「コピー」に挑戦してみよう!

[記事公開日]2016/3/25 [最終更新日]2017/8/15
[編集者]神崎聡

guitar-copy

ドレミの音階を弾いたりコードを鳴らしたり、基礎的な演奏ができるようになってきたら、いよいよフレーズや楽曲のコピーに挑戦してみましょう。ドレミやコードはどんな曲でも使われますが、具体的にどんな使われ方をするのかを実際のプレイから学ぶことで、あなたの腕前はメキメキと上がっていくことでしょう。

プロの現場では、バックバンドやサポートの仕事で精度の高い完全コピーが求められます。出版用のバンドスコアを採譜するなど、耳コピで楽譜を書くこともあります。アーティストの活動でも、ツアーの前に昔の自分のプレイをコピーするなんてことが普通に行われます。

ここでは、初心者からプロフェッショナルまでみんなやってる「コピー」にどんな意味があるのか、またどうすればいいのかを紹介していきます!

上達の近道は、コピーにあり!


Roy Buchanan – Train Blues (Live)
「腕前と影響力の割に、無名のままでいる不遇のギタリスト」の代表格ロイ・ブキャナン氏。彼が奏でるテレキャスターサウンドに衝撃を受けたエリック・クラプトン氏とジェフ・ベック氏は、慌ててテレキャスターを買ってきてそのプレイをコピーしたと言われています。この例を出すまでもなく、どんなウマい人でもコピーによって自分にないものを吸収し、プレイの幅を広げたり技術を向上させたりしています。

コピーって、何をすること?

ここで言う「コピー」とは、

  • TAB譜を読んでその通りに弾く
  • 譜面に頼らず「耳コピ」する
  • 動画を見て手の動きを真似する

などのようにして「ギタリストのプレイをその通りに演奏すること」です。完全再現を目指した精度の高いコピーを「完コピ(完全コピー)」といいます。

同じ曲を演奏する場合でも、自分なりの解釈やアレンジを込めた演奏は「カバー」になります。コピーしたプレイや楽曲を自分のものだとしてそのまま発表するのは「盗作」になるのでやめましょう。

コピーのメリットは?

初心者がフレーズや楽曲のコピーをするのには、さまざまなメリットがあります。
まず第一に、

「弾けると嬉しい!」

コレです。たとえ1フレーズでも、好きな曲を弾く楽しさ、弾けたことで感じる嬉しさ、これをたっぷり味わうことができます。

また、曲を楽しみながら

こうした基礎的なテクニックを身につけることができます。また、お手本のサウンドに近づけようとすることで、アンプやエフェクターによるサウンドメイキングの勉強もできます。

いろいろな曲をコピーしてレパートリーを増やしていくのは、とても楽しいことです。でも楽しいだけではなく、これを続けていくと「よくあるパターン」が分かってきたり、演奏の幅が広がったりしていきます。そうすると1曲を仕上げる期間を短くできたり、もっと難しい曲に挑戦できたりして、もっと深い楽しさを味わうことができます。バンドで5〜6曲コピーできたら、その曲でライブだってできますね!

中級/上級者になっても、フレーズのアイディアを仕入れたりジャンルに対する理解を深めたりするなど「引き出し」を増やすのに、コピーは欠かせません。上級者になってくると、「このときどんな状況で、ギタリストは何を考えてプレイしたか」までコピーして自分のプレイに反映できます。

どこまでコピーすればいいの?

いくらコピーが重要だからと言って、はじめから完コピを目指す必要はありません。バッキングなら最初はコードの押さえ方だけ、次にリズムを何となく、という程度でもまったく構いません。メロディ弾きならまずはテンポを落としてゆっくり演奏、慣れたらテンポを上げていきます。初心者のうちは、この段階でコピー「合格」と判定しても大丈夫です。

生涯初コピーならば、1曲弾き切るだけでもかなり大変です。ですからイントロからエンディングまで、多少のミスはあっても止まらず演奏できたら合格です。どんなに簡単な曲であっても「1曲弾けた☆」という実績は次につながります。

コピーを続けていくと、得意なところと苦手なところが出てくることでしょう。得意なところではプレイの楽しさを存分に味わい、苦手なところではそこに注目して練習を重ねていくことで、また腕前を上げていくことができます。

それに慣れてきたら少しずつコピーの精度を上げていきます。TAB譜を使うなら、譜面に忠実にキッチリ弾いたり、音源と聞き比べて譜面では表現しきれない強弱やビブラートの加減、ミュートの加減、チョーキングの上げ方を再現したり、機材をそろえてサウンドまで再現したり、ついには譜面のミスを指摘したり、順番にステップアップしていきましょう。

(コピーをしても)自分のオリジナリティは伸ばせないんじゃないの?

