Bare Knuckle(ベアナックル)ピックアップの種類と特徴

[記事公開日]2025/4/6 [最終更新日]2025/4/26
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

Bare Knuckleピックアップ

Bare Knuckle Pickups(ベアナックル・ピックアップ)は、イングランドのギタリスト、Tim Mills氏によるプライベートな製作より始まりました。同氏は自身が長いキャリアを誇るベテランのスタジオミュージシャンでもあり、その経験に基づいて、より幅広いレンジを持ち、多様なジャンルをカバーできるピックアップの必要性を感じ、開発をスタートさせます。

そのような経緯で作られたピックアップは、非常に高い評価を得るにいたり、故ゲイリー・ムーア氏など、有名なギタリストにも使用者が見られ始めます。現在ではヴィンテージ系サウンドを持つオールドスタイルなものから、ジェントと呼ばれるプログレッシブメタル系アーティストのシグネイチャーモデルまで、まさに多種多様というに相応しい、充実したラインナップを誇ります。

2000年代中盤ごろから、日本国内に流通が始まり、2010年代に入ってくると大手楽器店での取り扱いも見られるようになりました。現在でもイギリス国内の本社で、数少ない職人が一つ一つをハンドワイアードで作るというブティックスタイルを変えることなく、世界最高峰のピックアップを作り続けています。

森多健司

ライター
モリタギター教室 主宰
森多 健司

新大阪に教室を設立し10年弱、小学生から70代まで、音楽経験皆無の初心者から歴20年のベテランまで、幅広い層に教える。2015年 著書「ロック・フュージョン アドリブ指南書: マイナー7th上で多彩なフレーズを生み出す方法」、2016年 著書「六弦理論塾〜ギタリストのためのよく分かる音楽理論」上梓。

エレキギター博士

ガイド
エレキギター博士
コンテンツ制作チーム

webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。

ベアナックル・ピックアップの特徴

The Mule
Bare Knuckle Pickups「The Mule」

パワーの大小などは製品によって異なりますが、どのモデルにも共通してみられる点があります。その中でも最大の特徴は、創業者のTim Mills氏が最初の命題として置いた「レンジの広さ」であり、それに伴う抜群のヌケの良さや明瞭さです。それに加えて、ピッキングのダイナミクスやギターのボリュームに対しての追従性の高さ、そして歪ませた時にも音がつぶれずにしっかりとした芯を残す点など、優れたピックアップに要求されるポイントを高いレベルで持ち合わせています。

また、カラーバリエーションが豊富な上、ハムバッキングカバーなどを自由に変更することもできます。特にハムバッキングピックアップ用のカバーは種類が豊富で、通常のクローム、金メッキの他、メタル系に合わせた攻撃的でダークなデザインのもの、ブルース系に合わせてエイジド加工された風合いを持つものなど実に多彩。外観について自分なりのこだわりを追求できるところもまた、一つ一つがハンドメイドである故の利点でしょう。イギリスの公式サイトには、世界で唯一とも言える、ピックアップのカスタムをウェブ上で行えるフォームが存在します。

ベアナックル・ピックアップのラインナップ

ハムバッカー

Bare Knuckle Pickups:ハムバッカー

ベアナックル・ピックアップの中核となるハムバッカー。ラインナップは多岐に渡り、ここではその一部を紹介します。基本情報は6弦モデルを掲載。大半のモデルで4芯ケーブル採用によりコイルタップ機能に対応、および7弦8弦モデルのオーダーに対応しています。

モデル名 マグネット 直流抵抗値(kΩ) 基本用途
Aftermath ブリッジ: セラミック
ネック: アルニコ V
ブリッジ: 14.7
ネック: 11.5
モダンメタル、Djent、テクニカルリフ
The Juggernaut ブリッジ: アルニコ + セラミック mix
ネック: アルニコ 5
ブリッジ: 13.3
ネック: 8.9
プログレッシブロック、パンク/ハードコア、メタルコア
Ragnarok ブリッジ: セラミック
ネック: セラミック
ブリッジ: 19.0
ネック: 15.8
モダンメタル、ダウンチューニング、アグレッシブなリフ
Warpig ブリッジ: セラミック or アルニコ V
ネック: アルニコ V
ブリッジ: 21.5
ネック: 17.4
ハイゲインメタル、スラッジ、ドゥーム
Nailbomb ブリッジ: アルニコ V or セラミック
ネック: アルニコ V
ブリッジ: 15.7
ネック: 9.8
オールドスクールメタル、グランジ、ガレージ、パンク
The Mule ブリッジ: アルニコ IV
ネック: アルニコ IV
ブリッジ: 8.4
ネック: 7.3
クラシックロック、ブルース、ヴィンテージトーン
Stormy Monday ブリッジ: アルニコ II
ネック: アルニコ II
ブリッジ: 7.7
ネック: 7.1
ブルース、ジャズ、カントリー、クラシックロック

シングルコイル

Irish Tour

ヴィンテージ系のジャキジャキとしたシングルコイルのサウンドをそのままに、出力を上げたモデル。出力を上げると共に中低域がややファットになっているので、歪ませたときの気持ちの良いサウンドには素晴らしいものがあります。出力レンジの広さは損なっていないため、全体的に明るい質感を持っています。

Trilogy Suite

名前から想像できる通り、”イングヴェイ・スタイル”を目指したピックアップ。ヴィンテージ系からはかけ離れた設計になっており、シングルコイル特有の明るさやレンジの広さと、P-90を想起させる太さを併せ持った音色になっています。ディープな中低域に豊富な倍音が最大の特徴ですが、シングルコイルらしいクリアーな響きも失っていないため、クリーントーンから歪ませた音まで、非常に守備範囲の広い音が得られるピックアップです。

Trilogy Suiteを…
R楽天で探す


Slow Hand

こちらもその名前の通り、往年のエリック・クラプトン氏の音色をモチーフとしたピックアップ。ヴィンテージトーンをベースとしながらも、よりファットな中域に重きを置いており、粘っこく歪んだ70年代のクラプトン的ストラトトーンが得られます。ストラトでブルースロック的なソロを弾く際には、特に線の細さを解消でき、粘り気のあるトーンを得ることができる他、リア側にセットすることで常時音の細さを改善できます。

Slow Handを…
R楽天で探す



ベアナックル・ピックアップは、昨今氾濫する膨大なピックアップの中でも、孤高の地位を築いているブランドです。値段もそれなりに高価なので軽く試すというわけにはいきませんが、世界的評価の高さはそのクオリティの高さをそのまま示しているとも言えます。ピックアップを決めかねて悩んでいるというギタリストにとっては、一度試す価値は十分にあるでしょう。

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。