ギター弦の交換方法:初心者でも簡単にできるステップバイステップ・ガイド

[記事公開日]2023/12/25 [最終更新日]2024/8/26
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

ギターの弦は定期的に交換する必要がありますが、初心者にとっては少し難しそうに感じるかもしれません。しかし、正しい方法を知っていれば、ギターの弦交換は思ったよりも簡単で短時間で終わらせることができます。この記事では、ギターの弦交換の基本的な手順から、交換時の注意点、弦の選び方まで、詳しく解説します。エレキギターはペグの仕様とブリッジの仕様によって弦交換の手順が異なりますから、いろいろなタイプごとにチェックしていきます。初めての方でも安心して取り組めるよう、わかりやすくステップバイステップで説明していますので、ぜひ参考にしてください!

小林健悟

ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

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webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、”プレイヤーにとって役立つ情報提供”を念頭に日々コンテンツを制作中。


  1. ギターの弦交換が必要な理由とは?
  2. ギター弦の交換に必要なもの
  3. 弦の種類と選び方:自分に合った弦を見つける
  4. ギター・タイプ別:弦の交換方法
  5. 弦が切れる原因と対策

ギターの弦交換が必要な理由とは?

ギターの弦は手汗や手垢、また空気中の水分によって酸化し、黒ずんだり赤く錆びたりします。酸化が進行すると手触りやピックの当て心地が悪くなるほか、音が曇ったり伸びが悪くなったりします。特にオクターブチューニングにも影響を及ぼしますから、このままでは正確なピッチにならずギターが音痴になってしまいます。いつも良好なコンディションでギターを弾くためには、弦の感触やサウンドが劣化したり、ピッチが悪くなったりする前に弦交換してしまうのがお勧めです。

弦の寿命と交換時期

普段の練習量や手汗のかき方などプレイヤーの要因、温度や湿度など環境要因、この二つによって弦の寿命は上下します。また材料や製法の工夫で寿命を延ばした弦がある一方で、音のために延命措置を施さない弦もあります。特に長寿命をうたっていない普通の弦を使用する場合、短くて1週間~10日、長くて1か月程度でサウンドや触り心地の劣化が目立ってきます。弦交換の練習として安い弦を毎週交換しても、もったいなくはないのです。
だからといって、なるべく弦は長持ちさせたいですよね。練習が終わったあとに弦を柔らかい布で一本一本ていねいに拭く習慣を持つと、それだけで劣化の進行を大幅に遅らせることができます。また「フィンガーイーズ」などの潤滑剤を使用すると、弦が溶剤の膜で覆われるので感触の良さを維持でき、弦の寿命を延ばすことができます。

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ギターの弦って何ゴミ??

交換した後のギターの弦、捨てるにはいったい何のゴミとして分別するべきでしょうか。これは住んでいる地域によってバラバラですが、クラシックギター弦で使われるナイロン製の弦は燃えるゴミ、アコースティックギターやエレキギターなどの金属弦は一般的には燃えないゴミ/不燃ゴミとして処分するケースが多いようですね。

「全弦交換」が基本!

ギターの弦は見た感じで錆びていなくても時間と共に劣化し、音が曇ってきたりチューニングの安定度が落ちたりしますし、柔軟性が低下するため演奏中に切れてしまう可能性が高くなります。よって切れたり錆びたりした弦だけ交換していると、新しい弦と劣化した弦とが混在する状態になり、弦ごとにタッチやサウンドがバラバラなギターになってしまいます。切れていなくても錆びていなくても、弦交換では全ての弦を新品に交換しましょう。

ギター弦の交換に必要なもの

ニッパーとストリングスワインダー ニッパーとストリングスワインダー

弦交換には弦を切る「ニッパー」が第一で、フロイドローズ搭載機にはこれに加えて「6角レンチ」が必要です。このほかペグやブリッジの仕様ごとに、持っていた方がよい道具がいろいろあります。また、ペグを高速で回す「ストリング・ワインダー」があると便利です。

「ニッパー」は何でもいいの?

