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HIWATT「MAXWATT Custom Super-Hi 50」
「アンプヘッド」は、ギターアンプのうちサウンドを作るプリアンプと音量を増幅するパワーアンプという2つのセクションをまとめた装置で、キャビネット(=スピーカー)をつなげることで初めて音を出せます。またキャビネットの上にアンプヘッドを積んだ(=stack)状態で「スタックアンプ」とも呼ばれます(これに対し、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカーを一つにまとめたものがコンボアンプです)。
ロック系をはじめとする多くのアーティストが愛用する憧れのアンプである一方、ライブハウスや練習スタジオに置かれることも多い、身近なアンプでもあります。また近年では、自宅での演奏やレコーディングに有利な小型モデルが支持を集めています。今回はこうしたアンプヘッドに注目し、その特徴や扱い方、思い切って買ってしまうならおすすめのモデルまで、いろいろなものを見ていきましょう。
名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。
webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。
人気のアンプヘッド・ランキング:BEST 30 – Supernice!ギターアンプ
ギタリストの背後にそびえ立つスタックアンプ。迫力あるデカい音が、堂々たるデカいスタックアンプから出る。これこそロックの美学と言えるでしょう。この構図には、大排気量のエンジンを積んだ自動車が猛スピードで駆け抜ける、筋肉ムッキムキの人がデカいバーベルを持ち上げる、といったものに通じる、デカいものがデカいことをする美しさがあります。かっこいいロックギタリストは、背後にスタックアンプを立たせるべきなのです。
Mrs. GREEN APPLE – インフェルノ(Inferno)
ギタリスト若井滉斗氏の背後にそびえ立つのがスタックアンプ。この演目ではギターも弾いているボーカリスト大森元貴氏の足元には、コンボアンプが配置されている。
アンプヘッドの消費電力は50W~100Wあたりが一般的で、床や壁が震えるほどの大音量が得られます。どれだけ声のデカいボーカルがいようと音のデカいドラマーがいようと、音量で負けて埋もれてしまうことがありません。
パワフルなアンプは出力に応じて重くなるのが普通ですが、アンプヘッドはスピーカーと分離されているので一人ででもまあまあ持ち運びが可能です。また会場に適合するキャビネットがあるなら、アンプヘッドだけ持ち込んでライブに出ることも可能。環境が整っているならば、アンプヘッドだけで演奏やレコーディングも可能です。
CREWS GB-VI
真空管アンプならではの迫力ある音を得るには、音量をある程度上げてパワーアンプをしっかり駆動させる必要があります。しかし自宅でそんな音量はとても出せません。そこで必要になるのが「アッテネーター(減衰器)」です。パワーアンプから送られてくる強力な電気信号を熱に変換することで、音質はそのままに音量だけ下げることができます。アッテネーターは各社からリリースされているほか、アンプヘッドの機能として実装される例もあります。
アッテネーターを検討する際には、それぞれ決まっている「許容入力」をチェックしましょう。例えば、許容入力が「100W」のアッテネーターは、定格出力が「100W以下」のアンプに使えます。正しい使い方をしないと故障の原因になるので、マイアンプの出力に合ったアッテネーターを購入するようにしましょう。
ギターアンプのサウンドは、プリアンプ、パワーアンプ、キャビネットの3つで決まります。アンプヘッドはこのうちキャビネットを替えることで、サウンドキャラクターを変化させることができます。メーカー純正のキャビネットを使うのが普通ではありますが、さまざまな組み合わせを模索することで自分だけのギターサウンドを作る可能性が広がります。
エレキギター界隈は、今やデジタル全盛と言っても過言ではありません。KEMPERやLINE6、BOSSらを筆頭に各社各様のモデリングアンプやギタープロセッサーが、いろいろなアンプヘッドのサウンドを再現しています。しかし、敢えて言うなればそれらは所詮モデリングなのであって、本物ではありません。実際のアンプヘッドに電源を入れ、キャビネットをうならせて出た音こそが、本物のスタックアンプの音です。
いくらデジタル機器が優秀で便利だとは言え、音にこだわり抜くギタリストにとってはモデリングではどうしても届かない何かがあるといわれます。その何かを持っているのが、本物のスタックアンプなのです。
スピーカーアウト端子から
スピーカーケーブルでキャビネットと繋ぐ
真空管アンプは、キャビネットをつながずに駆動させてはいけません。行き場を失った過大な電気信号が逆流してパワー管を痛め、故障を起こしてしまいます。一方でソリッドステート(トランジスタ)アンプは出力回路が真空管と異なるため、キャビネットをつながなくても大丈夫です。
また、接続には必ずスピーカーケーブルを使いましょう。スピーカーケーブルは、パワーアンプで増幅された大出力の電気信号がストレスなく通るよう設計されています。ここにギター用のシールドを使ってしまうと、通しきれない電気信号が熱へと変換されてしまい危険です。
