コーラス・ペダルの使い方、おすすめモデル紹介!

[記事公開日]2025/7/8 [最終更新日]2025/8/8
[編集者]神崎聡

コーラス・エフェクター

コーラス・エフェクターは、音に“揺らぎ”と“広がり”を与えるモジュレーション系エフェクトの一つです。入力された音に対してほんの少し遅らせたコピー音(ディレイ音)を重ね、さらにその遅れ時間を周期的に変化させることで、まるでギターが2本同時に鳴っているかのような厚みと煌びやかさを作り出します。

音のピッチ(音程)もわずかに揺れるため、ダブリング(同じフレーズを複数回重ね録りしたような効果)と微かなピッチのズレが合わさり、生き生きとした合唱(コーラス)的な響きが得られます。
様々な用途に使えるため一台持っておくと何かと頼りになるエフェクターです。このページではコーラス・エフェクターについて詳しく見ていくと共に、おすすめのモデルを紹介していきます。


  1. コーラス・エフェクトの使い方
  2. コーラス・エフェクターのおすすめモデル
  3. コーラスの応用的な使い方

コーラス・エフェクトの使い方

はじめてのコーラス・エフェクター【ギター博士】

音を爽やかに彩る効果から、クリーントーンでのアルペジオやカッティング・プレイ時に利用されたり、アコースティックギターやベースでも使用することがあります。
またディストーション・ギターで「壁のような厚み」のあるリフやギター・ソロにしたい時、揺らぎを強く掛けてトリップ感を演出したい時など、様々な用途に使えます。

コーラス・エフェクターの音作りの基本

コーラス・エフェクターでは基本的に「Depth(デプス)」、「Rate(レート)」、「Level(レベル)」という3つのツマミを操作して音作りをしていきます。各ツマミの動作は、およそ0.01秒後に出力されるサウンドを「エフェクト音」とした場合、以下のようになっています。

  • Depth:エフェクト音のかかり具合を決めるツマミ
  • Rate:エフェクト音が揺らぐ速さを決めるツマミ
  • Level:原音とエフェクト音を混ぜる量を決めるツマミ

Nirvana – Smells Like Teen Spirit (Official Music Video)
コーラス・ペダルと言えば、ニルヴァーナのカート・コバーン氏が代表曲で弾いたAメロのシンプルなフレーズ。たった2音にも関わらず圧倒的存在感を醸し出しているのは、コーラスの揺らぎによるところも大きいでしょう。「クリーン+コーラス」、「ディストーション+コーラス」という組み合わせで使用しています。カート・コバーンを始め、ロック系ギタリスト/スタジオ系ミュージシャン問わず、数多くのギタリストがコーラスを使っています。

アナログとデジタルの違い

コーラス・ペダルには、デジタル回路で設計された「デジタルコーラス」、アナログ回路を持つ「アナログコーラス」の2種類があります。

アナログ・コーラスは信号の処理にアナログ回路を使用します。主にBBD(Bucket Brigade Device)チップを使用して遅延を生み出し、その遅延信号と原音をミックスすることでコーラス効果を作り出します。
デジタルに比べると多少のノイズが発生しやすいのですが、高域が少し丸くなり、独特の温かみのある音質が特徴です。シンプルな操作性のモデルが多く、直感的に音を作ることができます。

デジタル・コーラスは信号をデジタル化(A/D変換)し、デジタル信号処理(DSP)で遅延や変調を加えた後、再びアナログ信号(D/A変換)に戻す仕組みのエフェクターです。
アナログによくある高域の減衰がないため、非常に煌びやかで透明感のあるサウンドが得られます。
クリアな音質は爽やかで音ヌケがよく、デジタル処理のためノイズが少ないのが特徴的です。細かな設定が可能で、複数のパラメータを調整することで多様なサウンドが作れます。

六弦かなで

六弦かなで「柔らかく温かみのある響きが欲しい時はアナログ、クリアで多彩なサウンドが欲しい時はデジタル、がいいのかな?」

ギター博士

エレキギター博士「そうじゃな。アナログはメンテナンスが必要な場合があるんじゃが、そのぶん音の温かみが魅力的。デジタルは安定した性能を長期間維持してくれるゾ☆」

ステレオ出力できるモデルもある

BOSSの「CH-1」「CE-5」、またハイエンドなデジタル・ペダルではステレオ出力を備えている事があります。
2台のアンプまたはスピーカーを用意し、ペダルの出力端子からそれぞれ接続することで、広がりのあるステレオ・サウンドを楽しめます。
ステレオ出力搭載モデルではギターだけでなくキーボードやシンセサイザーなどに使われるなど、様々な楽器での活用も考えられます。

