プログラマブル・スイッチャーとは?

[記事公開日]2015/4/23 [最終更新日]2024/6/23
[編集者]神崎聡

boss-es8 2015年に登場したBOSSのプログラマブル・スイッチャー「ES-8」

「プログラマブル・スイッチャー(エフェクト・スイッチング・システム)」はアンプチャンネルの切り替えや、各ループのON/OFFを任意に設定(プログラム)できる機材のことで、コンパクトエフェクターをマルチエフェクターのように使用することができます。

エフェクターの切り替えはもちろん、外部の機材のパラメーターを操作できるMIDI機能や、チューナー専用の端子であるチューナーアウト、複数のペダルに電源を供給するDCアウトなど、製品によって様々な機能を搭載しています。

プログラマブル・スイッチャーを導入するメリット

プログラマブル・スイッチャーを導入する最大のメリットは、複雑な回路の切り替えを「スイッチ一発で可能にする」ことです。

例えば、ある楽曲のAメロで「アンプのクリーンチャンネル(1ch)とディレイペダル」を、サビで「アンプのオーバードライブチャンネル(2ch)とリバーブペダル」を使用するとしましょう。この場合、Aメロからサビに変わる合間にアンプのチャンネルを切り替え、ディレイペダルをOFFにし、リバーブペダルをONにすることになりますが、このような複雑な切り替えを瞬時に行うのは骨が折れます。

このような場合、プログラマブル・スイッチャーを使用すると便利です。上記にあるAメロとサビのセッティングをそれぞれスイッチャーのバンクに登録することで、本体のフットスイッチ1発でアンプのチャンネルとペダルのON/OFFが瞬時に切り替わります。たくさんのコンパクトエフェクターを使うギタリストには欠かせないアイテムと言えるでしょう。

プログラマブル・スイッチャーの使い方

ここではプログラマブル・スイッチャーの様々な使い方を掘り下げて紹介します。

シンプルなループスイッチャーとして使用する

基本的なプログラマブル・スイッチャーの使い方になります。

MIDI対応機材を制御する

アンプのチャンネルを切り替える、エフェクターのパラメーターをリアルタイムで操作する、内蔵プリセットを切り替えるといったことが可能です。操作したい機材がMIDIに対応していなければならないので、使用の際は事前に確認しておきましょう。

独立ループを使用してアンプのFXループ内にあるペダルを切り替える

独立ループを搭載したプログラマブル・スイッチャーに限ります。製品によっては通常のループの他に、インプットとアウトプット、そしてセンドリターンを単体で持つ独立ループが搭載されています。

そのループを使用することで、アンプのFXループ内のペダルを一括でON/OFFするといったことが可能になります。また、独立ループはアンプチャンネルを切り替えるラッチ式スイッチとしても使用することができます。

複数台でリンクさせて使用する

同機種あるいはリンク機能に対応したプログラマブル・スイッチャー同士を専用のケーブルで接続することで、より多くのループ数やプリセット数を使用することが可能です。

定番のプログラマブル・スイッチャー

Free the Tone ARC-3 Audio Routing Controller

Free the Tone ARC-3

2012年末に登場し、瞬く間にプロミュージシャン達のシステムに導入された話題の製品がFree the Toneの「ARC-3」です。本機最大の特徴は、内部のインピーダンスを一定に保つことができるHTS (Holistic Tonal Solution)サーキットを内蔵していることです。これにより、ペダルの組み合わせによる音像の変化や、スイッチングノイズの発生を防ぐことができます。

ループに関しては、独立して使用することができる4ループ、3ループ、そして1ループ、合計8つのループを搭載しています。保存できるプリセット数は64バンク×10プログラム、合計640個になります。プログラマブル・スイッチャーの現行モデルとしては、最高峰に位置する製品です。完全プロユースの機材であるものの、アマチュアでも導入している人は少なくありません。ARC-3を小型化した「ARC-53M」も登場し、こちらも多くの支持を集めています。
楽器業界のイノベーター:代表の林幸宏氏が語るFREE THE TONEエフェクターの世界

Free The Tone ARC-3 – Supernice!エフェクター
Free The Tone ARC-53M – Supernice!エフェクター

One Control Crocodile Tail Loop

One Control Crocodile Tail Loop

上記の「ARC-3」同様、発売以降多くのプロミュージシャンが導入している話題の製品がOne Control の「Crocodile Tail Loop」です。本機は7つの直列ループと3つの独立ループ、合計10つのループを搭載しています。10種類のバンクに7つのプログラム、合計70個のプリセットを使用することができます。

特徴として、音痩せ対策として内蔵されているインプットバッファーに、あのBJFのバッファー回路を採用していることが挙げられます。音質の劣化を殆ど感じさせない、楽器本来のサウンドを鳴らすことできます。

One Control Crocodile Tail Loop OC10 – Supernice!エフェクター

BOSS ES-8

BOSS ES-8

BOSS初のプログラマブル・スイッチャーとして2015年5月に登場したのがこの「ES-8」。音質を犠牲にしないアナログ回路設計で、8つのループを持ち保存できるプリセット数は800、MIDI端子の装備、自由度の高いルーティング機能を持つなど、ツアー・ミュージシャンもバッチリサポートしてくれるプロ品質のモデルとなっています。プロスペックの性能を持ちながらも、このクラスの製品としてはBOSSらしく比較的リーズナブルなのも特徴です。