ニッパー PICKBOY「SC-150 ストリングカッター スチール弦用」
おそらく日本中どこの楽器店でも売っている、弦専用ニッパーのガチガチの定番。情け容赦ない切れ味で、ベースの太い弦もバチバチ切断でき、刃こぼれもしない。

弦を切るためには、弦専用のニッパーが最適です。エレキギターの弦は、一般的なエナメル線や銅線、針金などよりも遥かに硬い金属でできています。プラモデル用や電工用のニッパーは比較的やわらかいものを切断するために作られており、それ以上の性能は基本的には期待できません。1回や2回は切れるかもしれませんが、刃が弦に負けてしまい、鈍くなったり欠けたりする場合があります。

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フロイドローズ用の「6角レンチ」は何でもいいの?

6角レンチ SCUD「WRE-HS」
FRTユーザー必携の、レンチ&ホルダーのセット。レンチの寸法は、1.5/2/2.5/3mm。ホルダーをヘッドの裏などに取り付け、レンチは挿しこんでおく。

ギターを新品で買ったら、ほとんどの場合に適合する6角レンチが付属します。もし無ければ、適合するレンチを用意しておきましょう。フロイドローズの弦交換なら「3mm」の6角レンチが1本あればOKで、オクターブ調整のために2.5mmも持っておけば完璧です。

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ストリング・ワインダーは何でもいいの?

ストリング・ワインダー Aria「AW-1」
日本のメーカーが「アルトベンリ」という商品名で販売したことから、ストリング・ワインダーは平成末期まで「アルトベンリ」と呼ばれていた。

「ストリング・ワインダー」は、シンプル構造でお安いものから、頑丈なハンドルやスムーズに回転するベアリングなどを備えたハイグレードなものまで、さまざまなものがリリースされています。特に「ベース用」として設計された大型ペグ専用のワインダーでなければ、どんなものでも大丈夫です。
弦交換に必須というほどではないので最初から買わなくても良いですが、ひとまずワインダーなしでの弦交換を経験してからコレを試すと、「文明の利器」の素晴らしさが痛感できることでしょう。

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弦の種類と選び方:自分に合った弦を見つける

ギターの弦は種類や素材、太さ(ゲージ)などによって音質や弾き心地が異なります。自分のプレイスタイルや音の好みに合った弦を選ぶことは、快適な演奏と理想的なサウンドを実現するために重要です。

ゲージの選び方と音の違い

弦の太さ、いわゆる「ゲージ」はサウンドや演奏のしやすさに影響を与えます。太い弦(ヘビーゲージ)は音が太く、力強いトーンを提供しますが、押さえるのに力が必要で、指に負担がかかることがあります。細い弦(ライトゲージ)は押さえやすく、速いフレーズの演奏やベンドがしやすいですが、音が細くなる傾向があります。初心者にはライト/スーパーライト・ゲージが適していることが多いですが、演奏スタイルや求める音に応じて、自分に合ったゲージを見つけてください。

  1. ギター弦の種類
  2. 状況別に選ぶ:おすすめのギター弦

ギター弦の種類と選び方

コーティング弦とノンコーティング弦の違い

ノンコーティング弦 vs コーティング弦
「エリクサー(Elixir)」に代表されるコーティング弦は、サビに強く、数か月程度の使用に耐えられるほど長持ちです。

コーティング弦は、弦の寿命を延ばし、錆びにくくするために、弦に保護コーティングが施されています。これにより、長期間にわたりクリアで新鮮な音が保たれ、メンテナンスの頻度が減ります。一方、ノンコーティング弦は、よりナチュラルな音色と手触りを提供しますが、汗や油分に対して敏感で、コーティング弦よりも劣化が早いことが一般的です。日常的に頻繁に弾くプレイヤーや、より長持ちする弦を求める方にはコーティング弦が適しているかもしれませんが、純粋な音質やフィーリングを重視する方はノンコーティング弦を選ぶことが多いです。

《美しい音を長くキープ》エリクサーOPTIWEBコーティング弦とは?

