エレキギターの総合情報サイト
──ものすごく広いんですね!
石川 これからの発展を想定し、余裕をもった広い工場にしています。敷地には更地もありますから、将来的にどのような展開も可能です。現在で少数のメンバーで稼働させています。
当工場は5年ほど前にこの場所(岐阜県可児市)に移転してきました。ゼマイティスの工場として稼働する前は、海外ブランドのOEM生産やオリジナルギターの製作などを行っていました。現在はゼマイティスの生産に全力を注いでいます。
これが、この工場の心臓部と言っても過言ではない「CNC(コンピュータ数値制御)ルータ」です。これはアメリカ製で日本での導入例は少ないですが、本国のギターメーカーでは定番となっています。
オペレーションはこのパネルモニターで行います。データを呼び出し稼働したり、その場で機械に命令を出したりするものです。
「ATC(Automatic Tool Changer)」という機能が付いていて、刃物の持ち替えもプログラミングできます。刃物は全部で20本装着でき、今後の拡張にもゆとりがあります。CAD/CAMというシステムを使っていまして、何番の刃物で、3Dの図面に対してどこをどう削るかなどをプログラミングします。刃物の回転数、回転の方向も自在です。木工と言ってもデータは100分の1ミリ単位で、また数値制御とはいえ木工ならではの刃物や削り方の知識は必須です。
CNCでは一般的な「Gコード」というコンピュータ言語を使うんですが、私がこうした制御を勉強したのは入社してからです。以前は、Gコードの入力をすべて「手打ち」していました。現代のCNCは3DCADやCAMなどを駆使することでプログラミングのオートメーション化が進んでいてデータを作りやすくなっていますが、手打ちで仕組みを勉強した経験はものすごく役に立っています。もちろん、現在は私も3DCADとCAMを使い稼働させています。
──覚えることがものすごくあるんですね!
石川 伝統的な工法と共に、このような現代の工法を取り入れていくことで、ギターとしての精度を高めていく事が出来ますし、さらなる新しい提案をしてゆく事も可能になります。もちろん、トニー・ゼマイティス氏より受け継いだ遺志が根本にある事は変わりありません。その遺志のもと、ゼマイティスを前進させてゆくのが神田商会使命であると考えていますので、より良いギターのために常日頃から技術の研究や開発を重ねています。
CNCで削り出したネックです。CNCを駆使することでバラつきを抑え、精度の高いネック成形が可能になります。もちろん、この後に職人による「手磨き」が待っています。ジョイント部が四角いですが、これが完成形です。
ジョイント部がフロントピックアップにまで達する、いわゆる「ディープジョイント」です。四角い穴に四角いネックが挿入されるので、挿してから左右上下の角度を微調整するなどのごまかしが一切効きません。高い精度と技術が要される工程です。一般的なセットネックよりも接地面積が大きくなるのでロングサスティーンにも影響する部分になります。
ここは塗装ブースで、「ベンチュリーブース」という水を張るタイプのものです。カスタムショップにはニトロセルロースラッカーを使用しているのでエアコンや除湿機を使い、雨の日には塗装を行わないなど、湿度管理には気を使います。
塗装待ち、塗装後とギターと混在していますが、パールフロントは自然な感じを出すためにトップ面の貝には塗装をしません。
こちらは機械加工を行う作業場です。ピンルーター、バンドソーなど、機械自体はどこにでもある普通のものです。
ここが「サンディングルーム(研磨室)」です。部屋の奥には「三点サンダー」が設置されていますが、この部屋のスペースに合わせて組んだものです。
ここでの作業は研磨が中心ですが、ネックを接着するなど他の作業もあり、柔軟に使用しています。
CNCや工作機械などを活用しますが、手で行う作業もかなり多いです。経験と技術が求められます。
こちらは仕上げ待ちのパールフロントです。この後、研磨して仕上げを行います。研磨に耐えられるよう、貝がなかなか分厚いのが分かりますね。
これは昨年の楽器フェアや2017年NAMMショウに出展した新しいモデルで、メタルフロント風のデザインをウッドでやっています。この模様は「精度の高いレーザー加工機」で描いています。
──これはまたかっこいい!新しいものも生まれているんですね!
