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Les Paul Standard ’50s
ギブソンのレスポール・スタンダードはフェンダー・ストラトキャスターに並んで人気の高い、エレキギターの代表機です。コシのある弦振動とパワフルなサウンドにより、ロックを中心に幅広いジャンルの音楽で使用されています。
1952年のデビュー当時は「レス・ポール」の名で、ボディトップはゴールドになっていましたが、1954年にリリースされたレスポール・カスタム、レスポール・ジュニアとの区別のため1958年から「レスポール・スタンダード」に改称、ボディトップが鮮やかなチェリーサンバーストになりました。
’58モデルや’59モデルが特に人気ですが、「常に進化するギブソン」の象徴として最初のリリースから半世紀を経た今なお時代やシーンの一歩先を行く進化を続けており、ニューモデルが発表されるたびに話題になる注目のギターです。
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1: レスポール・スタンダードの基本スペック 1.1: メイプル&マホガニーのボディ構造 1.2: 伝統の「ギブソンスケール」 1.3: ハムバッカー・ピックアップ 1.4: ブリッジ 2: レスポール・スタンダードの歴史 2.1: レスポール史の夜明け前(1940年代) 2.2: フェンダーに対抗すべく「レス・ポール」爆誕(1950~1957) 2.3: 「バースト」の誕生(1958~1960) 2.3.1: 1958年モデル 2.3.2: 1959年モデル 2.3.3: 1960年モデル 2.4: レスポール冬の時代(1961~) 2.5: 再評価と再生産(1968~) 3: レスポール・スタンダードの近現代史 3.1: 《モダン・レスポールの祖》2012年式レスポール・スタンダード 3.2: 《レス・ポール生誕100年記念》2015年式レスポール・スタンダード 3.3: 《先進と伝統に分化》レスポール・スタンダード2016年式&2017年式 3.4: 《行くところまで行ききった》2018年式レスポール・スタンダード 3.5: 《伝統への回帰》2019年式レスポール・スタンダード(現行モデル) 4: レスポール・スタンダードのラインナップ 4.1: 《ヴィンテージ・スタイル》The Original Collection 4.2: 《アーティストモデル》The Artist Collection 4.3: 《サウンド・プレイアビリティ・ルックスの最高峰》The Custom shop Collection
硬質で明瞭なサウンド特性を持つメイプル、ウォームでコシのあるサウンド特性を持つマホガニー、この二つを貼り合わせた2層構造のボディが最大の特徴です。メイプル材1/2インチ&マホガニー材1+3/4インチというバランスは、豊かなサスティンが得られるよういくつものプロトタイプを経て決定されました。
24+3/4インチ(約628mm)のネックスケール(弦長)は「ミディアムスケール」とも「ギブソンスケール」とも言われる、ジャズギターから受け継がれた伝統的な長さです(ジャズギターでももっと長い弦長が採用されたモデルがありましたが、この寸法になったのはレス・ポール氏の要望だったと伝えられています)。弦長が短くなると張力は落ちますが、ヘッドとブリッジに角度が付けられることで弦の張力(テンション)が増し、適正な張力が得られます。
ハムバッカー/チューン・O・マチックのブリッジ
ロックの歴史を築いてきた2基のハムバッカーピックアップを搭載。ピックアップごとにボリュームとトーンが設けられていますが、これはあらかじめそれぞれの音量/音質を設定しておき、トグルスイッチで切り替えて演奏することを想定した設計です。
各ピックアップはそのままハムバッカーとして使用することが想定されていますが、現代的なアレンジの効いたモデルでは、コイルタップなどサウンドバリエーションが増強されています。
ブリッジは弦振動を効率的にボディに伝える「ストップ・テールピース&チューン・O・マチック(TOM)」が現代の基本です。ブリッジで弦高とオクターブピッチを調整、またテイルピースで弦のテンションを調整できる高性能ブリッジです。
ここで各年式の特徴を見ていきながら、レスポール・スタンダードが歩んだ歴史をチェックしてみましょう。レスポールの歴史は半世紀以上と長く、評価の高い年式や状態の良い個体は高値で取引されます。ヴィンテージギターを模したヴィンテージモデルの人気も非常に高く、現在生産されているレスポールは歴史上のレスポールを無視して語ることができないわけです。