「ギターは誰にも習わなかったよ」エドワード・ヴァン・ヘイレン
「ジミヘンを心から尊敬していたから、彼の真似はしない」ジョー・サトリアーニ

言うまでもなく、アーティストはオリジナリティ(個性)が大事で、必ずと言っていいほど自分自身のサウンドやプレイスタイルを確立しています。でもその個性は、「何も参考にしていない完全にオリジナルなもの」なのでしょうか?…それはあり得ません。エディも師匠も、先輩ギタリストのコピーに明け暮れてギターや音楽を学び、それを参考にして自分の個性やプレイスタイルを確立していったのです。

「オリジナリティの出発点は、コピーである」と言われます。たくさんコピーしてきた結果としてオリジナリティが生まれ、自分のスタイルが作られていくという考え方です。画家や書家や作家、音楽家など、クリエイティブな活動で誰かのアイディアを真似する重要性は、大昔から語られていました。

「守破離(しゅはり)」の考え方

能楽を完成させた世阿弥の指南書「風姿花伝」 茶道の大家、千利休による指南書「利休道歌(利休百首)」 といった歴史的な大家が執筆した芸能のマニュアルにおいても、コピーによって「型」を身につけることの重要性が説かれています。 こちらの世界では上達の三段階として「守破離(しゅはり)」という考え方があり、現在ではスポーツやビジネスにも応用されています。ギターでは、 :「型」をその通りに身につける = コピー :「型」を研究し、より良い「型」を身につける = アレンジや応用 :「型」そのものから自由になる = 独自のプレイスタイル確立 と応用できるでしょう。自分がコピーで吸収したものを理解し、研究した結果、オリジナリティは生まれてくるというわけです。「型を破るには、まずその型を知らなければならない」とは、よく言いましたね。

どんな曲をコピーすればいいの?

「初心者は、まずこれを弾けなければならない」みたいな演目はありません。コピーするなら、とにかく好きな曲や弾きたい曲で大丈夫です。好きな曲を練習するのなら、モチベーションも維持できることでしょう。しかしだからといって、最初からコードがたくさん使われていたり、リズムが細かかったりテンポがやたら速かったりする難しい曲は、ちょっと我慢しておいたほうが無難です。

最初は

  • 使うコードが5つや6つ程度
  • リズムは4拍子でシンプルな8ビート
  • テンポはやたら速くない(BPM=140程度まで)
  • ノーマルチューニング(半音下げや変則チューニングでなく)

このような条件に見合った曲だと練習しやすいでしょう。


The Beatles – Let it Be
人類の宝とも言える名曲です。「F」がありますが、コードは5つでテンポもスローです。ギターソロはちょっと難しいので、もう少し経験を積んでから。

https://youtu.be/7Ll3v1gWCFE
長渕剛 – とんぼ
上の4つの条件を完全に満たしている素晴らしい曲。アコギはオープンコードのストロークで、しかも「F」がありません。エレキギターはパワーコードのミュートで8ビートを刻みます。


Sex Pistols – Anarchy In The UK
ハードコア/パンクは音楽自体がシンプルなので、多少テンポが早くても挑戦しやすいジャンルです。この曲ならギターソロにトライしてもいいですね。


Judas Priest – Breaking The Law
リフ弾きにうってつけの、メタルゴッド代表曲です。短い曲なのに、展開で魅せるメタルの様式美を味わうことができます。リフだけ練習しても、メタルは楽しいです。

「コピー」って、実際にはどうやるの?

コピーには、さまざまな方法があります。

  • TAB譜など楽譜を読んで弾く
  • 動画やインストラクターの動きを真似る
  • 音源から「耳コピ」する

この中のどれが良い、どれをやるべき、というものはありません。最も上達レベルが高いのは耳コピですが、慣れるまではなかなか大変です。まずは自分にフィットした方法を試してください。記録のためのツールとして譜面は有効なアイテムですから、譜面の読み書きはできた方がいいですし、譜面が読めても音源からちゃんと聞き取れないと、自分のプレイがちゃんとコピーできているのか判定できません。達人のプレイフォームを参考に自己流のフォームを直していけば、スムーズな演奏ができるようになります。
※普通のプロは、(TAB譜ではなく音符の)譜面の読み書きと耳コピが実用レベルでできます。プロとして活躍する未来を夢見る人は、プレイだけでなくこうしたスキルも身につけておく必要があります。
Tab譜の読み方
音符の読み方

はじめのうちは、譜面の通り弾ければぐんぐん巧くなります。そこから両手の動かし方、ピックの使い方など身体の動きを見直したり、知らなかったコードフォームやスケールを知識としてストックしていったりすることで、ギタリストとしての実力が付いていきますよ。

楽譜を手に入れよう!