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弦交換のついでに、お手入れもしておこう

指板やフレット、ブリッジ周りなど、弦をすべて外した状態だからこそできるお手入れを、ついでにやってしまいましょう。ギターがピカピカだと、とても気持ちよく練習できます。
《弦交換のついでにできる》ギターのお手入れ5つを紹介!

ギター・タイプ別:弦の交換方法

ストラトキャスターの弦交換(すり割り式ペグ&シンクロナイズド・トレモロユニット)

ここではストラトキャスターの弦交換を見ていきますが、手順紹介の第一弾として他のギターにも通じる総合的な内容にも触れています。ストラトを持っていなくても、参考までにチェックしてみてください。ここで紹介するストラトキャスターは、ストリングポストに縦の切れ目が入っている「すり割り式」ペグと、シンクロナイズド・トレモロユニットという組み合わせです。

ストラトキャスター:巻き付け完成図巻き付け完成図
弦を外す前のこの状態が、弦を張るお手本になる。心配なら写真を撮っておこう。この向きを間違えると、チューニングが不安定になったり弦の感触が変わってしまったりする(なお、リバースヘッドではこの方向が逆転する)。

これは、生涯初の弦交換では絶対的に必要な手順です。弦がストリングポストにどういう方向で巻き付けられているかを確認しましょう。この方向で巻かれた状態が、ストラトキャスターの本来の姿です。

①全ての弦を外す

全ての弦を外す弦を緩めて外していく

では、ペグを回して1〜6弦までの全ての弦を外します。すり割り式ペグは、緩めるだけで簡単に弦を外すことができます。

②クロスでギターを拭いておこう

クロスでギターを拭いておこうついでにキレイに拭いておこう

いつもは弦が張ってあるヘッド・ネック・ボディ部分、この時についでに拭いて、隅々までキレイにしておきましょう!

③新しい弦を用意

新しい弦

新しいギター弦の登場です。これから弦を貼っていくよ♪
人生初の弦交換では練習のつもりで、失敗することも想定して安い弦を使うのがお勧めです。

④ブリッジ裏から表へ弦を通す

ブリッジ裏から表へ弦を通す

ひっくり返したことで、弦の並び順を間違えないように気を付けよう。
ボディ裏から弦を通していきますが、油断するとボールエンドが穴の入り口に引っかかることがあります。弦の末端が確実に穴の底に達していることを確認しつつ、そのままヘッドまで弦をのばしていきましょう。

⑤ペグの間隔2.5個分くらいで弦を切る

弦を切る

すり割り式ペグでは、適正な長さに弦を切ってから巻き付けます。少し余裕をもって巻き付けるために、巻き付けたいペグから数えて2.5個めあたりの位置で切断してください。プレーン弦(1/2/3弦)は滑りやすいので、摩擦を稼ぐため少し長めに切るのがお勧めです。

⑥ペグ穴に弦の先端を刺し、90度に折り曲げる

ペグ穴に弦の先端を刺し、90度に折り曲げます

ペグ穴に弦の先端を挿し、90度に折り曲げます。折り曲げた弦の先端はそのままペグ穴に収めておきます。

⑤→⑥の手順は、逆でも良い

ギター博士は「切ってから曲げる派」です。ペグ穴を利用して曲げるので工具に頼らなくてもよく、穴の深さを気にしなくてよいので素早く作業できます。
その一方で、「曲げてから切る派」の人も多くいます。ペンチを使えば狙った位置で直角に曲げられます。しかし、ペグ穴に挿す部分の長さがペグ穴の深さを越えないようにする必要があります。なお、挿す部分の長さが不十分だと、巻き付け作業の途中で抜けてしまうことがあります。

⑦弦が外れないように指で押さえながら回していく

弦が外れないように指で押さえながら巻き付けていきますペグ穴から弦が外れないように巻きつける

「手順⓪」で最初に確認した方向になるよう、ペグを回していきます。巻き始めのうちは指で押さえていないと弦が外れてしまいます。巻き付ける弦の根元部分を指でしっかり押さえながら回していきましょう。2周3周と巻いていく時、最初に巻き付けた部分よりも下へ下へ巻き付けていくとキレイに巻き付けることができます♪

