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ボトルネック(スライド)奏法はギターの奏法のひとつで、スライドバーと呼ぶ棒を指に装着または持ち、弦がフレットや指板から浮いた状態のままバーを任意の位置で弦に接触させ、ピッキングして発音する奏法です。
バーボンの酒瓶の首の部分を切り取って作ったことから「ボトルネック」奏法と呼ばれるようになり、酒瓶以外にも牛のあばら骨を削ったり水道の鉛管を切り取ったり小さな薬瓶を使ったりといろいろな工夫がされてきました。中にはジャックナイフの背の部分を使ったり、zippoのライターを使うプレイヤーもいます。
ボトルネック奏法は主にハワイアンやブルース、カントリーミュージックなどでは欠かせない演奏奏法として発達しました。
スティール・ギターはほぼ常にスライドバーで演奏する楽器です。通常のスパニッシュ・タイプのギターにおいては、リゾネーター・ギター(ドブロ・ギターとも呼ばます)などが、音量が増大して金属音の独特な効果が出ることも相まって、好んで用いられました。その後ブルースがエレクトリック化し、大音量が基本となったロック・ミュージックの隆盛と共に、エレキギターでも素晴らしいスライド・プレイをするミュージシャンが多数現れるようになりました。
スライド奏法には
の二つがあります。1) はスチールギターに由来する方法です。この場合、スライドバーは親指と人差し指でつまむようにして持ち、小指/薬指をヘッド側の弦をミュートするのに使います。2) の場合はスライドバーに小指や薬指、また中指を通し、人差し指でヘッド側のミュートを行います。いずれの場合においても、スライドバーを使用するとヘッド側の弦が共振してしまうので、常にヘッド側をミュートできるようにしておくことが必要です。
Jerry Douglas – Patrick Meets The Brickbats
ドブロギターを仰向けに構えるスタイルの代表選手、ジェリー・ダグラス氏。このスタイルで立奏できる人はなかなかいない上に、このキレッキレの演奏。楽器はアコースティックですが、エレキギターを弾くみなさんにも是非観ていただきたい。
The Derek Trucks Band – I’d Rather Be Blind, Crippled And Crazy (Live)
現代の若手ナンバー1スライド奏者といえば、このデレク・トラックス氏を置いて他にはないでしょう。的確かつ奔放なプレイから、目が離せません。氏はガラス製のスライドバーを薬指に着用、中指や人差し指で押弦することもあります。スライド奏法には、ピックを使わず指で演奏するスタイルのプレイヤーが多いですね。
Little Village – She Runs Hot (Video)
ライ・クーダー氏は「世界最高のスライド奏者」として知られていますが、自身の音楽活動だけでなく映画の音楽を担当するなど、活動の幅がとても広いことでも知られています。クーダー氏はスライドバーを小指にはめて使用します。スライド奏法を使わない時には薬指まで押弦に使用するようですが、小指を伸ばした状態では薬指の先に力を入れることは普通はできないため、何かの秘密があるようです。
スライドバーは弦に触れさせるだけで、フレットを押さえてしまうことがありません。しかし弦高が低いと、スライドバーを弦に乗せただけでも弦がフレットに当たってしまって、ノイズが発生してしまうことがあります。「弦高は高め&弦は太め」にしておくと、こうしたノイズの心配がなります。こうしたことから、先述のロン・ウッド氏のように、普通の弾き方をするためのギターとは別に弦高を上げた「スライド奏法用のギター」を用意するギタリストが多くいます。
もちろん通常のセッティングでもスライド奏法に挑戦できますが、弦高が低いセッティングのギターでは、弦がフレットに当たってしまわないように気をつける必要があります。アルミやガラスなど軽量なスライドバーを使用すると、弦高が低いままでもいくぶん弾きやすくなります。
ブリッジ側はネジを回せば比較的簡単に上げることができますが、ヘッド側で弦高を上げようと思ったらナットを交換しなければなりません。スカッドのF-3303はナットに被せることでヘッド側の弦高を上げ、手軽にスライド専用ギターを作ることができるアイディアグッズです。金属のパーツなのでギター本体にキズが付く恐れがありますから、布などを挟んで使用するのがお勧めです。
