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ヘッドを見るだけで、どのブランドか、あるいはどんなモデルかが分かることがあります。ヘッドはギターのデザイン上たいへん重要ですが、ペグを固定し、またペグやナットから弦振動を受け止める働きもあります。ペグやヘッドの設計で、音が違うこともあるのです。今回は、そんなヘッドとペグに注目していきましょう。
ペグの配置、左から:フェンダー・ストラトキャスター、ギブソン・レスポール、Music Man AX40、KG-PRIME BIRTH AXE 222
ヘッドの形状は、ペグの配置と密接な関係があります。ペグの配置は、主にフェンダーのギターに代表される「片側6連」、ギブソンのギターに代表される「両側3連」の2種類ですが、ミュージックマンの「4対2」、キラーの「5対1」といった例もあります。キラーのヘッドが5対1である理由について、ラウドネスの高崎晃氏は「1弦のテンションが欲しかったから」と述べています。
フェンダーやアイバニーズなどのヘッドでは、ブリッジからナット、ペグまでが二次元的に一直線になるように設計されています。ナットから放射状に弦が広がる伝統的なスタイルのヘッドに比べて、チューニングの狂いにくさが向上すると考えられています。
リバースヘッドの Jackson DXMG
片側6連のヘッドは「クローシャンヘッド(=釣鐘型)」と呼ばれていますが、このうちジャクソンのトレードマークである尖ったヘッドが「コンコルドヘッド」、クレイマーが名高い出っ張りのないヘッドが「バナナヘッド」と名付けられています。
また、1弦側にペグが6つ配置されているヘッドは「リバースヘッド」と言われ、「演奏中に先端が上を目指しているあたりがロック的でカッコいい」と考えられています。また、弦のテンションバランスが入れ替わる事から、サウンドとプレイアビリティにも影響があります。
ヘッドはネックに対し、ある程度の角度が付けられるのが伝統的な設計でした。これによって弦がナットに押し付けられて安定し、またテンションバランスを整える事ができます。この角度がきつくなると、弦のテンションもそれに応じて高くなります。ギブソンでは年代ごとに17度、15度、14度というようにいろいろな角度を模索していますが、フェンダーは一貫して角度を付けない代わりに、指板に対して段差を設けたヘッドを採用しています。生産性が高く頑丈な構造だというメリットがありますが、反対に高音弦の角度が足りずに外れやすいというデメリットがあるため、ストリングガイドで角度を稼いでいます。
フェンダー・ストラトキャスターのストリングガイド
伝統的な角度付きのヘッドを作ろうとした場合、それだけ厚みのあるネック材を使用しなければならず、また強度に不安がありました。これに対してジャクソンに代表される「スカーフ・ジョイント」はヘッドの先から3フレットくらいまでを別に成形してラミネートすることで、材木の無駄を省き、強度を確保しています。
ヘッドの大小によってヘッド重量は変化し、設計によって剛性が変わり、ヘッド自体の響きやすさが変わります。弦が受けた振動のエネルギーが、ヘッドに伝わってヘッドを振動させるのか、あるいは弦に跳ね返って弦振動を持続させるのかで、ギターのサウンドに違いが生まれるのです。
ヘッドが軽ければ、あるいは響きやすければ、ヘッドが振動することで倍音成分が豊かに響く、ヴィンテージ系のサウンドが得られます。振動のエネルギーがヘッドで消費されるので、サスティンはそれほど伸びません。
反対に重ければ、あるいは響きにくければ、ヘッドはそれほど振動せず、倍音の抑えられたソリッドなモダンサウンドが得られます。振動のエネルギーが弦に滞留しますから、サスティンは豊かになります。
2010年製SGスペシャル(左)と1971年製レスポール・デラックス(右)のヘッド。デザインは共通だが、右のヘッドは全体的に大きく、ペグ同士の間隔がやや広い。
