SAITO GUITARSのギターについて

[記事公開日]2016/8/3 [最終更新日]2022/4/5
[編集者]神崎聡

SAITO Guitarsのギター

「SAITO GUITARS(サイトー・ギターズ)」は、2014年に始動したばかりの若いギターブランドです。しかしそれ以前に立ち上げた手巻きピックアップブランド「SAYTONE(サイトーン)」の製品が Crews Maniac Sound の製品に採用されるなど成功をおさめており、ギターブランド立ち上げ以前にすでに注目されていました。SAITO GUITARSはこのピックアップを使った品質の高いギターを、手作業にこだわりながらも合理化した生産体制によって低価格で展開することから一気に話題を集めています。今回は、この新進気鋭のギターブランドをチェックしていきましょう。

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1: 埼玉県川口市「齋藤楽器工房」の沿革 1.1: 原点に立ち返った手巻きピックアップ「SAYTONE」 2: SAITO GUITARSのラインナップ 2.1: アーチトップモデル「Mシリーズ」 2.2: ソリッドギター S Series 2.2.1: Sシリーズの特徴 2.2.2: 22フレット仕様機「S-622」シリーズ(S-622/S- 622JMC/S-622TLC) 2.2.3: 22フレット仕様7弦モデル「S-722」 2.2.4: 24フレット仕様マルチスケール「S-624MS/S-724MS」 2.2.5: 7弦ヘッドレスギター「S-HL7」 2.3: 小型ラップスチールLS-4

埼玉県川口市「齋藤楽器工房」の沿革

SAITO GUITARS を統括するサイトウマサアキ氏は、都内楽器店でリペアを担当してキャリアを積み上げ独立、1991年にリペアショップ「齋藤楽器工房」を立ち上げます。楽器店や一般客から寄せられる楽器のリペアを続けながら、オリジナルのギターやベース、アンプ、ピックアップなどを開発していきます。

ヴィンテージピックアップの作られ方を研究した末、手巻きピックアップブランド「SAYTONE Hand Winding Pickups」をたちあげます。この製品がCrewsのギターに採用され、単品での販売も開始していきます。

2012年に工房を埼玉県川口市に移転、2014年にSAYTONEピックアップを搭載したオリジナルのアーチトップギターを製作します。これに手ごたえを感じ、リペア業から製造業へ転身を果たしました。

2014年の楽器フェアにて、オリジナルのアーチトップギター「M」シリーズとミニラップスチールギター「LS-4」を発表し、オリジナルギターブランド「SAITO GUITARS」としてデビュー。翌年にはソリッドギター「S」シリーズを発表、狙いどころを絞って洗練した設計によりヒット作となりました。

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原点に立ち返った手巻きピックアップ「SAYTONE」

SAYTONEピックアップ

SAITO GUITARSのギターには、同社ブランド「SAYTONE」のピックアップが搭載されます。SAYTONEは「手巻き」製法を売りにしていますが、ヴィンテージギターのトーンを復刻することが第一の目的ではなく、ピックアップの性能を突き詰めていった結果、機械化によって省かれてしまった「手巻き」こそがベストの製法であることに行きついたのだといいます。

SAYTONEピックアップ


SAITO GUITARSのラインナップ

SAITO GUITARSのラインナップは、

  • アーチトップモデル「Mシリーズ」:フルアコをメインに、セミアコも
  • ソリッドギター「Sシリーズ」:ストラトタイプが中心

の2タイプを中心に展開しています。いずれも仕様を選択できる「セレクトオーダー」ができ、好みに合わせたギターを手に入れることができます。

ソリッドギター/フルアコ/セミアコの違いについて

アーチトップモデル「Mシリーズ」

SAITO GUITARSのMシリーズには、

  • M35:ボディ幅13.5インチ
  • M38:ボディ幅15インチ

の2種類があります。13.5インチのM35はレスポールよりわずかに大きめというサイズ感で、15インチのM38はフルアコとしては小さめの部類に入りますが、ジャズギター色の強化された余裕のある鳴りを持ち、「SAITO GUITARSの集大成」と言われています。一般的な16インチや大きめの17インチには行かず、近年一般化しつつあるコンパクトなボディサイズで弾きやすいところを狙ったラインナップになっています。

Mシリーズの特徴

一言でフルアコと言っても、Mシリーズはレスポールタイプのエレキギターを出発点としてフルアコへとアレンジしていったモデルであり、Gibson L-5、Gibson ES-175 など、アコースティックギターを出発点とした従来のフルアコと異なっています。その証拠としてあげられるのが、「ネックジョイントとフレット数」です。一般的なフルアコのネックはアコギと同様、14フレット地点でボディとジョイントされ、フレット数は20です。これに対してMシリーズのネックはレスポールと同様、16フレット地点でボディとジョイントされ、フレット数は22です。カッタウェイが大きく切られていることもあってハイポジションの演奏性が大いに高まるのに加え、レスポールなどソリッドギターからの持ち替えがスムーズにできるメリットがあります。

