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1949年、レオ・フェンダーにより一本のソリッドボディ・エレクトリックギターが市場に投入されました。リアピックアップ一基のみの「エスクワイア」と名付けられたこのギターは、翌年デュアル・シングルコイル仕様に改良が行われ、製品名も”ブロードキャスター”と改称。そのさらに2年後、グレッチ社との権利の関係で「テレキャスター」と三たび改称し、現在へと直接的に続く系譜が始まりました。
このようにテレキャスターは登場以来シングルコイル2基のピックアップを基本としており、電装系も含めほぼ今と変わりません。しかし、キース・リチャーズやロビー・ロバートソンが愛機とした、フロントにハムバッカーを搭載した個体や、ジェフ・ベックが使用したハムバッカー二基の通称”テレギブ”と呼ばれる仕様のものなど、テレキャスターのピックアップ選択はかなり柔軟でかつ幅が広く、保守的なストラトやレスポールのそれとは違った面白さがあります。
このページではテレキャス用ピックアップについて詳しく見ていくとともに、おすすめモデルについても紹介していきます。
テレキャスターのピックアップはバリエーションがありながらも、リア/フロント2基が基本です。それぞれのポジションについて見ていきましょう。
シングルコイルが基本線。テレキャスター特有の「ジャキジャキ」と形容されるサウンドはこのリアピックアップから生み出されており、テレキャスの個性がもっとも発揮される部分です。各社から発売されるピックアップもここに力が入れられており、高域の暴れ具合や太さ、重心の軽い感じや重い感じ、ピッキングに対する粘り気の強さなど、製品によって少しずつ音色の傾向が異なり、非常に面白い部分でもあります。この部分に粗悪なピックアップを使うと耳に痛いキンキンした音になりやすいため、クオリティが最も求められるところでもあります。
発売初期におけるテレキャスターのフロントに搭載されたシングルコイルは、シングル特有の高域が伸びたレンジの広いものではなく、パワーが無いこもった音色でした。これはレオ・フェンダーの設計思想からあえてそうなっていたと言われていますが、現在では高域とパワーを両立した良質なフロント・ピックアップを選択するのが通例。各社から発売されている交換用ピックアップも、概ね繊細さと広いダイナミクスにきらびやかな高域を持つという点で共通しており、優れた音響特性を感じさせるものばかりです。
ハムバッカーを装着することでこの部分を改善しようという試みはかなり昔より存在しています。ジャキっとしたリアと太くふくよかなフロントの組み合わせで様々なジャンルに対応可能で、特に歪ませたロック系の音楽に相性が良いことから、テレキャスの中でも「フロント・ハムバッカー」はかなりポピュラーな位置づけです。同じ系統としてシングルコイルとハムバッカーの中間の特性を持つP-90を付ける選択もよく見られ、テレキャスのフロントピックアップはそのギタリストのスタイルを大きく反映します。
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ローリング・ストーンズのキース・リチャーズや、ザ・バンドやボブ・ディランのバックで有名なロビー・ロバートソンはレスポールに付いていたPAFを移植して使っていたという逸話があり、この組み合わせを世界に広めたのも彼らに他なりません。ほかにポリスのアンディ・サマーズ、ジャズギタリストのマイク・スターンもハムバッカー仕様のテレキャスターを使用しています。
数としては少数派ではあるものの、リアにハムを搭載しハムバッカー2基とするカスタムも存在します。テレキャスターはストラトキャスター以上に図太く重心がしっかりした音になりやすいため、ハムバッカーとの相性は良く、レスポールのように温かみと太さを両立したサウンドを得やすい傾向にあります。加えてテレキャスターの個性となる”硬さ”が残るところから、レスポール以上に攻撃的なサウンドが得られる可能性も孕んでおり、ロック系、インスト系などに適したサウンドを得る手段として効果的です。デュアル・ハムバッカーのテレキャスはギター自体に加工が必要なことが多いためか少数派ですが、現在では始めからデュアル・ハムバッカーになっているテレキャスタイプモデルも市販されています。
1974年、フェンダー社にいたセイモア・ダンカンはフライングVに搭載されていた二基のハムバッカーを修理したのちテレキャスターに移植し、それをジェフ・ベックに贈りました。ハムバッカー二基はインストをメインとするジェフ・ベックのスタイルにもよく合っていたのか、彼はこれをかなり気に入っていたといいます。通称「テレギブ」と呼ばれるこのギターは非常に有名なカスタム・テレキャスターとなり、デュアルハムバッカー・テレキャスターのはしりとなりました。ちなみに、この際取り付けられた二基のハムバッカーがダンカン社の「SH-4 JB」「SH-2 Jazz」の原型となっており、これはピックアップの選択に先入観など必要ないことを教えてくれる貴重な逸話です。
ピックアップ交換は手軽にサウンドキャラクターを変えられるため、理想の音に近づけるのに非常に有用なカスタマイズです。はんだごてがあれば誰でもでき、あらかじめ内部の写真など撮っておけば現状回復も可能なため、経験のない方でも一度挑戦してみる価値があります。ただし、この際いくつか気をつけるべき点があります。
