《自宅演奏、小規模ライブにも!》おすすめの小型アンプヘッド

[記事公開日]2025/3/1 [最終更新日]2025/3/14
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

小型化、それは技術革新の象徴。ギタープロセッサーやDAWのプラグインが支持を集める中、その流れに対抗するかのように小型のアンプヘッドが支持を集めています。小型ながら必要な機能や性能をしっかりとカバーし、場所を取らず持ち運びにも有利です。プロフェッショナルの道具としてライブやレコーディングに使用される例もあり、小型アンプはアマチュアが使うものだという考えも、過去のものになってきました。そんなわけでここでは小型アンプヘッドに注目し、その特徴やラインナップをチェックしていきましょう。

小林健悟

ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

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webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。


  1. 小型アンプヘッドのメリット
  2. 小型アンプヘッドの注意点
  3. おすすめの小型アンプヘッド
  4. 小型アンプヘッドに適したキャビネット

小型アンプヘッドのメリット

場所を取らず、持ち出しがラクチン

小型アンプヘッド最大のメリットがコレです。練習用や録音用として自宅に設置するもよし、ライブ会場に持ち出すもよし、自宅でも出先でも自分のサウンドで演奏できます。適合するキャビネットが会場にあればアンプヘッドだけで搬出が完了し、コンボアンプよりも荷物を軽減できます。エフェクターボードに収まる極小サイズのアンプヘッドもあり、従来では考えられないほどフットワークが軽くなります

バンドで余裕で使える

ドラムやボーカルなど他のパートの音量にもよりますが、30Wの出力があれば一般的なロックバンドで演奏するには充分です。自分の音が聞こえにくい、メンバーの耳に届かない、といった場合でもキャビネットを置く位置の工夫でたいがいどうにかなります。PA環境が整っているライブハウスに出演する場合、あるいはDI OUTやLINE OUTなどPAに出力できる端子を備えるアンプヘッドを使用するなら、もっと低出力のモデルでもバンド演奏できます。

また真空管アンプの場合、マスターボリュームをしっかり上げることでパワーアンプでも歪みを追加させられます。100Wのアンプをフルアップさせるのはなかなかハードルの高いチャレンジなんですが、小型アンプヘッドだとしっかり音量を上げられますから、バンドで真空管アンプのポテンシャルを充分に引き出すことができます(耳を傷めないように、恐る恐る上げてくださいね)。

自宅での練習が快適

真空管の小型アンプヘッドは、自宅での使用を想定してアッテネーターを実装するモデルがほとんどです。定格出力をぐっと抑えることができますから、自宅で気兼ねなく演奏できます。ただし、小音量化させるパワースケーリング回路の仕様にもよりますが、パワーダウンさせた状態の音はアンプの性能を引き出した音には鳴りにくいのが実情です。小音量化させた状態では高域や低域のバランスが変化したり、ダイナミクスやコンプ感が低下したりといった変化が多少なりとも発生します。せっかくの20Wを永久に小音量設定で使用するくらいなら、5Wや1Wのアンプをしっかり駆動させるほうがお勧めです。あるいはリアクティブ・ロードボックスなど音質にこだわったデバイスを追加しましょう。
ソリッドステート、あるいはパワーアンプがソリッドステートのハイブリッドアンプはマスターボリュームの上下が音色にほぼ影響しませんから、アッテネーターは不要です。

ライン録りに対応できる

従来アンプの録音には、「アンプ→キャビネット(スピーカー)→マイク」という段階を踏むのが普通でした。アンプ部だけでは音作りこそ可能ですが、それを外に発信する能力を持たないため、スピーカーを通して外に発信、その上でそれを外部からマイクで集音するという流れが必要だったのです。しかしこれは制約が大きく、アンプを大音量で鳴らすための場所、高価なマイクを適切な場所に設置する技術など、演奏とは別の様々な要素が必要です。