ポイントを絞ったラインナップ展開がSAITO GUITARSの特徴ですが、このMシリーズにおいては

  • 24.625インチネック、シャーラー製ペグ
  • ポジションマークを排した10インチR(250mmR)エボニー指板のシンプルかつ精悍なルックス
  • 自社製の木製ブリッジ、テールピース、ロッドカバー
  • 高級感のあるニトロセルロースラッカー塗装
  • 全機種にSAYTONE「Sledge α」ピックアップ搭載

といった多くの共通点があり、ボディやネックの材木、またバインディングやカラーリングの意匠などでバリエーションを出しています。さらには外観のまとまりを重視し、指板とテールピースは同じ一枚のエボニー材から切り出されるという渋いこだわりが込められています。

Fホールに採用された楕円形の思い切ったデザインも大きな特徴で、正面から見るとピックガードの描く曲線とうまく一体化するようになっています。

M35/M35D/M38

M35D Cherry M35 Sunburst

M35 Sunburst M35D Cherry

この3機種は、ネック、ボディトップ&バックを希少なホンジュラスマホガニー単板で統一したモデルです。マホガニー特有の温かみのあるトーンを持っていますが、この仕様のフルアコはありそうで他にはなかなかない、本機の大きな特徴になっています。M35Dはリアピックアップ搭載モデルで、サウンドバリエーションが広がることでさまざまなジャンルの音楽に対応できるようになっています。またカラーリングに応じてボディ外周を覆うバインディングも変えており、外観上のカッコよさを演出しています。

M35SMM/M38SMM

M38SMM Tea Burst M38SMM Tea Burst

「SMM」はネックにホンジュラスマホガニー、ボディトップにシトカスプルース、サイド&バックにカーリーメイプルを採用しています。この仕様は ES-175 を代表とする伝統的なフルアコを踏襲したモデルになっていますが、オールマホガニーモデルと比べて透明感のあるトーンになります。ボディのバインディングはブラック&アイボリーの2層で、シックな高級感を演出します。

M35C/M38C

M38C Maple Syrup M38C Maple Syrup

「C」は「Custom」と表記されることもあります。Mシリーズの最高グレードで、ネックにハードロックメイプル、ボディトップにAAAAヨーロピアンスプルース、サイド&バックに最高級のハードロックメイプルが使用されています。サウンドは立ち上がりが早く、かつ豊かな表情があり、弾いているうちに時間を忘れてしまうほどだと言われます。

ボディ、ヘッド、指板にとどまらず、ピックガードとテールピースに至るまで美しいメイプルバインディングと赤青のラインで彩られており、「芸術品」と呼べる仕上がりになっています。最高グレードゆえ、このモデルだけは製作期間が特に設定されません。工程ごとに寝かせる木材の都合に合わせて作られるため、時間と手間のかかるモデルとなっています。

M35S

m35s_trans-blue-burst M35S Trans Blue Burst

「M35S」Mはシリーズ唯一のセミアコで、ネックとボディサイド&バックにホンジュラスマホガニー、ボディトップにフィギュアドメイプルという組み合わせで、ブリッジはES-335同様のTOM(チューン・O・マチック)となっています。内部に仕込まれるスプルース製のセンターブロックは、ネックジョイント部からブリッジ下まで達しています。センターブロックがボディの末端まで行かないことでボディ内の空洞が確保されているため、小さめボディでありながらセミアコとしての充分なエアー感が感じられます。

ソリッドギター S Series

「機能美を帯びた道具を作る」というコンセプトで開発されたSシリーズは、大変シンプルかつ合理的なバリエーションを展開しています。ハイエンドモデルでありながら驚異的なコストパフォーマンスがあり、デビュー直後から多くのファンを獲得しました。楽器としての機能と弾きやすさにポイントを絞ったシンプルなデザインは、ジャンルやプレイスタイルを選ばず演奏に集中できます。また1弦0.010インチからのゲージで出荷されますが、シビアな調整が施してあるため弦が硬くて弾きにくいということがなく、快適に演奏することができます。

モデル名も大変合理的で「弦の本数」と「フレット数」で表されますが、それぞれのコンセプトに従った仕様でまとめられています。現在ではディンキータイプを主軸に、ジャズマスタータイプとテレキャスタータイプ、さらにはヘッドレス仕様まであり、充実のラインナップを誇っています。

  • S-622:6弦22フレット、ディンキータイプ
  • S-622JMC:6弦22フレット、ジャズマスタータイプ
  • S-622TLC:6弦22フレット、テレキャスタータイプ
  • S-624MS:6弦24フレット、マルチスケール(ファンフレット)
  • S-722:7弦22フレット
  • S-724MS:7弦24フレット、マルチスケール(ファンフレット)
  • S-HL7:7弦24フレット、マルチスケール(ファンフレット)、ヘッドレス

それでは、Sシリーズの特徴を追ってみましょう。

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