《北欧のハンドメイド》Lundgren Guitar Pickups

[記事公開日]2025/4/25 [最終更新日]2025/5/16
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

Lundgrenピックアップ
Lungren Guitar Pickups「M7 Set」

「Lundgren Guitar Pickups(ラングレン・ギターピックアップ)」はスウェーデン南部、ヨンショーピングに工房を構えるピックアップ専門のブランドです。Meshuggah(メシュガー)の両翼を務めるフレドリック・トーデンダル、マルテン・ハグストローム両氏が愛用したことで世界的に認知されました。そのため特にモダン系ハムバッカーの評価が高くさまざまなギターブランドに製品を供給するほか、ヴィンテージ系のピックアップも手広く扱っています。今回はこの、Lundgrenのピックアップに注目していきましょう。

小林健悟

ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

エレキギター博士

ガイド
エレキギター博士
コンテンツ制作チーム

webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。

Lundgrenピックアップの特徴

1990年創業の独立系企業

Lundgren Guitar Pickups は、ヨハン・ラングレン(Johan Lundgren)氏がCEOを務める独立系企業です。「クライアントの心と耳をつなぐ近道を見つける」ことを目標に1990年の創業からハンドメイドで高品質なピックアップを作り続け、大小のギターメーカーに製品を供給するほか世界中のギタリストに製品を届けています。

製造販売のほか本社では巻き直しやマグネットの着磁など修復も受け付けており、ヨハン・ラングレンCEOにはNAMMをはじめとする各国のギター展示会で実際に会うこともできます。

モダン志向のギターに採用例多数


Mårten Hagström of Meshuggah discussing the Ibanez M8M signature 8-string guitar

Lundgrenの名を一躍有名にしたのが、同じスウェーデン出身のバンド「Meshuggah」とのコラボレーションです。Meshuggahの「M」を冠する7弦用「M7」と8弦用「M8」は圧倒的なローエンドと明瞭な高域の両立を持ち味とし、ミックスに埋もれず、かつ暴れないのが強み。Meshuggahサウンドの確立、またDjent(ジェント)というジャンルの隆盛に大いに貢献しました。

このことからLundgrenはモダン/ヘヴィ系に強いピックアップのメーカーとして注目され、IbanezをはじめAristides Guitars、Acacia Guitars、Schecter、などモダン志向のギターに採用されています。

ヴィンテージ系の造詣も深い


Strat ´50s Formvar SET

ヴィンテージモデルに対しても、Lundgrenはしっかりとしたこだわりを持っています。例えばP.A.F.モデルのハムバッキングピックアップのコイルを巻くマシンは、当時のピックアップ製作に使用されていたものと同じ、1957製のビンテージのワインディング・マシーンを使っています。またストラトキャスター用のボビンは独自のツールでパンチプレスする自社製造で、再現度はオリジナルと区別がつかないレベルです。

個性と先進性が際立つ、スウェーデンのお国柄


Clean Bandit – Symphony (feat. Zara Larsson) [Official Video]
スウェーデン・ストックホルム出身のザラ・ラーソン(Zara Larsson)女史は10歳で才能を見出され、17歳で世界デビューを果たした。

北欧はメタルが盛んで、スウェーデンはMeshuggahやOpeth、イングヴェイ・マルムスティーン氏、著名YouTuberオーラ・イングランド氏らを輩出しています。このほかポップスではABBAやThe Cardigansがシーンをリードし、エレキギター本体では.strandberg*の衝撃的なデビューが記憶に新しく、ハンドメイド・エフェクターBJFEは伝説的な扱いです。

また、スウェーデンはノーベル賞発祥の国でもあります。そのためか同国のブランドは先進的なアプローチや高度なテクノロジー、オリジナリティが業界にインパクトを与える例が多く見られ、オーディオの分野ではLab Gruppen、PRIMARE、DLS、Transparentらが世界的に支持されます。他ジャンルではIKEA(家具と生活雑貨)、Spotify(音楽配信)、H&M(ファストファッション)、VOLVO(自動車)らが、日本でも有名です。

