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’67 Dano Reissue Black
デザイン面、機能面、サウンド面でいつも「独特」と呼ばれる「ダンエレクトロ(ダンエレ)」は、70年以上に及ぶ歴史をもつ、由緒あるブランドです。製品はギター、ベース、アンプ、エフェクターなど多岐にわたり、しかもそのすべてが「古き良きアメリカ」を体現した、大人には懐かしく、若い人には新鮮でクールに見える独特のファッション性を持っています。
その製品群は、「長い歴史と認知度にもかかわらず、コピーモデルが見つからない」というところも含めて独特であり、「孤高」と呼んでも差し支えないでしょう。今回は、この孤高の存在、ダンエレクトロのエレキギターをチェックしていきましょう。
のちに「ダンエレクトロ」を立ち上げたネイザン・ダニエル(Nathan Daniel)氏はもともとエンジニアで、ニューヨークにてギターアンプを独自開発していました。製品に搭載された「プッシュプル回路」は、現代ではギターのコイルタップなどに使用されますが、氏の発明だったと伝えられています。
その後、エピフォンの下請けを1934年から12年間続け、1947年に独立、「ダンエレクトロ」を立ち上げます(ちなみにフェンダーの前身「K&Fマニュファクチャリング」立ち上げは1945年)。
はじめはアンプを作っていましたが、フェンダー・ストラトキャスターが開発された1954年から、ソリッドボディのエレキギターの生産も開始します。社長がエンジニア出身ということからか楽器に対する考え方は柔軟で、
など、いろいろな仕様が他にはない独特のラインナップでした。それでありながら、低価格だったことと通信販売で流通されていたことなどから、ダンエレクトロのエレキギターは当時、アメリカで最大のシェアを誇っていたと伝えられています。
1966年にはMCA(現在のNBCユニバーサル)に買収されましたが、翌年にはエレクトリックシタールを発表、インド音楽にハマったジョージ・ハリスン氏が愛用するなど、物議をかもしました。
ダンエレクトロ製品の生産は1969年にいったん終了しましたが、1990年代にエヴィッツ社がダンエレクトロの権利を獲得、ブランドが復活して現在に至ります。
Danelectro 59 Modified New Old Stock Electric Guitar
倉庫で見つかったという昔のピックアップを採用したという「59”M”NOS」。ポップなカラーリングがとてもかわいらしいぎたーですが、このようにオジサンが構えてもクールですね。ダンエレには不思議な魅力があります。
「独特」「唯一無二」「孤高」と称されるダンエレクトロですが、どういう特徴があるのでしょうか。後継機種の最も多い伝統的モデル「’59”O”」「59M」など59シリーズのモデルをピックアップして、その特徴をチェックしてみましょう。
59O FACTORY SPEC
1958年には流通が始まっていたというこの「59」こそが、かのジミ・ヘンドリックス氏やジミー・ペイジ氏ら、名だたる名手が一度は使ったという「ダンエレクトロのアレ」です。メインとして使用したギタリストはそれほど多くありませんでしたが、スライド奏法のために持ち替えるギターとして使用される例が多く見られました。60年代当時からコストパフォーマンスを重要視した、言わば「安いギター」でしたが、その存在感は今なお健在です。
ダンエレクトロ最大の特徴ともいうべき構造が、硬質繊維板「メゾナイト」を使用したホロウボディです。ボディは外周を木材で組み、トップとバックにメゾナイトを張って作ります。ピックアップやブリッジを取り付けるセンター部分には木材が仕込まれた、いわば「セミホロウ構造」となっており、ギター本体は軽く、空気感を含んだ独特の鳴り方をします。
メゾナイトは、7気圧の蒸気でほぐした木材を28気圧で押し出して作る板で、1924年に工学者ウィリアム・H・メーソン氏により開発されました。木材が持つ成分の作用で繊維同士が結合されるため接着剤は使われず、有害物質も含まれません。
曲げ強度、引っ張り強度、密度、安定性にすぐれ、ドア、屋根、壁、机、カヌー、卓球台、スケートボード場の材料に、また引越業者の養生(ようじょう)にも利用されています。
59O:ボディバック
「59」シリーズは、セミホロウ構造のボディに、21フレットのメイプルネックがネジ留めされます。ボディ両側の深いカッタウェイにより、ハイポジションの演奏性はかなり良好です。このカッタウェイ形状から「ショートホーン(短い角)」という愛称で親しまれました。
