エレキギターの総合情報サイト
「Greco(グレコ)」は、1960年に楽器総合商社「神田商会」が設立したブランドで、国内生産の高品質なコピーモデルとキャラの立ったオリジナルモデルで一時代を築きました。その精神は現代にも受け継がれており、品質とオリジナリティを兼ね備えた日本製のギターを展開しています。今回は、このグレコのエレキギターをチェックしていきましょう。
名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。
webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。
人間椅子@渋谷公会堂公演ダイジェスト(NINGEN ISU)
ギブソンをメインとするギタリストは、サブにグレコを所有するのが80年代の基本スタイルでした。人間椅子の和嶋慎治氏もその一人で、SGタイプなど何本もグレコを所有しており、ダウンチューニング専用機にするなど積極的に使用しています。
1948年に設立された神田商会は、音楽関係の商社としてBalaguer Guitars、Baum Guitars、D’Angelicoなどのエレキギター、このほかエフェクターやパーツ類などのさまざまなブランドを取扱っています。しかし輸入や販売だけでなく製造にも力を入れており、1973年に楽器メーカー「ダイナ楽器」を立ち上げてグレコのギターを製造するほか、2015年3月までは「フェンダー・ジャパン」ブランドとしてライセンス生産をしていました。
現在では岐阜事業所にて「Zemaitis(ゼマイティス)」を製造しており、伝説的な名機を後世に伝えると同時に新しい価値の創造にも積極的です。
既に生産終了となったグレコのギター:左から EJr-188、SJR-82、EG-265F、WS-43、CEG-230
半世紀以上の歴史で、グレコは時代の人気アーティストの意見を取り入ながら、いくつもの伝説的なギターを生産してきました。特に日本にロックが普及していった1970年代は「1ドル300円近辺」という状況で、海外のギターはなかなか手に入れられませんでした。本家に迫るクオリティを持ち、かつコストパフォーマンスに優れたグレコのコピーモデルは、多くのギタリストを育てました。
現在でも当時の活況を物語るかのように、中古やジャパンヴィンテージとして多数の古いグレコが取引されています。今なお存在感を発揮するグレコの名機を、時代と共にチェックしてみましょう。
1970年には「日本語ロック論争」と称して、ロックを英語で歌うべきか日本語で歌うべきかが真剣に議論されるほど、ロックは身近になっていました。この時開発されたレスポールコピー「EG-360」は「本物が手配できず写真から寸法を割り出した」というもので、中空のアーチトップボディにデタッチャブルネックという仕様でした。
当時国内随一の腕前を誇り「日本のジミー・ペイジ」の異名を持つ成毛滋(なるもしげる。1947-2007)氏が、手の大きさに合わせてネックを細くしたという特別製のEG-360を愛用、またレッド・ツェッペリン来日の際にジミー・ペイジ氏が使用、ギターのおまけで教則テープが付属していたことも話題となり、レスポールタイプの国内シェア一位に君臨しました。
B’zの松本孝弘氏、ザ・クロマニヨンズの真島昌利氏が初めて買ったエレキギターは、グレコのレスポールでした。現在プロミュージシャンとして活躍しているというギタリストの中にも、最初はこのおまけの教則テープで練習したという人は少なくありません。
低価格と釣り合わない品質も手伝い、グレコのレスポールは本家ギブソンの売り上げを脅かすまでに支持されました。そして1980年、ついに本家ギブソンから提訴され生産は縮小、現在では生産終了となっています。
左から:MRn-140、MRn-150、MRn-170G、MRn-180G
伝説的なボーカリスト、ポール・ロジャース氏(現:クィーン)率いるハードロックバンド「バッドカンパニー」来日(’75年)の際、ギタリストミック・ラルフス氏がオーダーしたことから誕生したのが「ミスターモデル」と呼ばれる「MR」です。
ギブソン系の仕様を踏襲しながら、左右対称ボディのダブルカッタウェイ仕様で24フレットまで余裕で手が届く思い切ったデザインが特徴的です。ハイポジションの弾きやすさは尋常ではなく、それゆえ他のギターと比べてネックが長くなったかのような印象になります。
GOシリーズは1977年にデビュー、
を特徴としたオリジナルモデルで、テクニカルなプレイが要求されるロック/フュージョンにフィットしました。最上位機種「GO-III」は「ゴダイゴ」のギタリスト浅野孝巳(あさのたかみ)氏が開発に加わり愛用したことから、この時代のプロミュージシャン御用達のギターになっています。
Mirage 30th Anniversary Black Diamond
1978年にデビューしたミラージュは、「魅力ある日本発のオリジナルギターを作る」というコンセプトにより神田商会(グレコ)、星野楽器(アイバニーズ)、富士弦楽器製造(フジゲン)3社共同で開発された日本発祥の変形ギターです。
フジゲンで製造したギターを、神田商会がGreco「Mirage」として日本国内で、星野楽器がIbanez「Iceman」として海外で、それぞれ販売しました。アイスマンが「キッス」のポール・スタンレー氏に愛用されたことから、ミラージュも国内でヒットしました。
左から:BG-800 Metallic Red、BG-800 Metallic Blue、BG-800 Black、BG-1000、BG-1400
BG-CUSTOM
1979年に「ブギー(boogie)」のモデル名でデビューしたBGは、フェンダー的なスタイルながら弦長628mm(ミディアムスケール)のネックを持ち、両側を覆うピックガード、リバースヘッド、シングルコイル2:1という独特のピックアップレイアウトを持つ、特にロックにフィットすることを目指したオリジナルデザインのギターです。
