ハーモニックマイナースケールの使い方

[記事公開日]2017/3/28 [最終更新日]2025/8/7
[編集者]神崎聡

Cハーモニックマイナースケールの5線譜表記


ハーモニックマイナースケール(日本語で”和声的短音階”)は、エオリアン(ナチュラルマイナースケール)の7番目の音を半音上げた音階です。
例えば Aナチュラル・マイナー「A B C D E F G」に対し、Aハーモニック・マイナーでは7度の G が G♯になり「A B C D E F G♯」となります。

音程構造は「1 2 ♭3 4 5 ♭6 7」で、6度と7度の間に増2度(3半音)の隙間があるのが特徴です。
クラシック音楽の伝統では、短調での V–I カデンツ(終止形)を明確にするために導入され、後述するようにジャズやロックでもV7 → Im解決の場面で重宝されています。

全半全全半(全+半)半 ハーモニックマイナースケールの音階

ハーモニック・マイナースケールの基礎

ナチュラルマイナースケールでは V 和音がマイナー7th(例:Amキーでの Em7)となり緊張感に欠けます。
ハーモニック・マイナーにより長7度が導入されると、Vがドミナント7th(例:E7)に変化し、3度と7度に生じるトライトーンがトニックImへの強力な進行感を生み出します。
このドミナントモーション(E7 → Amなど)は、短調における解決感を飛躍的に高め、古典的なカデンツから現代のジャズのツー・ファイブ進行まで幅広く活用されています。

ジャンル別: ハーモニック・マイナーの使われ方

クラシック(古典~ロマン派)の文脈

ハーモニックマイナーは西洋古典音楽における短調の基盤です。バロック~古典派では短調の楽曲に必ず登場し、V→Iの終止が多様されます。
例えばバッハのフーガやモーツァルトの交響曲など、短調の作品では導音の効いた緊張感あるフレーズが随所に見られます。
クラシックでは旋律線を滑らかにするため上行時に6,7度を上げたメロディックマイナーも併用されました。

ジャズ&フュージョンの文脈

ジャズ理論では短調の II–V–I にハーモニック・マイナーの和声が使われます。

II度のm7♭5にはロクリアン系スケール、V7(♭9)にはフリジアン・ドミナント(ハーモニック・マイナーVモード)が典型です。
これにより V7 上で♭9や♭13を含むリッチなアドリブが可能になります。
多くのジャズスタンダードのマイナー曲でアドリブ時にこのスケールが使われます。

ジャンゴ・ラインハルトに代表されるジプシー・ジャズでは、短調のアドリブにしばしばハーモニックマイナー的なフレージングが登場します。
特徴的な♭6 → 7 → 1の半音進行を持つラインや、V7上の♭9強調など、マイナーの情感を強調する表現として機能しています。

複雑な和音進行を扱うモダンジャズやフュージョン系では、ハーモニック・マイナーのみならずそのモードもスケール・チョイスに組み込まれます。
例えばアラン・ホールズワースように理論探究型のギタリストは、Im(Maj7)上でハーモニック・マイナーを用いたり、意図的に珍しいモード(ロクリアン♮6やリディアン♯2等)を駆使して独創的なラインを作ることもあります。

ロック/メタルの文脈

ハーモニック・マイナーの持つ荘厳かつ哀愁あるサウンドは、多くのメタル系ジャンルで愛されています。特にネオクラシカルメタルでは基本中の基本スケールで、速弾きソロからリフ作りまで多用されます。例えばイングヴェイ・マルムスティーンの曲には、このスケールを駆け上がるランや分散和音フレーズが頻出します。

一部のハーモニックマイナー・モードはリフ作りにも使われます。フリジアン・ドミナント(スペイン風スケール)は、そのダークで中東的な響きから、メタルの印象的なリフに好んで取り入れられています。

指板上のポジション

  • Cハーモニックマイナー・スケール
  • D
  • E
  • F
  • G
  • A
  • B

Cハーモニックマイナー・スケールの指板上のポジション

Cハーモニックマイナー・スケール

Cハーモニックマイナースケールを用いた運指例

Cハーモニックマイナースケール:Tab譜 Tab譜下の数字:1=人差し指、2=中指、3=薬指、4=小指
※印は少し変則的なフィンガリングをしている音です。1本の弦につき3音ずつ、に則ってないもの、と考えてください。

Dハーモニックマイナー・スケールの指板上のポジション

Dハーモニックマイナー・スケール

Eハーモニックマイナー・スケールの指板上のポジション

Eハーモニックマイナー・スケール

Fハーモニックマイナー・スケールの指板上のポジション

ハーモニックマイナー・スケール

Gハーモニックマイナー・スケールの指板上のポジション

Gハーモニックマイナー・スケール

Aハーモニックマイナー・スケールの指板上のポジション

Aハーモニックマイナー・スケール

Bハーモニックマイナー・スケールの指板上のポジション

Bハーモニックマイナー・スケール

ギター博士がCハーモニックマイナー・スケールを弾いてみた!

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ギター博士「クラシカルな響きを持つ美しいスケールぢゃ!」

このギターソロのポイント

Cハーモニックマイナー・スケール:Tab譜

奏法的なポイントは6,7小節目の「ペダル奏法」の部分です。ペダル奏法はクラシックの世界でよく用いられる演奏表現の一つで、一つの演奏の中に「高音部」と「繰り返される低音部」の2つのメロディが含まれており、オルガンなどの足鍵盤(ペダル)で低音を維持させたままメロディを弾いているような演奏を、ギターで再現しています。

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