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自分で作曲/編曲してギターパートを作るとき、バンドのジャムセッションなどでバッキング(伴奏)を弾くとき、アルペジオを使用することも多いことでしょう。そんなとき、
このように考える人もいることでしょう。
そこで!今回はギター博士流、「アルペジオを自分なりに工夫する方法」を紹介します。基本的には「注目した特徴と別の道を探す」ことで新しいアイディアを導くアプローチです。
《ギター博士流》アルペジオを工夫して弾いてみよう
リズムもテンポも変えず、アルペジオの弾き方だけを変化させていきます。「A」というコードが、アルペジオの工夫によっていろいろな姿を見せてくれます。
以下の内容は博士が出演する動画の内容に従っていますから、動画を見ながら読み進めていってください。
まずはシンプルな、上昇下降(上がって下がる)のアルペジオを聞いてみましょう(動画1分0秒あたり)。
譜例1:シンプルな上昇下降アルペジオ
いかにもベーシックなパターンで、かつ美しい響きですね。しかし左手は基本に忠実な押さえ方で、右手は機械的に上がって下がるだけですから、自分で工夫するアルペジオとしては確かに「単純」というややマイナスな表現をしたくもなるでしょう(もちろん、この上昇下降こそベスト!と判断できる場面も存在します)。「アルペジオの時は毎回コレ」、ということだと飽きてしまうかもしれません。
博士の右手は、規則的な上下を繰り返す「オルタネイトピッキング」になっています。またピックを弦に対してかなり平らに当てるのは、より自然なサウンドを出す工夫です。ギターの音に「ディレイ・エフェクター」と「リバーブ・エフェクター」がかかっていることもチェックしておきましょう。
先程チェックしたシンプルな上昇下降は、次々と隣の弦を鳴らしていく、というアプローチです。これに対して「弦を飛ばして弾く」、いわゆる「弦飛び」というアプローチを考えてみましょう(動画1分50秒あたり)。
譜例2:弦飛びを使ったアルペジオ
これだけでずいぶんと印象が変わる、工夫した感じのアルペジオになります。一見すると複雑なようにも見えますが、
1) 5弦と3弦、4弦と2弦、3弦と1弦というペアを作る。
2) この3つのペアで上昇下降。
というアプローチだと考えると、実はシンプルなアルペジオなんです。
やはり右手はオルタネイトピッキングです。鳴らす音を二つずつのペアだと考えると、ダウンピッキングで低いほうの音を、アップピッキングで高いほうの音を弾くことになり、パターンを整理して考えやすくなります。また、「右手小指をピックガードに乗せ、動きを安定させる」という小技も有効です。テンポやジャンルによっては「ピックと中指」のようにフィンガー・ピッキングを活用するのも効果的です。
当たり前に思ってしまっていることに注目するのも、大事なアプローチです。「アルペジオは、コードのルート(低音)から弾く」のが基本ですが、バンドにはベーシストがいます。「だから、ギタリストが一緒になって低音から弾く必要はないじゃないか」と考えてみると、高い音から始まる新しいアルペジオが誕生します(動画2分48秒あたり)。ベースの低音と同時にギターが高音を放つので、1拍目からレンジ(音域)の広いアンサンブルを作ることができます。
譜例3:高い弦から下降するアルペジオ
ある程度ギターに慣れている人ならスルーできるところですが、ギターを普通に構えると、一番高い音のする1弦が一番低い「位置」にいます。始めたばかりの人は1弦を「下の方の弦」と思いがちですが、「音の高低」を第一に考えて「1弦側が上(高い)」と考えるのがギタリストです。「1弦が下」と思っているお友達がいたら、教えてあげてくださいね。
「なぜそこまでオルタネイトピッキングにこだわるの?」と言いたくなるかもしれません。このパターンの場合、アップピッキングの連続で弾いた方が右手の動きはラクかもしれません。しかし博士の場合は「ワシの場合このくらいのテンポならば、オルタネイトで弾いた方がリズムを安定させやすいのじゃ」と言わんばかりです。
次は音の「質感」に注目したアプローチです。いままでは普通に弦を鳴らしていましたが、ここでブリッジミュートを使ってみましょう(動画3分49秒あたり)。
譜例4:ブリッジミュートを利用したアルペジオ
ブリッジミュートを利用することで、音がタイトに引き締まる、前に押し出していくようなニュアンスが得られます。このアルペジオは全ての音をミュートしていますが、ミュートせずに弾く音をいくつか混ぜる、というアプローチもよく使われます。
こんどはアルペジオのパターンに注目してみましょう。ちょっと複雑に思えるかもしれませんが、これは「超定番アルペジオ」の一つです。
というふたつのシンプルな考え方の組み合わせで、このような面白いアルペジオが出来上がったわけです。