ジャズギタリストとして活躍していたレス・ポール氏(1915-2009)は、「ボディ構造に影響されない、ピュアな弦の振動だけをアウトプットしたい」という発想からボディに共鳴用の空洞を持たない「ソリッド・ギター」の構想を提唱します。しかし当時のギブソン社はこれを相手にしなかったため、レス・ポール氏は1941年、エピフォン社の工房で自力でソリッドギター「The Log」を作り上げます。しかしこの年、真珠湾攻撃を理由にアメリカは大戦に参戦したことで、いろいろと大変な情勢になります。
ギブソン社はその後、1944年にCMI社に買収されます。1948年には「ギブソンの黄金時代を築いた」とされる経営者テッド・マッカーティー氏がCMI社のヘッドハントで入社し、ギブソン社の体制は大きく変化します。
1950年に発売されたフェンダーの「ブロードキャスター(=テレキャスター)」が、ギター市場を席巻しました。ギター製造の伝統を無視したとも言える全く新しい構造に、ギブソン社は「ホウキにマイクを付けたガラクタだ」と揶揄したと伝えられていますが、そんなギターがバカ売れする(ギブソン社からすれば)全くの異常事態に、ギブソン社としても「ソリッド・ギター市場」は無視できなくなりました。
そこで社長兼エンジニアのテッド・マッカーティー氏を中心とした開発部と、かつてギブソンにソリッド・ギターを提案したレス・ポール氏とのコラボレーションにより、全く新しいソリッド・ギターの開発が始まりました。当時すでに半世紀近い歴史を持つギター製造の老舗ギブソンと、年収100万ドルとまで言われた達人レス・ポール氏との共同開発は、史上まれに見る強力なタッグでした。
52年モデルを再現した「Les Paul Tribute 1952」
開発に1年を要した「レス・ポール」は、既に現代とほぼ同じ姿をしていました。ボディトップに施された立体的なカーヴィング(削り)は「フェンダーへの強烈な対抗意識の表れ」だと言われています。
この二つを特徴とし、ネックのジョイント角が「1度」と小さいことから弦の張力が低かったようです。ボディの「ゴールドフィニッシュ」も大きな特徴で、1958年まではレスポールと言ったらゴールドの一択でした。
構造上「ブリッジミュートができない」というデメリットを抱えていたトラピーズ・ブリッジは廃止され、シンプルかつ強固な「バーブリッジ(開発者の名前から「マッカーティーブリッジ」とも)」が採用されます。
1954 Les Paul Goldtop Reissue VOS
1954年にはこのバーブリッジの厚みが増加し、パーツ剛性が向上します。またこの年、レスポール・カスタムとレスポール・ジュニアがデビューします。
Les Paul Standard ‘50s P90
1955年には、以前からレスポール・カスタムに採用されていた「TOM(チューン・O・マチック」ブリッジが採用されます。高い音響性能がありながらブリッジの高さ、オクターブピッチ、弦の張力まで調節できるTOMブリッジは、以後のギブソン製品の定番となります。
57年モデルを再現した「Standard Historic 1957 Les Paul Goldtop」
ここで遂に、ハムバッカーピックアップ「P.A.F」が搭載されます。ハムノイズを大幅に減らすことに成功したことはもとより、従来のP-90ではできなかった「ピックアップの高さ調節」ができるようになりました。
1958年はギブソンの歴史の中でも最も重要な年で、依然としてジャズギターのイメージが濃かった同社のイメージを打破すべく、革新的なモデルが多数発表されました。当時のビジネスとしては大コケしたフライングV、エクスプローラーをはじめ、大成功となったES-335、そして「チェリーサンバーストのレスポール・スタンダード」が以後のギブソンを牽引していくことになります。
58年モデルを再現した「Standard Historic 1958 Les Paul Standard」
この年からレスポールは「レスポール・スタンダード」と改称、ゴールドからチェリーサンバーストへとカラーリングが変更されました。カラーバリエーションはなく、チェリーサンバースト一択です。この年式の塗料は赤が退色しやすく、完全になくなってしまって「レモン・ドロップ」と呼ばれる黄色になってしまうものも多くありました。特徴的な太く分厚いネックグリップを嫌い、スリムにリシェイプして使用するギタリストも多かったと伝えられています。
59年モデルを再現した「Standard Historic 1959 Les Paul Standard」
いわゆる「バースト」の中でも最も人気があると言われている1959年モデルは、ネックを一回りスリムに、また細身のフレットを太めにするというアレンジが加えられました。このアレンジはチョーキングやビブラートといった表現技法で有利に働きました。