そこで、マイクを使わずに直接シールドケーブルだけでレコーダーに送ることができないか、ライン録りできないか、という発想から生まれたのが「キャビネット・シミュレーター」です。スピーカーとマイクを通さずに、アンプ部で作った音色を、あたかもスピーカーにマイクを向けて集音したような音色にしてしまうための技術で、小型アンプヘッドのほとんどのモデルが実装しています。一般的には「LINE OUT」「D.I. Out」「Emulated Out」などの出力端子を使うことで、無音でのレコーディングが可能です。

小型アンプヘッドの注意点

小さい

利点は、それ自体が弱点にもなりえます。「ギタリストの背後に、でっかいアンプがでーんと座っている」という構図は、今なおロックの様式美です。迫力あるデカいギターアンプの姿は、ロックの強烈なサウンドやデカい音のイメージと、密接に結びついているわけです。小型アンプヘッドでステージに上がるギタリストはデカいアンプの迫力を借りられないので、そんなものに頼らなくてもよいくらいクールな演奏をする必要があります。

フラッグシップモデルと比べると性能が限定的

100Wや50Wのアンプヘッドをダウンサイジングさせた小型アンプの場合、チャンネル数やツマミの数などいろいろな機能が減らされるのが普通です。これはシンプルで使いやすいという利点でもありますが、フラッグシップモデルの充実した操作系が必要な人には、物足りなく感じるかもしれません。

大音量のクリーンが欲しい場合には不向き

真空管アンプはマスターボリュームを上げるとパワーアンプでも歪みが生じ、大迫力のディストーションサウンドが得られます。小型アンプヘッドでは比較的現実的な音量で同様のディストーションが得られるのがメリットではありますが、反対に真空管のセクシーなクリーンを大音量で欲しいギタリストには不向きだと言わざるをえません。真空管の小型アンプヘッドで大音量のクリーンを得るには、PAの助けが必須となります。一方、ソリッドステート・アンプのサウンドはマスターボリュームで変化することがほぼ無いので、クリーンを爆音で鳴らしても大丈夫です。

おすすめの小型アンプヘッド

ではここから、おすすめの小型アンプを見ていきましょう。そのラインナップは設計や仕様で分類しており、

  • オールチューブ:プリアンプもパワーアンプも真空管
  • ハイブリッド:プリアンプが真空管、パワーアンプはソリッドステート
  • ソリッドステート:プリアンプもパワーアンプもソリッドステート
  • フロア型:エフェクトボードに収まる、エフェクター型

以上の順番で紹介しています。

音の良いギターアンプの王道、オールチューブ

プリアンプもパワーアンプも真空管を使っている「オールチューブアンプ」。フルチューブやオールバルブなどとも呼ばれる定番スタイルであり、今なお良い音のお手本です。小型化しても重いものは重い、衝撃に弱い、キャビネットをつないで使わないと故障する、定期的に真空管の交換が必要といった、令和の電気製品としてはなかなか甘受しがたい十字架を背負わされるアンプですが、だがそれがいい。デジタルモデリングではどうしても届かない本物の音が、世話の焼ける真空管アンプなら出すことができるのです。
なお、小型アンプヘッドの分野では、キャビネットをつながなくても故障させない回路を実装するモデルが多くリリースされています。

Marshall DSL1H

Marshall DSL1H

Marshall創業50周年を記念してリリースした1Wアンプ・シリーズのひとつ「DSL-1」のリニューアル・モデル。プリアンプ部の回路が再設計されており、よりJCM2000のサウンドに肉薄しています。真空管にはプリアンプ部に2本のECC83、パワーアンプ部に1本のECC82を搭載しており、1Wの出力ながら迫力のあるサウンドが出力されます。また出力を0.1Wに切り替えることも可能であるため、自宅など大きな音が出せない環境下においてもMarhsallらしいチューブ・アンプ・サウンドを楽しむことができます。

このサイズながら2チャンネル仕様となっており、トラディショナルなMarshallらしいドライブ・サウンドの「Classic Gain」と、モダンなアンプらしい深い歪みの「Ultra Gain」の2種類が用意されています。
またセンド/リターン端子を備えるため本格的なシステム構築ができるほか、EMULATED OUT(LINE OUT)端子を備えるほかAUDIO IN端子を備えるため、音楽をかけながら演奏したりレコーダーに直接つないだりできます。姉妹モデルには、小規模なライブにも対応できる20W仕様の「DSL20H」があります。

