エレキギターの総合情報サイト
手工家トニー・ゼマイティス氏が一本一本オーダーを受けて製作していた「ZEMAITIS(ゼマイティス)」は、現在では日本の神田商会がブランドを継承し、「英国の栄光」の呼び声に恥じないラインナップを展開しています。特に最高グレードとなる「カスタムショップ」は、「オーダーした顧客の顔を思い浮かべながら、全身全霊をかけてギターを作った」ともいわれるトニー・ゼマイティス氏の遺志をしっかり継承する、という姿勢をとても大切にしています。そのため材料においても加工においても一切の妥協を許さない、こだわりぬいたギター作りが行なわれています。
カスタムショップのギターは楽器としても工芸品としても価値のある逸品ですが、月産30本というペースで全世界に出荷されることから希少性が高く、高価なこともあって実際に手に取ってみる機会はなかなか得られません。どんなギターなのでしょうか。また、どんな音がするのでしょうか。
そんなわけで今回特別に、株式会社神田商会の協力を得まして、「パール・フロント(CS24PF LITTLE RING)」「メタル・フロント(CS24MF FR4C)」カスタムショップのこの二本のギターを、ギター博士が全力で弾き倒しました!さっそく観てみましょう!
MEnU
1: カスタムショップ・パール・フロント「CS24PF LITTLE RING」 1.1: ギター博士がCS24PF LITTLE RINGを弾いてみた! 2: カスタムショップ・メタル・フロント「CS24MF FR4C」 2.1: ギター博士がCS24MF FR4Cを弾いてみた! 3: カスタムショップのパール・フロントとメタル・フロント、どう違うの? 4: レスポールとはどう違う? 4.1: 【Z vs LP】構造比較 5: ゼマイティス・カスタムショップのラインナップ 6: カスタムショップのみに許された、数々のこだわり 6.1: 1) 木材やパーツなど、全ての品質の追求 6.2: 2) CNCを駆使した高精度な作り 6.3: 3) うっすらドーム状のボディトップ 6.4: 4) ヘッド裏のボリュート(膨らみ) 6.5: 5) ヴィンテージ・ゼマイティス同様のマイナスネジ使用 6.6: 6) バックパネルなどのプレートは、彫金を施した金属製 6.7: 7) 手作業により、同じ仕上がりは二つとして無い 7: ゼマイティス各グレードの違い 7.1: 【神田商会メールインタビュー】ゼマイティス各グレードに関するちょっと深い質問 7.2: 【メールインタビュー】ゼマイティスの扱いについて
トップに敷き詰められた硬質で分厚い貝殻の音響特性が反映され、澄んだ響きが得られるのが「パール・フロント」の特徴です。トップのデザインにさまざまなパターンがあり、外周をアバロン貝で一周させるのは「リング」と呼ばれますが、アバロン貝が一列内側で一周している本機は「リトルリング」と呼ばれます。見る角度によって光を複雑に反射し、たいへん美しく輝きます。貝の質感を感じさせるために塗装は施さず、ゴツゴツ感も残されています。
最高のグレードのエボニーだけが、ゼマイティス・カスタムショップの指板になることができます。深く吸い込まれそうな黒さですが、当然のことながら染めてなどおらず、木材本来の色あいそのままです。
Pearl Frontを…
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ZEMAITIS CUSTOM SHOP PEARL FRONT CS24PF LITTLE RINGを弾いてみた!
0:18〜1:35 ギターアンプは「KEMPER PROFILING AMP」を使用。マーシャルJCM系アンプをプロファイリングしたリグでバッキングを演奏しています。
1:36〜 ギターアンプはRoland Blues Cube Artistを使用。エフェクターはコンプレッサー「TC Electronic HYPERGRAVITY COMPRESSOR」、ディレイ「TC Electronic Alter Ego 2」、リバーブ「DigiTech Supernatural Ambient Verb」を使用。
2:50〜 ギターアンプはRoland Blues Cube Artistを使用。コンプレッサー、オーバードライブ「CMATMODS Butah」、ディレイ「BOSS DD-500」、ルーパー「TC Electronic Ditto Looper」を使用。
4:50〜 アンプは「KEMPER PROFILING AMP」を使用。
以前より写真などでは見たことあって美しいなぁと思っていたんぢゃが、実物を見てまさに芸術品だと確信したゾイ!!!ボディに一枚一枚選別して並べられる貝はとても美しく、そして手作業ならではの温もり、トップの軽いアーチも手伝って、とても立体的な輝き!例えるなら写真でしか知らなかった画家の油絵を実際に生で見た時の感動のようじゃったワイ!!!
