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PHOTO:ヨコマ キミヨ
Supernice!新インタビュー企画「アーティスト・インタビュー」第三弾には、バンドPERSONZや、氷室京介のサポートなどでプレーされ、今年2年ぶりに自身のバンドfringe tritoneの活動を再開されたギタリスト本田毅さんにインタビューをさせていただきました。
──2016年より再始動するバンドfringe tritoneについておうかがいしたいのですが、元々2002年に「バンドを結成しよう」と考えたのは、何か意図があってのことだったのでしょうか?
本田毅さん(以下、敬称略) ありましたね。それまではわりと女性ボーカルのバンドをやることが多くて、ちょっとうるさい感じのバンドもやってみたいと思っていたんです。だったら男性のメンバーを、とメンバーを探していました。それで弟の(本田)聡とメンバーを探していたら、たまたまあるとき対バンした際に、現メンバーである齋藤兄弟(齋藤洋:Vocal、齋藤篤生:Drums)がいて、その声とドラムに惚れまして。それからは僕らのほうが年上だったし(笑)、「よかったらセッションしようよ!」「曲作ろうよ」と、ちょっとずつ勧誘(笑)。そんな始まり方でしたね。
──その際に、こんなバンドをやりたいというビジョンはあったのですか?
本田 ありましたね。そのとき彼らと「俺はこんな感じのロックをやりたいんだ」ってそのビジョンを話し合ったらぴったり合っていたんですよ。「それは面白そうですね」と波長が合ったし、それならと僕が曲を作って、彼らにも曲を作ってもらって合わせたら「おっ、これ良くね?」っていうことになり「ライブなんかもやっちゃおうよ」って。そうやってさらにバンドに引き込んでいきました(笑)
──なるほど。ではやはり本田兄弟のほうが、バンドの主導を握っていると(笑)
本田 まあ、年上ですからね(笑)。でも(齋藤)洋も、メインソングライターとして曲も詞も一番たくさん書いてくれているし、彼の作る世界観と、僕らの作る少しひねくれた(笑)音の感覚がうまく合致したと思います。
──それはいい感じですね。fringe tritoneというバンド名は、どのような由来で付けられたのでしょうか?
本田 tritoneというのは「三全音」という意味。普通のコードに対して、どこにも落ち着かない不安定な音というか。整合性のあまりない音という感じ。わりとそんなコード感の曲をいっぱい作っていて、そのちょっとひねった感じの曲を爆音でやりたい、と思って付けたというのが由来ですね。fringeというのは「装飾」という意味が転じて「装飾音」のことを示しています。
──アカデミックな雰囲気ですね。
本田 まあでも元々は、例えば「Sly And The Family Stoneみたいな長い名前にしたい」という話があって「それいいね、じゃあfringe and tritoneってどう?」「長いな。fringe tritoneでいいかな?」という経緯をたどりまして(笑)
──(笑)そうでしたか。元々バンドの活動範囲としては、どのように考えられていたのでしょうか?
本田 最初はやっぱり曲もそろっていなくて、自分たちの手ごたえというか、核になるものというのが明確になってなかったし、かつそれぞれのメンバーが、それぞれのバンドをやっているという状態。その中でも、僕が一番他の仕事をたくさんやっていたんですが…でも他のバンドはやっぱり「サポート」という立場だったし、このバンドでは「自分のバンド」という感じでやりたかったんです。その意味では、だんだんバンドっぽく意識は変わってきたし、他のメンバーもそれに合わせて変わってきてはいましたね。
──では本田さんの意識としては、ご自身の中でこのバンドが占めているウェイトというものも、大きなものではあるのでしょうか?
本田 そうですね、大きいです。
──2013年に最後のライブをされてから、この1月11日に久々のライブを行われたということですが、活動を休止していたというのは、さまざまな理由があってのことでしょうか?