Marshall DSL1H – Supernice!ギターアンプ

Marshall Studio Classic SC20H / Studio Vintage SV20H

Studio Vintage SV20H Studio Vintage SV20H

Marshallの定番アンプを20Wの小出力、小型な筐体に落とし込んだモデルです。Studio Classic SC20H は「JCM800」、Studio Vintage SV20H は「1959 Super Lead」をそれぞれベースにしており、小型ながらも真空管やコントロール部の構成はそれらと同一です。
出力は20Wと、ベースとなったアンプと比べると大幅に小さいものの、小規模のライブハウスであれば十分な音量を稼ぐことができます。重量はベースとなったアンプの半分以下に抑えられどちらのモデルも10kgを切るため、持ち運びも現実的。また小型アンプにはお馴染みのパワー・リダクション機能も搭載されており、20Wと5Wの2種類から出力を選択できON/OFF可能なエフェクトループを備えるため、幅広いシチュエーションで使用することができます。なお、DI OUT端子を備えますがスピーカー出力を切る回路はないため、無音でのレコーディングには別途ロードボックスが必要です。

Marshall Studio Classic SC20H
Marshall Studio Vintage SV20H – Supernice!ギターアンプ

Peavey Classic 20MH/ 6505 MH / 6505 MH Japan Edition

Peavey 6505 MH Japan Edition Peavey 6505 MH Japan Edition

Peavey(ピーヴィー)のMH(ミニヘッド)シリーズは、同社の著名アンプを小型化し、プライベートな演奏やレコーディングに便利なあらゆる機能を追加した出力20Wの真空管アンプヘッドです。USB端子からレコーディングできるほか、T.S.I.機能によりパワー管のコンディションを常時モニタリングできます。
「Classic 20MH」は創始者ハートリー・ピーヴィー氏ご自身が最高傑作と自負する「Delta Blues 115 Tweed(生産完了)」をベースに、 ヴィンテージライクなクリーンサウンドから芯のある太いドライブサウンドまでをカバーします。「6505 MH」はエドワード・ヴァン・ヘイレン氏の忘れ形見「6505(旧5150)」を再現しており、カラッと乾いた明るさのあるアメリカンなサウンドが持ち味。「6505MH Japan Edition」は6505 MHのアップグレードモデルで、中音域の押し出しが強化されたファットかつワイルドなキャラクターに明瞭な音像とタイトな引き締まり感も得られる、クラシックともブリティッシュとも言えるサウンドが持ち味です。

Peavey invective MH

Peavey invective MH

PeripheryのギタリストであるMisha Mansoor氏とPEAVEY社の共同開発によるシリーズの2作目として発表された小型アンプ。「Invective.120」のサウンドをコンパクトに凝縮する、というコンセプトのもと製作された本機はInvective. 120に比べ大幅にサイズダウン、重量については半分以下の8kgに収められています。小型アンプとしては珍しくクリーン/リードの2チャンネルを備えており、クリーン・チャンネルにはペダルとの相性が考えられた味付けの少ないピュアなサウンド、リード・チャンネルにはヴァン・ヘイレンの愛用していた「6605」のサウンドを継承するハイゲイン・チャンネルが装備されています。
スピーカーやマイク録りのサウンドをエミュレートしたLINE OUT、センド/リターン、グランド・ループを抑制するボタンなど、モダンな機能を豊富に詰め込んだ利便性の高いアンプです。