⑧他の弦も巻き付けていこう

ギター博士が巻いた6弦

今回ギター博士が巻いた6弦。そんなにキレイに巻けてはいないかもしれないけど大丈夫!ちゃんと音は出ますし、チューニングも安定します。
同じ手順で他の弦も全部巻き付けて、1弦と2弦をストリングガイドに引っかけたら、巻き付け作業は完了です。大ざっぱにチューニングしたら、いよいよ仕上げです。

⑨チューニングしやすいように弦を伸ばす

弦を伸ばしておく引っ張って伸ばしておく

巻いたばかりの弦は、ストリングポストの巻き付けやサドルの折れ曲がり部分に「遊び」が残っています。このままではチューニングが安定しないため、それぞれの弦を引っ張って遊びをなくしていきます。なお、ギター博士はいつも12フレットあたりをつまんで引っ張ります。
チューニングして、引っ張って、またチューニングして、という作業を繰り返します。引っ張る代わりにチョーキングしたり、シャカシャカ弾いたりしても良いです。全部の弦の遊びがなくなってチューニングが安定したら、弦交換の完了です。

ロック式ペグの弦交換

ロック式ペグには

  • ①「マグナムロック」タイプ:ペグのツマミを回して弦をロックする
  • ②「バックロック」タイプ:裏側のホイールを回して弦をロックする

の2種類があります。いずれもペグが持つロック機能によって弦を固定しますからぐるぐる巻きつける必要がなく、交換作業の時間を短縮できます。

ロック式ペグ(ロッキングチューナー):チューニングが安定し弦交換が楽になるペグ

①「マグナムロック」タイプ:ペグのツマミを回して弦をロックする

ペグの溝をピックなどで45〜90度まわす

①「マグナムロック」タイプでは、弦を緩めたあと、ストリングポストの頭の溝にピックやコインを当てて45〜90度ほど回すと弦のロックが解除されます。新しい弦を通してペグのツマミを回していくとやがて弦がロックされて、そのままチューニングができる状態となります。

②「バックロック」タイプ:ペグ裏のホイールを回して弦をロックする

ペグ裏のホイールをまわすだけで、弦がロックされる

②「バックロック」タイプでは、新しい弦を穴に通してペグ裏のホイールを回して弦をロックします。

チューニングが完了した状態 チューニングが完了した状態。余分な弦は切っておきましょう。

レスポールの弦交換

次は、レスポールの弦交換を行います。レスポールは基本的に、横穴式ペグとTOM(正しくは、「ストップ・テールピース&チューン・オー・マチック」)ブリッジの組み合わせです。

レスポール:巻き付け完成図 巻き付け完成図
弦を外す前に、弦の巻かれる方向を確認しておきましょう。レスポールなどで見られる片側3連のヘッドの場合、ヘッドの中心線から外側に向かって巻き付けるのが基本です。

①古い弦を外したら、テールピースに新しい弦を通す

「テールピース」と「ブリッジベース」「テールピース」と「ブリッジベース」

TOMブリッジは本来、全ての弦を外すと「テールピース」と「ブリッジベース」が簡単に外れるようになっています(動画のギターには、簡単に外れない機構が備わっています)。この仕様はギブソンがバイオリンを作っていた時代からの伝統で、弦の張力でブリッジを固定するようにしているのです。
しかしブリッジが外れたままだとこれらを留めるネジ(スタッド)が回ってしまいやすく、弦高など調整を崩しかねません。TOMブリッジの弦交換は1本ずつか、あるいは2~5弦を先に交換してから残りを交換するなど、ブリッジとテールピースを外してしまわない工夫をするといいでしょう。

