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愛用の真空管アンプを使って、自宅での練習やレコーディングに生かしたいと思うのは至極当たり前のことでしょう。そして、それはなかなかハードルの高い願望でもありました。しかし、昨今ではそれを可能にする「ロードボックス」が多数リリースされています。
現在市場に出回っているロードボックスは、非常に高品位なキャビネットシミュレーターが含まれていることが多く、これ一つでレコーディング環境が構築できてしまうものがほとんどです。デジタルのアンプシミュレーターとはまた違う、生のアンプのサウンドを自宅で手軽に得るために、有力な選択肢になるのではないでしょうか。
まずは真空管アンプを使ったレコーディングの方法についておさらいしておきましょう。方法としては主に以下の3つに分けられます。
1. キャビネットの前にマイクを立ててのマイク録音
1.は通常、アンプのレコーディングとして真っ先にイメージされるものですが、真空管アンプは一定以上の音量を出さなければその本領を発揮することができず、集合住宅などではまず不可能な方法です。
2. アンプのレコーディングアウトから録音
2.はアンプにすでに搭載されているものを使うので最も手軽ですが、アンプ内蔵のキャビネットシミュレーションに頼ることになります。アンプヘッド内蔵のシミュレーターはクオリティ面でいまいちなことが多く、さらに柔軟なカスタマイズも効かないため、やや使いづらく感じられます。
3. ロードボックスを使った録音
3.がこのページで紹介するロードボックスを使ったレコーディング方法です。ギターアンプを大音量で鳴らした時にしか得られない、真空管の心地よいサチュレーション、豊かな鳴りを、小音量のまま録音することができます。
真空管アンプヘッドにスピーカーを繋がずに電源を入れると壊れる、という事実をご存じの方は多いでしょう。アンプヘッドに含まれるパワーアンプはそもそもスピーカーに接続することを前提に作られており、適切な抵抗が得られない状況だと、真空管に過電流が流れ込み破損に至る、という流れで起きる現象です。これを防ぐために「ダミーロード」というものを使用します。
ダミーロードはスピーカーキャビネットと同じ抵抗を得て、擬似的に繋いでいる状態を作ることで、アンプヘッドの破損を防止するものです。これによって音を出さずに信号を取り出すことができ、ラインレコーディングや、音量を抑制する「パワーアッテネーター」としての利用ができるようになります。自作で作っている方も多く見かけられますが、様々なリスクを考えると購入が無難でしょう。
そもそも”ロードボックス”とはダミーロードにラインアウトの出力機構を備えたもののことです。しかし、近年では高品位なキャビネットシミュレーターやエフェクト、さらに複数のアウトプットなどを付け加えることで、レコーディングやライブなどに合わせて幅広い使い方のできる機材のことを、総じて「ロードボックス」と呼ぶ風潮があります。これによって、大音量が必要となる真空管アンプを使って、思うままにラインレコーディングをコントロールしたり、小音量あるいはヘッドフォンを使っての練習なども可能になるため、真空管アンプを日常的に使用するためには必須と言っても良い機材です。
ロードボックスはアンプから取り出した信号を内部でデジタル変換しているものがほとんどで、それにより劣化のない音質、柔軟な音色の構築ができるようになり、ダミーロードやアッテネーターを使用した時に起こりやすい、望まれない音色変化も、最小限にとどめられるように設計されています。
通常、私たちがギターの音としてイメージするものは、アンプヘッドから作り出した音をキャビネットに送り込み、それを鳴らして、さらにそれをマイクで集音する、という過程で得られたものです。アンプヘッドはキャビネットを通すことで、初めてしっかりした土台のあるエレキギターの音になります。
キャビネットシミュレーターはこの「キャビネット→マイク集音」の流れをシミュレートしたもので、ラインレコーディングには必要不可欠になるものです。高機能なものでは、キャビネットのモデリングだけで数十種類、集音用のマイクのモデリングも幾種類など、多数のモデリングデータが揃っており、さらに部屋の残響を取り込むためのルームマイクのシミュレートや、マイクとキャビネットの距離や位置などを設定してシミュレートできるものもあります。エレキギターの音質の半分以上がキャビネットとマイキングで決まる、とさえ言われており、この部分こそが最終的な出音を一手に担っていると言っても過言ではありません。
コンパクトなキャビネット・シミュレーターの使い方 – Supernice!エフェクター
近年ではIR(Impulse Response)データというものが一般化しています。これは残響や空間の響き方などがデータとして記録されたもので、当初はリバーブに使われていました。現在ではギターアンプのキャビネットの”鳴り”を再現するためにも使用され、IRデータだけを販売している業者も見られます。現在キャビネットシミュレーションはIRなくして語れないほど、浸透しています。
フランスのメーカーTwo notesは、このカテゴリの製品では第一人者といって良い定番の地位を築いています。Torpedoシリーズは同社が展開するロードボックスのシリーズ名で、全6種類がラインナップされています。