Peavey invective MH – Supernice!ギターアンプ

Blackstar HT-1RH MKIII / HT-5RH MKIII/ HT-20RH MKIII

Blackstar HT-1RH
HT-1RH MKIII

Blackstarの小型モデル「HT(High Tension)」シリーズは、好評を博したMkIIからボイシングの改善、IRベースの「CabRig」スピーカーシミュレータの追加などを経て第三世代にアップデート。出力1Wの「HT-1R MK III」、5Wの「HT-5R MK III」、20Wの「HT-20R MK III」という3モデルがあります。
二つのチャンネルはVOICEスイッチで味変が可能、実質4チャンネルのアンプとして使えます。Blackstarお家芸の「ISF」も実装しており、タイトでブライトなアメリカンサウンドからウッディでウェットなブリティッシュサウンドまで無段階調整が可能です。
ヘッドホン端子を兼ねるLINE OUTからライン録りできるほか、USB端子を利用してオーディオインターフェイスとして利用可能。CabRigスピーカーシミュレータにより生々しいサウンドを録音できます。全モデル共通して負荷保護回路が組み込まれており、キャビネットを接続しなくてもぶっ壊れることがありません。

Blackstar HT-1RH MK3
Blackstar HT-5RH MK3
BLACKSTAR HT-20RH MK3 – Supernice!ギターアンプ

EVH 5150III 15W LBX Head

EVH 5150III 15W LBX

EVH「5150III 15W LBX」 は、ロックのリズムワークに最適な重みのあるクランチが得られる青チャンネル(CRUNCH)、顔面が解けてしまいそうな熱いハイゲインの得られる赤チャンネル(Full Burn)を擁する、15Wの真空管アンプヘッドです。プリ管5本という設計はこのサイズのアンプとしては非常に多く、本格的なブラウンサウンドを得るための重要なポイントになっています。
アッテネーターとSEND/RETURNこそあれ、リバーブや録音用の端子を備えていない、シンプルでいかつい設計もポイントです。ライン録りには、別途ロードボックスが必要です。

EVH 5150III 15W LBX – Supernice!ギターアンプ

Laney LIONHEART L5-STUDIO

LIONHEART L5-STUDIO

Laney「LIONHEART L5-STUDIO」は、レコーディングやプライベートな演奏で力を発揮する出力5Wの真空管アンプヘッドです。インプット端子は2系統あり、シングルコイルなど低出力のギターを使用するときはLO、ハムバッカーなど高出力のギターを使用するときにはHIに挿すと、本来の適正なゲインが得られます。CLEANチャンネルは昔ながらのナチュラルなオーバードライブまでを、DRIVEチャンネルはクリーンからハイゲインまでをカバーしており、古き良き音色から現代的なサウンドまで幅広く使えます。
レコーディング用にはDI OUT、PREAMP SEND、USB、PHONESと4系統も端子を備えており、さまざまな手法での録音が可能。スピーカー端子には保護回路が備えられていますから、キャビネットをつながず使用可能です。

Laney Lionheart L5-Studio – Supernice!ギターアンプ

真空管プリ&ソリッドステート・パワーアンプのハイブリッド型アンプヘッド

ハイブリッド型は、プリアンプに真空管、パワーアンプにトランジスタを使用する構成が一般的です。真空管によるつややかなトーンを手に入れることができる上に、パワーアンプ部を小型軽量化できること、またキャビネットをつながなくても故障の心配がないというところが大きなメリットです。

VOX MV50シリーズ

VOX MV50

VOX「MV50」は、技術革新により僅か540グラムという信じられない本体重量を達成した、定格出力50Wのアンプヘッドです。次世代真空管「Nutube」を使うプリアンプとクラスD(ソリッドステート)パワーアンプを組み合わせたハイブリッド方式なので、LINE OUT端子を介してエフェクターのように使っても故障の心配がありません。現在のラインナップは全6モデルで、

  • MV50 AC:VOXの名機「AC30」のクランチを再現
  • MV50 Clean:2バンドEQとアッテネーターを擁するクリーン専用モデル
  • MV50 Rock:Marshallの名機を意識した、しっかり歪むモデル
  • MV50 Boutique:伝説的な高級アンプDumbleをイメージ
  • MV50 High Gain:おそろしく歪むメタル仕様
  • MV50 Brian May:ブライアン・メイ(Queen所属)氏のシグネイチャーモデル

フロントパネルのノブはわずか3つですが、どの設定にしても良好なサウンドが得られるよう細かなチューニングが施されるほか、「Clean」は音量を上げると僅かに歪む、「AC」はGainを下げると鈴の音のようなクリーンになるなど、モデルごとの持ち味がもお受けられています。

