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「チキンピッキング」は、
この二つを併用するピッキングのことで、「ハイブリッド・ピッキング」とも言われます。ピックと指で別の弦を弾くことができるため、音程変化の大きなフレーズを演奏するのに大変有効なテクニックです。
「チキン(=にわとり)」の名がつけられたのは、
など諸説ありますが、弦移動の多いピッキングを怖がるチキン野郎(=臆病者)が使うピッキング、というわけではないようです。ここでは、そのチキンピッキングを体験してみましょう。
How to Play Chicken Pickin’ Style Licks | Country Guitar
6度音程を使用したチキンピッキングの定番フレーズや、指を2本使用したリズミカルなフレーズなど、これぞカントリーミュージック!というフレーズが堪能できる解説動画です。本場カントリーのチキンピッキングは(1)ブリッジミュートを軽くかけること(2)指でのピッキングは「パチン」とやること、この二つが重要です。
例えばこのように1弦と3弦を交互に、しかも高速で弾くような場合、ピック1枚を使った通常のピッキングで対処するなら「オルタネイトピッキング」で頑張ることになります。しかしこれは、弾く前からかなり難しいことが理解できるでしょう。
ところがチキンピッキングで演奏すると、どうでしょうか3弦をピックで、1弦を中指で、というように右手が分業します。一旦ピックを置いて、親指と中指で弾いてみてもいいでしょう。これはかなりラクに、それも間違えずに演奏できそうだ、ということが弾く前から分かることでしょう。チキンピッキングを利用すれば、このような弦移動の多いフレーズにトライしやすくなるわけです。
チキンピッキングは、カントリーミュージックから発生した奏法です。そのためカントリーギタリスト必携のテクニックですが、このジャンルから派生するロックンロール、ブルーグラス、ブルースなどでも、チキンピッキングで弾くフレーズや、チキンピッキングを使用すると弾きやすいフレーズが多く存在しています。
ロック系のフレーズで、チキンピッキングを体験してみましょう。
マイナーペンタトニックスケールを応用したフレーズですが、このようなプレイはエリック・クラプトン氏の若き日の名演「CROSSROADS」でも多く使用されています。「ホチキスの針のような記号(П)」がダウンピッキング、「Vの字」がアップピッキングを意味していますが、通常のオルタネイトピッキングを使って一瞬で弾き切ろうと思ったら、かなりの練習を必要とする難しいフレーズです。ところが、アップピッキングの代わりに中指でのピッキングを使用すると、比較的カンタンに弾き切ることができます。
ド#とラ、レとシのような「6度」を利用した上昇フレーズで、3弦をピックで、1弦を指で演奏します。このような1弦と3弦を利用するアイディアは、ブルース、ロック、ソウル、ファンクなど幅広いジャンルで使用され、今は亡きHIDE氏の代表曲「Rocket Dive」の間奏でも使用されているなど、現代の音楽でも頻繁に使用されています。このフレーズはスライドの間に体勢を整えることができますから、ある程度テンポにゆとりがあればオルタネイトピッキングでも弾き切ることができるでしょう。
チキンピッキングは今やカントリー系の枠を超え、隣やそのまた隣の弦に一瞬でアクセスできる便利なピッキングとして幅広いジャンルで使用されています。特にテクニカルなプレイでの便利さは格別で、現代のテクニカル系ギタリストには無くてはならないテクニックだと言われています。
ネオクラシカル系御用達、バッハそのまんまのバロックフレーズで、1弦12フレットの「E」を固定しながら、動いていく音と交互に演奏するメロディです。このようなフレーズを弾くにはタッピングも多く使われますが、チキンピッキングは「フルピッキング」なので、サウンドが力強くなります。
こちらは、Aマイナーペンタトニックスケールを使用したメカニカル(機械的)フレーズです。このような速さと正確さと勢いで勝負するようなフレーズは、プレイヤーがいかにリラックスしているかで決まります。チキンピッキングは弦移動での精神的ストレスが少なく、このようなフレーズでも練習次第でとんでもない速さに持っていくことができます。
Impellitteri – Venom (Official / New / Studio Album / 2015)
ヘヴィメタルバンド「インペリテリ」を率いるクリス・インペリテリ氏は、速弾きを得意とするプレイヤーの中でも特に卓越したピッキングテクニックで知られており、一説には「スゥイープ奏法のフレーズをオルタネイトピッキングでプレイできる」とまで言われています。早くから積極的にチキンピッキングを取り入れていたことでも知られていますが、プレイが速すぎてどこで指を使っているのか、なかなか分かりません。
以上、チキンピッキングを紹介しました。弦移動の自由度が増すことで、さまざまな新しいフレーズを生み出すことができるようになります。フレーズとしてはピック一枚で弾き切るのも不可能でないものが多く、また楽譜にいちいち「チキンピッキングで演奏する」などと書かれないことがふつうです。楽譜上でオルタネイトピッキングで弾くと思いこんでいたフレーズも、実はチキンピッキングを使うフレーズだった、なんてことがあるかもしれませんね。
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