本田 そうですね、まず大きくはその年に僕自身が体の調子を悪くしていたのが理由でした。その状態でスケジュールをこなすというのは体調的に厳しかった。あと10年の間僕らは、バンドとしてバーン!と突っ走るために、曲を作ってレコーディングしてCDリリースして、ライブやってツアー行って、そしてまた作って、を繰り返してきました。ですが、そのうちスケジュールに追われるようになっちゃって。まあ、どこのバンドにもある話だと思いますが、昨今のライブハウスのブッキング事情だと、ツアーをやるには半年〜1年以上先の予定まで場所を押さえないといけない。なのでそこに合わせてツアーをするなら、いつまでに曲を作らなければ、いつまでにレコーディングを終えなければ、という締め切りが生まれる、それこそまだ納得できる作品が生まれてないのに音源を出さないといけないとか、当たり前かもしれませんが、そういうことがだんだんストレスになっちゃったんです。
──それは厳しい状況ですね。なかなか作品の完成度も高められないでしょうし…
本田 そう、「納得できないけど、今日で締め切りだからもう終わり」みたいな。そんなことがちょっとずつ積み重なって、最初のころはモチベーションも高く「いい曲ができたから、ライブをやろう」と考えながらやれていたのに、どうしてそうできなくなっちゃたんだろう?って。だから、また「やりたい」っていう衝動が自分たちの中に沸き起こるまで、止めようという話になったんです。
──では2015年、その衝動がようやく、という感じなのでしょうか?
本田 そうですね、本当にいいタイミングでしたね。休んでる間、聡がたくさん曲を書いてくれていたんです。僕らはそれを聴いて、これをやりたいなと思うようになり、じゃあリハをするかとスタジオに入ったら「お、これは面白いな」ってことになり、俺も洋も遅ればせながら新曲書いて、いよいよライブに気持ちが向いていきました。
──最初のころに気持ちが戻った感じですね。
本田 まさしく。今年はまず3,4,5月とマンスリーでライブをやる予定、その途中くらいからレコーディングを始めて、夏くらいにはその音源を持って、地方のライブハウスなんかにも行きたいと思っています。今までお世話になってきたところに「こんなのできました、よろしくお願いします!」って言いに行きたいですし、地方で応援していただいていたライブハウスさんにも「どうもご無沙汰してました、よろしく!」って言いたい。それにまた対バンでライブっていうのもやりたいですね。
──それはいいですね。その他の活動についてはいかがでしょうか?
本田 PERSONZのほうは、やはり昨年、24年ぶりの武道館公演が成功したことが大きいですね。僕にとってもこんな経験はめったにないものでしたから。皆様に感謝してます。それから昨年20枚目のアルバムをリリースしたので、そのツアーがあったらいいなと思います。
本田 それと一昨年、大阪のPERSONZのライブの前にオープニングアクトで歌ってもらったR&Bシンガーの女性がいまして。山口レイアさんっていうんですけど、すごく歌がいい。知り合ったことがきっかけで、彼女が3月にリリースするニューアルバムで、カバーアルバムなんですけど、2曲ほどコラボさせてもらいました。1曲はプロデュースからアレンジ、トラック作りまでやらせてもらったもの。R&Bに僕のギターって合うのかな?って感じですが、意外といい感じです。
──それはどんな風なサウンドが聴けるのか、ちょっと楽しみな感じですね。
本田 そうですね。意外に雰囲気に合っている感じになったんじゃないかと思っています。
──ここからは、本田さんのギターについてのお話をうかがいたいのですが、まずギターを始められたきっかけとは、どのようなものだったのでしょうか?
本田 中学生のころなんですけど、ギターブームというのがあって、同級生たちがみんなそれに乗っかってやっていました。最初はみんなフォークギターを持って、フォークをやりだしたんです。かぐや姫とか、井上陽水、吉田拓郎とか。僕もやりたかったけどまだギターを買ってもらえなくて、たまたま母がウクレレをやっていたから、僕はウクレレでそのフォークギターのグループに参加していました。でもウクレレだとあまりにもギターに負けてしまう(笑)。早くギターが欲しいなって思い頼み込んで、ようやくフォークギターを買ってもらったら、グループ内ではすでにエレキギターがはやっていたんです(笑)
──それはショックでしたね(笑)
本田 それでもうみんなビートルズとかやりだしていて。「あれ?俺せっかく買ってもらったのに…」って。するとやっぱりどうしても音で負けちゃう。で、当時「テレフォンピックアップ」っていうものがあって、電話機の音を録音するために吸盤を付けて録音するものがあったんですけど、それをフォークギターに付けて、ラジカセにつなぐと「エレキギターの音になる」という発明を誰かに聞いたんですよ(笑)。それで「早くエレキギターが欲しいな〜」とか思いながら、ラジカセでKISSなんかをやっていました。
──クリエイティブですね(笑)
本田 それで中学校3年のころに、ようやく自分のお小遣いでエレキギターを買えるチャンスが来たんですけど、そのころになるともうギターの人がやたらいっぱいいて「もうギターの人はいらない」って感じになっていたんです(笑)。だから仕方なく最初に買ったのは、実はエレキベース。でもやっていると「やっぱりエレキギターがいいな…」とずっと思っていて、高校に入ってやっとエレキギターを手に入れたんです。そんな感じで周りから遅れながらも、ようやくエレキギターにたどり着きました。
──そうでしたか。でもフォークギターを先にやられていたのは、後々にギターをプレーする上ではプラスになったのではないでしょうかね?