別のメーカーのピックアップを付ける場合、フロント、リアのピックアップがそれぞれ位相が違うということが起こることがあります。フェンダーとダンカンの組み合わせで位相が逆になっているのは有名な話で、この状態でそのまま付けると、ミックスポジションにおいて音がうまく出なくなります。このようなケースでは正位相か逆位相かいずれかに両者を合わせる必要があり、片方のピックアップのホットとコールドを逆転させて配線する必要が出てきます。その際に、本体底面にアースがはんだ付けされていることが多いテレキャスター用ピックアップにおいて、ピックアップ本体のアースを付け替えるという作業が余分に登場するため、ストラトなどに比べて少々手間が掛かります。この作業がクリアできそうになければ、専門の業者に依頼するか、始めから位相を調べてピックアップを選びましょう。
ボリュームやトーンに使われるポットには抵抗値があり、シングルコイルには250kΩ、ハムバッカーには500kΩ、両者が混在する場合500kΩが適当とされています。シングルコイルとハムバッカーの組み合わせが様々に考えられるテレキャスターにおいてはここで何を選ぶかも重要です。一般的には数値が低いほうが高域が出にくくなり、100kΩを下回るようなポットでは明らかにこもった音になります。250kΩと500kΩが定番の値なため、楽器店で手に入るものはこの二種類がほとんどですが、これもあくまで参考値に過ぎず、とらわれ過ぎる必要もありません。よくわからない場合は定番に乗っかっておいたほうが無難ですが、プレイヤーによっては自身のこだわりから、あまりギターで使われない抵抗値をあえて選択しているケースもあります。
抵抗値 | 特徴など |
---|---|
1MΩ | 初期のテレキャスターに付けられていたという説がある、高域がよく通り、ピックアップとの相性では良い選択にも |
500kΩ | レスポールの標準装備、ハムバッカー用の定番値 |
250kΩ | ストラトの標準装備、シングルコイルの定番値 |
25kΩ | アクティブピックアップ用の定番値、パッシブだと高域が削げ落ちる |
またトーンポットに付いているコンデンサーは高域の減衰具合を決める役割を持ち、これの値や種類を変えるだけでも音色が変わると言われています。はんだ付けと取り外しを頻繁に行う必要があるため、色々と取り替えて試すというのが難しい部品ですが、これも音色を決める一つの要素だと考えておくと良いでしょう。ちなみに、ボリュームポットにつけるコンデンサーは通称「ハイパス・コンデンサ」(英語ではTreble Bleed)と言い、ボリュームを絞った際に高域だけを残しつつ音量を落としていくための部品です。ストラトキャスターに付いている事が多く、ボリュームを下げた際の音色に高域の成分を残したい場合は、これを増設するのが効果的です。
画像 | 製品名 | ポジション | マグネット | サイズ | DC 抵抗値 (Ω) | 特性 |
---|---|---|---|---|---|---|
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Fender Custom Shop Texas Special Tele Pickups Set |
リア-フロント・セット | アルニコ 5 | シングルコイル x2 | ネック:9.5k ブリッジ:10.5k |
豊かな中域に特徴、ハイパワー |
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Fender Custom Shop Twisted Tele Pickups Set |
〃 | アルニコ 5 | 〃 | ネック:5.9k ブリッジ:10.5k |
カスタムショップ・テレの標準装備、落ち着いた高域、ウェットな質感 |
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Fender Custom Shop ’51 Nocaster Tele Pickups Set |
〃 | アルニコ 3 | 〃 | ネック:7.41k ブリッジ:7.19k |
太くジャキジャキした高域、ヴィンテージ志向 |
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Fender Vintage Noiseless Tele Pickups Set |
〃 | アルニコ 2 | 〃 | ネック:11.3 – 11.7k ブリッジ:9.9 – 10.5k |
スタック構造のノイズレス仕様、ややまろやかな高域 |
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Fender Pure Vintage 64 Telecaster Pickups set |
〃 | アルニコ 5 | 〃 | ネック:7.4k ブリッジ:6.0k |
程よい硬さを感じるテレキャスらしいサウンド、ヴィンテージ志向 |
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SEYMOUR DUNCAN STL-1 Vintage ’54、STR-1 Vintage Neck |
リア(STL) フロント(STR) |
アルニコ 5 | シングルコイル | STL-1:7.0k STR-1:9.7k |
50年代ヴィンテージ志向 |
