エレキギターの総合情報サイト
「Infinite(インフィニット)」は、大阪のリペアショップ「ハイエンドミュージック」が2017年に立ち上げたブランドです。新しいブランドにふさわしい新しい設計と新しい音、そして求めやすい価格が評価され、さっそく愛用するプロミュージシャンが増えています。Infiniteのギターにどんな特徴があるのか、代表取締役の八田聡さんに伺いました。
八田聡(はった・さとし)株式会社ハイエンドミュージック代表取締役
時節柄、マスク着用での取材。ギタープレイヤー業を辞していったんWEB業者に就職、勤務しながらリペアのキャリアを積み上げ、2008年にリペアショップ「ハイエンドミュージック」として独立。Infiniteとしてギターを発表したのは2018年だが、すでに海外進出の可能性を模索している。分からないことは分かるようになりたい、できないことはできるようになりたい、何かをしていないと落ち着かない、こうした性分がこうじて、今は仕事に振りきった生活なのだとか。
──よろしくお願いします。何と、工場は商店街の中なんですね。
八田:よろしくお願いします。
リペア工房から近い物件を探したところ、幸運にもちょうど良いものが見つかりました。木工作業は音が出ますが、日中は両隣に誰もいないとのことで、安心して作業できます。
漬物屋さんや魚屋さんを通り過ぎたところで、忽然と現れるギター工場。
シャッターを全開していただいた。一階が木工所、二階は事務所と木材保管庫。
ワイルドでフルレンジな鳴り!「Infinite Trad Fullsize T」こだわりが詰め込まれまくったエレキギター!!
ギター博士が所有するinfiniteのギター
infinite Trad Fullsize T Mid Aged / Butterscotch Blonde
極薄のオールラッカー塗装/ミディアム・エイジド加工/1ピース・アッシュ・ボディ/貼りメイプル指板、バズフェイトン・チューニングシステム/Jescar 55090-Sステンレスフレット/ベアナックルPU「55 Stagger」搭載という考え尽くされた仕様
ヒールコンター加工、そして独自ジョイント方法の「小菊ロジック」と、大変ユニークなギターとなっている。
八田社長に詳しく話を聞いてみよう。
八田:弊社のギターは独自のネックジョイント法「小菊(こぎく)ロジック」ありきで、これに「独自工法の頑丈なネック」が使われます。この二つを軸に、木材の違いやボディ形状、ボディ構造などでバリエーションを展開しています。
──「小菊ロジック」は、小菊さんが考案したんでしょうか?
八田:宮大工の工法に「小菊」があったので、名前を拝借しました。ネックのジョイント部に三本の「ほぞ穴(凹)」を掘り、そこに木製の「ほぞ(凸)」を接着、同じく「ほぞ穴」を切ったボディに噛み合わせて、ネジ留めします。この工法によりネックが大面積でボディに接するので、豊かなサスティンが得られます。加えて、ジョイント部の強度を跳ね上げ、左右のズレを防止する、エレキギターでは全く新しい工法です。
これが「小菊ロジック」。英語表記は「Kogic Logic」で、韻を踏んでいる。スタッフに小菊さんはいなかった。3本の「ほぞ」は、「小」の字に見えないこともない。
八田:この工法は自分で考案したんですが、資料をひもとくと、似たもので宮大工の工法に「小菊」があると知りました。「ほぞ」を3本使うのが小菊、5本なら「大菊(おおぎく)」です。
三本の「ほぞ」が平行だと、噛み合わせが悪かったりわずかにズレたりという不具合がありました。ジョイントネジのこともあってエンド側をすぼめることで、そうした課題が解消しました。
ネックを裏返してみた。
八田:フロントピックアップの向こう側まで達する、超ディープジョイントです。ジョイントを深くすることで、強い力のかかるポイントを移動させられます。これによって、経年による「ハイ起き」を防止できます。レスポールなどで見られる「ディープジョイント」は、だいたいフロントピックアップの幅までです。これに対して弊社のジョイントは、そこからもう一歩深く挿すことになります。ネック/ボディの接地面が増えることから、独特の鳴りが生まれます。
八田:フロントピックアップを埋める分だけ、ネックは削っています。こう見るとかなり薄くなるまで削ってしまっていますが、接着した「ほぞ(凸)」が補強となり、十分な強度が確保できます。「ほぞ(凸)」の材料には、エボニーを採用しています。強度と加工性に優れており、また密度が高く安定していて膨張率も低いですし、水分の影響を最も受けにくい木材です。金属も試しましたが、接着を考えるとやはり木材が良いという判断です。黒いのは導電塗料です。
ネックのネジ穴には、コレが埋まっている。
八田:ブラス削り出しのブッシュで、ジョイントネジをしっかり受け止めます。パーツ自身の精度が高いことに加え、やはりブラスの音は良い、という判断です。ギターにはなぜかブラスが合いますね。
一般的なギターのボルトオン・ジョイントは、直径4mmくらいの木ネジで締め付けます。これに対して弊社のブッシュは直径7mmほどあり、より太い木ネジを使っているのと同様の効果が得られます。ネック材に対する食いつきが、とても良いんです。
ほぞ穴(凹)にピッタリと収まる、エボニー製の「ほぞ(凸)」。手作業でココまで加工するならば、かなり困難な作業となるに違いない。また、ジョイントネジを受け止めるブッシュも確認できる。
八田:ネックポケットは、まずタイトに成形します。今は湿気があって木材が膨張しているので、この通りこのままでは入りません。ジョイントする段階で、両サイドが当たらないところまで削り直して仕上げます。ネックポケットは梅雨時にはきつくなるし、秋冬の乾燥でゆるくなるし、湿度で動くんです。しかし「ほぞ」で噛んでいる部分は動かないので、ズレを起こす心配はありません。