新しい弦をテールピースから通すサドルの溝にはまっているのを確認しながら

テールピースの穴に、ボディエンド側から弦を通します。そのままヘッドまで引っ張っていきましょう。

②ペグ穴に弦を通し、少し戻し、根元側から逆方向に巻き付けて仮留めする

ペグ穴に弦を通す

横穴式ペグの弦交換はこの部分の作業が決め手です。ペグ穴に通した弦を少し緩ませて巻き付ける長さを確保し、根元側から逆方向に巻きつけます。これにより弦がストリングポストに仮留めされ、ペグを回す作業が進めやすくなります。
この部分の作業には色々な手法があり、他の仮留め法を使う人も、仮留めせずに巻き付ける人もいます。「巻き付け方によって音が変わる」という考え方まである、ギタリストがこだわるポイントです。

③弦が外れないよう、指で押さえながら回していく

指で押さえながらペグを回す

弦が仮留めできてからの要領は、ストラトキャスターの時と同じです。弦が外れないように指軽く引っぱりながら、グルグル回していきます。巻き付けの開始地点から下へ下へ、隙間なくキッチリとした巻き付けを目指しましょう。また、サドルの溝に弦が収まっているかどうかも確認しましょう。

④余分な弦をカットして、チューニングしたら作業完了

あまった弦はニッパーでカット

はみだした弦をそのままにしておくプレイヤーもいますが、危険だしケースへの収納が面倒になるので根元部分からカットしてしまいましょう。仕上げに弦を伸ばして遊びを抜いて、チューニングを安定させます。

フロイドローズ・タイプの弦交換

フロイドローズ(ダブルロッキング・トレモロ)は、ナット側とブリッジ側の両側をネジで固定することで極めて高いチューニング安定度が得られます。その引き換えに、弦交換では3mmの6角レンチが必須な上、手順がやや多くなります。

フロイドローズ搭載のエレキギターについて

⓪ファインチューナーをニュートラル位置にセットする

弦を外す前に、ファインチューナーがどちらにも充分に動けるよう、ニュートラルな位置にセットします。これは後からでもできるかもしれない作業ですが、弦を外してからだと回しにくいし、新しい弦を張ってからでもある程度チューニングが整わないと回しにくいので、最初にやっておくのがお勧めです。では、いよいよ作業開始です。

①ギタークロスをブリッジの下に潜り込ませる

ブリッジをちょっとだけ浮かせるのがコツブリッジがちょっとだけ浮くくらいがちょうど良い。

これは、アームアップのためボディに深いザグりがあったりブリッジがボディから浮いていたりする「フローティング設定」のギターで、指板やフレットのお手入れを想定して全ての弦を外す時に必要な作業です。フローティング設定でも1本ずつ交換する時や、ブリッジがボディ面に接しているギターでは不要です。画像のように、ギタークロスをブリッジの下に潜り込ませます。弦の張力を失ったブリッジが傾くのをある程度防ぐことで、弦を外したりチューニングしたりといった作業がしやすくなります。

②ロックナットを取り外す(六角レンチ使用)

ロックナットを取り外す

ロックナットを外す前に、どんな向きで固定されているかチェックしておきましょう。

③ヘッド側から弦を外す

ペグを回して全ての弦を緩め、外していきます。

「テンションバー」はどう扱う?

ナットのすぐ隣で弦を上から押さえつけているのが「テンションバー」。

フロイドローズ仕様の多くのギターで、ナットを通った弦は「テンションバー」の下をくぐります。古い弦を外したり新しい弦を張ったりする作業に少々手間取るほか、テンションバーの下に弦をくぐらせるときに塗装面にダメージを与えてしまうことがあるので注意が必要です。
そのため、「弦を緩めたらテンションバーを外し、弦の着脱作業を効率化させる」という人も多くいます。ただしそのためには、1)ネジ穴を痛めずに、2)元の位置にセットする、という心がけが必要です。
なお、ギター博士は「テンションバーは外さすに弦交換する派」です。

④ブリッジ側を外す(六角レンチ使用)

