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MXRはニューヨーク州西部ロチェスターに、Keith Barr氏とTerry Sherwood氏の2名により設立されたエフェクターのメーカー。創業は1972年と非常に古く、エフェクターのブランドでは最古参のひとつに数えられます。創業者の二人は高校の同級生であり、はじめはオーディオ用品の修理事業などをメインとして業務を行っていました。MXRの立ち上げについてはこのときの経験が活かされており、すぐに第一号の「Phase 90」の開発に成功。その後、今でもなお愛される銘機が次々と開発されていきます。
MXRがエフェクター開発に着手しだした頃は、新たな音楽が次々と生まれていた非常にホットな時代でした。「Phase 90」や「Dyna Comp」などは、70年代に隆盛を誇ったファンクやクロスオーバー(現在のフュージョン)のミュージシャンが真っ先に飛びつき、中でもStuffのギターを務めたコーネル・デュプリー氏などは、その愛用者の代表格でしょう。70年代も終わりに近づくと、エドワード・ヴァン・ヘイレン(エディ・ヴァン・ヘイレン)氏が鮮烈な登場を果たし、MXRエフェクターを使用したそのサウンドはロックシーンを席巻します。80年代始めには、オジー・オズボーン・バンドの故ランディ・ローズがマーシャルアンプと「Distortion+」という組み合わせで、ロックギターの新たなサウンドを提示しました。
新たな音楽が生まれ続けた70年代、MXRはその音楽の発展に常に寄り添い続けていたのです。
MXRのペダルといえばこのサイズ。そしてポップな印象を与える明るいカラーリングも特徴的。
MXRの製品は、いまだエフェクターの黎明期とも言える1970年代前半において、画期的なコンパクトサイズで送り出されました。現在ではこのサイズは俗に「MXRサイズ」として定着しており、一般的には最もよく見られるサイズともなっています。例外もいくつか見られるものの、このコンパクトな筐体に3つあるいは4つのコントロールのみを備えるシンプルな構造が基本となっており、少ないコントロールながら、それだけで十二分な音色の幅広さが得られるところはMXR製品の最大の特徴でしょう。
また、特にJim Dumlopの傘下に入ってからは、常に貪欲に新しい製品を世に送り出しているところも特筆すべき点です。2008年に発売された「M169 Carbon Copy」などは、発売後10年も経たないうちから、ディレイ・エフェクターの定番商品の地位を揺るぎないものにしており、現在でも冷めることのない、MXRブランドの製品開発に対する熱量を示しています。
はじめてのイコライザー・エフェクター【ギター博士】
MXRの10バンドイコライザー「M108S 10 Band EQ」を使った演奏
MXRの最大の功績とも言える「Distortion+」は同社の第2号機として1973年に送り出されました。当時、歪みエフェクターの代表格はファズであり、多くの場合「ファズを通した音」を得るために使われていました。ファズはそもそもジャリジャリして尖った音を特徴とし、その分、芯は細くなり、攻撃的な性格の強いペダルです。Distortion+はこれとは全く設計思想が違い、アンプをオーバーロードさせたような自然な音を目指して作られたのです。芯がしっかりと残り、かつマイルドで伸びやかな歪みを実現したこのペダルは、とげとげしいファズとは全く違うもので、アンプの音量をむやみに上げなくても相応の歪みが得られるという点で、非常に革新的でした。このエフェクターこそが現在のオーバードライブ、ディストーション系エフェクターの第一号と呼べるものであり、「ディストーション」という言葉はこれを機にエレキギターの世界に定着します。
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上述した「世界初のディストーション」。刷新を繰り返しながらも、黄色い筐体や二つのコントロールなど、当時を思わせる外観のまま現在も生産が続けられています。強めのオーバードライブと言った方がしっくりくるサウンドながら、軽めのクランチから、ハードなドライブサウンドまで、幅広い音色をカバーできます。つまみが二つしかないため、音色が作りやすく、特に初心者にはおすすめ。コンプレッションが少なく、アンプをオーバーロードさせたようなホットでヌケの良い音は、豊富な倍音を含んでいるがゆえの賜物。このサウンドの完成度は高く、現在でも歪みの一つの指標となっています。
MXR M-104 DISTORTION+ – Supernice!エフェクター
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つまみがゲインしかないという、超シンプル設計のブースター。音を歪ませずに太さや煌びやかさを加える「クリーンブースター」のような位置づけの製品で、歪んだ音はより伸びやかに太くなり、クリーントーンでは音にハリを与えてくれます。こちらも1980年代より途切れることなく生産が続けられており、地味な存在ながら人気者であることが窺えます。ギターの他、ベースにも使用可能。ちなみに、ベースとトレブルのコントロールが追加されたMicro Amp Plusなる製品が一時期登場しましたが、現在は生産終了となっています。
MXR M-133 MICRO AMP – Supernice!エフェクター