リペア業を営みながら、ハイ起きの起こらないジョイント法の構想を温めていました。でも手加工だと、どうしても精度に限界があります。CNCルーター(コンピュータ数値制御加工機。単にNCとも)を導入したのは4年ほど前ですが、最初の1年はこのジョイント部の試作ばかりしていました。このジョイント部が完成して初めて、ギター本体の設計に入りました。弊社のギターは、ココありきなんです。
ずいぶんと仕上がってきたところ(上)
指板を貼り付けたところ(中)
指板を貼りつける前(下)
八田:弊社のネックは独自の構造により、一般的なものより遥かに頑丈です。一般的なギターの場合、出荷時にトラスロッドをある程度締め込んで、弦張力とのバランスを取ります。弊社のネックでは、それが「クッ」で終わります。そこからは、ほぼほぼ動かず安定します。
ネックの凸と指板の凹が、キッチリ噛み合っているのがわかる。
エンド側もこの通り、キッチリと噛み合っている。反ったりねじれたりしそうにない。
八田:指板が「小菊ロジック」と同じコンセプトで接着されます。ネックからの「ほぞ(凸)」は、削り出しで作る「一体成型」です。コレと指板の「ほぞ穴(凹)」が噛み合います。指板材がローズでも、メイプルでも、同じ工法です。
まだ荒加工のうちから、トラスロッドを挿入して木材で塞いでいる。「ほぞ」はネックの幅に沿って末広がりに走っていて「八」の字に見えなくもない。「八田ロジック」という名称をご提案したが、やんわりと流された。
八田:「小菊ロジック」はネックジョイント法の名称でして、この指板接着法にはまだ名前がありません。ネックシェイプを出していない四角いうちからトラスロッドを挿入して寝かせ、固まったのを待ってから余分な部分を削り落とします。
6点留めのトレモロにしては、このネジ穴は・・・?
金属プレートをはめ込んだところ。プレートを4本のネジで固定する。
八田:トレモロは2点支持が基本で、スタッドを埋める穴が大きく開いています。しかしここに厚みのある金属プレートを埋めてから、ブッシュを埋めます。このプレートがブッシュを支えることで「スタッド倒れ」を防ぎます。音にも変化があり、求めている音に近づいたので採用しています。
「Trad T」などで使われる金属ブロック。こんなに厚いのか。
八田:ハードテイルの場合、裏側にブラス(真鍮)削り出しのブロックを埋め込みます。これはだいぶ厚いですよ。サウンド的に効果があり、かつボディバランスをしっかり取れる厚みに設定しています。アルミを試したこともあったんですが、やはり軽い金属では音も軽くなり、出したい音とは違いました。これらを採用したのはここ1年以内くらいです。
ペグ穴の周りが、約1mm落とし込まれている。
八田:ペグの位置を一段下げることで、弦張力のバランスを取っています。はじめこの設計はありませんでしたが、ナットへの弦角度がもう少し欲しくてヘッドの厚みを1㎜増し、そのぶんペグ位置を下げました。例えばロック式ペグはストリングポストに巻きつける回数が減りますが、それでもナットへの角度はじゅうぶんに確保できます。
モダン系ハイエンドならば決して無視できない、米国ジェスカー社製のステンレスフレット。
八田:フレットはジェスカーのステンレス製をセレクトしています。滑りが良いし、耐久性が圧倒的に優れています。指板のエッジ部は「ラウンド・エッジ」加工を施し、フレットの両端は球面に仕上げています。こうした処理により、ネックを握ったときの手触りがとても良好になります。
セクシーなヒール部。ジョイントネジの穴が思いきり後ろにあるのは、小菊ロジックの特徴。
八田:ハイポジションには、カドを落とした「クイーンカット」を採用しています。ネックをものすごく深いところまで挿しますから、ここまで大胆にカットしても強度は損なわれません。
どことなく立体感を覚える、ブランドロゴ。
何ともインパクトのあるでっかいロゴ。これだけ大きければ、クリップチューナーで隠れてしまうこともない。
八田:標準のヘッドロゴは、レタリングシートを使っています。白を貼って塗装した上にシルバーを貼る二重貼りです。弊社は価格を抑えてなんぼと考えていますが、ココには倍の経費がかかっているわけです(笑)。しかし、ごくわずかな誤差が立体的な陰影を生む、重要なポイントだと考えています。オプションで大胆な「ラージロゴ」もあります。
一見するとミニハム用かと思える、モダナイズ・ベンドトップのタイトなピックアップキャビティ。
八田:ザグりはタイト気味にしています。密度を出したいところはしっかり残し、掘るところはしっかり掘る、という方針です。
シャープな印象のFホールからうかがえる、肉厚なトップ材。
この肉厚なトップ材が、バック材に合わせてきれいに曲げられている。
八田:トップ材のアッシュは11mmなので、厚めです。これを曲げ(ベンド)加工して、バック材に貼りつけたのが、ベンドトップです。この厚さで作るのは、なかなか珍しいのではと思っています。
これはTrad Tのバック材。Infiniteでは、全モデルがホロウ化できる。バックコンターに合わせて削っているところがニクい。
八田:分厚いトップに対して、バックは薄くしています。叩くと分かるくらいです(トップはコンコン、バックはトントン)。
もともとソリッドボディが基本ですが、ホロウやチェンバーは全モデルで選択可能なオプションです。バックはホーンの先まで掘って、ボディエンドはタテ一文字だけ残しています。そしてジョイント部分からブリッジまでがソリッド、という設計です。
──新しい設計がいっぱいですね!
Infiniteのギターを…
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