Hotel California (2013 Remaster)
イーグルスの神曲「ホテル・カリフォルニア」のエンディングソロで使用されているのが、1969年製レスポール・スタンダードです。これぞレスポール、これぞキングオブ・イイ音。
60年モデルを再現した「Standard Historic 1960 Les Paul Standard」
赤みが退色して表情が変わっていくのがこの時代のレスポールの面白さでもあったのですが、メーカーとしては1年や2年で衰えてしまうようなヤワなものは許せないわけで、1960年より退色しにくい塗料が採用されます。ネックグリップはもう一息薄くなっています。
58年、59年、60年に生産されたレスポール・スタンダードは現在「バースト」の愛称が付けられ、最も高額なヴィンテージギターとなっています。バーストは人から人へと渡り歩いてさまざまなレコーディングに使われており、「あの音はこのギターでないと出ない」など伝説的なギターとなっています。そのため人気は非常に高く、価格は状態によりさまざまですが、2,000万円とも3,000万円とも言われています。しかし当時は「重量と音量がありすぎて使いにくいギターだ」なんて思われていたそうですから、セールスはそれほどでもなかったようで、生産台数も少なかったわけです。
セールスの不振から1961年にはそれまでのレスポールは生産終了となり、フルモデルチェンジが行われました。これにより、現在の「SG」が新しいレスポール・スタンダードとして生産されます(いわゆる「SGレスポール」)。その結果販売台数が飛躍的に上昇したと伝えられていますから、それ以前のバーストがいかに苦戦したかが分かりますね。しかしながらレス・ポール氏の契約が切れたことから「レスポール」のモデル名もなくなり、ギブソンの黄金時代を築いた経営者テッド・マッカーティー氏も1966年に退社しました。開発にたずさわった中心人物二人の名前がギブソンから消え、レスポールは名実ともに生産終了となってしまいました。レスポール再評価のためには、エリック・クラプトン氏の台頭を待たねばなりません。
ヤードバーズ「三大ギタリスト」の一人、また「ギターの神」として知られるエリック・クラプトン氏がアルバム「Blues Breakers with Eric Clapton (1966)」でレスポールを使用しました。ここで使われた「レスポール+マーシャルアンプ」の組み合わせによるパワフルかつセクシーなサウンドが「極上のサウンド」として激賞され、これが1968年からのレスポール再生産に繋がります。
「フレディ・キングが持っていたゴールドが欲しかったのに、売っていなかった」という理由で手に入れたレスポールは1960年製で、’58や’59よりも細いネックグリップがお気に入りだったそうです。
1968年にデビューしたレッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジ氏の愛用する’58レスポール・スタンダードの強力なサウンドは、強力なバンドのグルーヴ、柔軟性に富み幅広い音楽性も相まってこの時代を席巻しました。
ジミははじめフェンダー・テレキャスターを愛用していたのですが、「音が近くてよりパワーのある楽器」を求めてレスポールに持ち替えたといいます。当時のレスポールは、低域は必要以上に出ず、中高域が気持ちよく響く「枯れた」サウンドが特徴でした。また’58は太く存在感のあるグリップも特徴。ペイジ氏はネックを細くリシェイプして使用していました。ストラップを長くして腰よりも低い位置でレスポールを演奏するスタイルはジミー・ペイジが起源で、現代ではロックギタリストのひとつの様式美にもなっています。
1968年に再生産されて以降も、レスポールはトップのカーヴ、ネックグリップ、ヘッドのサイズやネック/ヘッドの角度といった様々なマイナーチェンジを重ね、時代ごとに姿を変えてきました。そのなかで例えば70年代のレスポールは、
などが名高く、80年代のハードロック/ヘヴィメタルシーンにおいてスーパーストラトに押され気味ながらもなかなかいい勝負をしてきました。しかし現在ではレスポールのヴィンテージ・スタイルといえば50年代に限る、とまで言われるように、52年から60年までの人気が圧倒的です。レスポールが歩んだ歴史やヴィンテージ・レスポールに興味がわいた人は、こうしたテーマを深く追及する書籍がいくつも出版されていますので、ぜひ読んでみてください。「ネット社会」と言われながらも、専門書に記されている情報にはやはり価値があります。
