知っておきたい「セッション定番曲」~Soul / Funk編~

[記事公開日]2022/1/24 [最終更新日]2024/2/24
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

セッション曲:ソウル/ファンク

セッションできるギタリストって、かっこいいですね。そんなわけで、今回はソウル/ファンク系の演目から、セッションに参加しやすい定番曲をチェックしていきましょう。練習として、バンドでちょっとやってみるのもいいでしょう。こちらの分野は現代の音楽に直結しているところが多いので、古い演目でも知っておいて損はありません。

ソウル/ファンク系セッションにお勧めの21曲

ではさっそく、こちらの分野での定番曲をテーマごとにちょっとずつ見ていきましょう。なお、タイトルにはアーティスト名を添えていますが、ジャズやクラシックではここに作曲者名を添えるわけで、こういうところにもジャンルの違いが現れています。

知らないと損!とってもシンプルな有名曲

まずは、経験の浅い人でも参加しやすいシンプルな曲をチェックしましょう。現代の感覚では考えられないくらいシンプルですが、音楽のルーツを辿る上でも重要な演目です。

《最初の1曲にお勧め!》Stand By Me/Ben E. King(1961)


Imagine Dragons — “Stand By Me” (Ben E. King Cover) [LIVE @ SiriusXM]
ベースだけで曲名が分かる超有名曲と言えば、コレが最強でしょう。

「Stand By Me」は、歌って気持ちが良いセッション定番の演目です。8小節の循環コードを繰り返すというシンプルな構成なので、初心者でも弾きやすくソロ回しもしやすく、知っておいて損はありません。

《まさかのコード1個!》Land Of 1000 Dances/Wilson Pickett(1966)


J. Geils Band – Land Of A Thousand Dances
ノリだけで盛り上がれる、大変ありがたい曲。ギターはベースとユニゾンです。

「ダンス天国」の日本名でも知られる「Land of 1000 Dances」は、Dのコードを弾くだけで成立する超シンプルな演目です。ずーっと同じコードなので、ソロ回しにおいてはアドリブ中に何小節弾いたのかわかんなくなっちゃっても大丈夫です。ドラムだけになってからのコール&レスポンスでは、歌詞を覚えずとも観客が参加できます。

60年代のSoul / R&B

ソウルミュージックはR&B(リズム&ブルース)から派生しましたが、60年代の時点ではその境界がかなりあいまいです。「60年代から、R&Bはソウルへと名前を変えた」という学説があるくらいです。

《スネアが決め手》Stop! in the Name of Love/The Supremes(1965)


School of Rock AllStars perform “Stop in the Name of Love” by Supremes
マスク着用が当たり前になってきましたが、歌う時にはマスクの通気性に気をつけましょう。

「Stop! in the Name of Love」は、執拗に4分音符を打ち続けるスネアドラムが印象的な演目です。いったん演奏が始まったら、スネア4つ打ちの高揚感をかたくなに維持するのがアンサンブルのポイントです。

《「モータウン・ビート」の代表》You Can’t Hurry Love /The Supremes (1966)


The Supremes “You Can’t Hurry Love” on The Ed Sullivan Show
邦題「恋はあせらず」。タンバリンがあってこそのこの曲。

「You Can’t Hurry Love」は、特徴的なベースにギターがバックビートでアクセントを加える、いわゆる「モータウン・ビート」の代表曲です。音楽レーベル「モータウン」所属アーティストのいろいろな演目で活用されたのが由来です。ベースもギターも、スタッカートの使い方が大きなポイントです。

《じわじわと上昇する転調》Sunny/Bobby Hebb(1966)


Boney M. – Sunny (ZDF Disco performance – 05.02.1977)
カバーで大ヒットするのも、原曲の良さがあったればのこと。何段階も上昇する転調も、しっかり再現しています。

「サニー」は、真摯な熱情を短調のコード進行に託した名曲です。この曲最大の特徴は、3コーラス目から半音ずつ上昇していく個性的な転調です。半音上がるたびにボーカルの声は力が増していくため、他の曲ではなかなか見られない独特の緊張感があります。なお、セッションでは楽譜がどうしても長くなってしまうので、敢えて「転調なし」とする場合もあります。