ロックが隆盛を極めた1970年代、フェンダーもギブソンもヘッドを大型化させたのは興味深い出来事です。ライバル企業の両社が揃って、ロックに使いやすい「引き締まった伸びる音」の出やすいギターを作っていたわけです。フェンダーはペグの反対側を大きくした新しいデザインのヘッドを採用し、ギブソンはデザインに変更はなく、ヘッドを大型化させました。ギブソンではさらに、ヘッドの根元に盛り上がり部分(ボリュート)を設けていました。
同じくSGスペシャルの後頭部。ヘッドの裏面からネック裏へと素直につながる滑らかな曲線美。
1971年製レスポール・デラックスの後頭部。うなじ部分に盛り上がりがある。コレが「ネックボリュート」。ヘッド折れの防止策だが、ヘッドの振動を抑える作用もある。
フェンダー「ファットフィンガー(FATFINGER)」は、ヘッド重量がギターサウンドに及ぼす影響に着目したアイディア製品です。ギター用(95g)とベース用(105g)がありますが、重量の違いだけですから、ギター用をベースに付けても、ベース用をギターに付けても大丈夫です。これをヘッドに取り付けることによって、ヘッド重量が増してサスティンが伸びるほか、音色が明瞭になるなど弦の響きが変化します。
先端に付けるか根元に付けるかでも音は変わりますから、より自分のギターサウンドを追い込んだり、着脱の選択でサウンドバリエーションを拡充させたりすることができます。
FATFINGERを…
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ボディの塗装を替えるとサウンドが変化するので、大掛かりな改造にはボディにリフィニッシュが加えられる事があります。改造においてヘッドの再塗装まで行われることはほとんどありませんが、キャパリソンでは振動を制御するため、ヘッドの塗装には特殊な塗料が使用されます。
「ヘッドレスには、ヘッドレスの音がある」と言われます。ヘッドが物理的に存在しないわけですから、ヘッド部分の振動で振動のエネルギーが消費されることはありません。弦振動は、ネックの先端で受け止めることになります。ヘッドがない分だけネックの全長が短くなり、全体の剛性も上がりますから、ヘッドレスギターはひじょうに硬いネックで弦振動を受け止めることになります。ヘッドレスギターは理論上、とても引き締まった、とても伸びる音が得られるわけです。
また、ペグの機能をブリッジに持ってくるところまでがヘッドレスギターの構造です。そのぶんブリッジが大きく重たくなった影響も、サウンドに反映されます。
《ヘッドがない!》ヘッドレスギター特集
ペグ(=糸巻き、マシンヘッド、チューナー)はチューニングをする上で非常に大切なパーツですが、サウンドにも大きく影響する部分でもあります。有名な「Smoke on the Water」を収めたディープ・パープルの名アルバム「マシンヘッド」は、このペグのことです。ここでは、ペグについての豆知識をいくつかかいつまんで紹介していきます。
エレキギターで使われるペグには大きく2種類、外殻を鉄板で作っている軽量な「クルーソンタイプ」と外殻をダイキャストで作っている堅牢な「ロトマチックタイプ(=グローバータイプ、シャーラータイプ)」があります。クルーソン、グローバー、シャーラーともにペグを生産する代表的なメーカーですが、クルーソンは倒産しています。
ペグの重量はヘッドの重量に直結するので、サウンドにも影響します。軽量なクルーソンタイプは、倍音を豊かに含むヴィンテージ的なサウンドになります。重量のあるロトマチックタイプは、引き締まったサウンドでロングサスティーンが得られます。
クルーソンタイプとロトマチックタイプでは、本体重量だけでなく、ヘッドに取り付けるための穴のサイズが違います。ロトマチックタイプへの変更の際には穴を拡大する必要があり、クルーソンタイプへ変更する際には穴に「ブッシュ」というパーツを埋め込んで、穴を狭くします。またネジの位置には統一規格が無いため、ペグ交換に際しては多くの場合ネジ穴をあけ直す必要があります。
主にフェンダーのギターで見られるクルーソンタイプのペグのストリングポストには、縦に穴があけられています。弦交換の時には、弦の先端をL字型に曲げ、ここに挿入するようになっています。弦の鋭い先端が露出する事がなく安全で、外すときの時間が大幅に短縮できる、合理性を追求するフェンダーならではの設計です。