そして、手に持つと、握りやすいネックに漆黒のエボニー指板!少し小ぶりなレスポールに似たボディは、重量感もあるしっかりと目の詰まったマホガニー!
音はとても密度が濃く、クリーンではアタックはしっかりしているが、煌びやかなサウンド!歪ませた時にはブーミーになりすぎず、ちゃんと輪郭もある太いサウンドと感じたゾイ!!!
24フレットあるのでギターソロにも最適ぢゃな!!!
続いて、ロックギタリスト垂涎(すいえん。「よだれが出るほど欲しい」の意)のアイテムと呼び声高い「メタル・フロント」です。全面的に精緻な彫金で覆われたジュラルミンプレートが、音を出す前からロック的な雰囲気を醸し出しています。カスタムショップは、この彫金の美しさも格別です。マホガニーのナチュラルな風合いを残すモデルが多いですが、本機の木部は黒く塗装されており、キリっとした雰囲気を帯びています。
トップに貼られた金属板の音響特性がサウンドに反映され、よく「中音域の響きに個性がある」と表現されます。
Metal Frontを…
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ZEMAITIS CUSTOM SHOP METAL FRONT CS24MF FR4Cを弾いてみた!
0:20〜1:02 ギターアンプは「KEMPER PROFILING AMP」を使用、Diezel VH4をプロファイリングしたリグでバッキング(リフ)を演奏しています。
1:25〜 ギターアンプはRoland Blues Cube Artistを使用。エフェクターはオーバードライブ「CMATMODS Butah」、ディレイ「TC Electronic Alter Ego 2」を使用。
3:01〜 ギターアンプはRoland Blues Cube Artistを使用。エフェクターはコンプレッサー「TC Electronic HYPERGRAVITY COMPRESSOR」、ディレイ「TC Electronic Alter Ego 2」、リバーブ「DigiTech Supernatural Ambient Verb」を使用。
4:28〜 ギターアンプは「KEMPER PROFILING AMP」を使用、JCM800をプロファイリングしたリグでバッキング(リフ)を演奏しています。
まずこのロック魂を感じずにはいられないボディトップの彫刻!!!デザイン、質感、立体感、なんというカッコよさなんぢゃぁぁぁ!!!ワクワクドキドキが止まらない弾き手の気持ちを上げてくれるルックスだと思ったゾイ!!!パール・フロントと同様、こちらも握りやすいエボニー指板、24フレットのマホガニーネック、マホガニーのボディ、このモデルはブリッジのコマの弦の当たる部分はブラスがむき出しになっておったりと、とてもこだわりを感じたゾイ!
音はパール・フロントと比べるとパン!としたアタックにより高域のチン!とした成分があると感じたかのぅ。低音は少しざらつきもあるドライブサウンドをよりロックにしてくれそうなイメージぢゃったワイ!!ノイズも少なく、原音が前に飛ぶ感じぢゃのう!
カスタムショップ製はネジもマイナスネジだったりと、本当に細かい所までこだわって制作されていると感じたワイ!
このゼマイティスのギター、是非とも実際に五感で感じて欲しいわい!!
パール・フロント、このギターキラッキラしてて凄く凄くキレイなの!!眩しい!貝殻が一枚一枚丁寧にはってあってそれが全部光にいろんな反射の仕方してキラキラするの!すごーい!!!それにメタル・フロントも凄いんだよ!細かく全体にデザインが彫ってあって、どこを見てもキレイなのー!!両方のギターに言えるんだけどもーう本っ当に細かくデザインされていて感動!作ってる職人さん凄いね!!いろーんな意味でとっても贅沢なギターだよ!かなでうっとり!
それにボディー!みんなレスポールくらいの大きさだと思うでしょ??でも違うの!ひとまわり小さくって、キュッてしてて凄くスタイルが良くてカッコイイ!女の子が持ってもバランスがいいの!音は博士が弾いてくれてる通り、好みのサウンドにできるね😍
こんな贅沢なギター初めて出会ったよ!みんなにも直接目で見て欲しいなー!ギターを作ってる人がどんな想いで作ってるのかが伝わってきてもっともーっとギターが大好きになるよ!!
