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ギタリストなら一度は見かけたことがあるであろう「Live Line(ライブライン)」のケーブルやストラップ。鮮やかなカラーリングや高い品質、そして日本製ならではの細やかなものづくりで、多くのミュージシャンから支持を集めるブランドです。
今回は、そんなLive Lineを手がける株式会社ティ・エム・シィの継野会長・岩田社長・スタッフの皆様に、製品に込められた想いや開発のウラ話など、じっくりとお話を伺いました。スタッフ全員の声がこもった現場のリアルをお伝えし、Live Lineというブランドの魅力に迫ります!
継野康弘(つぎのやすひろ)
株式会社ティ・エム・シィ(TMC)代表取締役/Live Line創業者
滋賀県出身。近江商人の精神を受け継ぎ、「三方よし」の理念を掲げてものづくりを続けてきた。1979年代に国産シールドケーブルブランド「Live Line」を立ち上げる。日本製にこだわり、ケーブル製造を皮切りに、ギターストラップやパッチケーブル、クリーニング用クロスなど数々のアイテムを開発。現在は本革やスエードなど素材にこだわったアクセサリーも多数展開中。
音楽ではジャズを好み、ウェス・モンゴメリーを愛聴。音楽と共に歩むものづくり精神が、Live Lineの原動力となっている。
Live Lineではギターに関連するあらゆる製品を取り扱っていますが、今回は特にギターケーブル、ストラップ、ギタークロスを中心に商品を紹介していただきました。
音楽ライター。女性ギタリストならではの悩みを中心に、音楽で役立つ情報の発信をしています。ニール・ショーンとの共演を目指して日々奮闘中。
webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。
Live Lineは各部材・製造すべて日本製にこだわった国産ギターケーブルです。1本1本専門の職人による手作業でハンダ付けを施しています。
代表的なラインナップは以下の6種類です。
Pure Craft:こだわりのある緑色のシールド、アンティーク加工プラグ
ADVANCE:白ケーブルにカラフルなプラグキャップ
REV:180度に自由自在に曲がるLJ180プラグを使用
Stage-Fit:根本のプラグが抜けにくい「FITプラグ」
Innovation:抜いたときにノイズが入らない「キルスイッチシステム」
Custom Cable:完全オリジナルオーダー、1本からオーダーOK!
REVやLSCJ、LAW、LISのモデルに採用されている
についてはいずれも実用新案を取得しており、Live Lineだけの世界に類を見ないオリジナル技術です。
ケーブル製造の様子
ケーブルは製造から梱包、出荷まで自社でおこなう。
機能性と価格面から幅広いユーザーに支持されているLive Lineのギターケーブル。カラー展開の豊富さとブランドの歴史についてお伺いしました。
──「Stage Seriesはいつから作っているんでしょうか」
継野会長(以下敬称略):1980年代です。当時はパッチケーブル自体が無くて、エフェクターは隣同士でしか接続できない仕様だった。それが不便に感じてました。なぜ隣同士でしかできないんだって(笑)。
横の距離が決まってると、距離がギチギチになります。
そこで、ギターケーブルを作る時に出る「余り物(短いケーブル)」を何かに使えないかという発想から「元祖パッチケーブル」が生まれました。サイズ展開はL字の15cm、30cm、50cmの3種で販売することにしました。
プレイヤー目線としての不便を解消するため、音響関係者のアドバイスや、ハンダ付けの技術なども受けながら、地道に試行錯誤して続けていきました。
──「全部手作業で大変だったのでは?」
継野:最初5000本つくって、つらくてやめようかと思った。信号待ちの時もケーブルを剥いてたくらい。でも、このハンダ付けはどこもやってなかったからこそ、続けるのが大事だと思ったんです。
継野:Live Lineでは、配線処理に予備ハンダというひと手間を加えることで高品質を常にキープしています。ケーブル部分の導線を一度束ねてからハンダ付けをしてカットする。こうすることで、はみ出たヒゲ(電線)からノイズが発生することなく、ケーブル本来の耐久性をあげられます。
(左)予備ハンダ前(右)予備ハンダ後
Stage Series以外のギターケーブルには「永久保証プログラム」という保証があります。もし、万が一ケーブルに不具合が発生した時に、往復の送料負担のみで修理をしてもらえる手厚いサービスです。Live Line製品の品質と技術に対する自信の証でもありますよね。