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こちらもMXR初期のころからラインナップの一角を担う、定番コンプレッサー。コンプレッサーとはcompress(圧縮)という名の通り、大きな音を圧縮して抑える働きをもち、結果的に音量が均一化するために、弾きやすく聴きやすい音が得られるというもの。このDyna Compはギター用コンプレッサーとして定番ですが、その人気の最大の理由は通常のコンプレッサー効果以上に、「ダイナコンプの音」と呼ばれるほどに個性的なその音色。「パコン」と形容されるサウンドはクリーントーンでのカッティングに非常にハマり、独特の気持ち良い音色が得られます。2017年、さらに小型化を進めたDyna Comp Miniが登場しました。
MXR M-102 DYNA COMP – Supernice!エフェクター
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記念すべきMXRの第一号機。ヴァン・ヘイレンが使用したことでも知られているペダルですが、サウンドは攻撃的というより、むしろ非常にマイルドで暖かく心地よいものです。高価でかつ巨大だったロータリースピーカーと似たような効果が得られるということで、キーボード奏者などにも人気があり、現在においてもギタリスト以外からも人気が高いペダルです。つまみが一つしかない超シンプル設計ですが、得られる音色は絶品であり、発売後50年も経ってなお、アナログフェイザーの代表格に位置づけられています。
MXR M-101 PHASE 90 – Supernice!エフェクター
はじめてのフェイザー・エフェクター【ギター博士】
PHASE 90のミニサイズ「PHASE 95」を使った演奏
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MXRの歴史ではかなり最近の製品に入るであろう、2008年登場のアナログディレイペダル。登場するや否や大人気となり、今やすっかり定番の地位に上り詰めました。アナログならではの暖かみのあるサウンドは、デジタルではなかなか得られないナチュラルなもの。徐々にぼやける自然な減衰にはアナログディレイ以前に主流であった、テープエコー的な部分も感じさせます。コントロールはシンプルに3つで、ディレイ部分に揺れを掛けてコーラス効果を得るMODスイッチを装備。アナログながら600msのロングディレイまでをカバーし、必要にして十分な機能をもっています。あまりにも売れたためか兄弟機が多く発売され、ミニサイズのM299 Carbon Copy Mni、音色に明るさを備えたM269 Carbon Copy Bright(限定生産)、ブライトスイッチ、タップテンポ入力に対応した大型モデルのM299 Carbon Copy Deluxeなどが存在します。
MXR M-169 CARBON COPY ANALOG DELAY – Supernice!エフェクター
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水色の筐体が目を引くアナログコーラス。MXRのエフェクターにしては多めの5つのコントロールを装備し、幅広い音色が作れるのがポイント。BOSSの製品などに隠れがちなコーラスエフェクターの中において、隠れた銘機と呼べる存在で、その暖かみと清涼感が両立したような爽やかな効果はまさに絶品です。俗に「えぐいコーラス」と呼ばれるような激烈な効果は得られないものの、音色の隠し味や、広がりを追加したい時などにはまさにうってつけ。ベース、トレブルの二つのEQのおかげで非常に音が作りやすく、求める音色にすぐに近づけることができます。
MXR M-234 Analog Chorus – Supernice!エフェクター
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この中では異色のメタル用ディストーション。あらゆるエフェクターの中でもトップクラスのハイゲインを持ち、切り裂くような鋭いサウンドがいとも簡単に得られます。6つのコントロールに二つのスイッチを装備していますが、ほとんどがイコライザー系となっており、Mid Scoopは中域をごっそり切り取ってドンシャリを作ることができ、Freqコントロールでは中域を変化させる幅を調整可能。これらによって得られるサウンドの幅は非常に広く、激烈に歪むゲインコントロールとも相まって、様々なギターに合わせていくことができます。通常のオーバードライブやディストーションとはかけ離れた攻撃的なサウンドは、MXRブランドの幅広さを感じさせるものです。
MXR M-116 FULLBORE METAL – Supernice!エフェクター
どのようなギタリストでも、割とボードに一台はあったりするのがMXRのエフェクター。Phase 90やDyna Compのように、個性的な音色を持つ銘機もありますが、どの製品にも共通するのが、それなりの使いやすさと仕込みやすいサイズ、手に取りやすい価格、そして音色に対する信頼性の高さです。アメリカが生んだ稀代のエフェクターブランド、あまりよく知らない方は一度よく知ってもらえると、エフェクター選びもぐっと楽しくなりますよ。
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