全ての弦を外すこれで全ての弦が外れた

ブリッジ側は、サドルのお尻に備えられたネジ(ストリングロック・スクリュー)がサドル内のブロック(ストリングロック・インサートブロック)に圧力をかけることで、弦を固定しています。このネジを緩めることで、弦は簡単に外れます。これでギターから弦が完全に外れました。

⑤弦のボールエンドをカットする

新しい弦の準備新しく入れる弦の準備

ブリッジのサドル穴に入れられるよう、新しく用意した弦のボールエンド部分をカットします。

⑥ブリッジ側に弦を固定する(六角レンチ使用)

サドル穴に弦を入れて固定するサドル穴に弦を入れて固定する

カットした弦の先端をブリッジ部分サドル穴(ロックインサート)に入れ、ネジを締め込んで固定します。
六角レンチを使用して調節します。

⑦ペグに弦を通し、チューニングする

ペグに弦を通して、しっかりとチューニングします。弦を何度か引っ張って、ペグの巻き付け部分とサドル側の折り曲げ部分の遊びを抜いておきましょう。

⑧ロックナットをとりつける

ロックナットを六角レンチで締めて、元通りに取り付けます。これでヘッド側の要因でチューニングが狂うことがなくなりましたが、その代わりペグでチューニングできなくなりました。

⑨ファインチューナーでチューニング完了!

先ほどチューニングをパキっと合わせたばかりですが、ロックナットの締め付けや弦自体の伸び縮みにより、チューニングがちょっと崩れるのが普通です。ロックナットを装着してからのチューニングは、ブリッジ側にあるファインチューナー(ファインチューニング・スクリュー)で行います。

これにて作業完了!!

ビグスビーの弦交換

ビグスビーは基本コンセプトが各モデルで共通しており、弦交換の方法は「テンションバーを持たないもの」「テンションバーを持たないもの」の2パターンあります。ビグスビーは弦交換が面倒と言われますが、実際のところはどうなんでしょうか。

《アームのレトロ・スタンダード》ビグスビー特集

テンションバーを持たないビグスビーの弦交換

ビグスビーの弦交換は少し大変と思うかもしれませんが、ポイントを押さえていれば比較的スムーズにできます。ポイントは2つあって、一つ目は新しい弦のボールエンド側の処理です。ボールエンド側をラジオペンチで下の画像のように「ボールエンドの穴の向きと同じ方向に」少しだけ曲げておくと、ビグスビーの回転式シャフトのピンにボールエンドが通しやすくなります。

ビグスビーの弦交換:ポイント1

もう一つのポイントは、ピンにボールエンドを引っ掛ける時にあります。ビグスビーはピンにボールエンドを引っ掛けているだけの構造なので、弦を張っていない状態だと簡単に外れてしまいます。ビグスビーとボディの間にギタークロスなど厚手の布をキツめに敷くことによって、ボールエンドが軽く固定され、弦が外れるのを防ぐことができます。

ビグスビーの弦交換:ポイント2

テンションバーのあるビグスビーの弦交換

こちらは、ギターを加工せずにビグスビーを取り付けられるパーツ、「Vibramate(ビブラメイト(後述)」を介したビグスビー取り付けの作業を紹介する動画です。弦を張る作業は2分あたりから観られます。テンションバーを備えるビグスビーの場合、一旦テンションバーの下に弦を通します。カポタストを利用すると、作業中に弦が外れてしまうのを防ぐことができます。

弦が切れる原因と対策

弦が新しいか、そこまで古くないうちは「弦に寿命がある」状態です。普通に演奏しているだけで切れてしまうことはほとんどありません。演奏するうちに金属疲労が蓄積されると、「寿命が切れ」て切れやすくなります。

演奏するペースや環境にもよりますが、張ってから1週間以内は新しい状態、1週間を超えた弦は新しい状態ではないけれど、そこまで古くもない状態です。新しいか、そこまで古くない状態が弦にとっては「寿命がある状態」ですから、この期間内に弦が切れてしまうことはなかなかありません。3~4週間を超えた弦は金属疲労がたまって柔軟性や弾性を失っていますから、何かのきっかけで切れてしまうことが多くなります。

