レフティ・モデルのフェンダー・ジャパン・ジャガー
フェンダー・ジャガーは、先に発表されていたジャズマスターをベースにユーザーの要求を取り入れつつ、最新機能を満載させた「フェンダーの最上位機種」として開発されました。レオ・フェンダーはクルマ好きで、英国の高級車メーカー「ジャガー」がネーミングの由来です。ライバルであるギブソンから顧客を奪うつもりで開発されたらしいのですが、それどころか70年代に不人気機種となり、製造が中止されてしまいます。
現在でもストラトキャスターやテレキャスターほどの支持を得るには至っていませんが、「踏み荒らされていない道を行く人々に愛されてきた」と言われるように、特定のジャンルにおける定番機種という地位を得て再生産されています。それだけ強烈な個性を持っている機種だと言えるでしょう。
- フェンダー・ジャガーの歴史
- フェンダー・ジャガーの特徴〜ジャズマスターとの違い〜
- ジャガーのサウンドを聞いてみよう
- 主な愛用者とシグネイチャーモデル
- フェンダー・ジャガーのラインナップ
フェンダー・ジャガーの歴史

フェンダー・ジャガーはジャズマスターをベースに、フェンダーの最上位機種として1962年に発表され、ザ・ビーチ・ボーイズなどこの時代のサーフィン・ミュージックでブレイクした人気機種でしたが、ロングサスティンが求められる時代になって不人気機種となり、1975年に生産が中止されます。
1986年にジャズマスターとともにフェンダージャパンから再生産されますが、その後1990年代に入りカート・コバーン(ニルヴァーナ)が使用した事で、オルタナ、グランジ界で人気機種となり、2000年にUSAで生産が再開されるようになりました。
フェンダー・ジャガーの特徴
それではジャガーの特徴を見ていきましょう。ここでは混同されやすいジャズマスターとの比較を中心に紹介します。
ジャズマスターとの共通点
特徴的なボディシェイプ
左がジャガー、右がジャズマスター(いずれもAmerican Vintage ’65)
ジャガー/ジャズマスター両機種とも、立っていても座っていても弾きやすいバランスを狙って設計される「オフセットウェスト」と言われる左右非対称のボディ形状。両機種のボディ形状は大変良く似ていますが同一ではなく、ジャガーの方が気持ちシャープなシェイプになっています。
左がジャガー、右がジャズマスター(いずれもMade In Japan Traditional 60s)
比べてみると、コンターの突入角が微妙に違うのがわかる
プリセット回路
プリセットスイッチON時:マスターコントロールはキャンセルされ、強制的にプリセット回路を通ったフロントピックアップのサウンドに
プリセットスイッチOFF時:マスターコントロールが有効に。
ジャガー/ジャズマスター両機種とも、リード/サイドの切り替え用に「プリセット回路」を持っています。これは通常のコントロールとは別にフロントピックアップの音量とトーンを設定しておく回路で、スライドスイッチで通常時とプリセットを切り替えられるようになっています。
通常のコントロールがいかなるポジションであっても、プリセットに切り替えるとココで設定した音量/トーンのフロントピックアップのサウンドが得られます。ジャズマスターと違い、ジャガーはプリセットOFF時に「ローカットスイッチ」が利用できます。
フローティング・トレモロ
ジャズマスターと同様のトレモロ
フローティング・トレモロは、テイルピースの動きに応じてブリッジも動かす事でピッチを変化させる方式のトレモロ・システムです。ストラトのシンクロナイズドトレモロほど大きな音程変化は得られませんが、より滑らかに音程を変化させる事ができ、使うつもりがない時には動かないようにもできます。
ブリッジが固定されていないのが「フローティング」という名前の由来で、アームの上下に応じて若干動くようになっています。
ジャガー独自の特徴
「ショートスケール」がジャガーのアイデンティティ
上:ジャガー、下:ジャズマスター
ジャガーはショートスケール、ジャズマスターはロングスケールだ。
ジャズマスターはフェンダー標準の長さである25.5インチ(324mm)で21フレットのロングスケールネックですが、ジャガーは24インチ(=305mm)で22フレットのショートスケールネックが採用されています。
