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日本を代表するギターメーカーIbanezが70年代に送り出した銘機Tube Screamer。初代のTS-808を皮切りにTS-9、TS-10など、バージョンアップを図りながら、ついには歪みエフェクターのスタンダードに上り詰めました。現在、IbanezからはTS-9を中心とした復刻版、そしてがその派生モデルがラインナップを飾っています。
Ibanezがエフェクターの製造を開始したのは70年代のこと。これは実はBOSSとほぼ同時期であり、国内でも有数の老舗エフェクターメーカーでもあります。当初は日伸音波製作所(後のマクソン)からのOEM供給により、流通と販売のみを手がけていましたが、79年に登場した初代チューブスクリーマーの「TS-808」も、そのような経緯で登場したシリーズ10機種のうちのひとつでした。
当時珍しかった、ダイオードではなくオペアンプで作られた歪みは「真空管を叫ばせる=チューブスクリーマー」という名前の通り、真空管アンプのプッシュに向いており、プリアンプ的、ブースターとしての使い方が今でも主流です。TS-808は発売後3年が経った1982年、TS-9にグレードアップしますが、こちらは数多いTSの中でももっともスタンダードなモデルとして知られています。
チューブスクリーマーってどんなもの?TS系オーバードライブ特集 – supernice!エフェクター
TS-808は日本国内ではMaxonブランドの”OD-808”として発売されました。MaxonがOD-808をIbanezに卸し、国外で流通させる際にIbanezが新たに付けた名前が「TS-808 Tube Screamer」であり、やがて日本国内でも通用する名前として統一されました。MaxonのエフェクターはアメリカでのスタンダードであったMXR製品と似た外観を持っていたため、発売の際にIbanezは名前とともに外観の変更も行っており、あのスラント型の仕様はその際に生み出されたものです。
現在でもIbanezではなく、開発元であったMaxonからOD-808という名の製品が発売されており、基本的に当時の設計に準ずる形で製造されています。
Maxon OD808 – supernice!エフェクター
ファズやディストーションなどとは違い、オールドのチューブアンプのボリュームを上げた時のような自然な音色変化を目指して作られており、「Tube Screamer」という名称もそれを由来としています。単一ではあまり強い歪みが得られず、もっぱらすでに歪んだアンプの前に設置するブースターとしての使い方がメインとなります。
設計段階から”かまぼこ形”とも言われる、高域と低域を削いだイコライジングを狙っており、中域に強いピークがあるというわかりやすい特性を持っています。よく言えば芯が太くなりしっかりと前面に出る音、悪く言えば高域が削がれたこもる音という評価が一般的です。TSを代表する二代目TS-9はそんな中でも高域の減衰が緩やかであり、初代TS-808に比べても高域部分の尖った雰囲気を残す明るい音色が特徴で、TS独特のこもった雰囲気がやや緩和されています。
マーシャルなどレンジが広いために線が細くなりやすいアンプや、ストラトキャスターなど高域にピークがあるギターとは特に相性が良く、レンジを狭くして中域部分のに集中させることで、しっかりとした粘り気と芯の太さを獲得できます。
スティーヴィー・レイ・ヴォーン氏は、ストラトキャスターとフェンダーアンプにチューブスクリーマーを使用することで、枯れた雰囲気と粘り気のある歪みを両立した唯一無二の音色を作り上げました。TS系ブースターの理想的なトーンを示し、スタンダードの地位にまで押し上げたのは、まさに彼の功績といって過言ではないでしょう。
TS-9はシリーズ中でもやや明るい音が特徴で、初代TS-808に比べると、ゲイン量も深め。こもりすぎない音質もあって、TS系の中では守備範囲はそれなりに広く、クランチ程度の歪みで良ければ単一で不足なく使うことは可能です。
一般的な使い方とされるブースターとしての利用法では、バッキングよりリードギターに向いており、強めのコンプレッションと中域を生かした、存在感のあるソロを取ることができます。元々コンプレッションの掛かり方がきついため音がつぶれやすく、ゲインを上げすぎないように注意が必要ですが、うまくハマったときにはブルース系の粘っこいサウンドから、ハードなディストーションのソロまで、あらゆるリードサウンドを作る上で活躍できるはずです。Ibanezより復刻されている現行モデルは値段も安く、とりあえずの一台として無理なく導入できるのも嬉しいところです。
2004年に復刻された初代TS-808。TS-9と比べると、より音の重心が低い方に移っており、イコライジングのバランスが取れている分、TS系特有のこもった雰囲気をより強く感じます。セッティングによってはヌケの悪い音にもなってしまいがちですが、その分クリーミーな傾向がより強く、柔らかいソロの音が得たい場合はTS-9以上に適した選択になるでしょう。TS-9に比べ、値段がやや割高になっています。
Ibanez TS808 – supernice!エフェクター
TS-808の外装デザインを保ったまま、ミニサイズに収めたTS Mini。音色面については、中域に寄ったレンジ感やダイナミクス、コンプレッションなど、総合的に紛れもないTSですが、TS-808、TS-9どちらと比べても若干の煌びやかさがあり、わずかに腰高なサウンドに感じます。値段も非常に安く、ペダルボードへの入れやすさもピカイチなので、微細な差を気にしないのであれば、選択肢として有力です。
Ibanez TS MINI – supernice!エフェクター
通常のTS9を4モードにした拡張版。通常のTS9とほぼ同じ音質をもったTS9モードの他、若干レンジを広げて音に分厚さを加えた+(プラス)モード、ゲインを上げて低域を強調したHOTモード、ゲインをさらに上げ強くコンプレッションを掛けたTURBOモードの4種モードを選ぶことができます。チューブアンプのブーストの他、単一でも使える幅の広さを獲得しました。
Ibanez TS9DX – supernice!エフェクター
Korgより発表された音楽用の極小真空管NuTubeを使用した新世代のチューブスクリーマー。TS808の中に光るチューブを内蔵したその外観もインパクト抜群です。
音質の傾向的にはチューブが使用された効果か、より有機的かつ深みのある中低域を得ることができます。TS直系の中域に寄せたイコライジングはそのままながら、低域に厚みがあり、従来のTS808をよりモダンにした印象。原音とエフェクト音とのミックスなど、通常のTSにはない独特のコントロールもあって、作れる音の幅はもっとも広いと言えます。通常のTSでは物足りない、あるいはジャンル的に、より太い音がほしいなどといった場合には検討する価値があるでしょう。
Ibanez NU TUBESCREAMER – supernice!エフェクター
BOSSの初代オーバードライブOD-1は設計思想がTS-808と似通っており、よく比較される存在です。そしてそのOD-1の遺伝子をそのまま受け継いだSD-1もまたTS系エフェクターとよく比較して語られます。実際に歪み量や強めのコンプレッション感など、質感はかなりTS系と似通っており、とくにブライトなTS-9とは近い傾向にある音です。大きな差としては、SD-1の高域が相当なところまで伸びるところにあり、トーンコントロールを最大まで回すと、耳に痛いほど高域が強調されます。クリーミーで魅力的な中域、とくにハイミッド成分についてはTSに一歩譲りますが、TSにはないジャキッとした質感が表現できるところは大きな魅力です。
BOSS SD-1 – supernice!エフェクター
オーバードライブの定番とも言えるチューブスクリーマー。歪みエフェクターとして単一で使うには物足りなく感じることも多々ありますが、ブースターとしては真っ先に試すべきモデルと言って良いでしょう。中域にまとまった、いわゆるTS系という特徴的な音質は弾き手を選ぶのも確かですが、これでしか得られない魅力あるリードギターの音はやはり唯一の存在感を持っています。
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