また、「1弦を使用しない」というシブいアプローチにも注目しておきましょう。高い音を敢えて使わないようにすることで、ギターのレンジ(音域)をちょっと下に持ってきたわけです。ブリッジミュートとの相性が良い、効果的なアイディアです。
ここでは、全てダウンピッキングで弾いています。全ての音を同じピッキングで鳴らすと、「サウンドが均一になりやすい」という大きなメリットが得られます。逆に、これをオルタネイトピッキングで演奏するのはちょっと難しいかもしれません。
また、ディレイのタイミングをうまく調節し、「ピッキング音とピッキング音のちょうど真ん中」にディレイが入り込むようにしています。こうすることによって、あたかも音をたくさん弾いているかのように聞こえるわけです。
次は、「リズム」に対する工夫です。今までは「4拍子、8ビート」という偶数で区切るリズムに対し、同じく偶数の音数で区切るアルペジオを作ってきました。ここで、3つとか5つとか、「奇数で区切る」アルペジオを考えてみましょう。アルペジオの区切りが4拍子の区切りをまたぐような形となり、独特の「うねり」のようなものを感じることができます(動画5分12秒あたり)。
譜例5:奇数拍子のアルペジオ
この譜例では3拍フレーズを5つ並べて、最後だけイレギュラーさせ、2小節でひとまとまりになるようにしています。この「3拍フレーズ」というアプローチは、慣れればカンタンに弾けるし、それでいて効果が高いので、ロックやポップスを中心にさまざまな音楽で使用されます。
発想を柔らかくしておくために、「弦を3本しか使っていない」ということにも注目しておきましょう。弦は8本使っても、たとえ2~3本だけでも、アルペジオは成立するんです。
博士は、やはりオルタネイトピッキングで演奏しています。オルタネイトピッキングは「ダウンとアップ」という偶数の動きですから、3拍フレーズを演奏する時にはピッキングが裏返っていくように感じられます。別のアプローチとして「アップ、アップ、ダウン」の連続、というピッキングも有効です。
「開放弦」は弦楽器独特のもので、使い方次第で大変面白い効果を得ることができます(動画6分14秒あたり)。
譜例6:開放弦をからめたアルペジオ
TAB譜だけ見ると「なんだ、単純な上昇下降じゃないか」なんて言いたくなるかもしれませんね。しかし、だまされたと思って弾いてみてください。特に3弦と2弦を弾くとき、
という体験ができます。ギターに慣れてきた人が初めて弾くと、とても新鮮に感じられるはずです(ちなみに同じ押さえ方で「5、4、2、3、1、3、2、4弦、」というふうにジグザグに弾くと、音は上昇下降になります)。
コード名が「A」から「Aadd9」に変わっていますね。2弦開放「B」を鳴らしているので、コード名が変わるわけです。2弦の「B」と3弦の「C#」は、Aメジャースケールでは隣どうしの「近い音」です。近い音を同時に鳴らすことを「クローズ・ヴォイシング」と言います。普通のギターのコードは、やや離れた音を鳴らす「オープン・ヴォイシング」となります。開放弦をうまく使うと、ギターでは本来ラクではない「クローズ・ヴォイシング」がカンタンに手に入るのです。
今回ギター博士が紹介する最後の工夫は、「余っている指を使って、テンション・ノートを加える」です。その1からその5までは、コードの構成音(コードトーン)しか使っていませんでした。ここにいろな音が加わることで、アルペジオ内で音に動きを与えることができるのです(動画7分20秒あたり)。
譜例7:9thをからめたアルペジオ
1弦の音が、5フレット、7フレット、また5フレット、と動いていますね。7フレットのB音がここでは「9th」というテンションになります。どのコードでどんなテンションを使うことができるかが自分で分かるようになるには、音楽理論の勉強がちょっと必要になります。しかし「理論を勉強しなければ、こういうことを考えてはいけません!」などとは誰も言いません。「かっこいいと思う音遣いを見つける」という旅は、ギタリストの感性をキュッキュと磨いてくれるのです。
ここでもコード名が「Aadd9」になっていますね。ギターアレンジを検討する多くの場合、このアルペジオが決まる前のコードは「A」だった、ということも多くあります。ギターのアイディアが楽曲のコード、ひいてはバンドアレンジに影響を及ぼすこともあるわけです。
どうじゃ?今回わしが紹介したアイディアが、みんなの参考になってくれれば、わしはとってもうれしいぞ。
センスが問われる「ギターアレンジ」は、バンド演奏においては単純なテクニック以上に求められるもんなんじゃ。もし自分がまだうまく弾けないようなフレーズにぶち当たってしまっても、違った弾き方を自分なりに工夫していろいろ試していくうちに、とんでもなくかっこいいギターアレンジが出来上がるかもしれないんじゃ!