ショートスケールは目的のフレットに指が届きやすく、弦張力が抑えられるため押弦がラクチンです。また弦張力の低下によりサスティンがやや抑えられ、アタックの立つシャキーンとしたサウンドが得られます。操作系やピックアップの仕様を変更しても失われない、ジャガーだからこその特徴がこのショートスケールにあるわけです。
弦落ちしやすいブリッジ
ジャズマスターにも同じブリッジが搭載されるが、スケールが短いぶんジャガーの方が弦落ちしやすい傾向にある
弦のテンションが緩くなるので弾きやすくなりますが、激しいストロークやチョーキングを行うと「弦落ち」と言ってブリッジから弦が外れてしまう事があります。これを理由にジャガーを苦手に感じるギタリストも多くいますが、反対に「ネジの溝に弦がちょこんと乗っかっている状態の音こそが、本来のジャガーの音」だとして愛用者が多いのも事実です。
弦落ちしないように弦のゲージを上げたりピッキングの力加減に留意したりするのか、パーツ交換やバズストップバー増設など改造を施すのか、こういったところもジャガーの面白さになっています。
しかし、これは決して設計ミスではありません。ジャガーが開発された1962年当時は、「.012~.052」という現代の感覚ではかなり太いゲージの弦が標準とされていました。ジャガーのブリッジはこの太い弦の強力な圧力を前提に設計されており、現代の「.010~」や「.009~」のゲージ弦では圧力が不足してしまうのです。
スイッチ類
ジャズマスターと異なり、コントロールは全てメタルプレート上にマウントされている
ジャガーではスイッチ類をメタルプレートにマウントしており、ピックガード一枚に全てが乗っているジャズマスターと比べて無骨なイメージになっています。また、ピックアップセレクターがそれぞれのピックアップのON/OFF を設定するタイプのスライドスイッチになっていますが、そのすぐ隣に「ローカットスイッチ」が追加されています。ジャガーは通常時に低域が豊かに響きますが、ローカットスイッチを入れると低域が削られ軽やかな印象のサウンドが得られます。
ピックアップ

ジャガーにしか搭載されない独特のPU
ジャガーサウンドの最大の特徴であるピックアップは、シャープな音を志向して設計された専用のもので、ヨークという淵に金属の”ギザギザ”が付けられ磁力が強化されたシングルコイル・ピックアップです。ストラトキャスターに近いキャラクターを持っていますが、パンチがあって、サスティンと引き換えに独特のアタック感があります。
エッジが立った歯切れ良く鋭いトーンを特徴としており、金属的な荒々しさも併せ持っています。少し歪みを加えただけでもハウリングが起こるなどデリケートな一面を持ちますが、まったく歪ませないクリーントーンでは、"鈴なりのようなサウンド"と評されるストラトキャスターにも劣らない奥行きがある艶やかなサウンドを奏でます。
ジャガーのサウンドを聞いてみよう
ジャガーの特徴を色々と見てきましたが、肝心のサウンドはどんな感じなのでしょうか。他のフェンダー・ギターと比べた音源を聞いて、ジャガーのサウンドの特徴をチェックしてみましょう。
ジャガーとストラトのサウンド比較
Supernice!スタッフによる
- Fender Japan Jaguar
- Fender American Standard Stratocaster
という2本のエレキギターの、同じ条件下かつ同じフレーズの演奏でサウンドを比較してみましょう。いずれもDAWソフトは「Logic PRO X」、オーディオインターフェイスは「Universal Apollo TWIN DUO」、アンプ・プラグインも同じものを使用して録音しています。
いかがでしょうか。ジャガーのほうが
- 暴れる感じ
- チャキっとしたアタック
- サスティーンは少なめ
といった特徴を感じることができます。これはジャガー専用ピックアップとブリッジの恩恵が大きいものと思われます。
ジャガーとジャズマスターのサウンド比較
ジャガーとジャズマスターを比べてみた【ギター博士】
こちらの動画では、ギター博士が
- Made In Japan Traditional 60s Jaguar