本田 そうですね。結果的にはやっていてよかったと思っていますが。
──ちなみにそのベースは弟さん(本田聡)にあげられたとか?
本田 そのとおり!(笑)。また、あのころは中学のころはKISSとか、Deep Purpleの「Smoke On The Water」みたいな、あんな簡単でシンプルなものをやっていました。高校に入ってから、だんだんと「俺はThe Rolling Stonesをやる!」とか、だんだん好きなものをやるようになっていったんです。
PHOTO:ヨコマ キミヨ
──では本田さんも、やっぱり最初はそんなハードなロックを?
本田 そうですね。やっぱりエレキギターといえば、ハードなロックだろ?っていうので最初はKISSやAerosmithとかですかね。簡単というかシンプルな感じだし。アルバムなんかもLP(レコード)を買ってきて「うぉっ!すげーなロックって!ジャケットがカッコイイし!」みたいな。フォークに比べてね(笑)。ドキドキしながら買っていました。
──それから高校に入ってからようやくエレキギターと…
本田 そうですね。中学のころは周りにいっぱい上手いギタリストがいっぱいいたし、僕もベースしか弾けなかったんですけど、高校に入ったら意外に弾いている奴がいなくて、僕って結構上手いな、って(笑)。だからラッキーでしたね、もしほかに上手い人がいっぱいいたら、やっぱり僕はまだベースを弾いていたと思います。
──では、高校では引っ張りダコな感じでしたか?
本田 いや、そもそもプレーしている人数自体が少なかったし。その中で回していた感じですね。だからちょっとずつプレーできる奴を探しながら、学祭でプレーしていました。
──その頃はどんな曲をプレーされていたのでしょうか?
本田 その頃僕の高校では、日本のロックをやるという伝統があって、みんな四人囃子とかカルメンマキ&OZ、外道や甲斐バンドなんかをやっていましたね。実は外道のギタリストである加納秀人さんが、僕らの高校の先輩だったんですよね。そんなこともあって「エレキギターをやる奴は絶対、1回は外道をやれ!」という先輩からの指令がありまして(笑)。それもよかったというか。
──では、洋楽はできなかったのでしょうか?
本田 まあ当然好きだったので、KISSだQueenなんかのコピーなんかはやっていました。だけど、何しろ歌える人がいなかったんですよね。Deep Purpleなんかもそうですけど、英語であんなハイトーンのメロディなんかを歌える人がまずいなかったし、ただバックでやっているだけ、というのも面白くなかったし。だから結果的に、歌のないフュージョンみたいなのを弾くか、歌は日本人の歌を歌うバンドをやるか、というような感じになっていましたね。
──なるほど。高校のころはずっとコピーで?
本田 そうですね、コピーで。そこからだんだんいいメンバーが集まりはじめたら、オリジナル曲もやろうという感じで、徐々に曲を書きはじめたんです。オリジナルのほうが面白いと思いはじめると「じゃあ、このメンバーでやってみるか」という方向に進んでいきました。
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そんな中僕の高校では、ギターが弾けていく人はフュージョンの世界に行ったんです。3大ギタリストのJeff Beckがいたじゃないですか?彼がインストでそのフュージョンっぽい世界を紹介してくれて、そこからLarry CarltonやLee Ritenourとか、Al Di Meolaとか、メチャクチャに上手い方向へ行っていたんですよね。それで、そこに僕もトライしたけど、途中くらいからもう全然弾けなくなっちゃって(笑)。難しすぎて弾けなくなっちゃったんです。
──確かに、そこまで行くと厳しい世界ですよね。
本田 そんなときに、パンク/ニューウェーブっていう流行が来て、それまでは一生懸命髪を伸ばしていたのに、髪の毛を刈り上げたほうがカッコイイってなっちゃって(笑)。でもそれは衝撃でしたね。SEX PISTOLSなんかを最初に聴いたときには「ウォー!ギターソロがねえ!でもかっけぇ〜!」って(笑)。爆音でガーンってやっているだけなんだけど、すっげぇショック。そんなときに「こっちだな!、こっちを目指そう!そんなに速弾き競争しなくていいし」って(笑)。それはすごくデカイ衝撃でした。
取材協力
Studio BIRTH http://st-birth.com
次のページでは、本田毅さんの音作りやフレーズの作り方などをお話しいただきます。
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