ロトマチックタイプのペグのツマミはネジで固定されていますが、これを締めたり緩めたりする事で、トルク(=ペグを回すときの堅さ)を調節できるようになっています。
ストリングポスト(軸)の材料には、大きく分けて鉄とブラスが使用されます。ヴィンテージギターのペグは、のきなみブラス軸です。ブラスは振動伝達効率がとても良好で、良く響く金属です。弦振動を受けて動揺することで、高い周波数帯の振動を吸収し、残った中音域が存在感を発揮する温かいトーンを作ります。
鉄製の軸は頑丈で、振動を受けても動揺しないので高音域がしっかり残る、モダンなトーンを作ります。
ストラトやテレキャスなどストリングガイドを使用するタイプのギターでは、ここで生じる摩擦がチューニングを狂わせる一因になっており、摩擦を軽減させるためにグリスやオイルを塗るなどの工夫が必要でした。これに対してシェクター(ジャパン)の「SGR PEG」、ゴトーの「H.A.P」はストリングガイドでナットからの角度を稼ぐかわりにストリングポストの長さを弦ごとに調節し、ストリングガイドがなくても高音弦のテンションが十分に稼ぐ事ができるようになっています。シェクター、ゴトー共に日本のメーカーであり、この分野は日本の独壇場になっています。
ストリングポストに巻き付けられている部分がアームダウンなどで一旦緩み、また戻ることがチューニングを狂わせる要因になっています。これを改善させるために各社が開発しているのが「ロッキングチューナー(=ロック式ペグ)」で、弦を一周させることもなくチューニングすることができます。ストリングポストに弦を固定する方式については、各メーカー様々な工夫を凝らしています。
ロック式ペグ(ロッキングチューナー):チューニングが安定し弦交換が楽になるペグ
疲れてきたペグを新品に交換することで、チューニングが安定する、安心して使用できるなどのメリットがあります。ギア比の高いものに交換すればチューニング精度が高くなり、高性能チューナーを使用したシビアなチューニングが容易になります。
それ以外に、ペグを交換することでいろいろな変化をギターにもたらすことができます。どんな交換にどんな効果があるのでしょうか。定番のペグ交換の例と、そのメリットを紹介します。
ロトマチック・ペグ
GROVER / 102N
レスポールのペグをシャーラーやグローバーといったロトマチックに交換するという改造が流行りましたが、これには軽量なクルーソンタイプから重量のあるロトマチックに替えることで、楽器のトーンを変化させる意図がありました。ヘッドにかかる重量が増すに連れて低音が引き締まり、高音が明瞭になり、スッキリとした音になります。サムホイール式のロック式ペグにすれば、さらに重量を稼ぐことができます。
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先ほどとは逆のアプローチで、モダン路線からヴィンテージ路線へとトーンを変化させることができます。また、ペグの重量が大きく抑えられることから、ヘッド落ちの解消にも効果が期待できます。金属製ではなくプラスチック製のツマミ(ペグボタン)を選択できれば、ヘッド落ち対策をより強固にできます。
ロッキングチューナー
SPERZEL 6L/Chrome
ロッキングチューナーに交換すると、弦交換にかかる時間が短縮でき、なおかつチューニングが安定します。ロッキングチューナーでの世界的定番はスパーゼルの「トリムロック」です。本体はロトマチックと同じですが、弦をロックするためのつまみの分だけ更に重量が加算されます。
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GOTOH SD510MG-SL/Gold/
スパーゼルに対抗しているのがゴトーの「マグナムロック」です。スパーゼルにはロトマチックしかありませんが、マグナムロックにはクル−ソンタイプもありますから、どちらのタイプでも重量バランスをなるべく変えずに交換できるところにメリットがあります。
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