIP

こちらはINFINIXにしっかり研磨をかけ、バリをなくしたもの。エッジには丸みがあり、非研磨とはまた違ったサウンドになっています。サンドとはまた違ったグリップ感も特徴です。

ハードポリッシュでは、「サムピック」もリリースされています。親指のサイズに合わせてミディアムとラージが選択でき、3種類のカラーリングがあります。

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D-801

MASTER 8 JAPAN D-801 D-801 ティアドロップ 0.6mm

比較的スタンダードな材料だからこその受け入れやすさを持ちながら、エッジを限りなく残した「ライブ向け」ピック。INFINIXとはまた別種のアタック感、ドライブ感を持っています。レギュラーモデルに加え、こちらも「HARDGRIP」版がリリースされています。

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ARTIST SIGNATURE

CFHIRO1-080 Crossfaith Hiro signature model

アーティストのこだわりを妥協なく追求したシグネイチャーモデルは、材料や形状、デザインからエッジの処理に至るまで、まさにその人のために開発された「業務用カスタムピック」です。これらアーティストモデルの開発で得られた成果は、レギュラーモデルの開発にも反映されています。多くはご本人がデザインしているので、ファンならばマストバイのアイテムでもあります。

氏名/所属団体名 形状 材料や特徴
HIRO / Crossfaith ティアドロップ D-801ハードグリップ。「発音の速さ」にこだわり抜いたエッジ処理は、D-801シリーズ開発の礎となった。
Sugi / coldrain ジャズ ハードグリップPEI。しっかり研磨したことで、スムースなピッキングができる。
Kazuki / Crossfaith ティアドロップ調オリジナル 幾度も試作を繰り返してついに到達した、Kazuki氏専用の万能ピック。
UZ / SPYAIR ティアドロップ D-801ハードグリップカスタム。丸く整えたエッジ処理で、ピッキングノイズを軽減。サンドのラメは業界初。
Jose / TOTALFAT ティアドロップ D-801ハードグリップカスタム。丸く整えたエッジ処理、使い勝手を追求した独自のサンド配置。
Shun / TOTALFAT 鋭角なトライアングル D-801ハードグリップカスタム。レギュラーモデルにはない三角形、丸く整えたエッジ処理。
佐々木亮介 / a flood of circle トライアングル ハードグリップPEI。尖った形状により、抜けの良いトレブリーなサウンドが出せる。
たなしん / グッドモーニングアメリカ ジャズ D-801ハードグリップ、JAZZIIIタイプの超小型。しっかり立たせたエッジによるアタックの映えるサウンド。オリジナルデザインのサンド配置。
牧達也 / go!go!vanillas ティアドロップ セルロイド製、小ぶりのティアドロップ。
柳沢慎太郎/ go!go!vanillas ティアドロップ INFINIXラバーグリップ。ラバー形状はオリジナルデザイン。
長谷川プリティ敬祐/ go!go!vanillas 鋭角なトライアングル D-801に準拠したエッジ処理と、ご本人完全監修のデザイン。
MOMIKEN / SPYAIR トライアングル 1.5mmの極厚セルロースならではのファットなサウンド。美しいホログラムプリント。

表:MASTER 8 JAPAN アーティストモデル一覧(2019年3月時点)

THE TIMEMACHINE Series

MASTER 8 JAPAN THE TIMEMACHINE Series

経年変化で硬化したセルロース製ピック、いわゆる「ヴィンテージ・ピック」は、ピック自体が消耗品であることもあって入手困難な状況です。「ザ・タイムマシン」シリーズは、MASTER 8 JAPANが愛用者の声に応え、独自技術で擬似的に経年変化させたセルロースを使用した、世界初のエイジド・ピックです。

現在リリースされているのは

  • CL-1970 MEDIUM:トライアングル、75mm厚、3枚セット
  • CL-1970 HEAVY:トライアングル、0mm厚、3枚セット

で、白、黒、べっ甲柄の組み合わせです。材料の硬化によって音の立ち上がりが強調され、「初心者でもその違いがわかる」「ヴィンテージ・ピックと遜色ないサウンド」と言われています。


以上、「ピック業界初」を連発して常に話題を誘っている「MASTER 8 JAPAN」をチェックしていきました。いろいろな新しいものがリリースされていますが、MASTER 8 JAPAN企画陣は「常に次の手を考えている」と強気です。ピックは小さく安価なものですが、ギタリストの手に直接感触が伝わる重要な道具です。ぜひ実際に手にとって、ピックの面白さを感じてみてください。

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ピックを作って半世紀《一爪入魂》池田工業訪問インタビュー

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