──「今後、ソルダーレスケーブルは作る予定ありますか?」
継野:わりと昔からソルダーレスケーブルの発想はあったけど、作らないですね。ハンダ付けなしにプラグ接続するのは怖い。作業工程は少なくて楽だけど、リスクの率が上がって怖いです。
──「品質にもバラツキが出るからでしょうか?」
継野:ケーブルの切り方もありますから、ハンダと比べて絶対何かしらのトラブルが発生すると思います。もし、ステージ場でのトラブルが起きた時、僕は作る立場としても他人事にはしたくないので絶対に避けたいです。
創業当初のケーブルのカラーラインナップ。今よりもド派手なカラーで販売していたそう。
──「Live Lineではケーブルをカラー展開していますね。」
継野:最初は、黒のケーブルで販売して、パステルカラー(ピンク・ブルー・イエロー)を展開していきました。40年も前にカラーケーブルを作ったのは画期的なことです。一度はカラーケーブルをやめましたが、黒だけじゃ面白くない、という声があったので再度チャレンジすることになりました。
──「その時もパステルカラーを?」
継野:いえ。まずは白色を作ってみました。白やったら汚れが目立つって声もあったんやけど、他社ではやっていないので、あえて攻めたかったんです。
新しいものに挑戦していきたい、「他にはないものを届けたい」という想いがありました。
──「Studio Seriesのケーブルは深緑の落ち着いた色合いが印象的ですが、深緑にした理由はあるんですか?」
継野:昔、日産の限定車を買ったんだけどそれがまたカッコいい緑だったので、この車のボディカラーに着想を得ました。同じ緑色が出るまで何回も何回も作り直しましたよ。
──「カッコいい車ですね!」
なんと、好きな車への愛が新しいカラー展開に繋がったというエピソード! 会長の遊び心と柔軟な発想が商品に反映されているのが分かりました。
「自分が気に入った色を、使う人にも楽しんでほしい」という想いが、Live Lineらしさでもあります。
Live Lineのストラップは、厳選した素材を使って製作しています。布系のシンプルなカラー・柄物といったストラップ以外にも国産レザーを使ったストラップなど豊富に展開しています。
代表的なラインナップは以下の8種類、お気に入りの1本が必ず見つかるはずです。
──「現在の主力モデルや人気モデルについて教えてください」
TMCスタッフ(以下TMC):現在の主力モデルというのはやはり出ている量から言っても、AC無地ストラップではないでしょうか。
TMC:基本的にはパッケージに入れていないので、そのままのLive Lineストラップを触ってみてもらえます。品質の良さがダイレクトに伝わる感じで、老若男女どの世代にも選ばれています。
──「ストラップは全て社内で作られているんでしょうか」
継野:いえ、作る本数が多いので柄物の貼り付けは別の作業場で縫製して、機種に分けて作業しています。ミシンを使った直線縫いは、ここで作業しています。あと刺繍は、この専用機械を使って自動で縫っています。
──「自動で縫ってくれるんですか!?」
岩田社長(以下敬称略):機械自体は前からあったんですが、ずっと使わずにいたんです。使わないと勿体ないなと思って、日々勉強しながらやってます。刺繍のオーダーもやっているので、データさえ送ってもらえたら好きなデザインを刺繍できます。
──「ストラップのカラーリングは誰が決めているんでしょうか」
継野:社員の意見等も聞きながら、最終的には僕が決めています。黄色やカラフルなものはギター本体に合わないので、今は落ち着いた赤・黒・緑・グレーが定番色ですね。ロゴの印刷も革によって色を変えて作っています。
今回の取材では、実際に私が10代の頃に使っていた同モデルのストラップを持参し、修理をお願いすることにしました。
と、思ってたのですが、なんと!
岩田:高校の時のストラップ?思い出あるでしょうから、接続の部分だけ変えるのもできるけど、せっかくだから別で1本作ってみませんか?
継野:思い出は大事やからな。
そう有難いご提案をしていただき、特別に1本オーダーすることになりました。
岩田社長は慣れた手つきでさっとミシン作業へ。取材中は笑顔がすてきな方でしたが、一転して作業に入ると表情は真剣そのもの。カッコいい。
そして、ものの数分で完成――その手際の良さに、取材班は「うぉおー!!」と思わず声が出るほど感激しました。
継野会長のお気持ちで、市販では売っていない色の組み合わせストラップが完成!
