ストラトキャスターのピックアップ交換を徹底解説!

[記事公開日]2025/3/4 [最終更新日]2025/3/6
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

ストラトキャスターのピックアップ交換

ピックアップの交換はエレキギターのカスタマイズの中でも代表的なものの一つです。今回、ピックアップブランド”Euphoreal”を主宰する藤野氏の監修の元、ストラトキャスターのピックアップ交換作業の模様をお届けします。自分で交換をしてみたい方、自分でやっているものの、やり方が正しいか自信のない方は、ぜひ参考にしてみてください。

森多健司

ライター
モリタギター教室 主宰
森多 健司

新大阪に教室を設立し10年弱、小学生から70代まで、音楽経験皆無の初心者から歴20年のベテランまで、幅広い層に教える。2015年 著書「ロック・フュージョン アドリブ指南書: マイナー7th上で多彩なフレーズを生み出す方法」、2016年 著書「六弦理論塾〜ギタリストのためのよく分かる音楽理論」上梓。

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記事監修
Euphoreal 代表
藤野 州豊

“プレイヤーが陶酔できるサウンドを現実のものに”というコンセプトを元に、ハンドメイドでピックアップを制作するメーカー。レーザー加工機による微細彫刻が施されたドレスアップ金属パーツを作る他、不定期でギターを制作する。
Euphoreal – Supernice!ギター工房


  1. ストラトPUを交換するメリット
  2. 作業に必要な道具
  3. ピックアップ交換の作業手順

ストラトPUを交換するメリット

ストラトキャスターのピックアップ

数多くの部品が取り付けられたエレキギター、エレキベースの中でも、ピックアップは音色に非常に大きな影響を及ぼすパーツです。ピックアップは弦の振動を電気信号に変える役割を持ち、いわば信号の入口とも出口ともなる要として存在します。その影響力が多大なのは当然のことで、そうであればこそ、交換用ピックアップはゲイン幅、高域、低域など、それぞれに特色を持たせたサウンドの製品類が市場に溢れているわけです。

ピックアップ交換については、自分のギターを求める音色に近づけるための、最も近道なカスタマイズの一つとなりますストラトキャスターは配線が複雑になりやすいハムバッカーがなく、ピックガードを裏返すことですべての部品に一括でアクセスできるため作業も比較的簡単です。高域がきつくなりやすいリアだけを変更など、様々な手段を考えることで、自身のスタイルに合わせたカスタマイズを容易に行うことができます。

ピックアップ交換の作業に必要な道具

はんだごて、はんだ

とりあえずこれがないと始まらない、必須の道具です。今回のようにピックアップ交換の他、シールドの修理、自作などにおいても使うため、一つ常備しておくのも良いでしょう。多数の製品がありますが、効率的なはんだ付けを行うには出力パワーを変えられるものがおすすめ。はんだは有名なものとしてKester 44というものがあり、音楽系機材には非常によく使われます。

はんだ吸い取り線、吸い取り器

溶け残ったはんだを除去するために使用。今回はポットの裏やセレクタースイッチの端子に残ったはんだを吸い取り器で除去してから、改めてはんだ付けしています。はじめから付いているはんだを使用することもできますが、確実性を期すならばこの方法が無難です。

ドライバー

ピックガードの付け外し、ピックアップの取り付けに使用。ボディ裏にカバーが付いているタイプでも等しく使用します。

メンテナンスマット、クロス(必要ではないが推奨)

メンテナンスマット

楽器用のメンテナンスマットをテーブルに敷くことで、作業中に楽器が滑ったり、テーブルや楽器本体に付く傷を防止できます。また、ボディとピックガードの間にクロスを挟んでおくことで、ボディに付く傷を防げます。いずれも必須ではありませんが、使えると便利です。マットはクロスに比べるとあまり持っている人がいないと思われますが、しばしばメンテナンスを行うようであれば一つ常備しておく価値があります。

ブランドの異なるPUを取り付ける場合は位相チェックが必要

アナログ・テスター
テスターがあるとトラブル時に役立つ

今回は全てのピックアップをセットで交換していますが、別ブランドのものなど組み合わせて自分の好みで選ぶ場合は、付ける前にテスターによる位相のチェックが必要になります。ピックアップの位相(フェーズ)が一致していないと、2つのピックアップを同時に使用した際に「フェーズキャンセレーション(位相干渉)」が起こり、音が薄くなったり、こもったりする可能性があります。

リード線(ホットとグラウンド)をテスターで測定し、どちらがプラス/マイナスかを確認します。異なるブランドのピックアップで同じ方向に反応するかチェックします。向きが一致していれば問題ありませんが、一致しない場合は配線を逆に調整する必要があります。

例えば、Seymour Duncan、DiMarzio、Fender、EMGなどのピックアップは、製造時の巻き方向や配線基準が異なることがあります。同じブランド内でもモデルによって仕様が異なる場合があるので、異なるブランドを組み合わせるならなおさら注意が必要です。事前にメーカーの仕様書を確認するのも良いですが、実際に取り付けてみるまで確実な位相は分からないこともあります。

ピックアップ交換の作業手順

弦外し、ピックガード取り外し

まず弦を全て外します。場合によっては先端をまとめておくことで再利用できることも。

弦を外す

そしてピックガードを取り外します。ドライバーでネジを緩めていきますが、ピックガードがつけられている丸ネジは意外に売っていないことも多く、失くすと面倒なことになりかねません。失くさないよう、一箇所にまとめておきましょう

