エレキギターの総合情報サイト
MONUMENTS – Cardinal Red (OFFICIAL VIDEO)
プログレッシブメタルコアバンド「Monuments」は、長らくクリス・バレット氏(元Periphery)をボーカルに起用していたこともあり、Djentの発展に大きく寄与しました。4作目「In Stasis(2022)」から参加しているボーカリスト、アンディ・シゼック氏はPops/Rock系出身。メタルとしては新人ながら、おっかない顔でカタく歌うデスボイスと甘いマスクで柔らかく歌うクリーンボーカルを瞬時に切り替える、一人で歌っているとは思えない独自のスタイルを完成させています。バンドサウンドにもゴリゴリのメタル成分と美しい和音と旋律を聴かせる要素の二面性があり、硬軟を織り交ぜた奥行きがあります。
Volumes – Feels Good (Official Music Video)
プログレッシブメタルコアバンド「Volumes」は、甘くも凶暴にも歌える二人のボーカルと打ち込みのデジタルサウンドが持ち味です。なお、結成以来バンドを支えたギター奏者ディエゴ・ファリアス氏を亡くしており、現在メンバー募集中です。
SikTh – Philistine Philosophies (Official Video)
2003年デビューの「SikTH(シクス)」は、ツインボーカル&ツインギターという編成による、荒々しく生々しい音を持ち味としています。変拍子を駆使した複雑かつ知性的ななグルーヴを土台に、二人のボーカルが咆哮する、暴力的な方面で調和の取れたサウンドです。メンバーはそれぞれ講師やプロデュースなど幅広く活動しており、そっちが忙しくなったと言うことでしばらくバンドを停止していたことがあります。
VEIL OF MAYA – Mikasa (Official Music Video)
「Veil of Maya(ベール・オブ・マヤ)」は、ギター奏者マーク・オオクボ氏(日系アメリカ人)を中心とするプログレッシブ・メタルバンドです。10年続けたデスコア路線からDjentを取り入れたメロディックデスに移行、バンド史上初めてクリーンボーカルを取り入れてファンの間で論争になったものの、新たなファンの獲得に成功してDjent代表格の地位を得ました。その契機となった5作目「Matriarch (2015)」は、収録曲すべてが映画/TV/漫画の女性キャラクターをテーマにしたコンセプトアルバムです。
TESSERACT – Nocturne (OFFICIAL VIDEO)
7弦ギターの使い手を二人擁するプログレッシブメタルバンド「TesseracT(テッセラクト)」は、変拍子やポリリズムを活用するタイトなグルーヴと柔らかい雰囲気のアプローチを巧みに組み合わせたサウンドが持ち味で、プログレッシブメタルのDjentムーブメントを開拓した功績が高く評価されています。この分野にあってデスボイスに頼らず、円熟した美しい歌唱の一本で勝負するボーカルも特徴的です。
VILDHJARTA – Dagger (OFFICIAL VIDEO)
スウェーデン出身「VILDHJARTA(ヴィルドジャルタ)」は、母国の英雄MESHUGGAHのサウンドをバックボーンにした骨太のサウンドが持ち味です。デビューアルバム「Måsstaden(2011)」ではデスボイスのツインボーカルにギター3本という重厚な編成です。動画で随所に見られる「Thall」はこのバンドのサウンドを象徴する造語で、オンラインRPG「World of Warcraft」に登場するオーク族の大物キャラThrallに由来します。なお、バンド名はスウェーデン語で「ワイルドハート」を意味します。
Djentには高度な演奏技術が求められますが、その中でも特に際立った個性を発揮するギタリストが所属するバンドを見ていきましょう。
Animals As Leaders – “CAFO” Prosthetic Records
達人トシン・アバシ氏のソロプロジェクト「Animals As Leaders(アニマルズ・アズ・リーダーズ)」は、8弦ギター二人とドラムのトリオという、世界に類の無い編成のバンドです。8弦ギターは4弦ベースの音域をカバーすることができるため、8弦ギター2本でギター2本/ギター&ベース/ベース2本といった編成の切り替えを疑似的に行なうことができます。デビューアルバムのプロデュースをミーシャ・マンスール氏(Periphery所属)が担当したこともあり、同バンドはDjentシーンにおいて特に傑出した存在だと目されています。
アバシ氏のプレイはタッピングやスウィープといったギターの技巧、またロータリー奏法や指を4本使用するスラップなどベースの技巧を横断的に取り入れる、8弦ギターでしか実現し得ない表現の幅を持っています。
ERRA – Hybrid Earth (Official Music Video)
バビロニア神話に登場する神の名を冠する「ERRA(エッラ)」は、メタルコアをベースにソリッドなDjentと包み込むようなアンビエントを融合させたサウンドが持ち味です。この独自のスタイルは「メロディックアンビエント」と名づけられ、メタルコアとプログレッシブメタルのシーンへの影響力から「モダン/プログレッシブメタルコアムーブメント全体の先駆者」と呼ばれています。
設立メンバーのギター奏者ジェシー・キャッシュ氏は、メロディアスかつテクニカルな演奏を駆使する達人でありながら、メインのクリーンボーカルでもあります。
CLOUDKICKER – Subsume Part 1 (Live with INTRONAUT)
自宅スタジオで音楽制作を行うベッドルームミュージシャンが注目される中、メタル界隈で孤高の存在と目されているのが「Cloudkicker(クラウドキッカー)」のプロジェクト名で活動するベン・シャープ氏です。2008年から毎年のようにアルバムを発表していますが、音楽制作は全て自分一人で行っており、普段は民間航空会社のパイロットとして勤務しています。
打ち込みとの同期演奏を利用するバンドも多くあり、メタルで鍵盤楽器系のサウンドが使われるは珍しくありません。しかし、その中においてキーボーディストの所属するDjentのバンドはなかなかにレアで、それ自体がバンドの個性となりえます。