Hakase Etude 8 – Session Piece No.2
このハカセエチュードは、「Sunny」のコード進行を拝借しつつ、さらにジャズ寄りな方向にリハモしています。名曲のコード進行は、作曲のヒントになります。

Hakase Etude 8 – Session Piece No.2:楽譜(五線譜 + Tab譜)を購入する

《ファンキーですらある》Soul Man/Sam & Dave(1967)


Blues Brothers: Soul Man – SNL
ソウル/ファンクの好きな人なら、映画「ブルースブラザーズ」は必見です。

自分で「俺はソウルマンだ」と歌っている以上、この「Soul Man」をソウル枠に入れないわけにはいきません。しかし印象的なギターのカッティングはファンキーでもあり、ファンクが形成されてきた時代性を感じさせられます。

《超スローバラード》(You Make Me Feel Like)NATURAL WOMAN/Aretha Franklin(1968)


Aretha Franklin – Natural Woman
ご本人の歌唱は圧倒的ですが、キャロル・キング女史のカバーも有名です。

バラードの名曲「ナチュラル・ウーマン」は、3拍子と間違えてしまいそうなほどスローな8分の12拍子をじっくりと楽しむ演目です。気持ちの良い曲ですが、盛り上がりに流されないような、しっかりとしたテンポキープが肝要です。

《キレてこそのこの曲》I Want You Back/The Jackson 5(1969)


TWICE「I WANT YOU BACK」Music Video
現代の演者が現代のサウンドで演奏すれば、半世紀も前の古い曲だなんて感じることはないわけです。

「I Want You Back」は、当時11歳の若かりしマイケル・ジャクソン氏のデビュー曲です。キレッキレのギターのカッティングのみならず、ボーカルとダンスを含む全パートでキレの良さが求められます。

70年代以降のソウルミュージック

60年代後半にファンクが生まれてから、その反動としてソウルはよりメロディアスに、また響きが豊かになっていき、アダルトなサウンドになっていきます。

《実は反戦歌》What’s Going On/Marvin Gaye(1971)


What’s Going On
多くのアーティストがカバーしていますが、ダニー・ハサウェイ氏のライブがアレンジ、演奏内容ともに高く評価されています。ギターで参加しているフィル・アップチャーチ氏とコーネル・デュプリー 氏は、この分野での重要人物です。

「What’s Going On」は、ハネた16ビート「バウンス」の代表的な演目です。間奏部分では、ベトナム戦争に対する恐れや不安を表すAm7(9)から、話し合えば分かりあえるはずだという希望を表すF#m on Bへと移行し、ここでソロ回しが行われます。

《ロックバンドの放った、ソウルのスタンダード》Georgy Porgy / TOTO(1978)


Martin Miller, Andrew Lauer & Felix Lehrmann – Georgy Porgy (live) | Ibanez Guitar Festival
5弦ベースがちっこく見えてしまうでっかいベーシスト、アンドリュー・ラウアー氏がベースを始めたのが20歳だったという事実は、その演奏内容以上に驚きを禁じ得ません。

「Georgy Porgy(ジョージー・ポージー)」は、白人ミュージシャンの作品でありながら発表と同時に黒人ミュージシャンからの熱烈な支持を受け、多くのカバーを生んだ名曲です。セッションでは、リラックスしたバウンスのノリに放り込まれるキメ、という対比が楽しめます。

《最強クラスのオシャレ進行》Just The Two Of Us/Grover Washington Jr.(1980)


Studio Jams #59 – “Just The Two Of Us”
もとはボーカル曲だとはいえサックス奏者の演目だけに、サックスでのカバーが多い情勢です。

「Just The Two Of Us」は「IVmaj7 – III7 – VIm7 – Vm7 – I7」という、オシャレにも程がある美しいコード進行が高く支持されている演目です。この進行はそのあまりの美しさから多くの作曲のヒントとなり、「Just The Two Of Us進行」とまで呼ばれています。

アシッド・ジャズ

1980年代にイギリスのクラブシーンから派生した「アシッド・ジャズ」は、ソウルやファンクをジャズで解釈した「踊れるジャズ」です。1930年代のジャズはダンスミュージックでもありましたから、時代を経てそこに回帰した、とも言えるでしょう。