弦が切れたら、その弦はいつ張ったのかを思い出してみましょう。あまりに時間が経過した弦だったら、「弦の古さ」こそが第一の原因です。

弦を張ってから 弦の状態 弦の切れやすさ
1週間以内 新しい状態 ここで弦が切れたら、確実に何か原因がある。
原因を探して対策が必要。
3~4週間以内 新しくはないけど、そこまで古くもない 弦が切れるには何かの原因があるはずだが、
少なくとも1週間以上切れなかったので、
そこまで深刻な状態ではない。
3~4週間以上 古い状態 弦が古いので、ちょっとしたことでも切れて
しまいやすい。弦が切れる原因があったにせよ、
まずは弦を新品に交換してから。

弦の寿命と切れやすさの目安

弦を切りにくくする方法

弦に寿命が残っているにもかかわらず弦が切れてしまうのは、かならず原因があります。

  • 1) 楽器本体の調整上の原因
  • 2) 力の入れすぎなど、ギタリスト本人の原因

この二つの原因によって、ギターの弦は切れやすくなったり切れにくくなったりするのです。原因が分かってしまえば、たやすく対策を講じることができますね。まずは、弦がどの地点で切れたのかをチェックしてみましょう。いつも同じ所で切れるようであれば、そこに何かの原因があります。

1) 楽器本体のメンテナンスによって、弦を切りにくくする。

弦が切れやすい場所にはいくつかのパターンがあります。原因となっている箇所を見つけてメンテナンスを施すと、ちゃんと切れにくくなります。

弦が切れる場所 原因と対処法
ペグやストリングガイドとの接点 ・ストリングポストの横穴にエッジが立っているかも。
 金属用のヤスリなどで滑らかに整えるか、信頼できるメーカーのペグに交換。
・ストリングポストに巻きついた弦が、途中で交差しているかも。
 この場合、交差させない正しい張り方を試してみる。
・ストリングガイドで摩擦が起きているかも。状態やセッティングをチェック。
ナットとの接点 ナットの溝が狭くて摩擦が起き、金属疲労を蓄積する原因になっているかも。
ときどきナットから「キン!」という音がするようなら、ナットの溝を調整、
またナット部が良く滑るように添加剤や鉛筆の芯を利用する。
フロイドローズの場合は、ここに金属疲労がたまりやすい。
特定のフレット 特定のフレットが若干飛び出ていたり、エッジが立っていたりしているかも。
スチールウールなどで磨くか、フレットのすり合わせを依頼する。
ピックアップ近辺 弦が振動する際、ピックアップに当たっているかも。
ピックアップの高さをチェック。
サドルとの接点 弦高が高くて弦が余計に折れ曲がっていることがなければ、サドルと弦との接点にエッジが立っているかも。
滑らかに整えるか、上位機種に交換。
ブリッジプレート近辺 穴を通る弦がブリッジプレートに触れているのかも。
触れるところを滑らかに整えるか、触れないようにバランスを取るか、
サドルを越えない長さの管に弦を通して保護する
(イングヴェイ・マルムスティーン氏のセッティング)。

弦が切れやすい箇所とその対処法

「エッジが立つ」という言葉がキーワードになります。金属パーツは加工時にできる僅かな出っ張りが「エッジ」として製品に残され、弦にダメージを与える可能性があります。あまりに安価なギターやパーツは、こうしたエッジが残されたままで出荷されることがあるようです。また長期的な使用により、弦の圧力でエッジができてしまったり、錆びてきた結果エッジになってしまったり、本来ていねいに仕上げられている高級機でも、弦が切れやすいコンディションになることがあります。

「ナットの溝に鉛筆の芯をすり込む」のは、ナットの摩擦を下げるための民間療法として大変有名なメンテナンスです。こうしたナットのメンテナンスによってチューニングやチョーキング、アーミングで「キン!」という音が鳴らなくなったら、ナットの溝は大丈夫です。

