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カルロス・サンタナ氏は複雑に絡み合うラテン・パーカッションのリズムを初めて本格的にロックに取り入れたギタリストです。なおカルロス・サンタナ氏の率いるバンドが「サンタナ」という名前です(ややこしいですね)。
サンタナの音楽は、当時流行していたブルース・ロックにラテンのエッセンスを融合させたもので、躍動するラテン・パーカッションのリズムセクションと、哀愁あふれる“泣き”のギターソロのコントラストは、それまでにない新鮮なサウンドをロックシーンに吹き込みました。
特に日本では、名曲「哀愁のヨーロッパ”Europa (Earth’s Cry Heaven’s Smile)”」のイメージが強く、「哀愁のギタリスト」という異名がつけられました。ファッションにもこだわりがあり、近年では必ず帽子をかぶっていますが、
というように、自らの名を冠したファッションブランドも展開しています。今回は、カルロス・サンタナ氏に注目していきましょう。
Santana ft. Chad Kroeger – Into The Night (Official Video)
ニッケルバック所属、チャド・クルーガー氏とのコラボレーション。ロックなサウンドにラテンのフィーリング、そしてエロいリードギター。これこそがサンタナです。なお、帽子ブランド「カルロス・サンタナ」では、動画のサンタナ氏ご自身が被っているようなダンディな帽子が多数ラインナップされています。まず形からサンタナっぽくなりたい人は、要チェック!
1947年7月20日 生 メキシコ ハリスコ州アウトラン・デ・ナヴァロ
メキシコの小さな町、オートランの生まれ。13歳でサンフランシスコに移住し、69年にはレコード・デビュー前にもかかわらず、あの歴史的な「ウッドストック・フェスティバル」に出演するほどの人気を獲得していました。同フェスティバルでの熱演で世界にその名をとどろかせた後、ともにミリオン・セラーとなったデビュー・アルバム『サンタナ(1969)』、セカンド・アルバム『天の守護神(Abraxas。1970)』を発表。当時17歳の若き天才ギタリスト、ニール・ショーン氏(のちに「ジャーニー」を結成)がバンドに加入し、「サンタナIII(1971)」からしばらくは超絶ツインリードのラテンロックというサウンドを展開します。
精力的に活動する合間、ジョン・マクラフリン氏の紹介で1973年、ニューヨーク在住の導師シュリ・チンモイ氏に弟子入りします。チンモイ氏から「神のランプ、光、目」を意味するDevadip(デヴァディプ)という名前が与えられ、サンタナ氏はヨーガを通してインドの精神世界を学び始めます。
1970年代のサンタナ氏はジャズ/フュージョンの分野で活動していましたが、いっぽうでファンク/ラテン色を強めた「アミーゴ(1976「哀愁のヨーロッパ」収蔵)」を発表、ジョン・マクラフリン氏やハービー・ハンコック氏等、名だたる名手と共演するなど幅広く活動しました。1980年代にはジャズ/フュージョン路線と並行してロック/ブルース方向のサウンドを模索、ジョン・リー・フッカー氏やウェザーリポート、グレイトフル・デッドらと共演します。その後、妻デボラに捧げたアルバム「Blues for Salvador(1987)」で初のグラミー賞を受賞します。
The Miseducation of Lauryn Hill
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90年代は不振が続いてレコーディング契約すらなくなったサンタナ氏でしたが、ローリン・ヒル女史のアルバム「The Miseducation of Lauryn Hill(1998)」収録の「To Zion」に参加したことで可能性が開けます。妊娠を機に制作したアルバムで、出産への苦悩と決意を歌うという重要な楽曲に、サンタナ氏のギターは優しく美しい花を咲かせます。このアルバムの成功をヒントに、若手アーティストとのコラボレーションを中心としたアルバム「Supernatural(1999)」が制作されました。この作品は「アルバム・オブザイヤー」を含む8つのグラミー賞、3つのラテングラミー賞を受賞する大成功となりました。
のちにサンタナ氏は、2014年に発表した回想録「The Universal Tone:Bringing My Story to Light(洋書)」について「私はラテン系でもスペイン系でない、光の子です」と語った上で、「ダライ・ラマや教皇、マザー・テレサ、イエス・キリストでなくても、祝福と奇跡を生み出すことはできる」と語っています。
