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「ハイブリッド(混合)ピッキング」とは、
この二つを織り交ぜる演奏法です。親指と人差指でピックを使い、指弾きには中指と薬指、時には小指まで動員します。弦の移動を伴うピッキングや演奏スタイルの切り替えなどに有利な、表現の幅が広がるテクニックです。今回は、このハイブリッド・ピッキングに注目していきましょう。
ハイブリッド・ピッキングの歴史は古く、カントリー・ミュージックで使用される「チキンピッキング」がその由来だと考えられています。コードストロークや通常のメロディ弾きのためにピックを使いつつ、アルペジオや弦をまたぐ「弦飛びピッキング」、2本の弦を同時に鳴らす「ダブル・ストップ」などで指を使います。
ONE ON ONE: Albert Lee Feat. Cindy Cashdollar August 20th, 2014 City Winery New York Full Set
カントリーの巨匠、アルバート・リー氏。アルペジオや音飛びの多いプレイでチキンピッキングを使用しつつ、ピックのみで猛烈なピッキングプレイも見せてくれます。
チキンピッキングはカントリーミュージック特有の、パーカッシブなサウンドを特徴とします。柔らかなタッチで指弾きしたり、ハイゲインの速弾きに指を使ったりする演奏をチキンピッキングとは表現しにくいわけです。また、「カントリー・ミュージックのイメージが色濃いネーミングである」という点が、そうじゃない系のプレイヤーにとっての難点でもありました。そんなわけで特定のジャンルに属さない「ハイブリッド・ピッキング」という呼び方が生まれ、さまざまなジャンルのプレイヤーが取り入れました。
ハイブリッド・ピッキングが音楽表現にどのように使われるか、2つの例を見てみましょう。
Shred… but it’s happy
現代の変態さん、ジャック・ガーディナー氏。大胆なフレージングにハイブリッド・ピッキングをふんだんに取り入れています。それにしても手がデカい。そして、最後の笑顔がかわいい。
ハイブリッド・ピッキングは大胆な弦移動が可能になるため、音程差の大きなトリッキーなフレージングや細かく上下する複雑なフレーズを作ることができます。ポイントはピッキングフォームで、ピックを使いながら同時に中指や薬指を弦に対してイイ入射角で使うことのできる絶妙なフォームを探求する必要があります。また、速さと正確さ、そして独立した動きが求められるため、中指のみ、あるいは使っても薬指までで、小指までは使用しないのが一般的です。
Hakase Etude 5 – Hybrid Picking Tune
この動画でのギター博士のハイブリッド・ピッキングは、ピアニストが鍵盤を撫でるようなタッチでコードの響きを出しています。まとまった響きは指で弦を撫でておき、アルペジオはピックで行なっています。
コードを指で弾くと、ピックとは違った独特のニュアンスが得られます。また、弦ごとに指をあてがうのでピッキングミスが起きにくいメリットがあります。ハイブリッド・ピッキングをコード弾きに使用する場合、シンプルなアルペジオなど速さが求められないことも多く、またオーソドックスな4フィンガー奏法のイメージで弾きたくなりやすいので、小指まで使用するプレイヤーが多く見られます。
ギター博士のこの演奏では、ハイブリッド・ピッキングをコード弾きに使用、指は小指までフルに使用しています。小指は五指の中で最も不器用なので慣れるにはそれなりの修練が必要ですが、指先のどこで弦をヒットさせるか、これを見極めることができれば糸口が見つかります。
ハイブリッド・ピッキングは難しそうだ。でも指も使いたい。そんなわがままなあなたのために、そうじゃないスタイルの例もいくつか見ていきましょう。こっちの方が気に入るかもしれませんが、逆にもしかしたら、やっぱりハイブリッド・ピッキングを練習した方が良さそうだと思い直すかもしれません。
X Japan Kurenai from The Last Live- HD
冒頭のアルペジオで、HIDE氏が口にピックを咥えてフィンガーピッキングをしているのが確認できます。熱狂的なファンの中には「あのピックになりたい」と願った人も大勢いたことでしょう。ステージパフォーマンスとしても効果的ですが、当然の結果として歌うのは封じられます。
平らなピックを使うギタリストがフィンガーピッキングしたくなった時の伝統的な手法が、「ピックをどこかに置く」あるいは「ピックを口に咥える」です。いずれも切り替えのアクションが少々大きくなるので、持ち替え時間を想定した演奏内容を考える必要があります。
“Stiletto Cool” – Brian Setzer’s Rockabilly Riot: Osaka Rocka! – Live in Japan
1曲の中で、つまんでいたピックを人差指にホールドし、親指と中指によるフィンガー・ピッキングに移行し、また戻る、という切り替えが何度も行なわれています。ブライアン・セッツァー氏にとっては当たり前の動きのようで、歌いながらでも平気だし、切り替えも一瞬です。
ピック弾きから指弾きへ、ほぼ一瞬で移行できる方法です。どれかの指がピックを持ち、残った指で弦を鳴らすスタイルと、ピックを持った指も使うスタイルがあります。ピックの持ち方で指の使い方は絞られますから、どんな指弾きがしたいかでどんな持ち方をすればよいかを研究しましょう。また、ピックをつまんだ状態から手の中に格納した状態に切り替える練習も必要です。
Over the Rainbow
ソロで30年以上のキャリアを持つ是方博邦氏。オーソドックスなスタイルだったところにソロアルバム4枚目の頃、求めるピッキングニュアンスのためサムピックに移行。純粋にそのためにサムピックを使っており、ブルースやカントリーの影響ではないとのこと。
サムピックは、特にアコギでカントリーやブルースを演奏する際の武器として有効なピックです。親指に装着するので、ピックの音を使いながらも指を全部使えるのがメリットです。そのためタッピングを多用するスタイルにも有効です。ただしアップピッキングが少々難しくなります。
Jeff Beck – Led Boots (Jeff Beck: Performing This Week…Live at Ronnie Scott’s)
指で弾くようになった経緯については「あんな小さなプラスチックのカケラがあるかないかで、ギターが弾けるか弾けないかが左右されるのが嫌だ」ということのようです。あと、アームが使いやすそう。
ジェフ・ベック氏も、はじめピックを使って弾いていたところある時期から指だけで演奏するスタイルに移行しました。ピッキングの基本は親指と人差し指をメインに、オルタネイト・ピッキングは人差指で行ないます。特にジャズやブルースにおいては、ピックに頼らず指で演奏するギタリストが多く見られます。最もオーソドックスな弾き方は、親指でダウンピッキング、人差指でアップピッキングです。
以上、ハイブリッド・ピッキングとそうでないピッキングについてチェックしていきました。ピックと指という異なる弾き方の境界線を無くすテクニックは、フレージングの幅を大きく広げることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
Hakase Etude1〜10がパッケージになった「Hakase Etude Bandle 1」を…
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