ギタリストが付き合う楽譜は、

  • パート譜:ギターのみ、あるいはヴォーカルとギターのみが書かれている
  • バンドスコア(スコア):全パートが書かれている

まずはこの二つです。本になっているバンドスコアの場合、アルバム一枚分やベストなど曲集になっているものを「バンドスコア」、1曲ずつのバラ売りのものを商品名から「バンドピース」と区別する言い方もあります。これさえ手に入れれば、コピーはまずなんとかなります。

「楽譜」と「譜面」の違いは?

楽譜:楽曲を一定の記号を用いて五線譜などに書き表したもの。 ・譜面:楽譜の書き記された紙面。また、楽譜。(明鏡国語辞典より) 一見違いがないようですが、 ・楽譜:書いてある内容と、(本や紙など)書かれた物体 ・譜面:書いてある内容 このようなニュアンスで使い分けるようです。日本語って難しいですね。

楽譜を持つメリット

楽譜は紀元前2世紀以来の歴史を持つ、音を使わずに音楽を伝えるテクノロジーです。また聞き取れないコードも、速すぎて聞き取れないフレーズも、譜面を見れば弾くことができる、とてもありがたいツールです。昔は弾けたのに忘れてしまったという曲でも、楽譜があれば覚えなおすことができますね。スコアをそのまま持ち歩いてもいいですが、自分用に切り貼りしたり書きうつしたりしてまとめたパート譜を作ると大変便利です。

楽譜のデメリット

楽譜を使って練習するときにには、ちょっと気をつけなければならないことがあります。あまり譜面に集中しすぎると、せっかくの楽しいギターが、書いてある記号を追いかけて指を動かしているだけの「作業」になってしまいます。楽譜には音の配置が書いてありますが、音楽そのものではありません。音源をよく聞いて、活きたプレイを心がけてください。

また、私たちが憧れる往年のロックスターの、誰もが譜面を読めるわけではありません。その意味では、ロックに楽譜は不可欠ではありません。譜面が読めなくても、超人的な耳と卓越したセンスで補っているというアーティストはたくさんいますから、譜面が苦手ならまず耳を鍛えましょう。

どこで手に入れればいいの?

バンドスコア、バンドピース、歌本など、さまざまなものが書店や楽器店、また各種通販サイトで手に入れられます。
歌本・バンドスコア・ギター雑誌を買ってみよう!

また、無料でTAB譜を公開しているサイトがいくつもあります。
無料で閲覧できるTab譜、大集合!

1曲ずつダウンロード販売をしているサイトもあります。「ぷりんと楽譜」と「@ELISE」では、プリンタを持っていなくてもコンビニで印刷できるサービスが利用できます。

ぷりんと楽譜:YAMAHAが運営する楽譜ダウンロード販売サイト。最新のJ-Popに強く、曲によってはMIDIもあります
@ELISE(アットエリーゼ):バンドスコアや「ゲッカヨ(月刊歌謡曲)」のメロディ譜(プロ御用達)など。洋楽も豊富
DL market:日本最大級の曲数を誇る楽譜サイト。内外のバンドスコアなど豊富だが、ソロギターにアレンジした楽譜が人気

見よう見まねでも覚えられる!

Youtubeなど動画サイトで「弾いてみた」動画や各種の奏法を解説する動画がたくさんアップされていますね。このような動画を参考に、プレイヤーの指の運びやプレイフォームを真似ることでフレーズを覚えたりテクニックを身につけたり、1曲まるまる覚えてしまったりもできます。

ギター教室では基礎から応用までさまざまなことが学べますが、インストラクターの指の動きを覚える、というのも有効な手段です。
ギター教室に通ってみよう

耳コピに挑戦してみよう!

「耳コピ」は感覚が鍛えられるので、最も上達できる練習法のひとつだと言われています。それだけでなく、

  • 楽譜を買わなくてもいい
  • 楽譜が売られていない曲でもコピーできる

という大きなメリットがあります。

これについては方法やコツなどたくさんありますので、別ページで紹介していきます。
耳コピしてみよう

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。