サンタナ氏は、「情熱的」とも「官能的」とも、また俗に「エロい」ともいわれるリード・プレイを最大の持ち味にしています。
一見カンタンそうなフレーズでもニュアンスの再現は至難の技で、70歳を越えた今なお豪快な速いフレーズもラクラク弾きこなします。こうした持ち味が、強豪ひしめく音楽界においてサンタナ氏を唯一の存在にしています。
また、プレイ中の恍惚とした表情も大きなポイントです。あまりビブラートに頼らないこともあって、一部で「音の気持ちよさのあまり、ビブラートをかけることすら忘れてしまっている」とささやかれることすらありました。もちろん必要な場面ではしっかりビブラートをかけますから、むしろビブラートを使うかどうかの選択も表現のバリエーションにしているわけです。
Boz Scaggs – You Can Have Me Anytime
AORの巨人、ボズ・スキャッグズ氏の最高傑作と言われるアルバム「Middle Man(1979)」の美しきバラード。バックバンドは後にTOTOとして一世を風靡、また多くの楽曲に天才デヴィッド・フォスター氏がピアノで参加しています。サンタナ氏は終盤のギターソロで、歌詞の行間まで表現しきるかのような情熱的なプレイを披露しています。さすがにPVの出演はかなわなかったようで、動画はスティーヴ・ルカサー氏による渾身の当て振りです。
サンタナ氏のサウンドは、1にPRS、2にメサ・ブギー、3に追加の高級アンプで作られますが、大きなベース用のピックを愛用していたことも注目に値します。そのため「トルティーヤチップスのようなピックを使っている」と揶揄されたこともあったようです。現在ではV-Picks社製の「Freakishly Large Round」を愛用とのことですが、やはりでかいピックがあの音には必要なようです。では、サンタナ氏の使用機材をチェックしてみましょう。
デビュー当時はレスポールやSGなど、もっぱらギブソン派だったサンタナ氏ですが、1976年から1982年にかけてはYAMAHAのSGをメインに使用しました。その間にポール・リード・スミス氏と出会い、1982年から現在に至るまでPRSをメインに据えています。サンタナ氏とPRSとのつながりは深く、例えばPRSの「SE」シリーズがサンタナ氏の発案でスタートするなど、お互いに良い関係を築いています(初期のSEモデルは「サンタナSE」の名で流通していました)。
PRS「SEシリーズ」ってどうなの?特徴やライナップを調べてみた
「サンタナ・シグネイチャー」はPRSラインナップのなかで唯一、他とは違う左右対称的なボディシェイプになっています。これはPRSがレスポール・スペシャルのコピーからスタートして、現在のボディシェイプに落ち着く前の、過渡期のシェイプです。サンタナ氏のシグネイチャーモデルだけがこのボディシェイプを採っているのは、PRSにとってサンタナ氏がそれだけ特別な存在であること、またサンタナ氏とのコラボレーションがPRS黎明期から続いていることを象徴しています。なお、全く使わないのにアームが刺さっている件は、ギター界の謎の一つです。
トラスロッドカバーに梵字(ぼんじ)のようなものが記されているのもポイントです。これは、大日如来が悟りの境地に至った時にとなえた言葉に由来する「ボロン」という梵字をモチーフにしています。演奏中のサンタナ氏は、この梵字を通して大日如来から力を得ているわけです。
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Santana – The Game Of Love ft. Michelle Branch (Official Video)
1947年生まれと1983年生まれによるセッション。この二人の「36歳」という年齢差はすごいのですが、ここは偉大すぎるギタリストと互角に演奏したミッシェル・ブランチ女史を賞賛すべきでしょう。その甲斐もあって、2002年グラミー賞「ボーカルとのベストポップコラボレーション」を受賞しました。
アンプ/エフェクターについてはかなり個性的です。足元はスッキリしていて、
という構成です。ピート・コーニッシュ「LD-1」はギターから送られてくる電気信号をイイ具合に整える「バッファー」の草分け的存在で、音が太くなる効果もあります。ワウペダルについてはその時その時でいろんなメーカーのものを使っているようです。