BORN OF OSIRIS – Angel or Alien (Official Music Video)
アメリカのプログレッシブメタルコアバンド「Born of Osiris(ボーン・オブ・オシリス)」は、達人2人のツインギターとツインボーカル、そしてグイグイと積極的に主張するキーボードのアンサンブルが持ち味です。ツアーメンバーに8弦の達人トシン・アバシ氏が参加したことがあり、またジェイソン・リチャードソン氏が参加した初めてのプロのバンドでもあります。
Textures – Awake
オランダの「Textures(テクスチャーズ)」は、プログレッシブメタルコアのサウンドを軸に、硬軟を歌い分けるマッチョなボーカルと広がり感のあるキーボードが持ち味です。アンビエント系とヘヴィリフというツインギターのアンサンブルやソリッドなグルーヴなど後進に多大な影響を及ぼしましたが、2017年のツアーを最後に解散しています。
The Contortionist – Language I: Intuition
「The Contortionist(コントーショニスト)」は、MESHUGGAHや上記Texturesに加え、パット・メセニー氏やアラン・ホールズワース氏、さらにはやアンビエント作曲家のブライアン・イーノ氏の音楽要素までを取り入れた、独自のプログレッシブメタルが持ち味です。最もおいしいところはヘヴィかつプログレッシブなグルーヴに置きつつも、清涼感すら覚えさせるスペイシーな演出をふんだんに駆使します。
Djentの影響は日本のミュージシャンにも及んでおり、自身のアイデンティティを堅持しながら現代的な表現技法としてDjentが積極的に採用されています。Djentを取り入れている日本のアーティストを見ていきましょう。
EARTHISTS. – Resonating Light (Ft. Ichika) (Official Stream)
「Earthists.(アーシスツ.)」は全員日本人の編成でありながら結成2年にしてアメリカでデビュー、ヘッドライナーで日本を含むアジア/ヨーロッパツアーを敢行、イタリアのメタルフェスに出演するなど、国の枠にとらわれない活動を展開しています。サウンドの中核にDjentを据えながらも、ジャズやポップスの要素を柔軟に採用した幅の広い曲調が持ち味です。
PALEDUSK – WIND BACK (Official Music Video)
福岡発「Paledusk(ペールダスク)」は、メタルコアとヒップホップを高次元に融合させたサウンドが特徴です。随所にプログレッシブかつヘヴィなグルーヴを取り入れつつ、楽曲の最もおいしいところはキャッチーに仕上げています。
Sailing Before The Wind – Drift Apart (Official Music Video) / Japanese Metalcore band
東京のメタルコアバンド「Sailing Before The Wind(セーリング・ビフォー・ザ・ウィンド)」は、情熱的なツインリードやアンビエントなクリーンパートを効果的に利用する、ドラマティックな楽曲展開が持ち味です。この演目「Drift Apart」ではノりやすいメタルコアで開始、中間部のブレイクダウンからDjentに突入します。
ヘヴィなギターによるプログレッシブなグルーヴをアイデンティティに据えるアーティストが林立する中で、新しい表現技法としてDjentを積極的に使用するアーティストも登場しています。
Polyphia | O.D. (Official Music Video)
ツインギターのインストゥルメントバンド「Polyphia(ポリフィア)」はPeripheryらメタルコアのアーティストとライブを行なう鋼鉄志向のバンドでしたが、アルバムを重ねていくうちにポップス/ファンク/ヒップホップ/EDMなどの要素も取り入れた独自のサウンドを構築しています。なお、所属ギター奏者ティモシー・ヘンソン/スコット・ルベイジ両氏は、Ibanez AZをカスタマイズしたシグネイチャーモデルをリリースしています。
Disperse – Surrender
ポーランドのプログレッシブロック/プログレッシブメタルバンド「DispersE(ディスパーズ)」は、スペイシーな音像や脱力感のあるクリーンボーカル、クリーン系のアルペジオなど上品なサウンドをメインとしながら、プログレッシブな変拍子やダウンチューニングによる粗暴なリフを放り込むのが持ち味です。全編ゴリゴリの演目も全編ソフトな演目も民族系のサウンドもある振り幅の大きな作風の中に、Djentの要素が効果的に使われています。
Plini – “Impulse Voices” (Playthrough)
オーストラリアのソロアーティスト「Plini(プリニ)」は、デビューアルバムで「卓越したギタープレイの未来(the future of exceptional guitar playing)」とスティーヴ・ヴァイ氏にコメントせしめた若き天才です。ジャズ/フュージョン寄りのサウンドを基本としつつ時にはヘヴィなグルーヴも使いますが、どんなスタイルでも自然体な雰囲気でサラっと弾きこなします。
Intervals | Leave No Stone (Official Music Video)
カナダのプログレッシブメタルバンド「Intervals(インターバルス)」は、現在ではギター奏者アーロン・マーシャル氏のソロプロジェクトとして活動しています。ザクザクのメタルを基調にプログレッシブなグルーヴを多く活用する作風ですが、歌うようなキャッチーなメロディを多く使用することもあって、プログレッシブメタル初心者さんにも聞きやすいサウンドです。
以上、エクストリームミュージックの新常識「Djent」に注目していきました。ジャンルとしてだけでなく、メタルの表現技法としてもDjentは注目されています。しかしながらBABYMETALなどで女性の活躍が目立つメタルシーンにおいて、Djentを採用するアーティストに今のところ女性の姿が見当たらないのは興味深いところです。女性の方々もぜひこのDjentムーブメントに参入し、みんなでDjentを盛り上げていきましょう。
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