石川 こちらが検品や調整を行う作業場で、階段を上って奥に行くと材木の保管庫があります。下では、完成したギターが検品作業を待っていますね。
──万華鏡をのぞいているかのような光景です。壮監とは、まさにこのことですね!左用もあるのはありがたいです。
石川 完成したギターは全て手にとって、入念にチェックします。作ってそのまま出荷、ということはしません。アンタナス(国内提携工場製)も、カシミア(韓国製)についても、現地にスタッフが飛んで検品を行っていますが、ここでも改めてチェックします。
──とても写真うつりのいい指板材ですね!チョコレートみたいです!
石川 厳選に厳選を重ねた真っ黒なエボニーですが、ここから更に絞っていきます。材料に対してはとても厳しいですよ。ゼマイティスとしては柾目(まさめ)を使いたいのですが、仕入れる時には真っ黒な上に切削面が粗いので木目が判別できず、柾目材か板目材か分からない事が多いです。真っ黒で木目がまっすぐのものしか採用しませんから、茶色がかっているものや縮んで杢のように見えるものなど、容赦なく省いていきます。本当に美しい「最上級」のものしか使っていません。
石川 「メイプルブロック」を積んでいます。これを水平に割ったら「ブックマッチ」ができます。模様が近いものもありますから、モノによってはこのまま貼り合わせて2ピースボディを作ることもできます。
こちらはキルテッドメイプルのトップ材ですが、1ブロック「ウン万円」という世界の代物です。
──ぐつぐつ煮えたぎっているような模様ですね!
石川 当工場はゼマイティス専門なので、木材のバラエティはそれほどでもありません。ちゃんとしたマホガニーとエボニーさえあれば、ゼマイティスは作ることができます。そのかわり買い付けはとても慎重です。
アフリカンマホガニーのボディ材ですが、これについては大きな丸太で買って、ボディ用にカットしました。中を見るわけにもいかず、最悪なら空洞が空いていることもありますから、丸太で買い付けるのはギャンブルみたいなものです。しかし欲しいサイズにカットできるのは代えがたいメリットです。フシだらけということもなく、木目も真っすぐ通っていますから、今回の丸太は「当たり」と見ています。全てに重さが記されていてグレード分けをしていますが、4キロほどのボディ材ならギターにする時には2キロほどになります。同じアフリカンマホガニーでも色の濃いものも薄いものもあります。
3.7キロのボディ材と6.7キロのボディ材です。重い方はそれだけ「目が詰まっている」もしくは「硬い」ということになります。同じ木材で体積も同じなのに、これだけの差が生まれてしまうものなのです。だから材料は厳しく選別しなければなりません。
石川 ここが倉庫兼配送センターで、各グレードのゼマイティスがここに集結します。国内に発送するものと輸出するものとでは、説明書が英語か日本語かなど中に収める付属品に違いがありますから、それらも考慮して梱包します。
出荷の準備や段ボールのプロデュースも私たちが行っています。段ボールは輸出に耐えられるよう、硬い紙質で二重構造の頑丈なものを採用しています。
できあがった製品は段ボールに収められて、出荷を待ちます。一つ開封してみましょうか。
──何と美しい!眼福です!ステージでの輝きを想像したら、たまりませんね!
石川 応接室にはなかった、カスタムショップ製の真っ白な「ホワイトパール」です。パールとアバロンの組み合わせでいろいろなデザインのあるパールフロントですが、どれがずば抜けてというものはなく人気は拮抗しています。
ハードケースのプロデュースも、私たちが行っています。
──ありがとうございました!
以上、岐阜県可児市、神田商会工場を見学させていただきました。最新鋭のマシンを駆使した高精度な加工、将来を見据えた新しい加工技術の導入など、伝統的な設計を守りながらも現代のギター生産が行われているのが分かりました。
ゼマイティスのギターを…
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