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MXRはアメリカのエフェクターブランドを代表するメーカーで、創業は1972年にまで遡り、老舗中の老舗とも呼べる存在です。MXRサイズとも呼ばれる小型の筐体はメーカーの代名詞となり、優れた音を詰め込んだ数々の製品類は世界を席巻しました。その中には「Distortion+」や「Dyna Comp」、「Phase90」など、定番の地位を確立しているものも少なくありません。
今回取り上げる「MXR M133 Micro Amp」も上に挙げた機種と同じぐらいの歴史を持つ銘機で、1970年代に開発され発売されました。当時は”安物ギターを高級ギターの音にする”という触れ込みで登場した製品ですが、地味な役割でありながら優れた性能を持ち、確固たる存在感を発揮することから、様々なアーティストに使用されるに至っています。
2013年には当時流行り始めていたクリーンブースター系モデルの煽りを受けてか、「Micro Amp Plus」という新製品が登場していますが、程なくして販売終了となっています。これこそ Micro Amp がそのシンプルさがゆえに好まれている証拠でもあり、結果として50年近くも当時のままのスペックで販売が続けられる、稀有のロングセラーモデルとなっています。
GAINツマミが一つだけという超簡単設計で、自分の使い方に合わせて容易に調整できます。コントロールに迷わなくても済むその潔さと、とりあえずの一台としてセッティングしておけるその汎用性の広さこそが、このモデルの特徴であり、支持されている最大の理由でしょう。
ジョン・フルシアンテ、ジャック・ホワイト、ノエル・ギャラガー、ジョー・サトリアーニ、フリー(Bass)
基本的に音量をそのまま上げるだけで、味付けのほとんどないブースターですが、Gainを上げると音量に伴って、音全体が若干の丸さを帯びてきます。この丸さを帯びるという中において、付随的にハリが出つつ太さが増すような感覚があり、そのためかストラトキャスターなどのシングルコイルの音をやや太くするという目的で使う人が少なくありません。また、レンジが広く線が細いマーシャルアンプなどとも好相性です。
ある程度以上までGAINを上げていくと少しずつ歪んでくるほどの出力が得られるため、ゲインブースターのような使い方も可能で、太さが増すという性質からか、ベースで使われる例もちらほらと見かけます。
パッシブPU搭載の通常のギターから出た信号は、弱いハイインピーダンス信号ですが、エフェクターを通すことで強いローインピーダンス信号に変わります。ハイインピーダンスは外界のノイズなどの影響を受けやすく、あまり良い状態ではないため、エフェクターボードの初段でローインピーダンスに変えるためにバッファーと呼ばれるものをセットするのが良いと言われています。
Micro Amp はボードの初段に常時オンにして使用することで、バッファーとして利用でき、かつ後述するクリーンブースター的な利用にも適うため、非常に有用な使い方です。
Gainを低めに調整しておくことで、クリーンブースターとしてボードの始めにセッティングできます。クリーンブースターは単純に歪んでいないブースターのことですが、主にボードの始めに常時接続することで、サウンドのベースとなる部分において、音にハリを与えたり若干のEQの補正をしておくなどの用途で使われます。前述のバッファー使用とも被るため、大変よく使われる方法です。
ゲインの調整幅がそれなりに広いので、ゲインブースターとしても大変使いやすくなっています。
アンプや歪みエフェクターの前段において、ギターソロなどのゲインを強く稼ぎたい時にオンにするという使い方や、常時オンにしてハイゲインサウンドを得るという使い方も有効です。歪みエフェクターの後段、あるいはアンプのエフェクトループなどに挟むことで、音量のみを上げることもできます。こちらはソロ時に音量のみを上げたいという時などに良いでしょう。
ストラトとレスポールなどの、特性や出力が全く違うギターの持ち替えの際に、レベルとゲイン量の補正のために使うという使い方もあります。主にストラトなどの弱い出力の時にオンにすることで、持ち替えの際のサウンドの差の均衡を図ります。
Custom Audio Electronicsとのコラボレーションで生まれたクリーンブースターの銘機。全く何の味付けもなく、原音だけを忠実に持ち上げるという、シンプル極まりないブースターです。元々が薄味の Micro Amp に比べてもさらに味付けがなく、アンプの音質を一切変えることなくゲインアップを図ることができます。その性質上、クリーンブースター、バッファーや、ソロ時の単純な音量アップなどの使い方が主となりますが、ブーストされる帯域にムラがないため、ベース、アコースティックギターなどにも有効です。
MXR MC401 Boost/Line Driver – Supernice!エフェクター
こちらもMXRから発売されている、Micro Ampと並ぶもう一つのブースター。Echoplex EP-3(後述)を模倣した回路に Micro Amp のブースト回路を合わせたもので、Micro Amp ではないながらも同じ回路を搭載した製品です。EP-3風味がベースにあるため、Micro Amp に比べると味付けの度合いが強く、中低域を中心にしっかりとしたコシとハリが追加されて、音色がしっかりと前にせり出してくる印象を覚えます。トーンコントロールの搭載により、微細な音色調整ができ、かつサイズも小さいため、非常に使いやすいペダルとなっています。
MXR M293 BOOSTER MINI – Supernice!エフェクター
Xoticの大ヒット製品にして、1ノブのシンプルなブースターという部分において、Micro Amp と同じ立ち位置にあるペダル。通すだけで音が良くなるということで知られた、ヴィンテージ・テープエコーの銘機「Echoplex EP-3」のプリアンプ部分を模した製品です。上の「M293」と同じくEP-3の風味が強く出ているため、フラットな Micro Amp に比べると味付けは強く、ローミッド部分にかかる絶妙なコンプレッションとブースト加減が、原音にしっかりとした芯とハリを与えます。Micro Amp のようにベースにも使えるという汎用性こそないものの、ギター用ブースターの定番にふさわしいクオリティを備えています。
Xotic EP Booster – Supernice!エフェクター
同名製品のSpark Boosterを小型にして1ノブに落とし込んだ製品。小型な上に値段が安く、大変導入しやすいブースターとなっています。音色については、味付けはほぼゼロ。やや太くなると同時にギラッとした高域が目立つようになり、よりヌケがよくなります。この辺りはフラットながら若干の丸みを帯びるMicro Ampとは対照的とも言える変化で、ヌケが良くなるという性質上、ギターソロとの相性が特に良く感じます。
TC Electronic Spark Mini Booster – Supernice!エフェクター
50年近く販売が続くモデルだけあって、その使い方は実に多彩。使用するアーティストも数多く、それ自体がこのペダルの利用価値の高さを示していると言えます。昨今クリーンブースターは多彩な品揃えを見せますが、元祖でありながら埋もれない、Micro Amp を一度試す価値は十分あるのではないでしょうか。
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