背面の特徴的な3点式スライドスイッチについては、「Clean」では3段階のアッテネーター、「High Gain」では中域のブースト/ノーマル/カットで、ほかの4モデルではキャビネットの抵抗値に応じて音色を補正する「インピーダンス・スイッチ」となっています。インピーダンス・スイッチはあくまで音色補正の機能なので、キャビネットの抵抗値と違う設定でも使用可能です。また15分の無音状態で電源が落ちる「オート・パワーオフ」機能のON/OFFが設定できるほか、小型のキャビネットに接続した際の低域不足を解決するため、背面には低域を補正し高域を抑える「EQ」スイッチが搭載されています。

VOX MV50シリーズ – Supernice!ギターアンプ

ORANGE Micro Terror

ORANGE Micro Terror

ORANGE「Micro Terror」は、小型アンプヘッドカテゴリの第一号として大ヒットした同社のTiny Terrorをさらに小型にしたものです。可愛らしい外観とは裏腹に20Wの出力を実現し、自宅用のみならずライブでも音量的に問題ないでしょう。音色は古いブリティッシュ系を彷彿させるルーズでざらついたもの。練習に優位なAUX IN端子を備え、録音にも利用できるPHONE端子を使用するときには自動的にスピーカー出力がカットされます。より大きなモデルやハイゲインに特化した兄弟機もラインナップされています。

ORANGE Micro Terror – Supernice!ギターアンプ

ORANGE Dark Terror

ORANGE Dark Terror

Tiny Terrorをより「凶悪なサウンド」に変貌させたハイゲインアンプがDark Terrorです。プリ管に「12AX7を3本」使用することにより、Tiny Terrorのサウンドキャラクターを維持したまま、極限まで歪むように設計されています。上記Micro Terrorに搭載されていたTONEノブはSHAPEノブに変更、ドライブサウンドで最もこだわるポイントである中域の飛び方を操作します。

また、Tiny Terrorには装備されていなかった、「FXループ」が搭載されているのも本モデルの特徴です。PHONES端子にはキャビネットシミュレータが備えられており、そのままレコーダーに突っ込むことができます。

ORANGE Dark Terror – Supernice!ギターアンプ

壊れにくく扱いやすい、ソリッドステートアンプ

プリアンプ/パワーアンプ共にトランジスタを使用している「ソリッドステートアンプ」には、真空管アンプでは考えられないほどの軽量な本体、定期的な部品交換を要しないメンテナンスフリー性、また音量でサウンドが変化しない高度な安定性、キャビネットをつながなくてもぶっ壊れることの無い安心感など、さまざまなメリットがあります。
LINE OUT端子を持たないモデルでのライン録りは、エフェクトループがあればSEND端子を使用します。SENDからはプリアンプの音がラインレベルで送られますが、キャビネットシミュレータなどの音質補正は基本的にありません。また一般的なアッテネーターやロードボックスは真空管アンプ用であり、ソリッドステートには非対応です。

One Control BJF-S66

One Control BJF-S66

重量1.62kgとマルチ・エフェクター並の軽量さであるにも関わらず、ブラック・フェイス期のフェンダーの「Super Reverb」の持つ最高のサウンドを手に入れられるアンプです。
ソリッドステートのプリアンプは音量に応じでドライブする真空管パワーアンプの挙動も再現しています。パワーアンプはクラスDで電力効率が高く、発熱量が少ないのが持ち味。煩雑なメンテナンスを行う必要もなく、いつでもヴィンテージ・アンプのような素晴らしいサウンドを楽しむことができます。
2チャンネル各個にデジタルリバーブを備えるほか、またレトロな雰囲気を演出するトレモロも装備、センド/リターンも備えています。スピーカーOUTに加えてプリアンプOUT端子もあり、別のパワーアンプにつないだりライン録りしたりできます。「小型、軽量」を謳う同等の出力を持つ他のアンプと比較してもコンパクトさ、運搬のしやすさ、そしてBJFことBjörn Juhl氏の設計によるサウンドのクオリティなど、においてはやはり頭ひとつ抜けています。