シングルコイル3基に見えるピックアップ配列ですが、リア側の二つでハムバッカーを構成しているSH配列です。
現在のグレコは、ブランドカラーを前面に打ち出したオリジナルモデルをリリースしています。設計やデザインにこだわりが反映された個性的な楽器群は、楽器として頼もしい「汎用性」とそのギターを選んだ演奏者の個性を引き立てる「キャラクター」の両方がしっかりと存在しています。
また現行モデルは、お値打ちな入門機も含めた全機種が日本製で、品質/耐久性共に安心できます。
GM-CST Noir Ancien
「GM-STD」と「GM-CTM」は、グレコ伝統のミラージュを現代的な仕様にアップデートしたモデルです。マホガニーボディ&ネック、ローズウッド指板、2V2TとHH構成の電気系という基本仕様を共通に、CTMモデルは多層バインディングやゴールドパーツ、美しいトップ材でドレスアップしています。
センター位置で40mm厚というやや薄型のボディはトップ・アーチ形状を採用しており、美観と弾きやすさ、また見かけほど重くない軽量化を両立させています。セットイン・ジョイントのネックは、ナット幅43mm、弦長628mm(ミディアムスケール)、音域22フレットで、弾き手を選ばない標準的なグリップに設定されています。
上から、GM-CST/BW Natural、 GM-CST/FM Osean、 GM-CST Noir Ancien、 GM-STD Black。
基本設計は全機種で共通。
アルニコ5磁石を使用したハムバッカー・ピックアップは、パンチのあるクリーン、小気味好いクランチ、ヘヴィーなドライヴ・サウンドまで、クラシック・ロックのサウンドを幅広くカバーする最適なターン数と直流抵抗値に設定されています。
ペグ、ブリッジ、テールピースは日本が世界に誇るGOTOH社製、3WAYセレクタースイッチとアウトプットジャックは世界標準のスイッチクラフト社製、ヴォリューム&トーンポットには同じく世界標準のCTS社製を使用しており、パーツ類の信頼性も充分です。
ヘッドの付け根にはボリュートが設けられ、タイトな響きに方向付けされている。ボディ背面のコンター加工により、抱えた時のフィット感も充分。弦振動を受け止めるヒール部分はしっかり残している。
左から、BGW22 SH(Aged White、Light Green、Metallic Grey)、BGWT22(Aged White、Light Green、Metallic Grey)。
「BGW」シリーズは、名機「Bg.」を現代仕様にアップデートしたモデルです。アルダー製ボディーにローステッド・メイプル製ネックを4点留めブッシュ・ジョイント、パーフェロー製指板という本体で、ネック仕様はナット幅43mm、弦長628mm(ミディアムスケール)、音域22フレットになっています。バック・カット採用に加え、トップ側に比べてバック側の外周をより丸く整えており、良好な抱え心地です。トップ側の外周は鋭角気味に整えることで、現代的な雰囲気を演出しています。
上:BGW22 SH、下:BGWT22
両機はピックアップとブリッジに違いがある。
「BGW22 SH」はリアにハムバッカー・ピックアップを備えるSH配列で、トーンノブのプッシュ/プルでコイルタップ可能です。「BGWT22」は大小のシングルコイル・ピックアップとTスタイルのブリッジを備えます。いずれもロック式ペグを備えており、チューニングの安定度と弦交換作業の時間短縮にメリットがあります。
ヘッドの付け根にはボリュートが設けられており、タイトな響きが得られる。ジョイントヒール部は滑らかに整えられており、ハイポジションの演奏性も高い。
左から、WS-ADV-G/QT Amber、WS-ADV-G Sunburst、WS-STD(Black / Maple Fingerboard)、WS-STD(Burgundy / Rosewood Fingerboard)、WST-STD(Light Green / Maple Fingerboard)、WST-STD(Pearl Pink / Rosewood Fingerboard)。
2015年に第一号が発表された「WS」シリーズは初心者の上達を支え、また中級以上の要求にも耐えられるラインナップで、
を特徴としています。
特に「ナット幅40mm」という超スリムなネック仕様は他にはなかなかない、このシリーズの大きな特徴です。手が大きくない人への福音になりえるほか、親指を出して握り込むフォームに有利です。またスリムなネックに合わせてボディ形状もスリムにデザインされており、軽量で抱えやすくなっています。
上:GES-AT Tabacco Sunburst、下:GL-AT Brown Sunburst
カッタウェイとピックアップ以外にも個性がある、グレコの熱量を感じさせるモデル。
「GES」および「GL」は、古き良きアメリカンなギターを現代によみがえらせたフルアコです。スリムで小ぶりボディ形状と1基のみ搭載のピックアップにより、渋いアダルトな雰囲気が演出されています。ミディアムスケールとトラピーズ・テールピースの組み合わせで弦の張力がほど良く抑制され、柔らかなタッチで演奏できます。木製ブリッジはイントネーションが調整されており、良好なオクターブ・ピッチが得られます。
以上、グレコのエレキギターについてチェックしていきました。日本のロック黎明期からギタリストを支えてきた歴史を背景に、コピーモデルから脱したアイデンティティのあるギターをリリースしています。ぜひ実際にチェックしてみてください。
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