驚くべきことに、今回ギター博士が演奏したパール・フロント「CS24PF LITTLE RING」とメタル・フロント「CS24MF FR4C」の仕様上の違いは、「トップの材質」だけです。寸法も、材料も、ピックアップも同じです。しかしここまではっきりと、サウンドや楽器としてのイメージに違いが現れているのです。これはトップ材の個性がそれほどまでしっかりしている、ということに加え、トップ材の仕様が素直に反映されるような、良く響く敏感な楽器が作られている、ということの証明でもあります。
メタル・フロント「CS24MF FR4C」とギブソン・レスポールを並べてみた
ここまで、ゼマイティスのギターを追及してきました。ではさて、レスポールとはどう違うのでしょうか。禁断の比較を試みてみましょう。マホガニーボディ、マホガニーネック、ハムバッカー2基、という設計のエレキギターはレスポールが元祖なのは間違いない事実ですが、これに対してゼマイティスは似ているようでもあり、違っているようでもあります。こうして並べてみると、ボディサイズで言ったらゼマイティスの方がキュっと引き締まっているように見えますね。
では、ゼマイティスとレスポールの構造を、分かりやすいところで比べていきましょう。ゼマイティスは定番化している24フレットモデルで、対するレスポールは博士が動画で演奏している「レスポール・トラディショナル」で考えていきます。
ギターは弦楽器ですから、まず弦長やフレット数といった寸法の部分で比べてみましょう。
CS24PF や CS24MF | Gibson Les Paul Traditional | |
弦長 | 25インチ | 24.75インチ |
フレット数 | 24 | 22 |
指板R | 12 1/32インチ | 12インチ |
表:ネック寸法の比較
ギブソンの「弦長24.75インチ」は「ミディアムスケール」または「ギブソンスケール」と言われます。ゼマイティスの「弦長25インチ」は、このギブソンスケールと「25.5インチ(ロングスケールまたはフェンダースケール)」の間に位置する、PRSなども採用している中間的な弦長です。これはギブソンよりも約6mm長いわけですが、弦長が長くなると弦の張力が上がり、音がブライトに響きます。
フレット数による音の違いは、フロントピックアップに現れます。24フレット仕様のフロントピックアップは、22フレット仕様よりもブリッジに接近する位置に設置されます。ですから仮にまったく同じ材料のギターで、同じピックアップを使っていたとしても、24フレットと22フレットで比べると、24フレットのフロントピックアップではやや硬質な音色になります。
続いて、楽器本体に使われている材料を比べてみましょう。ボディ(バック)とネックはマホガニーで共通していますから、それ以外のところに注目します。
CS24PF や CS24MF | Gibson Les Paul Traditional | |
指板 | エボニー | ローズウッド |
トップ材 | PF:分厚い貝殻 MF:金属板 |
メイプル |
ブリッジ&テイルピース | いずれもジュラルミン | 亜鉛合金ブリッジ&アルミテールピース |
表:マホガニー以外の材料の比較
エボニーの方がローズウッドよりも、貝殻や金属板の方がメイプルよりも、ジュラルミンの方が亜鉛合金やアルミニウムよりも、いずれも硬質です。ゼマイティスはレスポールよりも硬い材料で作られているのだ、ということが分かりますね。ゼマイティスのサウンドには、この硬質な材料の影響が反映されます。
ネック寸法と材料から、いずれも「硬い」というキーワードが出てきましたね。レスポールとの比較では、ゼマイティスは硬質な、引き締まったサウンドになる、と言えるでしょう。
左がパール・フロント「CS24PF LITTLE RING」、右がギブソン・レスポール。レスポールの方が厚いように見えますね。
レスポールではトップに貼られたメイプル部分にバインディングが施され、ゼマイティスではマホガニー部分にバインディングが施されています。そのためゼマイティスの方がうんと薄いように見えますが、ボディのマホガニー部分では、両者はだいたい同じ厚みです。
ギブソンのレスポールは内部をくり抜いて重量調整をしているものも多く、これだけ厚みがあっても軽量なモデルもあります。一方ゼマイティスはくり抜きによる重量調整を行いません。カスタムショップでは木材の重量を計測し、重量感を残しながら重すぎないところを狙っています。「カシミア」シリーズでは軽量な木材が使われており、はっきりと軽く感じます。
写真左側を注目していただくと、ネックのジョイント法に違いがあるのが分かりますね。レスポールはヒールにしっかりとした厚みがあるのに対して、ゼマイティスはネックの厚みのままボディに入っています。これが「ボックス・ジョイント」で、ギブソンで言うならレスポール・ジュニアやレスポール・スペシャルに近い構造です。
以上、レスポールとゼマイティスを比べてみました。優劣ではなく仕様の異なる楽器として、いろいろなところの違いからサウンドやイメージ、弾き手へのインスピレーションにまで違いが出ていますね。
さて、ここまでギター博士が弾いた「CS24PF LITTLE RING」「CS24MF FR4C」2本のギターについて見ていきましたが、カスタムショップのラインナップの中にはこの他にも幾つかのモデルが用意されています。次のページではこれらのモデルの特徴やこだわり、各グレードの違いなどについて、注目していきます。
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