次のページではマーシャルの定番アンプヘッド「JCM2000」の使い方を紹介しています。
「スイッチが二つあったら二つ目はスタンバイ」と考えがちだが、画像右側のアンプのように二つ目のスイッチがチャンネル切り替えの例も。
主電源(POWER)スイッチの隣にスタンバイ(STANDBY)があるかどうかを確認しましょう。無ければ、POWERスイッチを入れるだけで音が出せる状態になります。一方、STANDBYスイッチのあるものは、POWERスイッチを入れてから2分以上待ちます。この時点では真空管のヒーターが駆動するだけで真空管本体に電流は流れず、音は出ません。その後STANDBYスイッチを入れると真空管に電流が流れ、音が出せる状態になります。電源を切るときには、STANDBYを切って数秒待ってからPOWERを切ります。
Hughes & Kettner「TRIAMP MARK3」
MIDIのINとOUT/THRU端子を備えている。
2つ以上のチャンネルを持っていたりリバーヴやエフェクトループなどを備えていたりする多機能なアンプヘッドの場合、専用のフットスイッチでいろいろな切り替えが可能です。フットスイッチはアンプヘッドに付属したり別売だったりし、機能もチャンネル切替のみのシンプルなものからあらゆる切り替えのできるパワフルなものまでモデルごとにさまざまです。
また特にモダン系のアンプヘッドにはMIDI端子を備えるものもあり、マルチエフェクターの操作とアンプの切り替えを連携できたり、同期演奏のプログラミングに従属させたりできます。
ラインアウトを搭載した Marshall JVM head
エレキギターのレコーディングには、実際に鳴らした音をマイクで録音する「マイク録り」、アンプとレコーダーをケーブルでつなぐ「ライン録り」という2種類の方法があります。マイク録りは音質こそ良いですが、マイクのセッティングや遠慮なく爆音が出せるレコーディング環境、またその予算を考慮すると、アマチュアにとっては敷居が高いと言わざるをえません。
これに対してライン録りは、マイキングの技術が不要で音量の心配もなく、比較的低予算で済ませられます。現代の機材ではマイク録りと聞き分けられないほどの音質でライン録りできることもあり、多くのレコーディングで積極的に採用されています。
しかし!我々は忘れてはいけません。キャビネットをつながずに真空管アンプを駆動させると、故障してしまうということを。そんなわけでここでは、「絶対にアンプを故障させないライン録り」に重要なキーワード、「LINE OUT端子」と「ロードボックス」をチェックしましょう。
モデリングアンプなどソリッドステートアンプには、必ずと言って良いほど「LINE OUT」端子が備わっていて大変に便利です。一方で近年ではライン録りの必要性が高まっている情勢から、LINE OUT端子を備える真空管アンプも登場しています。LINE OUT端子は、オーディオ機器間で音声信号をやり取りする際に使用される標準的な信号レベル「ラインレベル」の電気信号を出力します。ここからレコーダーに直接信号を送信できるほか、必要ならエフェクターやパワーアンプに接続することも可能です。
ただし、LINE OUT端子を使う際の注意点は、モデルごとにさまざまです。上の画像にあるMarshall「JVM head」では、STANDBYを切った状態で使用します。パワーアンプの電源は入れずにプリアンプのみ駆動させ、内蔵するパワーアンプ・シミュレータとスピーカー・シミュレータを使用するわけです。このほか、スピーカーを使わないモードに入れるスイッチを備えるモデルや、LINE OUT端子を使うならMASTERボリュームをゼロにする旨の指示があるモデルなどありますから、取扱説明書にはしっかり目を通しておきましょう。
BOSS「WAZA Tube Amp Expander」
LINE OUT端子が無くても、希望はあります。それが「ロードボックス」です。ロードボックスはスピーカーOUT端子から送られてくる強力な電気信号を受け止め、ラインレベルで出力する装置です。これを使えばキャビネットにつながなくても故障の心配はありません。
多機能なものはスピーカー・シミュレータやマイク・シミュレータを備え、またアッテネーター(減衰器)の機能もあり、自宅練習やレコーディングなどさまざまな使い方が可能です。最も重要な仕様は150Wや100Wなどと表示される「許容入力」で、これ以下の出力のアンプに接続することができます。また、受け止めた電気信号のエネルギーは熱へと変換されますので、火傷などへの注意が必要です。
アンプヘッドのハードケース:ROADREADY RRGAL32
アンプヘッドは基本的に「専用ケース」に入れて運搬します。特に真空管アンプは外部からの衝撃に弱いので、持ち運びには専用のケースが必須です。ケース内にはクッションが備えられていますから、運搬時の振動を軽減してくれます。ケースに収容するとかなりの重量になるので、「キャリーカート」などを別に用意し、現場に到着してからもスムーズな運搬ができるようにしましょう。練習スタジオには倉庫を使わせてくれるところもあり、少なくともバンドリハでの搬入/搬出の苦労は軽減できます。
