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Made In Japanシリーズで復活したSwinger
別名「Arrow」とも呼ばれるスウィンガー (Swinger) は1969年にフェンダー社が作ったショートスケールのエレキギターです。元々スウィンガーは売れ残りのパーツを集めて作られた在庫処分としての役割が大きく、同じくフェンダー社のブロンコのように安価でスチューデントタイプ(ギター初心者向け)のモデルでした。製造本数も大変少なく、フェンダーのカタログには1度も載ることもなく、結果的に人気も得られませんでした。
しかし時は流れ、スウィンガーの評判にも変化が現れました。生産台数は多く見積もってもせいぜい600台で、そのため現在ではレア度が極めて高い、資金があっても手に入れることのできない「幻のギター」とまで言われています。今回は、このスウィンガーに注目していきましょう。
The Regrettes – Seashore [Official Music Video]
メンバー全員10代でデビューを果たしたパンクロックバンド「The Regretts」。2019年にはサマーソニックにて来日公演も果たしています。この動画でスウィンガーを奏でるリディア・ナイト女史は、2歳の時に父親の経営するナイトクラブのサウンドチェックでラモーンズの「Beat on the Brat」を歌っており、ライブ活動のキャリアをスタートさせたと言われています。この動画の時点で15年ものキャリアがあるというわけですよ。
発表当時のスウィンガーは、
というもので、既存モデルのパーツをうまく組み合わせて作ったギターでした。ベースVは世界初の楽器ではありましたが、時代に対して早すぎたためか受け入れられず、短命に終わりました(いっぽう、ミュージックマスターは1982年まで存続)。大量に余ってしまったBASS Vのボディを何とか使いきろうとして生み出されたのが、スウィンガーだったのです。
ピックアップ1基、トレモロ無しという超絶にシンプルな設計、ショートスケールのネックという構成はまさにミュージックマスターの仕様そのものでしたが、フェンダーの他のどのギターとも違う独特なルックスは異彩を放ち、またどのカタログにも掲載されていないミステリアスな存在でした。
Fender Limited Swinger
近年ではそのシンプルさ、ショートスケール&シングルコイルピックアップという仕様に起因するサウンドの軽さ、シルエットだけでそれとわかる独特のルックスが特定のジャンルには絶妙にフィットすると評価されています。ヴァンザントからはコピーモデルがラインナップされており、「KAMINARI GUITARS」はスウィンガーを元にハイエンドに蘇らせたギター”KAMINARI Swinger”をリリースしたこともあってじわじわと注目度が上がり、フェンダー社内でも評価が改まってきました。
「ミュージックマスター」から流用したスウィンガーのブリッジは、「一枚の鉄板を2回折り曲げて穴を開ける」という大変シンプルな設計で、当時は当たり前に付けられていた金属製のカバーもありませんでした。パーツの製造コストがかなり抑えられる上に、ブリッジで弦を固定する「トップロード」型なので、ボディへの加工も最小限で済みます。工程の合理化を常に追求してきたフェンダーらしい設計だと言えるでしょう。
このブリッジに付けられる3連サドルは、60年代のテレキャスターにも見られる「ネジ付き」タイプです。現代の感覚で3連サドルはオクターブ調整に不利ではありますが、このネジ付きサドルは「弦を受け止める場所を選択できる」という面白さを持っています。この特徴は特に1弦と6弦において面白みがあり、均等に配置する通常のセッティングはもちろん
といったセッティングをカンタンに試すことができるわけです。
2019年末、このスウィンガーが「よっちゃん」の愛称で知られる野村義男氏所蔵の1969年製スウィンガーから詳細にデータを取り、フェンダーの日本製ラインより復活を果たして話題となりました。
の2タイプがリリースされましたが、どんなギターなのかを見て行きましょう。
限定生産のスウィンガーは、リリース当時の仕様をかなり忠実に再現し、若干のアレンジを加えて現代のギターとして復刻させたマニアックなギターです。
ボディ形状、ヘッド形状、ブリッジの設計など多くの部分をしっかり再現させつつ、弦長とフレット数を拡張して現代の音楽で使いやすいギターへとまとめています。指板Rとフレットワイヤーに旧式の仕様が残されており、プレイするたびに「昔のギターっぽさ」を実感できます。この「弦長24インチ」は現代仕様のムスタングやジャガーと同じ寸法で、現代のショートスケールにおける定番仕様です。
本来ならヘッドに掲げられるモデル名「Swinger」のロゴは、貼られることなく出荷されます。このロゴはステッカーとして同梱されますが、69年当時のスウィンガーもこのように出荷されていました。なお、ピックガードで覆い隠した「ベース用ピックアップのキャビティ」までは再現されていないようです。
レギュラーモデルのスウィンガーは、上記の限定モデルからさらにもうちょっと現代のニーズを意識した設計です。
指板Rとフレットで現代の標準的な仕様を採り入れていること、リアピックアップを追加していることが使い勝手の大きな違いです。9.5という指板Rはフェンダーが現代的なモデルに採用している、平たすぎにも丸すぎにもならない、フェンダーらしい寸法です。リアピックアップとセレクタースイッチが追加されたことから、このスウィンガーは「ムスタング」や「デュオ・ソニック」にかなり近いギターになっていると言えるでしょう。
Fender SWINGERを…
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フェンダーからは、ショートスケールのギターがいくつもリリースされています。メイドインジャパン・トラディショナルの60年代式ムスタング、60年代式ジャガー、そして現代版のデュオソニックをピックアップし、これらとレギュラーモデルのスウィンガーを見比べてみましょう。どんな違いが見つかるでしょうか。なお、
といったところが共通点です。
今回の主役 「Swinger」 |
MIJ Trad 60S Mustang |
MIJ Trad 60s Jaguar |
Duo-Sonic(SS) | |
指板 | ローズ、9.5R | ローズ、7.25R | ローズ、7325R | メイプル、9.5R |
フレット | Fat Fret | Vintage Style | Vintage Style | Medium Jumbo |
ナット幅 | 40mm | 41.2mm | 42mm | 42mm |
ピックアップ | ムスタング | ムスタング | ジャガー | デュオソニック |
ピックアップ切替 | トグルスイッチ | 二つのスライドスイッチ | 二つのスライドスイッチ | トグルスイッチ |
ブリッジ | ミュージックマスター、3連サドル | ダイナミック・トレモロ | シンクロナイズド・トレモロ | ハードテイル、6連サドル |
おおむねの重量 | 3kg未満 | 3kg近辺 | 3.5kg近辺 | 3kg近辺 |
表:フェンダーのショートスケール比較
スウィンガーとデュオソニックは現代の楽器「モダン・スタイル」、ムスタングとジャガーは旧式の楽器「ヴィンテージ・スタイル」というコンセプトで仕上げられており、指板Rとフレットにその違いが反映されています。ナット幅の差異に起因するネックの太さは興味深く、握り心地にこだわりたいに人はぜひショップで確認して欲しいところです。
モデルごとにいちいちピックアップとブリッジを開発していくのがフェンダーの矜持ですが、スウィンガーではムスタングのブリッジを流用、廃盤とはいえミュージックマスターのブリッジをそのまま使っている(現在のパーツ名は「スウィンガー・ブリッジ」)ところに、「既存モデルの部品を組み合わせて作った」という出生の名残りを感じさせます。
本体重量には個体差がありこそすれ、スウィンガーのみボディにバスウッドが使われていることもあって、おおむね軽量のようです。
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