One Control BJF-S66 – Supernice!ギターアンプ

Bogner Ecstasy Mini

Bogner Ecstasy Mini

90年代前半にリリースされ、ブティック・アンプ・ブームの先駆けとなったBognerの定番アンプ「Ecstasy Head」のサウンドをコンパクト・アンプに落とし込んだモデル。世界的な大ヒットとなったBogner「ECSTASY Pedal」の回路を基本に、片手で持ち運べるサイズ、重量でありながら4バンドのEQや音圧の調節を行うことのできる「VARIAC」スイッチ、「MIDDLE」ノブのかかる周波数を選択できる「MID FREQ」や大まかなゲイン量を選択する「GAIN」スイッチなど、多彩なコントロールが特徴的です。GAINスイッチはECSTASYのCH-2とCH-3 を切り替える感じの設計で、クランチサウンドからモダンハイゲインまで幅広く対応できます。
なお本機は純然たるギターアンプとして作られており、SEND/RETURN端子こそあれ、リバーブはおろか録音用の出力端子も排したシンプルな設計です。ライン録りにはSEND端子を使用します。

Bogner Ecstasy Mini – Supernice!ギターアンプ

Diezel VH micro

Diezel VH micro

1994年に登場したDiezelの定番ハイゲイン・アンプ「VH4」のチャンネル3(メガ・ディストーション・サウンド)をベースに製作されたミニ・アンプです。メタリカのジェイムズ・ヘットフィールドに使用により人気に火が点き、ドロップ・チューニングを多用するメタル界隈のギタリストに愛用されていたDH4は低域の再生能力に優れていたアンプでしたが、本機においてもそのエッセンスは受け継がれています。駆動系統はチューブからソリッドステート、出力も30Wへと変更されているものの、VH4と比較すると1/10以下の重量は何より魅力的です。
3バンドEQに加えて超高域/超低域をコントロールする「Presence」ノブ、「Deep」ノブが搭載されているほか、背面にはセンド/リターン端子も備えており、サイズ感以上にサウンド・メイクの幅が広い一台です。

Diezel VH micro – Supernice!ギターアンプ

Friedman BE-MINI

BE-MINI

「改造マーシャル系」のアンプで著名なFriedmanのオーセンティックなサウンドを小型の筐体に搭載したミニ・アンプです。大ヒット作となったドライブ・ペダル「BE-OD」のサウンドをベースに設計されており、Friedmanらしい迫力のあるジューシーなドライブ・サウンドが売りです。コントロールは3バンドEQに加え、超高域をコントロールする「PRES」ノブ、低域と高域の大まかな量を調節する「TIGHT」スイッチ、「CUT」スイッチも搭載しており、1チャンネルのシンプルなアンプながらも幅広いセッティングが可能です。
重量も1.8kgと軽量で、Friedmanのサウンドを手軽に持ち運んで使用するにはもってこいの一台です。

Friedman BE-MINI – Supernice!ギターアンプ

Laney IRF-DUAL TOP

Laney IRF-DUAL

Laney「IRF(IRONHEART Foundry)」シリーズは、真空管アンプIRONHEARTシリーズを継承しソリッドステート化することで大幅なダウンサイジングを達成しています。IRF-DUALTOPはチャンネル数2、出力60Wの小型アンプ。それぞれのチャンネルにはボイシングスイッチが備えられ、味変可能です。
チャンネル1ではASYM(非対称波形クリッピング)、SYM(対称波形クリッピング)、CLEANの3つ、チャンネル2ではBRIGHT、FLAT、DARKの3つが選択できます。プリブーストはフットスイッチでON/OFFでき、ライブパフォーマンスに有利です。

Laney IRF-DUAL TOP – Supernice!ギターアンプ

エフェクターボードに組み込む、フロア型アンプヘッド

デジタルに頼らずアナログの分野で、アンプヘッドをいかに小さく収めるか、そんなチャレンジも繰り広げられています。極小サイズのアンプヘッドはそのサイズゆえ操作系はかなり限定的ですが、そのぶん基本性能に妥協はありません。自宅においては場所を取らず、エフェクターボードに収めることも可能。デカいアンプを運ぶ時代は終わりました。ギターとエフェクトボードを持参するだけで、いつでも自分の音でライブができます。