《美しき半音下降》Still A Friend Of Mine/Incognito(1993)


Incognito – Still A Friend Of Mine
この名曲のMVにYAMAHAのアコギが使われているのは、日本人として大変に誇らしいことです。

「Still A Friend Of Mine」は、リラックスしたサウンドで緻密なアレンジをサラっと聞かせる名曲です。サビでの「Dmaj7 – C#m7 – Cmaj7 – Bm7」という転調しながら半音ずつ下がっていくコード進行は、この分野で多くのフォロアーを生みました。

《テンションコードの妙》Virtual Insanity/Jamiroquai(1996)


Jamiroquai Bee Gees Mashup – Pomplamoose
これほどの曲を、歌詞カードも譜面も見ずに演奏しきる。セッションとはいえ、ここまでの曲であればそれくらいの下準備が必要となるわけです。

「20世紀最後の大物」と呼ばれたジャミロクアイの名曲「Virtual Insanity」は、抑制のきいた落ち着いたノリとピアノが主導するテンションの効いたコードの響きがポイントです。こうしたサウンドの中では、ギターは単音カッティングなどリズムやフレーズを打ち出すプレイが有効です。その場にピアニストがいなければ、頑張ってテンションコードをバシバシ弾きましょう。

FUNK

1960年代後半から、よりグルーヴにフォーカスするサウンドを目指して「ファンクミュージック」が形成されました。ボーカルはメロディを歌い上げるよりも連打やシャウトが多くなり、また多くの場合キレの良いステージングが求められます。

ファンクを完成させたジェームス・ブラウン氏(JB)は、バンドメンバーに「お前ら、全員ドラムだと思って演奏しろ」と指示したと伝えられます。それもあって、ファンクにおけるギターはカッティングを主体としたパーカッシブなプレイが主流です。

《ただただ、ユニゾる》Cissy Strut / The Meters(1969)


“ Cissy Strut” Gee Mack feat. Kamasi Washington
ソロ回しにおいて、サックス奏者の仕事は「待つ」の一手です。

ミーターズの代表曲「Cissy Strut」は、ベースラインと主旋律の区別がほとんどない、ずーっとユニゾンで押し通す演目です。原曲ではそのままひたすらユニゾンしますが、セッションではコードで合いの手を入れたりハモったりするなど、アレンジに工夫する例が多く見られます。

《実はタイトルが長い》Get Up (l Feel Like Being a) Sex Machine/James Brown(1970)


The Main Squeeze “Sex Machine” (James Brown)
ソウル/ファンク両ジャンルにおいてJBの功績は甚大で、今なお多くのファンを魅了しています。

「セックス・マシーン」は、日本語で言うところの「ゲロッパ!」の掛け声とギターのカッティングが特に印象的な演目です。JBは歌うだけでなくステージ上でバンドの指揮を執っており、後に続くボーカリストのお手本となりました。日本では90年代に日清カップヌードルのTVCMにJB本人が出演し、多くの人がファンクを知ることとなりました。

《楽曲の展開が楽しい》Superstition /Stevie Wonder(1972)


Martin Miller & Paul Gilbert – Superstition (Stevie Wonder Cover) – Live in Studio —-
ソロでバンドを引っ張って、じわじわと盛り上げていくポール・ギルバート氏。さすがの貫禄です。

「迷信(Superstition)」は、1コードでソロを取り、プレイヤーがメンバーに合図を送って次の展開に移行するのが一般的です。原曲のキーはロックギタリストにとってはやや息苦しい「Eb」ですが、そんなときには半音下げチューニングにしちゃいましょう。

《ギター&ベースの絡みがポイント》Good Times/CHIC(1979)


Nile Rodgers & CHIC – Good Times (Glastonbury 2017)
ディスコ・ファンクの偉人、ナイル・ロジャース氏。氏の演奏からは、多くのものが学べます。

ダンサブルな名曲「Good Times」は、4分音符と8分音符を軸とした縦のノリを打ち出すギターのカッティングと、16分のシンコペーションが効果的に放り込まれるグルーヴィーなベースとの組み合わせで、弾いていて幸せになれる演目です。

《強力なベースライン》Super Freak/Rick James(1981)