近現代のレスポール・スタンダードは、現代的なアレンジを重ねて高機能化を突き詰めた結果、「レスポール・モダン」へと分化しました。現代版のレスポール・スタンダードは、ロックの歴史を担ってきたクラシカルな様相と基本スペックはそのままのヴィンテージ・スタイルに回帰しています。レスポール・スタンダードの近現代史をざっと見していきましょう。
レスポール・スタンダードが時代の先端を走るようになったのは、2012年モデルからと言われています。2012年モデルは、
といった、現代でも受け継がれている重要な設計が初めて採用されています。2014年には「自動チューニングシステム」が初めてレギュラー入りしました。
ギターの偉人レス・ポール氏生誕100年の節目となる2015年版のレスポール・スタンダードは、さまざまな新しい要素を積極的に採用したバリバリの現代仕様になっています。サウンドについても現代指向で、低域をシェイプアップし、中高域にきらびやかさのある、爽快感のあるトーンになっています。
ヘッドロゴ、ゼロフレット・ナット
レス・ポール氏生誕100年を記念したヘッドロゴ、高さの調節ができるゼロフレット・ナット、ナット幅約46mmという若干広めのネック、プレック(Plek )の処理による均一なフレット、ザマック(亜鉛合金)製ベース&チタン製サドルのブリッジ、ボディ重量を約2.5kgにまで軽減させた「モダン・ウェイトレリーフ」、理論上レッド・ツェッペリンの完全コピーができる特殊配線といった仕様で、メモリアルイヤーに相応しい思い切ったアレンジです。
ボディ内部がくりぬかれている
「モダン・ウエイトリリーフ」
トラディショナル・ウエイトリリーフ
2016年になると、ギブソン全モデルが「HP(ハイ・パフォーマンス)」モデルと「T(トラディショナル)」モデルの2タイプでリリースされます。HPモデルは自動チューニングやゼロフレット・ナット、ヒールカットなど最先端の設計理念を惜しみなく傾注したモダンギター、Tモデルは古き良きスタイルを残したヴィンテージ・スタイルです。
さらには、軽量化していくレスポール・スタンダードに対し、重量調整を控えめにした「レスポール・トラディショナル」が新たに登場、名前こそ違えどレスポール・スタンダードは
という4モデルで展開していきます。
Les Paul Standard 2017 HP(Honey Burst、Heritage Cherry Sunburst、Bourbon Burst、Blueberry Burst)
「T」も同カラー4機種のラインナップとなっている
翌2017年には、さらなる軽量化と演奏性の向上を目指したマイナーチェンジが施されます。またこの年、内蔵DIPスイッチで好みの設定ができる特殊配線が組み込まれます。
Les Paul Standard HP 2018
「レスポール・スタンダードHP2018」は、通常版のレスポールからかけ離れたとも言えそうな、突き抜けた革新性を帯びた全く新しいギターになっています。新しいカラーリングも目を引きますが、何よりも新しいのはピックアップの取り付け方です。エスカッションを排し、ボディ裏からネジ止めするという手法は、おそらくギブソン史上初です。それどころか、世界的にもなかなか類を見ません。そのため伝統に根ざしたギターでありながらも、サイバーな雰囲気が演出されています。
Les Paul Standard HP 2018:ボディバックには遂にコンター加工が採用された
演奏性については、「レスポールの壁をぶち抜いた」というにふさわしい思い切ったアレンジが施されています。ボディバックには脇腹のフィット感を向上させる「コンター加工」が遂に採用され、ネックのジョイント部では、ハイポジションの演奏を邪魔するものがほぼいなくなるほどの大胆なヒールカット「ファスト・アクセス・ヒール加工」が施されます。銘木を惜しげなく使うプレミアム感と特殊な部品を多く導入した機能性を突き詰めるあまり、レスポール・スタンダードは価格がどんどん上がっていきました。
「HP」無しのスタンダードは、バックコンター&ヒールカット非採用。
左から、Les Paul Standard ’50s、Les Paul Standard ’50s P-90、Les Paul Standard ’60s
2019年春、ギブソン社は新しいラインナップ構成を発表しました。ヴィンテージモデルの「オリジナル・コレクション」、新しい発想を取り入れた「モダン・コレクション」、そして超高級機「カスタムショップ・コレクション」という3系統です。我らがレスポール・スタンダードはオリジナル・コレクションに属し、年代の特徴を意識した3モデルで展開しています。
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