2) 弦をいじめすぎない右手と左手

弦を切りにくい右手とは
渾身の力で握りしめたピックを勢いよく深く当てると、弦はピックから逃げられずに切れてしまうことがあります。良い音のためには「力強いピッキング」が必要ですが、弦を切ってしまうほどにパワフルなピッキングは見直す必要があります。巻弦が切れた場合、切れたのが芯線ならば、弦の劣化かピッキングの強すぎがその理由です。楽器の状態が原因なら、最初に外側の巻線から切れるからです。

「弦を切ってしまわない、しかし力強いピッキング」というのは一見矛盾しているようですが、弦に伝える「力」とは何か、というのがポイントです。押し付けるような「重さ」を加えると、弦は切れてしまいます。ピッキングには「手首のスナップが必要」と言われるように、ピッキングで弦に伝える力は「スピード」です。

弦にヒットしたピックが、うまく弦から逃げるのが理想です。1.0mm以上の厚いピックを愛用しているという人は、0.8mm程度のピックを試してみてください。ある程度薄いピックは、ピッキング時に僅かに「しなる」ことで、弦からうまく逃げてくれます。

厚いピックで同じことをしようとすると、ピックの「しなり」を右手の力加減で再現する必要があります。ヒットした瞬間右手の力を抜くことで、手の中でピックが傾いて弦から逃げるわけです。厚みのある硬いピックが弦からうまく逃げるような、スピードだけを弦に伝えるピッキングが理想です。「達人」と呼ばれるギタリストの中には、こうしたテクニックを持っている人が多いようです。これをマスターすれば、蝶が舞うような軽やかなピッキングから弦を切ってしまうようなハードなピッキングまで、一枚のピックでできてしまいます。

ギターピックの種類と選び方

弦を切りにくい左手
弦交換で古い弦を外してみたらヨレヨレになっていた、ということはありませんか?押さえる力が強すぎて、弦が変形してしまったのです。強く押さえられることが多いポジションには金属疲労がたまりやすく、特に弦が古い状態で演奏する場合、チョーキングしたフレット地点で切れることがあります。

押さえるときには弦をしっかり捕まえる左手の力加減が必要ですが、それ以上の圧力をかけても音が良くなるわけではありません。弦を押さえる圧力が強すぎると、必要以上に力んで演奏することになり、弦を痛める可能性が高まるだけでなく、上達の妨げになる可能性もあります。適正な圧力が見極められるよう、心がけましょう。

普段の心がけ

以上、弦を切りにくくする楽器の状態チェック、両手の使い方を紹介しました。しかしこれで絶対に弦は切れない、というわけではありません。どんなに有能なギターテックに依頼しているアーティストでも、ステージにはスペアのギターを必ず待機させますよね。ギターは「ピックで弦を殴る」楽器ですから、万全の状態でも弦は切れてしまうことがあります。

普段の練習ではなるべく新しい弦で演奏するようにし、ライブなど本番ではもしもの時のためにスペアのギターを用意しましょう。自分のギターが一本しか無かったら、友達から借りてくるか、弦が切れた時にほかの出演者から貸してもらえるように、対バンの人たちと仲良くなっておきましょう。

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ギター博士「慣れてきたらまったく切れないようになるゾ!どんなピッキングをすれば良い音が出るか、力をこめないでも鳴るか、じっくり探ってくれィ!」


以上、いろいろなタイプの弦交換をチェックしていきました。ぜひ自分のギターの弦交換にチャレンジしてみてください。人生初の弦交換はすなかなかスムーズにはいかず、時間も相当かかるものです。しかし弦が消耗品であって、いつ切れてしまうかわからないものである以上、自分で交換できるに越したことはありません。
もちろん早ければ良いというわけでもありませんが、古い弦が張ってある状態から新しい弦のチューニング完了まで、お手入れや調整の時間を除いて30分以内でできれば「弦交換のスキルを習得した」と思って大丈夫です。クオリティを下げずに15分を切れたら、「弦交換マスター」の仲間入りができます。頑張ってくださいね!

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