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左:RC Boster初代モデル、右:EP Booster
1998年、南カリフォルニアにて産声を上げたXoticは、高品質なベースとベース用プリアンプの開発からスタートしました。ブランド名を冠した最初の製品はエンベロープフィルターの「Robotalk 1」で、この製品の成功をきっかけとして、PCI(Prosound Communications Inc.)からの正式ないちブランドとしてマーケティングが開始されることとなります。Xotic躍進のきっかけを作ったRobotalkは現在までバージョンアップを重ねながら同社の代表的製品となっており、当時からかなり完成度の高さであったことが窺えます。
当時のPCIのマーケティング戦略は日本への輸出を主要な焦点としており、2002年よりAC Booster、RC Booster、そして2005年にはBB Preampを開発、これらを日本に輸出して売り出すことに成功しました。この三製品については、日本のエフェクター市場を塗り替えるほどのヒットを記録します。当時のXoticブームは10年ちょっと前ぐらいのことであり、記憶している人も多いでしょう。
Xoticの快進撃はここより始まり、定番の地位を揺るぎないものにするのに、そう長くはかかりませんでした。現在でも自社で一つずつをハンドメイドで製作しており、高い品質を落とすことなく開発を続けています。
エフェクターのラインナップは歪み系を主とし、いずれの製品もエレキギターの王道を行くサウンドであるのが特徴。どのペダルもいわゆるアンプライクな粘り気、ピッキングダイナミクスに優れたサウンドを強みとしており、よく言えばクセがなく、あらゆる料理に使える万能調味料といったような趣を持っています。逆に個性的なサウンドのものは存在せず、極端なハイゲイン系、ファズ系などは2019年現在でもラインナップにありません。どこに使ってもそれなり以上の仕事をしてくれるという、このフラットで使いやすいサウンド特性こそが幅広く支持されている最大の理由でしょう。
また、2010年を少し過ぎた頃には、Scott Henderson氏やAndy Timmons氏など、超一流ギタリストとのタッグでシグネイチャーモデルのエフェクターを送り出しています。これは当時エフェクターの市場においてはまだ珍しく、ハイクオリティを裏付けるものとして、ブランドに高い付加価値を与えました。
そのクオリティの割に値段も高価になりすぎない程度に抑えられており、数万円をくだらない製品が数多くあるハンドメイド系エフェクターの世界において、ひときわコストパフォーマンスの高さを感じさせます。海外由来のエフェクターの中、Xoticだけが非常に大きなブームを巻き起こしたのはそれも一因となっています(後述)。
2000年代に入った頃から、一人あるいは少人数でブランドを立ち上げて、ハンドメイドのエフェクターを送り出す例が増えてきました。これらのブランドはそのほとんどが、手作業での完全なハンドメイド、厳選された部品に裏打ちされたクオリティの高さ、生産数が少ないために高価であるといったような特徴を持っており、質の高いエフェクターを待望していた層に幅広く受け入れられました。90年代まで、国内のエフェクター市場において、普及価格帯はBOSSの一人勝ち、高級機がFulltoneぐらいしか浮かばないといったような状況であったことを考えると、まさにこれは一大変革と呼べるものでした。
Xoticのエフェクターの登場はまさにこのような時期で、ちょうどエフェクターの市場が一気に増え始めた頃に当たります。購入できるエフェクターの選択肢が激増していく中、高級なハンドメイド系ブティックエフェクターに手が届かないものの、普及価格帯のエフェクターには飽きている、といった層や、普通のものより少し手を伸ばして良いものを持っておきたい、という層など、Xoticは様々なギタリストが手に取りやすいところに登場しました。個性が強すぎず、一級品の音色を持ちながらも、普及価格帯ペダルから少し高い程度の価格で手に入れられるという絶妙なコストパフォーマンスが、当時の市場においてひときわ魅力的なものと写ったのは間違いありません。Xoticはそのようなブームに乗り、そして自身もブームを巻き起こすことで、さらにエフェクターの市場を爆発的拡大に繋げる役割をも果たしました。
Xoticの名を日本中に知らしめることになった大ヒット製品。ブースターの名を冠してはいるものの、実質は軽めのオーバードライブといった風情で、単品でもオーバードライブとして十分歪ませて使用可能。ゲイン幅はそこまで広くないものの、ブルースロック程度であれば十分カバーできます。RC Boosterと同じくフルレンジブースターを謳っており、楽器本来の音の傾向をそのままに保てるのが特徴。歪みの質感も嫌味が一切ない、正統派を地でいくもので、Xoticブランドが狙うサウンドの路線がこの一点に現れています。ゲイン、ボリュームとベース、トレブルのEQを装備。EQがいわゆる”トーン”ではなく、ベース、トレブルと別々になっているところが特徴で、これによるセッティング面での恩恵は無視できません。
Xotic AC Booster – Supernice!エフェクター