1UラックサイズのこのTorpedo Liveは、シンプルな操作性と優れた音質が魅力の、ライブに向いた仕様の製品。シミュレートはスピーカー・キャビネットだけで32種類、マイクで8種類を搭載し、マイクの距離や位置などのシミュレートも完備。PCとの接続により、グラフィカルな操作で綿密なシミュレーションを作り込むことができ、IRを使用した残響も微調整したり、外部のものを読み込んで本体に転送できます。アウトプットは2系統で、かつ直接スピーカーに送ることも可能。他社製品には見られないパワーアンプのモデリングを内蔵しており、卓上プリアンプを実際のアンプヘッドのような音で鳴らすこともできます。入力100Wなので、それ以上の出力に対応できないことは注意が必要。
Two Notes Torpedo Live – Supernice!ギターアンプ
DIボックスに似た小型ロードボックス。片手で軽く持てる大きさと重さでありながら、機能はラックサイズの上位モデルに引けを取りません。32種類のキャビネット、8本のマイクモデルがあらかじめ内蔵され、キャビネットモデルについても、購入でさらなる追加が可能です。IRデータも512種類を読み込むことができ、エフェクトもノイズゲート、EQ、エンハンサー、リバーブ、ツイントラッカーを搭載。作り込んだ設定はプリセットとして6種類が保存でき、レコーディングやライブで活躍します。
ステレオ出力を採用し、リバーブやツイントラッカーによる広がりのある音の他、別々の設定の音を個別に出すことも可能。パワーアッテネーターとしても2段階の音量セーブ機能を搭載し、真空管アンプを無理のない範囲で自宅練習に使用できます。こちらも入力は100Wまでを対応としています。
Two Notes Torpedo Captor X – Supernice!ギターアンプ
エフェクター界の巨人BOSSが放つ真空管アンプ専用のロードボックス。Roland独自のTube Logicテクノロジーを用いて、音質劣化を抑えつつ、真空管アンプの良さを最大限に引き出せるように設計されています。キャビネットシミュレーターには22種のキャビネット、9種類のマイク、5種類のルームマイクが内蔵されており、外部IR読み込み用に32スロットを装備しています。その他、他社モデルとの相違点としては、充実した入出力端子に、複数のエフェクト、100Wパワーアンプの搭載が挙げられるでしょう。
ステレオ出力に加え、内蔵のパワーアンプを使ってのスピーカーアウト、外部エフェクトを接続出来るエフェクトループやフットコントローラー用の入力端子など、ライブ使用にも十分耐えうる充実の入出力系統を持ち、エフェクトはBOSSマルチエフェクター譲りの高品質なコンプレッサー、ディレイ、リバーブを装備。内蔵100Wパワーアンプを利用して、1W練習用アンプをライブで使う等といった面白い使い方も可能です。入力は150Wまでとなっています。
BOSS WAZA Tube Amp Expander – Supernice!ギターアンプ
優秀なダミーロード兼DIボックスとして人気を博したフルアナログ設計の 「Reactive Load」に、IR利用のキャビネットシミュレーターを増設したモデル。ここで紹介する機材の中でももっともシンプルな製品で、実質インプットとアウトプットのみという潔い仕様ながら、さすがにSuhrだけあり音質は折り紙付きです。
ヘッドフォン出力やAUX入力などは別口で用意してあり、夜の練習などには十分対応できるようになっています。初期状態では16種類のキャビネットモデルを内蔵しており、外部IRの読み込みにも16スロットを用意。シンプルでかつ高音質という玄人向けのモデルではありますが、その分直感的に使いやすく、音質を最優先で考えたときには有力な選択となります。入力は100Wまでとなっています。
Suhr REACTIVE LOAD I.R – Supernice!ギターアンプ
レコーディング用機材やプラグイン・エフェクトなどでプロ/アマ問わず支持を集める Universal Audio(UA)のリアクティブ・ロードボックス。スピーカーの挙動、コーンの動きなども再現する、UA独自のダイナミックスピーカーモデリング技術が使われており、音質と使い勝手の評価が高く、現在ではロードボックスの定番のひとつとなっています。
22種類のキャビネット、6種類のマイク、6種類のルームマイクを内蔵しており、エフェクトもEQ、コンプレッサー、ディレイ、リバーブを装備。つまみが5つのみとシンプルなコントロールながら、Wi-Fi接続によるPC、スマートフォン制御のエディットなどで、細やかなマイキング、エフェクトの繊細なカスタマイズなど、できることは多岐に渡っており、多彩なサウンドを構築することができます。作り込んだセッティングはリグとして100種を保存しておくことができ、フットコントローラーの接続などでライブでも使用可。エフェクトプラグインのメーカー発とは思えない、クラシカルスタイルなルックスも気品を感じさせます。入力は150Wまで。
Universal Audio OX Amp Top Box – Supernice!ギターアンプ
今回紹介したロードボックスは、いずれも現代に求められる使いやすさと多機能を地で行くものばかり。最新のデジタル技術であるインパルス・レスポンスが使われているところも共通しています。フルアナログの真空管アンプと、最新鋭のデジタルシミュレーターを含むロードボックスの組み合わせは、新たなギターの鳴らし方として大いに試す価値があるでしょう。
ロードボックスの売れ筋を…
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