ピックガードを取り外す

ピックガードが外れたら、アウトプットジャックとスプリングハンガーに続くケーブルだけがボディとつながっている状況になります。この2か所を維持したままピックガードをひっくり返します。ボリュームやトーンのつまみが付いた側がボディと接触することになるため、傷を防ぎたい場合は間にクロスなど挟んでおきましょう。

ピックアップ取り外し

ピックガード
ここで配線の位置や状況をしっかり把握しておく。写真を撮っておくのがいいだろう。

古いピックアップを取り外します。配線を外す前に、ピックガードを裏から見て、リード線がどの位置を通っているか見ておくと良いでしょう。写真の場合、ピックアップの中心を通って下に一直線にまとめられているのがわかります。これはこの位置を通さないと、ピックガードを閉めようとしたときに溝にうまく入らず、きれいに閉まらなくなるからです。

ポット
黒い線はポットの上に、白い線はセレクター端子につながっている。

配線の取り外しには、はんだごてを使用します。ピックアップの黒い線がポットの上に、白い線がセレクターの端子につながっているため、これらをすべて外します。特にポットの上は面積が広い分、温まりにくく、外すのに時間がかかります。パワーを変えられるタイプのはんだごての場合は少し出力を上げてやると良いでしょう。

黒い線を外す
ポットと黒い線を繋いでいるはんだを、はんだごてを使って外していく。

白い線を外す配線の様子は、必要なら写真撮影しておく。

セレクターの端子につながっている白い線はリア、センター、フロントの切り替え位置と端子の位置が連動しているので、どこから来た線がどこにつながっているのか、あらかじめ覚えておく必要があります。覚える自信がなければ、線と端子がしっかり見える位置から写真撮影しておきます。

ピックアップを外す

すべて外したら今度はピックガードに装着されたピックアップを、表側からネジを緩めて外します。ピックアップとピックガードの間にバネが入っている場合、失くさないようにまとめておきましょう。

新しいピックアップの取り付け

ピックアップ取り付け

まずは新しいピックアップをピックガードに装着します。先ほど外したのと逆の動きをすることになります。写真ではバネでなくゴムチューブを間に挟むタイプになっています。このタイプはバネのように固定した状態を自力で維持しなくて良いので、少し装着が楽になります。

PUをピックガードに取り付け

続いてピックガードを裏側に向け、リード線をまとめます。古いピックアップのときにリード線がちょうどピックアップの中心を通るようにまとめられていたので、それと同じような位置を通るようにします。場合によって束ねても良いでしょう。

ピックガード裏側

リード線の位置がしっかり決まったら、必要分を残して、それ以上の長さの線をカットします。このときに黒い線がポット裏、白い線がセレクターの端子に行っていることを忘れないでください。

リード線を必要分だけ切る
白い線はセレクターまでの距離、黒い線はポットまでの距離を確保しておく。

予備ハンダ~はんだ付け

はんだごてを使い、新しいピックアップを接続します。ポットや端子に古いはんだが乗っている場合、ここではんだ吸い取り機を使って取り去っておくと確実です。

リード線を剥く

接続の前にピックアップのリード線を多少剥いていきます。

予備はんだ

剥いたリード線の先端に予備ハンダを施します。予備ハンダは線材の先を束ねて、それをはんだでコーティングすることを言い、線の先にはんだごてを当て、そこにはんだを流し込むことで行います。

黒い線をはんだ付け

予備ハンダが終わったら、それぞれを接続します。このときに黒い線をポットの裏に接続するのがもっとも難しい作業になります。ピックアップから出ている3本の線をすべてまとめて一気にポット裏にはんだ付けする方法もありますが、慣れていないうちは一つずつ付けたほうが無難です。一つずつを少し離して付けることで、せっかく付けたものが次の線を付ける際に外れてしまうようなトラブルを減らせます。

リード線をはんだ付け白い線を元の配線通りにはんだ付けする。

ピックガード取り付け

ピックガードを表に返す

はんだ付けの作業が終わったらピックガードを表に返して取り付けます。

ピックガード取り付け

ピックガードを取り付ける際には、いきなりネジを締めるのではなく、一度逆回転(緩める方向)に回し、ネジがすとんと落ちるところを探します。落ちたところから締め始めると、ネジの溝を無理やり作ってしまうような事態が防げます

サウンドチェックの方法

すべて取り付けたら、一度アンプに繋いで音が出るか確かめましょう。とはいえ、弦を張っていないので、実際に鳴らしての確認は不可能。ドライバーやレンチなど、金属製のものでピックアップを触ると音がします。音が出たらしっかりつながっている証拠です。3か所のピックアップについて、切り替え作業も含めて確認しておきましょう。

サウンドチェック
アンプに繋いだ状態で、ドライバーなどの金属棒でピックアップを触る。ちゃんと通電していればアンプから「コツコツ」と音が鳴る。


以上、ストラトキャスターのピックアップ交換の作業を見ていきました。写真と文だけで見ると難しいことをやっているようにも見えますが、実際にやってみるとずっと簡単なのがわかるはずです。途中で間違えても、いくらでもやり直せる作業でもあるので、やったことのない方はぜひ自分で挑戦してみてはいかがでしょうか。

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