だから、譜面に書いてある通りや音源通りだけでなく、自分でいろいろ工夫した演奏を試しておくれ。わしも頑張っておるぞぃ。
さてここからは、博士も秘密にしていた「アナザー・アプローチ」をいくつか掘り返していきます。やはり基本的には「注目した特徴と別の道を探す」という考え方です。
譜例8:音価に変化を付けたアルペジオ
今までの譜例は分かりやすさを重視し、「すべて8分音符」で作られています。ここに注目し、音の長さ(音価)に変化を付けていくと、アルペジオの可能性は飛躍的に向上するのです。この譜例では4分音符や全音符を導入し、「タイ」も多用しています。長い音を使うアルペジオは、リズムへの主張が少なくなる代わりに、響きで包み込むような効果がアップします。リズムの読みが苦手な人は、ピアノ経験者や吹奏楽部員、ギター講師などの力を借りてみてください。
音符や休符、反復記号の読み方
譜例9:休符を活用したアルペジオ
「リズム」に注目すると、「休符」の存在が効いてきます。音符は「音を出す」ことでリズムを提示しますが、休符は「音を消す」ことでまたリズムを提示するのです。気の効いたところでブツっと音を切ると、そこに緊張感やドライブ感が生まれます。この譜例では前半で3拍目に休符を入れ、後半では2拍目と4拍目に休符を入れていますが、休符の位置によってノリが全く違ってきます。
譜例10:音域を変化させたアルペジオ
同じ「A」というコードでも、音の高さを変化させると違った印象になってきます。この譜例で示されているアルペジオは、全て「A」のコードトーンで作られています。
「和音の音域に注目する」というアプローチは、一人で演奏する時よりもバンドアンサンブルで活かされます。ボーカルやキーボード、二人目のギターなどとうまく機能し合う響きを探す時には、特に有効です。
譜例11:ちょっと作り込んだ感じのアルペジオ
これはちょっと練習を要しますが、
と言った時に効果的なアプローチです。まず最初に提示した「譜例11」は、ちょっと作り込んだ感じのアルペジオです。しかし、これまでアルペジオの譜例を見てきて慣れてきた人の目には、何の変哲もないアルペジオに見えるかもしれませんね。一人でもちゃんと弾けるアルペジオですが、これをわざわざ二人がかりで演奏すると、全く違ったものが出来上がります。
譜例12:ギタリスト二人羽織
前半は半分ずつの分業、後半は音符いっこずつ交互に演奏します。ツインギターならば、二人の息の合い方が非常に重要です。このアプローチのメリットは、それぞれのパートが割とカンタンであることに加え、二台のギターで演奏することによる独特の響きが得られることにあります。レコーディングならば、左右に分けて聞かせることもできます。
以上、いろいろなアプローチを紹介しました。もちろんこうした知恵に頼らず「自分の中から湧き上がってくる何か」によってアルペジオを作っていく、というのも大変美しいアプローチです。しかし「アイディアの出し方をたくさん持っておく」のは、これからいろいろな音楽を演奏していく多才なギタリストになるためには、とっても重要な心がけなんです。美しいアルペジオを作るアイディアは、これだけではありません。みなさんも、いろいろなアルペジオを考えてみてくださいね。
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