Orange TERROR STAMP

Orange TERROR STAMP

「TINY TERROR」など、早い時期からコンパクトで優れたサウンドのアンプをリリースしていたOrangeからリリースされている、フロア・タイプのアンプ・ヘッドです。このサイズながら同社のMicro Darkをベースとした設計でプリアンプには真空管をつかっており、キラッキラのクリーンからズッムズムのハイゲインまでカバーします。「SHAPE」ノブで中域の飛び方を調整でき、SEND/RETURN端子まで備え、全く妥協のないサウンドメイクが可能。

フット・スイッチは2種類のマスター・ボリュームを切替、ソロ時のブーストなどバンドアンサンブルにも便利です。ライン録りの端子は2系統あり、「SEND」端子からプリアンプそのままの音、ヘッドホン端子を兼ねる「CAB SIM」端子からはキャビネットシミュレータを通過した音が得られます。

Orange TERROR STAMP – Supernice!ギターアンプ

Blackstar Amped 1

Amped 1

Blackstar「Dept.10 AMPED 1」は、最大100Wもの出力を持つフロア型ギターアンプです。増幅回路はソリッドステートですが、特許を取得したRESPONCEノブの操作により本物のパワー管レスポンスとダイナミクスを6種類から選択可能。チャンネル数は1つながら、VOICEスイッチで3種類のキャラクターを選択でき、プリセットを一つ保存/呼び出しできるため実質2チャンネルあり、サウンドバリエーションはかなり確保できます。リバーブはフットスイッチで起動できる「フリーズ」機能を備え、新しいライブパフォーマンスが可能です。
SEND/RETURN端子に加えDC電源出力を2系統備えており、エフェクターボードのプラットフォームとしても活用できます。ライン録りにはDI OUTとUSB端子が使用でき、CabRig テクノロジーによって極めて生々しいサウンドがレコーディングできます。

Blackstar DEPT.10 AMPED 1 – Supernice!ギターアンプ

Laney Loudpedal

Laney Loudpedal

Laney IRONHEART FOUNDRY「LOUDPEDAL」は、チャンネル数2、出力60Wを擁するメタル仕様のアンプヘッドです。SEND(LINE OUT)端子からのアウトプットを利用してドライブペダルとしても利用可能。チャンネル1のミニスイッチはディストーションのキャラクターを切り替えるキャパシター切替スイッチで、CLEAN/RYTHM/LEADの3種が選べます。チャンネル2のミニスイッチはトーン切替で、高域を持ち上げるBRIGHT、低域を持ち上げるDARK、何もしないOFFの3種が選べます。ブースターはBOOSTノブでブースト量を調節でき、鬼のように歪みます。AUX IN端子とPHONE端子も備えており、練習にも良好です。


Laney Loudpedal – Supernice!ギターアンプ

小型アンプヘッドに適したキャビネット

各メーカーから「小型アンプヘッドに適したキャビネット」が販売されています。アンプヘッド同様にキャビネットもコンパクトなモデルが多く、スペースを取らないので、自宅練習用にオススメです。値段も比較的リーズナブルで、小型アンプヘッドとセットで購入するギタリストが多いです。

コンパクトなキャビネットとはいえ、積載しているスピーカーは「Celestion」や「Eminence」の「10インチスピーカー」あるいは「12インチスピーカー」なので、本格的なサウンドを楽しむことができます。

キャビネット一覧 – Supernice!ギターアンプ


以上、小型アンプヘッドをテーマに特徴やおすすめモデルをチェックしていきました。いろいろなアンプの音を出すことのできるデジタル機器が隆盛を極める中でこうしたデバイスが支持を集めるのは、一台のアンプとしてアイデンティティを持った本物の音に、深い深い魅力があるからにほかなりません。自宅に100Wを置くのはかなり非現実的ですが、20Wや15W、5Wや1Wならかなり現実味があります。ぜひ実際にチェックしてみて、本物のアンプの挙動を体験してみてください。

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