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SEYMOUR DUNCAN STL-2 Hot、STR-2 Hot Neck |
〃 | アルニコ 5 | 〃 | STL-2:15.6k STR-2:9.7k |
出力を上げ、高域を少し控えめにしたモデル |
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SEYMOUR DUNCAN STL-3 Quater Pound、STR-3 Quater Pound Neck |
〃 | アルニコ 5 | 〃 | STL-3:17.38k STR-3:11.8k |
さらに高出力、ハムバッカー的な質感が向上 |
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SEYMOUR DUNCAN ANTIQUITY TELECASTER |
リア、フロント | アルニコ2(リア) アルニコ5(フロント) |
〃 | – | ヴィンテージっぽくありながら、滑らかでウォームな高域 |
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SEYMOUR DUNCAN STHR-1b/n Hot Rails Tele |
リア(b) フロント(n) |
セラミック | シングルサイズ・ハム | STHR-1b:16k STHR-1n:- |
押し出しの強い中域と高出力、ハードロック的なサウンド |
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SEYMOUR DUNCAN APTL-1 / APTR-1 Alnico II Pro |
リア(APTL) フロント(APTR) |
アルニコ2 | シングルコイル | APTL-1 :6.2k APTR-1:8.1k |
控えめな高域と程よい出力のバランスタイプ |
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DIMARZIO DP172/173 Twang King Neck/Bridge |
リア(173) フロント(172) |
アルニコ 5 | 〃 | DP172:6.22k DP173:8.07k |
オールドスタイルなものより高出力かつやや抑えめの高域 |
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DIMARZIO DP177/178 True Velvet T Neck/Bridge |
リア(178) フロント(177) |
アルニコ 5 | 〃 | DP!77:6.64k DP178:7.41k |
高域を抑えて滑らかに、上品な質感 |
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DIMARZIO DP417/418 Area T Neck/Bridge |
リア(418) フロント(417) |
アルニコ2 | 〃 | DP417:8.4k DP418:7.5k |
スタック構造、しっかりとした中高域、落ち着いたサウンド |
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DIMARZIO DP318 Super Distortion T |
リア | セラミック | シングルサイズ・ハム | 13.18k | パワフル、中高域にピーク、クリーンではテレキャスらしいサウンド |
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DIMARZIO DP384 Chopper T |
〃 | セラミック | 〃 | 9.19k | 高域にピーク、ハムバッカーでありながらシングルらしさも残す |
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DIMARZIO DP389 Tone Zone T |
〃 | セラミック | 〃 | 12.39k | 非常にパワフル、ハイゲイン、激しいサウンドが得意 |
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DIMARZIO DP421 Area Hot T Bridge |
〃 | アルニコ2 | シングルコイル | 9.33k | スタック構造、ヴィンテージPAFを狙ったサウンド |
VANZANDT TRUE VINTAGE TELE neck/bridge |
リア、フロント | 不明 | 〃 | – | ヴィンテージ系の中では音が太く粘り気がある | |
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SCHECTER MONSTER TONE TE (nonTap) |
フロント | セラミック | 〃 | – | フロント用のみ、ドンシャリサウンドでヌケが良い |
数多いテレキャスター用ピックアップ。製品数だけで見るとさほどでもありませんが、冒頭で述べたように、種類にとらわれず何でも載せられるのがテレキャスターの良いところ。良質なセットをそのまま付けるもよし、先入観にとらわれない組み合わせを試すもよし、すべてはプレイヤー次第です。
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