コーラスが標準装備された定番アンプ Roland「JC-120」と BOSS「CE-1」

Roland CE-1 元祖コーラス・エフェクター
BOSS CE-1

コーラスは全国のライブハウス、スタジオに必ずと言っていいほど設置されている「Roland JC-120(ジャズコーラス)」に標準で搭載されています。
それどころか、もともとこのJC-120に搭載されたコーラスユニットこそがコーラス・エフェクターの元となっており、好評を博したJC-120のコーラスだけを足下に置いて使用するために、ローランドは抜き出して単体で開発することを思いつきます。

こうして生み出されたのが世界初のコーラスエフェクター「CE-1」です。
JC-120はステレオのスピーカーの片方を原音、片方をエフェクト音とすることで、広がりのある美しいコーラスを得ることに成功していましたが、CE-1は単体でそれに準ずる美しい音質を実現し、高い人気を誇りました。CE-1は製造が終了して久しい現在でもプレミアム価格で取引され、その人気は健在です。

コーラスとフランジャー・フェイザーの違い

コーラスと似た仲間のエフェクトにフランジャーやフェイザーがあります。これらも音に揺らぎを与えるモジュレーション系ですが、原理とサウンドにいくつか相違点があります。

フランジャーはコーラスよりもさらに短めのディレイ音にフィードバックを掛け、それを原音と混ぜることで出力し、ジェット機の上昇音のような強烈なうねりを発生させます。
フェイザーは大型の回転スピーカー(ロータリースピーカー)の音響効果を電子回路で模倣しようとして登場したエフェクトです。
位相を変えた信号を原音と混ぜて干渉させることで、サイケデリックで浮遊感のある揺れが発生します。

効果の違い
コーラス:ナチュラルな厚みと広がり
フランジャー:金属的でジェット音のような効果
フェイザー:渦巻くようなサイケデリックな揺れ効果

ロータリースピーカーって何?

ロータリースピーカーっ

コーラスなどモジュレーション系エフェクターの元となったのがロータリースピーカーです。
低音用のスピーカーに繋いだホーンと高音用のスピーカーコーンを逆方向に回転させ、ドップラー効果を作り出し、音に揺らぎを与えるというもので、自然な効果の掛かり方や独特のサウンドによって現在でも人気があります。

主にハモンドオルガンに使われ、オルガンやキーボードにはシミュレータが標準搭載されるのが一般的です。ギターではエリック・クラプトン氏やビートルズの曲などで聴くことができ、ロータリー・スピーカーをシミュレートしたギター用エフェクターもリリースされています。
ロータリースピーカーはドン・レスリーという人物が開発したことから、レスリー・スピーカーとも呼ばれ、こちらの呼称も一般的によく使われます。

エフェクターの接続順

モジュレーション系に属するコーラスは、「歪み系ペダルの後段かつ空間系ペダルの前段」に繋ぐようにしましょう。アンプにエフェクトループ(センドリターン機能)がある場合、ループ内に配置することで、よりキレイなエフェクト音がかかるようになります。