熟練の手つきで、わずか数分で仕上げてしまうその姿に、「ああ、こうやって1本ずつ作ってきたんだ」と実感。一生の宝物になったのは間違いありません。
Live Lineのストラップといえば、目に浮かぶのは個性豊かな柄物系ではないでしょうか。今では当たり前ですが、当時は珍しかったようです。
──「柄ものストラップを採用したのは、どんな経緯で始めたのでしょうか」
継野:ありそうでないものを作りたいと思って、最初は3mだけ仕入れて試行錯誤してました。まさか柄物がこんなに売れるとは思ってなかったです。
──「はじめはどんな柄だったんでしょうか?」
継野:最初に採用したのはインディアン柄です。大阪の船場まで出向き、36m巻き・高さ112cmのロール状の布を何十反も仕入れました。それが始まりですね。
歴代のインディアンストラップ
継野:これだけの量になると何万本分のストラップができます。当時、そこから5cm幅にカットするんですがそれがまぁ大変でした。さすがに次からは、カットしてもらうようにしましたが(笑)そこからだいぶ楽になりました。
柄もの以外にも、ラインストーンが施されたストラップも展開しています。ラインストーンは職人が一粒一粒手作業で擦れても剥がれないように接着しています。照明に当たると反射してキラキラしますよ。柄物は定番商品はもちろんですが、これからも次々と新しいものを出していきたいと思っています。
近年特に売れているのがスエードストラップ。
スエードは、裏面が滑りにくく、演奏中のギターやベースのズレを防止してくれる点がプレイヤーから高評価を得ています。さらに、Live Lineではスエードに裏張りして2枚構造にすることで耐久性も向上させており、「見た目」「実用性」「安心感」の三拍子がそろった最強の1本。
──「スエードやレザーの使い心地や違いを教えてください」
TMC:Live Lineのレザーストラップは、全て本革を採用しており、基本ラインナップはお求めやすい価格帯、スエードストラップは本革にピッグスキンのスエードを張り合わせることにより耐久性とカラー展開が豊富です。
革素材特有の高級感のあるルックスと楽器を持ったときの素材の持つ安定感。それが使っていくほどに馴染みより身体にフィットして行く特性ではないでしょうか。
岩田:Live Lineでは、レザーの仕入先を分けて用途に応じた選定を行っています。用途・デザイン・風合いに合わせて最適な革を使い分けているため、きっと納得のストラップに出会えると思います。
同色でもステッチの色やレザーの風合いが異なるモデルがラインナップされている。こうやって並んでいるのを見ると、じっくりと選んでみたくなる
レザーストラップ一番の売れ筋はこちら、とのこと。
──「はじめてストラップ、シールドを選ぶ初心者に向けて伝えたい事はありますか?」
TMC:ストラップもシールドも品質の良い物を最初に選ぶと演奏時のトラブルや故障もなく安心して使うことができます。せっかく楽しみに手に入れたギターやベースを100%楽しんで演奏できるようにLive Lineはサポートします!
価格面、機能面、デザインから要望にあった商品を選ぶことができます。
カスタムケーブル、刺繍カスタムなど1点物の製作も可能。
シールドは特に選択肢が多く、品質の良さで選ぶなら他社製品よりも優れている点が多くあると思います。
栃木レザーに触ってみると、しっとりとしたなめらかさがありながらも、しっかりとしたコシを感じる質感。
普通のレザーストラップとは明らかに違いがありました。
手のひらに吸いつくような感覚で、「あ、いい革だな」と直感的にわかる感触でした。
TMC:栃木レザーのストラップは高級志向のプレイヤーからも大人気です。
Live Lineでは「栃木レザー」の証として、赤のタグが付いています。偽物が多く流通する中で、この赤タグが無ければ「本物じゃない」とすぐに分かります。
──「他社の栃木レザーは高いイメージありますが、何でお安くできているんでしょうか」
継野:昔からのいろんな繋がりがあって今の価格で提供できています。もちろん頼むオーダーのロットの本数が決まっているのもありますが、その年によって変わるいい革をできるだけ多くの人に使ってもらいたいと思っています。
──「レザーを使っている他社との違いを教えてもらえますか?」
継野:革を縫う時にうちでは0番ゲージという太さの糸を使っています。この糸が使える大きなミシン自体があまりなくて、大阪では珍しいと思います。このミシンを使って手作業で作っているところが他社の違いですね。
「企業努力」ともいえる、力強いその答えに、物づくりに対するプライドと、長年培ってきたノウハウの積み重ねを感じました。
Live Lineは、業界初バッグショルダーにも使える「変換コネクター」で実用新案を取得しています。お気に入りのストラップがバッグのショルダーにもなるとは…!ギター以外の場面でも活用できるのは嬉しいポイントです。
次から次へとアイディアを形にしていくLive Lineに、ヒントを教えてもらいました。