BOSS ES-8 – Supernice!エフェクター


Providence PEC-2

Providence PEC-2

国産プログラマブル・スイッチャーとして広く知られ、たくさんのギタリストが使用する製品です。12バンク×7プログラム、合計84個のパッチを保存することができます。また、5つの直列ループと3つの独立ループ、合計8つのループを搭載しています。

他にもMIDI機能やチューナーアウト、ミュート機能、インプットバッファーの切り替えなど、プログラマブル・スイッチャーに求められる機能を網羅している定番モデルです。
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CAJ LOOP & LINK II

CAJ LOOP & LINK II

高品位なオーディオ機器を扱う国内ブランド、Custom Audio JapanからCAJ LOOP & LINK IIというプログラマブル・スイッチャーが販売されています。直列ループを4つ、独立ループを1つ、合計5つのループを搭載しています。

本機は5ループ6プログラムとシンプルな製品ですが、名称にもあるように、同機種とリンクさせて使用することを考えて開発されています。CAJ LOOP & LINK IIをもう一台用意することで、10ループ11プログラムのスイッチャーとして使用することが可能です。販売価格も比較的リーズナブルなので、初めてのプログラマブル・スイッチャーに最適と言えます。
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Noah’sark PTBS

Noah’sark PTBS

イケベ楽器のプライベートブランドであるNoah’sarkですが、PTBSというコストパフォーマンスに優れたプログラマブル・スイッチャーを販売しています。2つの直列ループと3つの直列ループを組み合わせ、合計5つのループを使用することができます。

本機の特徴として、各ループ個別にバッファーを設定できるという点が挙げられます。内蔵バッファーを通したいエフェクター、通したくないエフェクター、それぞれ細かく設定することが可能です。5バンク×5プログラム、合計25個のプリセットを使用することができます。
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JOYO Wave-x PXL-8

JOYO Wave-x PXL-8

低価格エフェクターで話題のJOYOから、Wave-x PXL-8という激安プログラマブル・スイッチャーが販売されています。プログラマブル・スイッチャーの基本的な機能を抑え、低価格化を実現したモデルになります。

本機は計8つのループを搭載し、8バンク×4プログラム、合計32個のプリセットを保存することができます。また、トゥルーバイパス仕様となっているため、音質の劣化が気になりません。プログラマブル・スイッチャーにしては奥行きが無いため、ボード内に収まりやすいのもポイントです。
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オススメのプログラマブル・スイッチャー

プログラマブル・スイッチャーの入門機にも適した「BOSS ES-5」

BOSS ES-5

2016年3月に登場、上述の「ES-8」をコンパクト化したのが「ES-5」です。5つまでのループ機能を搭載、パッチ数は200、エフェクターの並列接続/接続順の変更が可能、エフェクター切替時にディレイの残響音を残すことができる「キャリーオーバー」機能など、高度なルーティング機能を搭載しています。ES-8と同様アナログ回路で設計されており、最新のエフェクターからビンテージ・ペダルまで組み合わせの使用にも難なく対応できます。

機能的に見ればES-8はプロ仕様、ES-5はそれに比べて機能縮小されていますが、ES-5でもパッチ数は200と十分な機能を持っていることがわかります。エフェクトの切替も最小限だという人にとってみればES-5がベストな選択となるかもしれません。

BOSS ES-5 – Supernice!エフェクター

プログラマブル・スイッチャーとマルチエフェクターが合体した「BOSS MS-3」

BOSS MS-3

2017年6月に登場した「MS-3」は、BOSSが「ES-8」「ES-5」で培ったプログラマブル・スイッチャーの機能に、ディレイ/リバーブ/モジュレーション/ピッチ/オーバードライブ/ディストーションをはじめ、チューナー/EQ/ノイズサプレッサーといったエフェクターが合計112種類も搭載、マルチエフェクターとしての機能が合体した画期的な統合型ペダルボード・ソリューション。
ループ数は3つと「ES-5」に比べてさらに機能縮小されていますが、パッチ数200、MIDIを含む豊富な接続端子を搭載し、内蔵エフェクトを6個まで同時使用が可能、リーズナブルであり何より本体がコンパクトなため、荷物を少なくしシンプルな足回りで演奏したいギタリストには最適な機材と言えるでしょう。

BOSS MS-3 – Supernice!エフェクター

Free the Tone ARC-53M One Control Crocodile Tail Loop Providence PEC-2 BOSS ES-8 BOSS ES-5 BOSS MS-3
ループ数 8 10 5+3 8+1 5 3
パッチ数 640 70 84 800 200 200
使用可能なエフェクター 8個 10個 8個 8個 5個 3個
(112種類のエフェクト内蔵)
価格
税抜
64,800 61,000 57,000 62,000 41,470 41,500

表:プログラマブル・スイッチャー6機種比較(価格は2018年2月時点)

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