Beatfreakz – ‘Superfreak’ (Official Video)
ベースだけでも音楽が成立できそうなほど、強力なベースラインです。

リック・ジェームス氏の代表作「Super Freak」は、ファンクミュージックにおけるベースの重要性がよく分かる曲です。ギタリストがセッションでこの曲を弾くには、ベースとのユニゾンが第一です。

Jazz Funk

ソウル/ファンクのリズムをジャズに取り入れたのが「ジャズファンク」です。音楽自体はジャズの方法論に従っており、曲の中にアドリブを披露するところが用意されていてセッションしやすいのがありがたいところです。

《サックスメインだが、ギターでも弾きやすい》Pass The Peas/ Maceo Parker(1972)


Prince – Pass The Peas (Live At The Aladdin, Las Vegas, 12/15/2002) ft. Maceo Parker
JBとのキャリアもあるメイシオ・パーカー氏は、自身の音楽を「2% Jazz, 98% Funky」と公言しています。

「Pass The Peas」は、ブルース進行のテーマ部分と1コードでのアドリブで構成される演目です。サックスの演目はギタリストにとってしんどいキーになることも多いのですが、こちらはDmを基調としているためギターでも参加しやすいのがポイントです。

《執拗にII-V》Chameleon/Herbie Hancock(1973)


Studio Jams #56 – “Chameleon”
主旋律に休符が多いのもポイントで、メンバーはそこここにいたずら心を発揮させることができます。

ハービー・ハンコック氏の代表曲「カメレオン」は、「Bbm7 – Eb7」というII-V進行を繰り返すことで展開させる演目です。やはりサックスに合わせたキーに設定されているのですが、ギタリストがこのキーで楽しく弾くには、ひたすら練習するか、やはり半音下げチューニングにするかの2択になります。

《華のブラス》Some Skunk Funk/Brecker Brothers(2003)


ブレッカー・ブラザーズ feat. by WDR BIG BAND – Some Skunk Funk|グラミー賞2007
こちらのジャンルの中でも、ひときわ華のある演目。

「Some Skunk Funk」は、ジャズファンクの中でもかなり派手な演目です。動きが大きくて弾くのが大変な主旋律はブラスに任せて、ギタリストはカッティングに励みましょう。

Soul / Funkで求められるギターの弾き方

ソウル/ファンクにおいて、ギターはリズムを打ち出す演奏が求められます。その中でも「高音弦を使ったカッティング」と「単音カッティング」が特に重要です。

高音弦を使ったカッティング


カッティング練習 その2 〜ソウル・ファンク風〜【ギター博士のレッスン】

ブラスセクションを多用するソウル/ファンクでは特に、コードの基本形やパワーコードをドバーンと弾くような演奏は少なめで、1~3弦や1~4弦だけを鳴らすカッティングが多用されます。バンドの音圧はリズム体やブラスに任せ、ギターは歯切れの良さを打ち出すわけです。

まずは原曲に近くなるように押さえ方やリズムパターンをトレースし、要領が分かってきたら自分なりのプレイを模索してみてください。

カッティングの練習フレーズを弾いてみよう!

単音カッティング


Earth, Wind &Fire – September (Official HD Video)
時代性を感じさせる映像にばかり目が行ってしまうMV。ここで見られる左利きのギタリストが、カッティングの名手との呼び声高いアル・マッケイ氏です。

「単音カッティング」は、文字通り1音しか鳴らさないカッティングです。普通に弾くより振りの大きなピッキングにより、パーカッシブな単音弾きができます。動画の「セプテンバー」のように楽曲を象徴するようなリフとして使われることもありますが、ボンゴやコンガのような打楽器を模したり、あるいはバンドの音圧を上げたくないリズム弾きとしても使われます。

コレができるとウマいギタリストっぽさをかもし出すことができますが、小編成のアンサンブルではバンドの音が薄くなりすぎてしまうことがありますから、使いどころにはセンスが必要です。


以上、ソウル/ファンク系のセッション定番曲をチェックしていきました。こちらのジャンルはジャズとの相性が良く、ジャズ系セッションで定番視されている演目も数多くあります。ジャズ系定番曲の記事ではそうした演目も紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

知っておきたい「セッション定番曲」~JAZZ編~

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