大原櫻子、Superfly、JUJU、西野カナなど数々のアーティストのサポートを務めるギタリスト「草刈浩司」インタビュー

[記事公開日]2016/2/28 [最終更新日]2017/11/23
[編集者]神崎聡

草刈浩司

大原櫻子、Superfly、JUJU、西野カナなど、数々のアーティストのサポートをされているギタリスト「草刈浩司」さんにインタビューをさせて頂きました。


みんなだまして「デビューが決まったから東京行く!」って(笑)

──草刈さんと言えば、色々なアーティストの方のバンドで演奏されてますが、そのキャリアはどうやってスタートされたんですか?

草刈浩司さん(以下、敬称略) ギターを始めたのは中学生の時ですね。当時はすごいバンドブームで、THE BLUE HEARTS とか UNICORN とか BOØWY が大流行で。なのでそのコピーバンドをしたり、オリジナルのバンドをやったり。 大分出身なんですけど、高校を出てからは大分から博多に移ってサラリーマンをやりながらバンドをやってました。普通のアマチュアバンドです。

ただ 25 歳の時に「東京に行く!」って急に決めちゃって。それで、東京に行くには理由がいるから、「ギターでプロになることが決まった」って回りには大嘘をついちゃったんですよ(笑)。ギターはアマチュアレベルだったんですけど、親とか友達とか、みんなだまして「デビューが決まったから東京行く!」って(笑)。

──すごいですね(笑)。

草刈 はい(笑)。それで 25 歳で上京したその日に、友達が歓迎会を開いてくれたんですけど、そこで出会った友人の知り合いの業界の方が酔った勢いで「君、ギター持ってるんだったら次のテレビ出ろ」って言われて。でもその頃はギターをちゃんと弾く自信がなかったから断ろうとしたんですけど「それでもいいから出ろ」と(笑)。すごくラッキーなことに、上京したその日に仕事をもらえたんですよね。その1週間後には、さっそく収録とかして、何週間後には本当に全国ネットのテレビに出ちゃって。

それがご縁で、その当時ブレークしてた aiko さんが、テレビとか PV に出るギタリストを探してるからって声をかけてもらって、上京して一瞬で大舞台に、、、自分でも訳が分からなかったんですよ。地元では「あいつ aiko の後ろでギター弾いてるぞ」「言ってた事ホントだったんだ」って騒がれてたみたいです(笑)。

それから色々なギターを弾く仕事をもらえるようになってきたんですけど、上手いわけじゃないし、譜面も読めなければコードもよく分からない。だから「誰かの弟子にならないと!」と思って、10代の頃から大ファンだった、FOE のアイゴン(會田茂一)さんのライブを見に行って、ライブが終わって出て来た時に直接お願いしたんです。

そしたらアイゴンさんには「特にローディーとか弟子はとってないし、自分でやっているからいいよ」って 優しく断られちゃって。それでもめげずに10回くらい繰り返して(笑)。そしたらいい加減アイゴンさんも折れてくれて「一回だけリハーサルから打ち上げまで来ていいよ」って言ってくれたんです。それでお言葉に甘えて行かしてもらったんです。

ただ、次の回からはまた呼ばれなかったんですが、大体リハの時間とか分かるから、会場の前に張ってて、 当たり前みたいに「おはようございます」って。「君また来たの?」って驚いてましたね(笑)。それを何回か繰り返してたら、アイゴンさんの事務所の人とかマネージャーさんがだんだん優しくなってきて、「次のライブの入りは○○時だから」とか連絡くれるようになって。それからアイゴンさんの運転手とか荷物運びを5年くらいやらせてもらえる事になったんですよ。

そこでレコーディング風景とかライブとか色々見せてもらってたり、色んな方を紹介してもらえるようになったんですよ。それから、しばらくしてアイゴンさんが出れない現場の仕事を振ってもらえるようになりました。

その流れでデビュー前だった Superfly と演奏させてもらう事になって、バンドメンバーとして色んな所を回らせてもらいました。そのバンドを通じて、色々な方に僕のことも知ってもらえる様になりましたね。今までには大原櫻子さん、JUJU さん、西野カナさん、植村花菜さん、とか色んな方のバンドでギターを弾かせてもらってます。

──サポートでギターを弾くという事と、自分のバンドや自分の音楽でギターを弾くという事は違いますか?