59M FACTORY SPEC N.O.S.+ Orange:ヘッド
弦長は621mm(約24.5インチ)で、ギブソンスケールよりやや短いのが当時の寸法です。現代版の「59」では、636mm(約25インチ)に拡張されています。金属製ナットを採用しているのは、開放弦とフレットを押さえた弦とのサウンドを近くする工夫です。牛骨や樹脂の方が安上がりのはずですが、こうしたサウンドのためのコストは捨てない、価格と性能のバランスを深く考えたギターだということが分かります。
59M FACTORY SPEC N.O.S.+ Blue
「スタック(積み重ね)ポット」を採用しているのも大きな特徴です。ピックアップそれぞれのコントロールポットを上下の二段に分割し、下段でボリューム、上段でトーンを操作します。ピックアップごとに操作系がまとめられていてたいへんわかりやすく、またルックスもスッキリします。
スタック式ポットは構造が複雑なためパーツ単価が高く、普通のポットを4つ採用した方がパーツ代は安上がりです。製造においてはマウント用の穴を空ける、パーツを設置するといった作業もコストに入ってくるので単純な判断はできませんが、安いだけの設計ではなく、いろいろしっかり考慮されているのだと考えることができます。
なお、旧式のフェンダー・ジャズベースにもスタック式ポットが使われていますが、こちらは上段がボリューム、下段がトーンで、ダンエレクトロとは逆になっています。
59M FACTORY SPEC N.O.S.+ Orange:ボディ
「リップスティック・ピックアップ」はメゾナイトに並ぶダンエレクトロの代名詞で、金属製のピックアップカバーに口紅の容器を使用しています。外側に見えているドーム状のカバーは見えていない内側までぐるっとピックアップを取り囲んでおり、外部ノイズを逃がす役割をしっかり果たしています。内部には棒状の磁石を使ったコイルが一本横たわっており、6本の磁石が並ぶフェンダーのシングルコイル・ピックアップとは違った構造です。
サウンドは「鈴のような」と表現される透明感を持った細いもので、コード弾きに特に良好です。ドライブさせた時のギャンギャンなサウンドは「他のギターで再現するのは不可能」と言われる、確固とした存在感を持っています。この音を「万能」と評するギタリストは世界広しといえどほぼいないと思われますが、その守備範囲の狭さゆえの強烈な個性は注目に値します。
また、高さ調節ネジが表から見えない、スッキリとした可愛らしい外観になっているのも大きな特徴で、調節ネジはボディの裏側にあります。
ブリッジは、金属製のブリッジプレートにローズウッド製のサドルが乗っかっている、非常にシンプルな設計です。しかしこれは実に深く考えられており、ブリッジプレートをボディに固定する3本のネジによってブリッジの高さと弦の張力をある程度調整できるほか、ローズサドルの位置を微調整できるため、オクターブ調整もある程度できます。
ローズサドルは金属製のサドルより「暖かみのあるサウンドになる」と言われ、好きな人の多い仕様です。
59Mではバダス・ブリッジ(後述)を採用しています。
低価格に深くこだわるのも、ダンエレクトロの大きな特徴です。ダンエレクトロが主張するのは懐かしくも新しいデザインと独特のサウンドなのであって、高級感やありがたみはむしろいらないようです。
我らが「59”O”」は、名だたる著名アーティストが使用した59年当時の仕様を再現したヴィンテージモデルであるにもかかわらず、10万円をはるかに下回る価格で流通しています。手に入れやすい、身近な存在である、という姿勢はブランド立ち上げ当時から連綿と受け継がれています。
ではここから、ダンエレクトロからリリースされているエレキギターのラインナップをチェックしていきましょう。音楽の歴史に足跡を残すヴィンテージモデルばかりでなく、現代の音楽シーンに合わせた新しいギターも作られています。
Danelectro 59xt Electric Guitar Demo
原稿執筆時点では日本での流通が始まっていないニューモデル。個性の強さと守備範囲の狭さが売りのダンエレクトロでしたが、現代ではダンエレらしい雰囲気とサウンドをしっかり維持しながらも、現代の音楽シーンで十分活用できる多機能なギターに注力しています。
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