真空管の寿命は一般に5,000時間程度だと言われていますが、使用される電流や電圧が高くなりがちなパワー管はぐっと短く、その寿命は長くて3,000時間程度と言われます。真空管の寿命は突然訪れるのではなく、時間をかけてじわじわと近づいてきます。真空管の劣化に従ってノイズが増えたり音質が悪くなったりしていきますから、ある程度のところで「もう寿命だ」とユーザーが判断を下すわけです。しかし真空管が天寿を全うしても、新しい真空管に交換すれば元通りに演奏できます。通常の使用環境で、だいたい数年を目途に交換を検討しましょう。
真空管の寿命は、運搬などでガタガタと振動を加えたり、また長時間連続使用したりすると縮まってしまいます。真空管の寿命を伸ばすには、運搬時にはケースに収めるかクッションを使用し、長時間使用する時には1~2時間おきにSTANDBYを切るなどして、冷却時間を取りましょう。熱がこもらないよう壁からある程度は放して設置する、使用時に扇風機などの風を当てる、といった対策も効果的です。
OYAIDE「L/i 50 G5 電源ケーブル」
プロに依頼するのがおすすめではありますが、パーツを交換することでアンプヘッドの音質を改善したり味変したりできます。古い真空管を新品に交換することで元気なサウンドが蘇りますが、このときメーカーを変更するとサウンドキャラクターも変化します。回路に手を付けるなら、コンデンサーやトランスをアップグレードすることでノイズが軽減できたり、音の解像度が上がったりします。
ケーブルの交換も有効です。特にスピーカーケーブルには良いものを使いましょう。電源ケーブルについては諸説あるところですが、上質な電源ケーブルはしなやかで取り回しが良く、外部ノイズの影響を受けにくく、抵抗値が低いため電圧降下を軽減できます。モデリングアンプなどデジタル機器は電源の影響を受けやすいことから、高品位な電源ケーブルはノイズ軽減などの効果が期待できます。一方で真空管アンプは内部の電源トランスと整流回路が働くため、電源ケーブルの影響はかなり限定的だといわれます。
真空管とソリッドステートという増幅回路の違い、チャンネル数や各種端子などの機能、ふたつの観点でアンプヘッドを検討してみましょう。
左:マーシャルの真空管アンプ「DSL100H」のスタック、右:Rolandのトランジスタアンプ「JC-120」
アンプヘッドを検討するには、サウンドやルックスを第一に、第二にそのアンプが真空管なのかソリッドステートなのかをチェックしましょう。アンプヘッドは、回路にの設計により大きく3つに分けられます。
真空管アンプは増幅で独特の倍音成分(オーバートーン)が加わる、いわゆる「エレキギターの良い音」を出すための王道です。重い、キャビネットをつながないと故障する、真空管のコンディションを気にしなければならない、といった数々の注意点がありながらも今なお厚く支持されているのは、他の何にも代えがたい「真空管の音」があるからです。
ソリッドステートアンプは軽量で故障しにくく、メンテナンスフリーで長期間使用できるのが最大のメリットです。明瞭で硬質な立ち上がりの早い音色を持ち、キレの良さを求めるギタリストに特に愛用されます。デジタルモデリングアンプのほとんどがここに該当するほか、アナログの技術により真空管のサウンドを再現するチャレンジも重ねられています。
また、真空管アンプはトランジスタアンプと比べると、最終的な音量が「40%大きい」と言われています。つまり、定格出力が同じ30Wのアンプでも、最大音量は真空管アンプの方が大きいので、自宅で使用する方は店頭で試奏してから購入するようにしましょう。
一般に、ヴィンテージ系のアンプヘッドはシンプルな操作系を持ち、追加機能も少ないかリバーブすら無い、かつ音色は1チャンネルのみ、という大変に潔い仕様です。そもそも50年代や60年代のギターアンプには、多機能化という発想がありませんでした。これに対して現代仕様のアンプヘッドはサウンドメイクの中核を担えるよう、あるいはさまざまな場面で活用できるよう、いろいろな機能を持っています。多機能なフットスイッチを備えるアンプヘッドでは、ライブで七色の音色を駆使できます。
現代のアンプに搭載されるさまざまな機能を見ていきましょう。各種機能はモデルごとに搭載/非搭載さまざまで、こちらに紹介する以外にメーカー特有の特徴的な機能もあります。さてあなたはどんな機能が欲しいですか?
なお、エフェクター切替とアンプのチャンネル切替を連動させたいのにアンプにMIDI端子が無い、そんな時でもまあまあ大丈夫です。Line 6「Helix Floor」やBOSS「MS-3」などでは、モノラルケーブルを介してアンプのチャンネルを切り替えることができます。
以上、アンプヘッドをテーマに特徴や扱い方やおすすめモデルなどを見ていきました。ギタリストの背後にそびえ立つスタックアンプはロックの美学であり、舞台装置としても大変に優秀です。存在感あるスタックアンプの魅力はいまだ衰えず、厚く支持されています。図体のでかさが唯一の泣き所だったところ、近年では自宅でも使える小型のアンプヘッドも一般化しています。ぜひ実際にアンプヘッドに触れてみて、スタックアンプの迫力のサウンドを体験してみてください。
アンプヘッドの売れ筋を…
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