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「トレモロスプリング」はトレモロユニットに使用される、ユニットの位置を安定させるためのバネです。グレッチに搭載されるビグスビーやジャズマスターのフローティングトレモロ、スタインバーガーのトランストレムなど、バネを使用するトレモロユニットは多くありますが、ここでは最も普及している「シンクロナイズドトレモロユニット」及び「フロイドローズタイプのトレモロユニット」で使われるトレモロスプリングについて、いくつか豆知識を紹介します。
「トレモロスプリング」は、バネの張力によってトレモロユニットを引っぱるのが第一の役割です。トレモロユニットがボディから浮いている「フローティング・セッティング」では、弦と張力を一致させる事でブリッジの位置を安定させ、またトレモロユニットがボディに接している「ノンフローティング・セッティング(=ベタ付け)」では弦の張力以上の張力でブリッジをボディに押し付け、チョーキングやアーミングで動いたトレモロユニットを元の位置に戻します。
また、トレモロスプリングはブリッジに固定されているイナーシャブロックから伸ばされるので、弦の振動を受けて一緒に振動します。この振動がまた弦に帰っていき、独特のスプリングリバーブ効果を生じさせるのですが、これが第二の役割となります。全弦ミュートした状態で一発ストロークをした時に「キーン」と残る音がスプリングによるリバーブです。ストラトキャスターとテレキャスターの音の違いは良く語られる議題ですが、このリバーブ効果があるかないかもその違いを決定づける重要な要素になっています。
スプリングの音自体もピックアップは拾います。エドワード・ヴァン・ヘイレン氏の特殊奏法の一つに、トレモロスプリングを引っ掻いて「カリカリ」とか「ギー!」という音を出すものがあります。
ストラトキャスターの名手として有名なエリック・クラプトン氏はトレモロユニットを全く使おうとしないことでも知られていますが、どうせ使わないのならと、フェンダーのスタッフがトレモロユニットの無い(=ハードテイル)ストラトを進呈した事があったそうです。しかしクラプトン氏は「音が違う」という理由で突っ返しました。アームを使う使わないに関わらず、トレモロスプリングが存在していることはサウンド面に意味があるということがわかります。
ハードロックとフロイドローズの全盛期だった1980年代には、このリバーブ効果と過激なディストーションサウンドとのマッチングを嫌うプレイヤーが多く、スプリングキャビティ内やスプリング自体にスポンジを仕込んでミュートするのが流行しました。現在でも、共振防止用のミュートがALLPARTS JAPANからリリースされています。
フロイドローズ搭載のエレキギターについて
トレモロスプリングには、「ブリッジを安定させる」という第一の役割に目的を絞った比較的安価なものと、「リバーブ効果」という第二の役割の延長にあるサウンド効果までを狙ったグレードの高いものの二種類があります。多くのモデルがフェンダーと互換性のあるスプリングを生産していますが、アイバニーズなどでは長いスプリングを必要とするギターもありますので、追加や交換には長さの確認が必要になります。
Fender Japan:「288」という品番で、ストラト用の純正スプリングが3本セットでリリースされています。
SCUD:有名なパーツメーカーの普通のスプリングで、ノーマルな張力の「トレモロスプリング GE-SP-H」と、張力をアップさせた「トレモロパワースプリング GE-PSP-H」がリリースされています。
GOTOH:ペグとブリッジで有名なメーカーですが、トレモロユニット用にノーマルのスプリング「SP」と、復元力を強化させた「PSP」がリリースされています。
おすすめのスプリング「Raw Vintage」は、ヴィンテージギター向けの交換用ピックアップやブリッジサドルなどを生産しているブランドです。ここからリリースされている交換用トレモロスプリング「RVTS-1」は、ヴィンテージギターのトレモロスプリングの張力を再現することで、ヴィンテージギターのサウンドフィーリングを再現させています。
交換するだけで生音が大きくなり、サウンドが太くなります。現代のスプリングと比べて張力が下げられていますが、それでも復元力をしっかり確保し、ブリッジを安定させます。
スプリングのサウンド効果を際立たせるには4〜5本はスプリングをかける必要があると言われていますが、そこまでかけると張力が強くなりすぎてアーミングがしにくかったりフローティング・セッティングができなかったりといった不具合がありました。ここに注目し、4〜5本の使用を前提とした、しなやかなスプリングが開発されました。
鉄線の太さとスプリングの外径に違いのあるタイプ1とタイプ2の二つがリリースされており、
それぞれにサウンド面で特徴があります。
5本使用してもアーミングが重すぎるということがなく、フローティングでもノンフローティングでも使用する事ができます。
トレモロスプリングを交換したり付け方を変更したりするだけでトレモロのフィーリングやギター本体のサウンドを変化させることができます。楽器の加工やハンダ付けなどを必要としないために手軽に行なう事ができ、また気に入らなければすぐに復旧できる改造ですので、楽器のカスタマイズに興味のある方には是非トライしてほしいところです。こうしたパーツの扱いで楽器の個性を変える事ができるのが、エレキギターの面白い所です。
スプリングを外す時には、必ず弦を緩めるか外すかして下さい。弦の張力をなくす事でスプリングが縮んで交換しやすくなります。取り付けでは、まずスプリングの輪になっている所をスプリングハンガーに引っかけ、L字になっているところをイナーシャブロックの穴に入れます。この時スプリングを引っ張る必要がありますので、素手ではなかなか困難です。ラジオペンチでつまむか、専用の「トレモロスプリングインストーラー 」、もしくはそれに類する工具を使って引っ張るようにしましょう。
スプリングは縮みきった状態では本来の性能を発揮する事ができず、ある程度引っ張った状態を維持しておく必要があります。ですからアームアップを限界まで行なってスプリングが最も縮んでいる状態でも、張力がかかるようになっています。逆にこの時張力がかからないとアームアップでスプリングが外れてしまうことにもなり得ます。
スプリングのかけ方にこだわるプレイヤーは多くいます。故ジミ・ヘンドリックス氏が自身のストラトにスプリングを5本かけていたのは有名な話です。エドワード・ヴァン・ヘイレン氏は3本ですが、両サイドのスプリングはネック側が中心に向けて一つ隣にかけられており、末広がりになっています(下図②参照)。アーミングを多用するジェフ・ベック氏は2本がけです。その他、真ん中を開けた4本、3本だけど片側だけ斜めなど、いろいろなバリエーションがあります。
スクワイヤーのストラトキャスターの純正スプリングは3本、博士はあまりトレモロを使うスタイルではないのでチューニングの安定とサウンドの変化を期待して、トレモロスプリングを5本に増やしました。スプリングは定評のある Raw Vintage をチョイス。
ドライバーで裏蓋を開けてスプリングを交換するだけでOKです。
Raw Vintage のトレモロスプリングを…
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