草刈 全然違いますね。常に思ってる事は、主役の人に恥をかかせないってことです。主役の人がよりかっこよく見えて欲しいっていうのが一番大きいかな。あくまで主役は自分ではなく、ボーカリストだと。主役の人は才能が溢れる人ですけど、僕は自分には才能がないと思ってるんですよ。その代わりに、僕は主役の人にすぐに影響されて、同じ気持ちになれるというか。だからジャンルとかは全然気にしなくて、誰と演奏してても、主役のために全力で弾こうと思えるんですよ。どんなカラーにも変わることができる、ある意味僕は「カメレオン」みたいな感じかな(笑)。

いい楽器に出会えるかどうか。自分に合ったものと出会えるかどうか

──草刈さんのプレースタイルを確立する上で、一番影響を受けたのは誰ですか?

草刈 世代的にはグランジとかオルタナがはやった時期だったので、Red Hot Chilli Peppers の John Frusciante とか Nirvana の Kurt Cobain とかは好きでしたね。それと、そのルーツでもある Jimi Hendrix とか Eric Clapton とかもよく聞きました。ただ、今のプレイスタイルになるまでにいっぱい影響されたとは思いますけど、特にこだわりはないですね。

──機材はどういった物をお使いなんですか?

草刈 ここ数年は Fender の 74 年製の Telecaster Custom がメインですね。これに出会って変わりました。元々 Telecaster Custom はすごい気になってて、色んなビンテージショップに行って試したんですよ。同じ年代の同じモデルを 10 本近く弾いたら、全部個性が違ってて。そこでたまたま見つけた今使ってるギターが一番良くて。

Telecaster Custom 1974年製 FENDER / TELECASTER CUSTOM

──ちなみに、お使いの Telecaster Custom と言えば黒いのがポピュラーだと思うんですが、サンバーストを選んだのには理由があるんですか?

草刈 特にこだわりはなくて、たまたまサンバーストのギターが一番シックリきたっていうのが大きいですね。ただ Rolling Stones の Keith Richards は黒を使ってるし、Dr.Strange Love の長田進さんも黒だし。長田さんは僕のあこがれの人でもあるんですけど、僕なんかがかぶると申し訳ないな、とは少し思ったかな(笑)。

──他にはどんなギターをお使いなんですか?

草刈 今のメインに出会うまでは、2008 年製の Gibson Custom Shop 製 Les Paul Standard がメインでした。他には 61 年製の SG Junior (Gibson)を持ってますね。特に SG Junior はすごくロックンロールなギターで、シンプルな仕様で大好きなんですよ。ただ、古過ぎてツアーに持って行くのはちょっと気が引けちゃうですよね。周りのローディーさんとかに気を使わせてしまうので。

Gibson Custom Shop 製 Les Paul Standard 2008年製 GIBSON CUSTOM SHOP / LES PAUL STANDARD

──アンプは何をお使いですか?

草刈 アンプは Blues Breaker (Marshall) のハンドワイヤードの物をメインで使ってます。普通の Blues Breaker と音の方向性は一緒ですけど、より輪郭が太いんですよ。それと最近 Fender の Dual Showman を 買ったんですけどすごく気に入ってます。他には Vox も好きだし、Fender の Bassman とか Custom Shop 製の Twin Reverb なんかも最近は気になってますね。アンプは何チャンネルもあるような物よりも、とにかくシンプルが好きです。

kusakari-ampMARSHALL / BLUES BREAKER (1962HW)

fender-dual-showmanFender / Dual Showman

──エフェクターは何をお使いですか?