──「ものづくりにおいて、アイディアはどこから来るのでしょうか」
継野:なんでも話をするもんですよ。人から聞いた話で商品開発のヒントをもらうこともあります。世間話や、ふとした一言、さらにはお客さんとのやり取りが、商品づくりの出発点になることもあります。
──「変換コネクターのアイディアもそこから?」
継野:ええ。昔、アメリカで展示会してて、女性がバックの紐を切れたと言って困ってた。どうするんかな?と思って見てたら、くるくると巻いて括ってたんです。この光景がずっと頭に残っていて、アイディアのヒントになりました。
──「ずっと記憶に残っていたんですね!」
継野:そうですね。小物づくりも革ストラップの余った素材をどうにか活かせないか?というのがあって、ストラップに取り付けられるピックケースを作りました。
派手なマーケティングではなく、日常の中で芽生えた「これ、いいかも」という直感。それを、確かな技術でカタチにするのが、Live Lineの強みなのかもしれません。
創業当時はまだ、クロス商品は扱っていなかったLive Line。
岩田:Live Lineのギター用クロスは、実は個人営業の飛び込み訪問がきっかけで誕生しました。ある日、“クロス作ってみませんか?”って個人の営業さんが飛び込みで来たんですよ。まずは試しに作ってみることにしました。
それから色々あって、現在の取引先になります。
現在では楽器だけでなく、車のダッシュボードや窓拭きにも使える万能クロスとして定番になっています。
中でもLive Lineで大人気なのが、猫のイラストが入った「Orchid」シリーズ。楽器を弾く猫や本に乗る猫など、個性豊かなデザインがそろっており自分の“推し”を選ぶ楽しさも魅力のひとつです。
Live Lineでは、ストラップのレザーエンド部やクロスなどの印刷も社内で行っており、版を作成して、オリジナルクロスをつくることもできます。
版をセットして、職人の手でムラなく丁寧にインクを刷り込んでいきます。力加減やスピードは、まさに“感覚”の世界です。
刷り終えたら、1枚ずつ仕上がりを確認。
今ではケーブルやストラップといったギターアクセサリーブランドとして広く知られるLive Line。その名前には、実はある想いと願いが込められています。
──「Live Lineに込められた名前の由来を教えてください」
継野:Liveって、ライブ演奏の“ライブ”でもあるし、“生きている”って意味もある。“Line”は“つながり”。だから、人と人、音と音をつなげる、命あるラインにしたかったんです。人との出会いが、ものづくりを育ててきました。
──「人と人との繋がり、深いですね」
継野:ブランドの立ち上げ当初から、Live Lineはたくさんの「人とのつながり」によって支えられてきました。たとえば、最初のパッチケーブル開発では音響関係の知人からハンダの付け方を教わったことがきっかけに。また、ストラップ・クロス作りにおいても社内の声や飛び込み営業マンの出会いで、商品開発のヒントになりました。
──「商品を開発する上で大切にしている事を教えてください」
継野:Live Lineと表記されている商品は、材料から全て日本製を使用し、組み立ても社内でする事で高品質を維持する事ができます。お客さんに安心して使ってもらえるように、創業時からの信念として貫いてきました。これからもユーザーの求める物、便利な物、満足してもらえる商品を開発・製造していきたいです。
価格については、高い安いの価値観は人それぞれだと思います。僕自身「価値のないものに高い値段はつけたらあかん」とずっと思ってきました。だからLive Lineでは、価値のある商品を作ることを大切にして、その上で適正な値段をつけています。
──「ありがとうございます。では最後に、今後の展望について教えて下さい」
継野:今後は、日本製のギターケースを作りたいと思ってますが、型抜きする機械も必要ですし現段階では難しいです。ただ、俺が現役のうちにギターケースは作ってみたいなと思ってます。
最近では、スティックバッグを日本の鞄屋さんで作ってもらいました。生地は耐久性に優れたコーデュラナイロンで、レザーと組み合わせています。現段階ではカラーは3種類です。これからも人と人との繋がりを大切に、Live Lineの歩みは、まだまだ続いていきます。
Live Lineのものづくりの根っこにあるのは、やっぱり“人とのつながり”。
どの商品にもストーリーがあって、誰かの一言がヒントになったり、偶然の出会いから新商品が生まれたり。今回お話をうかがっていて、会長や社長の「何でも話すことって大事」という言葉がとても印象的でした。
Live Lineの製品は、公式サイトや全国の楽器店で取り扱っています。
「ちょっと気になるな」「実際に手に取ってみたい!」と思った方は、ぜひ店頭やネットでチェックしてみてくださいね。
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