関連記事:
エフェクターのつなぎ方 – Supernice!エフェクター

コーラス・エフェクターのおすすめモデル

紹介するおすすめペダル一覧
画像 製品 発売時期 回路構成 電池駆動 特徴
Effects Bakery
Melon Pan Chorus
2019年 アナログ x コストパフォーマンスに優れた、はじめてのコーラス・ペダルに相応しい1台
Animals Pedal
Car Crush Chorus/Vibe
2017年 アナログ コーラスとUni-Vibe系サウンドを一台に収めた、可愛らしい筐体が所有欲をくすぐる一台
TC Electronic
3RD DIMENSION CHORUS
2017年 アナログ 4つのボタンON/OFFだけで操作する、揺らぎのない爽やかでクリアなコーラス
BOSS
CH-1 Super Chorus
1989年 デジタル 高音域がやや強調されたシャープで爽やかなサウンドは、これぞデジタル
Electro Harmonix
Small Clone
1980年代〜 アナログ NIRVANAのカート・コバーン氏の使用により一躍有名になった、コーラス・エフェクターの名機
BOSS
CE-5 Chorus Ensemble
1991年 デジタル ステレオ出力対応、広がりのあるリッチなコーラスサウンドを特徴としたコーラス
MXR
M234 Analog Chorus
2011年 アナログ 音色を柔軟にコントロールすることが可能。ウォームな音色で使いやすいアナログ・コーラスを探している人におすすめ
Ibanez
CSMINI
2016年 アナログ トゥルーバイパス設計で音質劣化なし、ミニサイズでエフェクターボードにも組み込みやすい
BOSS
CE-2W
2016年 アナログ 伝説的コーラスペダル「CE-2」を、BOSS Waza Craftシリーズで蘇らせた復刻版
Walrus Audio
JULIA
2016年 アナログ x 独創的なサウンドが欲しいプレイヤーにぜひお勧めしたい一台
BOSS
MD-200 Modulation
2019年 デジタル 単3電池 ×3 12種類のエフェクトが詰め込まれたモジュレーション系マルチエフェクト

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時代を超えて愛される:定番・人気モデル

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ハイエンドなコーラス・ペダル

コーラスの応用的な使い方

基礎と機材の話を踏まえたところで、今度は応用テクニックに目を向けてみましょう。
コーラスエフェクトは単独で使うだけでなく、他のエフェクトと組み合わせたり、セッティングを工夫することで多彩なサウンドメイクが可能です。

歪みとの組み合わせ方

コーラスと歪みエフェクト(オーバードライブ/ディストーション)の併用は、ロックギターにおける定番中の定番です。

まずクリーントーンでは、コーラスは最もポピュラーな使い方です。アルペジオに薄くコーラスをかければ、一気にブライトで煌めくクリーントーンが得られます。


The Police「見つめていたい(Every Breath You Take)」
イントロのクリーンにコーラスをかけたアルペジオはまさに“あの感じ”と言えるサウンド

ディストーションやハイゲインの領域では、コーラスを乗せると音像がボヤけてしまう危険がありますが、ごく薄いコーラスをかけることでリードトーンに艶と広がりを加えて、存在感を放つという使い方があります。


Deftones – Digital Bath [Official Music Video]
静と動を行き来する楽曲。Vo/Gt チノ・モレノ氏のギターは、「静」の部分でのコーラスサウンドが一層存在感を放ちます。楽曲によっては「動」のヘヴィなディストーション部分でもコーラスをかけたようなサウンドを聞くことができます。

空間系との相乗効果

コーラスエフェクトは空間系エフェクト(リバーブやディレイ)とうまくブレンドすることで、サウンドに立体感や深みが格段に増します。

コーラス+リバーブ。

クリーントーンなどでこの組み合わせを使うと、「幻想的な広がり」と言う言葉に相応しい音空間が得られます。

基本的なつなぎ順はコーラス → リバーブ(リバーブが後段)ですが、順番を逆にするという裏技的手法も存在します(リバーブの残響音だけにコーラス効果を加える)。深めのホールリバーブにコーラスを合わせれば、教会の中で鳴っているかのような神秘的クリーンサウンドが作れます。特にポストロックやアンビエント系では定石の組み合わせで、コーラスの揺れがリバーブの余韻と相まって神々しい奥行き感を生み出します。

コーラス+ディレイ

典型的な使い方として、クリーントーン+ディレイ+薄いコーラスは鉄板です。
接続順は通常通りコーラス→ディレイですが、ディレイ側に“モジュレーション機能”が付いている場合はそれを活用しても良いでしょう(近年のディレイペダルにはコーラス的な揺れをディレイ音に乗せるモードがあるものも多いです)。原音→ディレイ音がステレオでパンする場合は特に、ギター1本とは思えない広がりとリズムの心地よさが両立したサウンドになります。

以上、コーラス・エフェクターの使い方からおすすめモデルまで見ていきました。デジタルとアナログで音の傾向に違いがあり、好みが分かれるところです。ハイエンドなモデルでは大容量の電流が必要となるため、専用アダプターやパワーサプライの導入もよく考える必要があります。是非好みのペダルを探してみてください。

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