- Made In Japan Traditional 60s Jazzmaster
という2本のエレキギターを、同じ条件下で同じフレーズを演奏してサウンドを比較しています。一聴して大きな違いがないように聞こえるかもしれませんが、ジャガーのフロントとリアのハーフトーンのサウンドは、ストラトキャスターにも引けを取らない美しい音色です。またローカットスイッチをONにすることでサウンドがぐっと引き締まるのも、ショートスケールならではのジャガーの魅力といえます。
主な愛用者とシグネイチャーモデル
Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)
MAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」Music Video
メンバーの中で唯一、日本語が話せる。なお、オオカミはイヌ科、ジャガーはネコ科。
塩塚モエカ(羊文学)
羊文学 – more than words / THE FIRST TAKE
クールなキャラクターと攻めたファッション、そして景気のいいエフェクターの踏みっぷりが支持される。
ジョニー・マー(Johnny Marr、1963-)
Johnny Marr – Dynamo [Official Music Video]
ジョニー・マー氏は、オアシスのノエル・ギャラガーや元スウェードのバーナード・バトラーなど多くのブリティッシュ系ギタリストに影響を与えたギタリストです。イギリスの若者には熱烈に支持されたポストパンクバンド「ザ・スミス」を皮切りに、プリテンダーズ、ザ・ザなど多くのプロジェクトに参加しました。「ギタリストはあくまで伴奏者である」というソングライター志向のポリシーを持っており、曲に相応しいフレーズに心血を注ぐスタイルを持っています。
カート・コバーン(Kurt Donald Cobain、1967-1994)
Nirvana – Smells Like Teen Spirit
カート・コバーン氏は、1990年代を代表するロックバンド「NIRVANA(ニルヴァーナ)」を牽引したギター/ヴォーカル。アルバム「Nevermind(ネヴァーマインド)」は社会現象にまでなりましたが、27歳のときにこの世を去りました。
この他、ザ・ビーチボーイズのカール・ウィルソンを筆頭に、マイ・ブラッディ・バレンタインのギター・ボーカルであるケヴィン・シールズ、「レッド・ホット・チリ・ペッパー」の元ギタリストであるジョン・フルシアンテもジャガーを使用しています。国内ではブルージーンズ結成当時の寺内タケシ氏や加瀬邦彦氏もジャガーを使用。LUNA SEAのギタリスト SUGIZO 氏も愛用した経緯があり、自身のレスポール・シェイプのオリジナル・ギターのピックアップをジャガーのものと入れ替えて演奏するなどしています。
フェンダー・ジャガーのラインナップ

Fender Flagship Tokyo Exclusive 1960 Jaguar® Deluxe Closet Classic, Matching Painted Headcap, Rosewood Fingerboard, Black
ではいよいよジャガーのラインナップについてみていきましょう。ジャガーはフェンダーの各ラインナップからリリースされています。それぞれの違いを理解できれば、自分が求めているモデルを手にいれることができるでしょう。
本国USAで作られるジャガー
メキシコの工場で作られるジャガー
日本の工場で作られるジャガー
Squierのジャガー
以上、ショートスケールの王道モデル、フェンダー「ジャガー」について、歴史や特徴、ラインナップなどいろいろなことをチェックしていきました。
フェンダーのショートスケールといえばムスタングも有名ですが、ムスタングはデビュー時に弦長22.5インチのモデルもあった一方で、ジャガーは歴史上一貫して弦長24インチを貫いています。ショートスケールのギターはミニギターや入門機として見られやすいですが、ジャガーは最高級モデルとして誕生し、個性を発揮しています。奥深いジャガーの魅力に、ぜひ実際に触れてみてください。
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