草刈 色々使ってますけど、よく使ってるのは Lovepedal の Purple Plexi とか Human Gear とか。歪みに関してはそれぞれ、現場に合わせて色んなのを使い分けてますね。ライブなのかレコーディングなのか、とか。会場によっても変えてます。

草刈浩司:エフェクターボード 右から時計回りに:VOX / V846 HWSONOMATIC / TUBO808 DELUXE、ANARCHY AUDIO / GOLD CLASS、CATALINBREAD / NEW DIRTY LITTLE SECRET、
PROVIDENCE / ROUTING BOX (RX-S1)、
ELECTRO-HARMONIX / DELUXE MEMORY MAN
、TC ELECTRONIC / POLYTUNE2、
BOSS / FLANGER (BF-3)、MXR / DC BRICK、IBANEZ / DELAY (DL-10)、XOTIC / RC BOOSTER

今までに本当に色んな楽器を使ってきましたけど、楽器の出会いが全てかもしれない、と最近思いますね。いいギターに出会えれば絶対にギター人生が変わるというか。エフェクターでもそうですが、いい楽器に出会えるかどうか。高ければいいという物でもなくて、自分に合ったものと出会えるかどうか。ただ、その時は最高だと思っても時間がたつと好みもドンドン変わっちゃうので、常にアンテナを立てるようにはしてますね。

常にみんなをリスペクトしながら演奏してます

──ギターを弾いている若い人たちに何かメッセージをお願いできますか?

草刈 上手けりゃいいものでもなければ、知識があればいいものでもなくて。やっぱりハートが一番大事と言うか。人と人だから、とにかく友達を大事にしてください(笑)。
プロってビジネスが絡んで愛が無いイメージがあるかもしれないですけど、全然そんなことないんですよ。自己チューになっちゃうと絶対にダメで、「みんなで一緒にカッコいいことしたい」とか、「このライブを成功させたい」とかをみんなで常に思ってて、常にみんなをリスペクトしながら演奏してます。あくまでチームで作っていて、大きくなればなるほど、有名になればなるほどチームの規模も大きくなっていくんですよ。だからみんなをリスペクトしていかないと。そして自分もリスペクトされる様に努力する。

って、こうなるとギターの話じゃなく、人間としての話になっちゃう。悪いとこってすごく見つけやすいんですけど、そうじゃなくて、いいところをいっぱい見つけれるようになるのがいいのかな。どんな人でも絶対にいいとこがあるから、それを探すのが上手になると、一緒に演奏してても楽しくできると思います。

う~ん、なんだろなぁ~、

ちょっと待ってね・・・

なんか夢がないね(笑)。

よし、ギターに関してで言ってみよう(笑)。

──ありがとうございます(笑)。

草刈 いい音ですね。音が全てだし。自分の中でも「いい音だぁ~」っていうのを見つけれれば、その自信は周りにも伝わるんですよ。反対に、自分で「よくない音だなぁ」ってビクビクしてると、それも音で伝わっちゃう。どんなに上手くても、知識があっても音が悪かったら全然ダメ。だから僕は常に音にはこだわってます。この年でもまだ勉強中で、納得のいく音の出会うために寝ても覚めてもずっと考えてるんですよね。
やっぱり機材は高いからとっかえひっかえていうのは難しいけど、まず自分の手の届く範囲でいいと思います。高い楽器って上手な人が鳴らさないといい音がでないとかいう事が多いから、やっぱり若い人は無理して高いのを使わなくていいと思うんですよね。宝の持ち腐れになっちゃう。だから安いのから徐々にでいいけど、買ったからには1個ずつ個性を知る努力がいると思います。

──今は雑誌やインターネットなどで色んな情報が手に入りますが、草刈さんはどうやって機材を選んでいるんですか?

草刈 あんまり雑誌とかインターネットの情報には流されない方がいいと思いますね。仮に雑誌とかネットで評判が悪くても気にしない方が良くて。自分で探して、自分で楽器屋行って試奏して、よかったら買うべき。答えがない世界だから、自分が感じるままに。何がいいエフェクターとか、何がいいギターとかは自分でしか決めれないと思います。
例えばライブハウスとかにも足を運んで、色んな音を聞いて、いい音を出してるバンドがいたらそれを盗み見して、それを試してみたり。今は情報が溢れ返ってるから何を信じていいか分からなくなることも多いと思うけど、自分で足運んで、自分で試して、それでいい楽器に辿り着つけたらいいですよね。

インターネットに頼っちゃだめですよ!!


ネット媒体からの取材で「インターネットに頼っちゃダメですよ」と締めくくる草刈さん、素敵です(笑)。ありがとうございました!!

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