もっとも特徴的なのは「アンプスプリッター(分配機)」です。ギターの信号を3つに分け、用途に応じて5台のアンプを使い分けているのです。最大で同時に3台のアンプを鳴らす、このシステムが現在のサンタナ・サウンドの要になっています(システムにはディレイも組み込まれていますが、これは舞台の袖でスタッフが操作します)。
サンタナ氏が1972年以来愛用しているメサ・ブギーは、キャビネットがヘビの革で覆われていることから「キング・スネーク」と呼ばれています。そもそも「ブギー」の名前は、その昔サンタナ氏がとある試作アンプを鳴らした感想に「Boogiest!」という言葉が含まれていたことに由来します。「マークI」と言われることもあるアンプですが、このキング・スネークは「マークI」の呼び名ができる前の個体で、本体にモデル名の表示はありません。
このキング・スネークは開発者自身の分析を受け、メサ/ブギー初のシグネイチャーアンプ「キング・スネーク」として限定販売されています。
Dumble Over Drive Reverb & Bludotone Guitar Amp
「ダンブル」は、アレキサンダー・ダンブル氏が手作りする高級ブランドで、サンタナ氏が使用するダンブルは、オーバードライヴとリヴァーブを内蔵しています。いっぽう「ブルードトーン」はコロラド州の個人ビルダーが受注生産するアンプで、顧客の好みに応じてカスタマイズされます。
いずれも普通のギタリストなら1台手に入れるのでさえ大変な高級アンプですが、それを4台も並べ、しかも贅沢なことに使ったり使わなかったりするというのですから、機材面でサンタナ氏のトーンに追い付くのは並大抵のことではありません。
1969年リリース
哀愁のギタリスト、カルロス・サンタナ率いるサンタナの記念すべきデビュー・アルバム。ワイルドなラテン・パーカッションを全面に取り入れたサウンドは、当時一大センセーションを巻き起こし、サンタナの名前はアッという間にシーンに知れ渡った。アルバムの最高位は2位を記録。70年度のアルバム年間チャートでも6位、200万枚を超えるベストセラーとなった作品。
1970年リリース
第二作目となる本作は、「ブラック・マジック・ウーマン」、「僕のリズムを聞いとくれ」、「君に捧げるサンバ」と言ったヒット曲に加えて、叙事詩の様な「ネシャブールの出来事」などカラフルな魅力満載の大名盤である。マイルス・デイビスの「ビッチェズ・ブリュー」と同じイラストレータによるジャケットが印象的なアルバムです。プロデューサーもマイルスと同じテオ・マセロです。
1971年リリース作品
リリース当時は「SANTANA」のタイトルでしたが、1stとの区別のため便宜上「SANTANA III」と呼ばれています。のちにロックバンド「ジャーニー」で1980年代を席巻したニール・ショーン氏が、若干17歳にしてこのアルバムでデビューしました。三十路の時点で充分に円熟しているサンタナ氏と、元気いっぱいの天才少年とのツインギターを楽しめます。本作でチャート1位を獲得して以来、1999年の「Supernatural」まで28年間というものチャート1位はありませんでしたが、この記録は「チャート1位の最長ギャップ」として2005年のギネスブックに記載されました。
1999年リリース
低迷していたサンタナ。長い長いトンネルを抜け出すことに成功したのには理由があります。外部の優れたミュージシャンとのコラボレートを実践、特にロブトーマスの参加は大きく、影で復活を仕切ったのはクライブデイビス(A&M)。予算をかなりかけまくってはずさない豪華なアルバムを製作、これが見事にはまりSupernaturalはグラミー賞を獲得します。
Santana – Smooth ft. Rob Thomas (Official Video)
若手シンガーソングライター、ロブ・トーマス氏を迎えた情熱的なラテンナンバー。ビルボードでは12週にわたって1位を維持しました。若く才能あるミュージシャンとのコラボレーションは録音や撮影ばかりでなく、ライブ活動にも積極的です。
2007年リリース
サンタナ氏は23枚ものベストアルバムをリリースしていて、本作はその22作目。こちらはデビューアルバムからの名演に加え、「スムース(w.ロブ・トーマス)」や「ゲーム・オブ・ラブ(w.ミッシェル・ブランチ)」といったコラボレーション作品も多数収録されています。ジャズ/フュージョン界で頑張った70年代、コラボレーションで新しい未来をつかんだ「Supernatural」以降を中心とする選曲なので、サンタナの軌跡がだいたいわかり、歌モノもありで、聞きやすい作品です。
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