AC、RCとの”三兄弟”の中でも最も後に登場したペダル。プリアンプという名が付いており、実際にプリアンプとしての利用も可能ではあるものの、実質的には強めのオーバードライブといったサウンドの製品です。AC、RCと違い、歪ませることを始めから主眼に置いて作られており、最大までゲインアップすると、かなりの歪みが得られます。ハンドメイドエフェクターらしく、ゲインを上げてもつややかさを損なわず、ピッキングダイナミクスにしっかり追従するアンプ的な要素を保ちます。フルレンジを謳う二製品と違い、ピークをやや中域に寄せることで、スムーズかつパンチのある歪みのサウンドを得ることができます。
Xotic BB Preamp – Supernice!エフェクター
ゲイン、ボリューム、ベース、トレブルという4つのコントロールを持っていた初代に、ゲイン2を追加し、二段階のゲインを切り替えられるようにしたRC Boosterの後継機。フルレンジブースターの中でもいわゆる「クリーンブースター」にカテゴライズされる製品で、ACに比べてもゲインは低め。基本的には音の質感をそのままに音量を上げるという、通常のクリーンブースター的な役割をベースとしながら、可変幅の広いEQを搭載することで、積極的に音色を作っていくこともできます。それによって、ソロ用にパンチを効かせたり、中域にハリを与えたりするなど、使いどころは幅広く、さらに新しく搭載されたゲイン2によって、二段階のブーストを足下で切り替えられるようになっています。
Xotic RC Booster V2 – Supernice!エフェクター
マーシャルの「1959 Super Lead」、いわゆるプレキシマーシャルの音を目指して作られたペダル。マーシャルらしい目の粗い歪みを非常によく再現しており、アンプライクな粘り気をも備えています。オリジナルのアンプに比べるとゲイン幅は広めに作られており、ディストーションといえるほどのハイゲインまでもカバーすることで、いわゆる”ロックなマーシャル”のサウンドイメージを損なわないように設計されたような印象があります。表面には3つしかコントロールがないものの、裏蓋を開けると内部にはDIPスイッチがあり、そこでも音の傾向を細やかにコントロール可能。一般的なエフェクターよりもさらに小さなサイズで、ボードにも組み入れやすく、Xotic製品内でも一、二を争うゲイン幅の広さもあって、大変使い勝手の良い製品です。
Xotic SL Drive – Supernice!エフェクター
エリック・ジョンソン氏の使用でも有名な、ヴィンテージディレイ「Echoplex」のプリアンプ部分を再現したブースターペダル。SL Driveと同じく小型サイズにつまみが一つという、極めてシンプルな設計でありながら、通すだけで音にハリが加わりつややかさが増すという、魔法のような効果を得ることができます。Echoplexをイメージしたとされる製品は他にもいくつかありますが、その中でももっとも爆発的に売れ、発売後10年と経たないうちに不動の定番として君臨しました。現在ではクリーンブースターと名が付けばとりあえずこれ、というほど浸透しており、有名なマルチエフェクターやギタープロセッサーにも、同モデルの再現モデリングが搭載されるほどになっています。
Xotic EP Booster – Supernice!エフェクター
スタジオ機器のような掛かり方から、ダイナコンプのような”コンプらしい”サウンドまで幅広く作ることができる高品質コンプレッサー。SL Driveと同じく、内部DIPスイッチで音色の傾向を細やかに決めることができ、それで作った音色をブレンドというコントロールで原音とミックスして出力します。これらの凝った信号の経路ゆえに幅広い音作りが行え、クリーントーンからディストーションまで、使えるサウンドを模索することができます。ただのコンプレッサーでありながら、ブースター的な使い方、あるいはベースに使うなど、広い用途で使えるペダルです。
Xotic SP Compressor – Supernice!エフェクター
BB Preampをベースとして、直列に別々の歪みを二つ搭載したモデル。Aチャンネルの方は通常のBB Preampを踏襲したようなサウンドになっており、パンチの効いたオーバードライブサウンドが得られます。Bチャンネルは3つのEQを装備し、Aチャンネル以上に細やかなセッティングが可能。このやや個性の違った二つのチャンネルを直列に並べ、片方をブースターのように使用することで、一台では不可能な幅広いサウンドの構築ができるようになっています。AとBの順番の変更まででき、無限大とも言えるサウンドの幅広さはXoticでも随一です。もちろん片方だけを使用することも可能。ゲインステージが二つあることで、得られるゲイン幅も一、二を争います。
Xotic BB Plus – Supernice!エフェクター
非常に優秀な製品が揃うXotic。ある程度うまくなると一度は誰でも使ってみるというほど、中級者以上のギタリストにとっては定番となっているブランドですが、その優等生なサウンドはまだギターの音色がよくわかっていない初心者にもおすすめ。これがエレキギターの音、という教科書として、自分の耳を作っていく際のリファレンスとして、この上ない存在となり得るからです。
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