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スライドバーは円筒形、スチールギター専用は円柱形が基本ですが、太さ、長さ、厚みなどの寸法、またガラスや金属など材料でさまざまなものが作られており、重さにも違いがあります。それらがすべて操作性や音に影響してきますが、こればかりは実際に試してみないとなかなか判断が付きません。一般には「重いほど音が良い」と言われており、スチールギター専用のスライドバーは特にズシリと重くなっています。しかし重すぎれば扱いにくいし、疲れてしまいます。スライドバー自体はそれほど高額ではありませんので、いろいろ試してみることをお勧めします。定番はガラス製ですが、好きなギタリストが使用しているものに近いものから試してみるといいでしょう。
スライドバーの形には、意外と種類があります。主なものをチェックしてみましょう。
長さ7cmくらいのものが、スタンダードなスライドバーです。普通のギターなら、一度に1弦から6弦までをカバーすることができます。太さが変化しない平行な側面を持ったものが一般的ですが、徐々に広くなっていくもの、指板Rに合わせてわずかにくびれているものがあります。短いものは、装着したままで指先が使えるようになっています。一見便利なようですが、使いこなすのにはなかなか苦労するようです。
スチールギターで使うスライドバーは穴が無く、重量感があります。先端が球状になっているものは、一本だけ弦を押さえるのに使います。ここから発展して、取っ手を付けた四角い形状のものも作られています。
I Don’t Believe A Word You Say (The Machine Shop Session)
ラップスチールの名手、ベン・ハーパー氏のシグネイチャー・スライドバーは、弦に当てるところと持つところに分かれた構造になっており、相当の質量があります。「君の言う言葉は信じられないよ」と歌うハーパー氏ですが、この大きなスライドバーが隠れてしまうような手の大きさが信じられませんね。
「指に装着するけど、使わない時には邪魔にならないスライドバーはないのか?」この問いに見事答えを出したスライドバーとしては、代表的なものが二つあります。
JETSLIDE / Brass JetSlide Slide Bar
「ジェットスライド」は、通常の演奏に支障がなく、突起部分に小指を当てることで瞬時にスライドバーを起動できる便利なアイテムです。スライドバー部分が円柱ではなく細い棒状になっています。小指で安定させる構造なので、小指にスライドバーを装着するスタイルの人には使えませんが、中指にはめることはできるようです。
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SHUBB / The Axys Reversible
カポタストで有名な「シャブ」の「The Axys Reversible」は、スタンダードなスライドバーを一部切除したような形状で、使用するときに反転させて起動します。通常のスライドバーにかなり近い感触で演奏できるのが大きなメリットです。回転をしやすくするリングの内径は選べるようになっており、ユーザーの指にしっかりフィットします。小指に装着することもできるのがメリットですが、それなりに重いのは覚悟が要ります。
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スライドバーは弦に直接触れるので、どんな材料でできているかはサウンドに影響します。いろいろなものがありますが、初めはなかなか判断が付きませんから、まずは色や形で選んでもいいでしょう。
ガラス:「ボトルネック(瓶の首)」という言葉があるくらい、スライドにはポピュラーな材料です。軽量で扱いやすく、柔らかい音がします。弦高との摩擦が金属のものよりもありますから、特に初心者にとっては音程を決めやすいと言われます。瓶をそのまま使ったようなスライドバーは落とすと割れてしまいますが、強化ガラスのものはなかなか割れません。最近では色が付いているものが一般化してきました。
金属(ステンレス、ブラス、鉄、アルミニウム):銀色のスライドバーのほとんどがステンレス、とは一概に言えません。本来金色のブラスでも、銀メッキが施してあるものがあります。アルミも銀色ですが、アルマイト処理によりさまざまな色が付けられることもあります。金属製のスライドバーは立ち上がりが早くブライトな音質で、弦高との摩擦が少ないのでキビキビとした動きがしやすいと言われます。サスティンが伸びることもあって、スチールギターのスライドバーは全て金属製です。
陶器:陶器(セラミック)製のスライドバーはガラスより軽く、甘く、丸い音がするということで近年注目されており、アーティストモデルもいくつかリリースされています。無造作に使うには抵抗があるものなので、レコーディング用に持っているというユーザーが多くいます。
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