Lundgren Guitar Pickupsのラインナップ

では、Lundgrenのラインナップをチェックしていきましょう。各ラインナップは

  • モダン志向の「21:st Century」
  • 歴史上の名機を意識した「Vintage」
  • Vintageを強化した「Vintage Hot」

の3つに整理されています。なお、21世紀と書く時に「:(コロン)」を挿入するのは、スウェーデン語など北欧の一部の言語に特有の書き方です。

M Series
M6, M6C, M7, M7C, M8, M8C
圧倒的パワーと明瞭なパンチが持ち味で、ヘヴィサウンドを追求するプレイヤーに理想的。
Black Heaven
6 / 7 / 8
Mシリーズをベースにコンプ感は控え目、周波数特性は広めに方向づけ、汎用性を高めた。
Heaven 57
Neck/ Bridge/ Set
1957年製オリジナルPAFを再現。
Heaven 67
Neck/ Bridge/ Set
1960年代のPAFをイメージした、きらびやかで力強いヴィンテージサウンド。
Smooth Operator
Neck/ Bridge/ Set
アルニコ2磁石を使った中出力の万能型。
Modern Vintage
Neck/ Bridge/ Set
ナンバード・PAFをイメージした、高域と低域が豊かに響く歌うようなサスティンが持ち味。
Sucker Bucker
Bridge
弦振動を吸い上げる、高出力かつ高感度なブリッジ専用ハムバッカー。

ハムバッカー・ラインナップのまとめ

21:st Century Humbuckers

Vintage Humbuckers

Vintage Hot Humbuckers

Vintage Stratocaster

Vintage Hot Stratocaster

21:st Century Stratocaster

Grey Monterey
Set
1967年式を再現。立体感ある中域とタイトな低域が特徴で、クリーンとワイルドの両方をカバー。
’50s Formvar
Neck/ Middle/ Bridge/ Set
1954~1964年製を再現。リッチなミッドレンジと艶やかな高域を両立。
’60s Vintage
Neck/ Middle/ Bridge/ Set
1965年以降のトーンを再現。明瞭な高域とパンチのある低域。ファズとの愛称が良好。
Blues Strat
Neck/ Middle/ Bridge/ Set
’60s Vintageの出力をわずかに高めたファットなシングルコイル。ハムバッカーとの組み合わせにも理想的。
S-90
Neck/ Middle/ Bridge/ Set
P-90の構造を採用。骨太な中音域が持ち味の荒々しいトーン。
Strat Hot
Bridge
特に’60s Vintageのリアとして良好に機能するよう開発された強化型ブリッジ用シングルコイル。
Strat set Lundgren/BJFE ストラト特有のディストーション時に薄くなる弱点を克服するために開発されたセット。

ストラト用ラインナップのまとめ

Vintage Telecaster

21:st Century Telecaster

Telecastar Vertigo
Neck/ Bridge/ Set
1952年製を忠実に再現。パンチの効いたミドルが持ち味。ウッディかつ均一なサウンドの万能型。
Tele Vintage 6.4K
Bridge/ Set
トレブルの際立つ、低出力かつブライトなブリッジ用。明るいキャラクターを持ち、シャープなカッティングや繊細なアルペジオに理想的。
Tele Vintage 7.3K
Bridge/ Set
4Kモデル巻き数を増やして出力を強化したブリッジ用。テレらしさを保ちつつ、もう少しパワーが欲しいプレイヤーに最適。
Tele-90
Neck/ Bridge/ Set
P-90と同じ構造を採用し、広い磁界を展開することで太いサウンドが得られる。
Tele BJFE
Neck/ Bridge/ Set
より幅広い音色とタイトなサウンドを得るべくゼロベースで開発。伝統のテレサウンドに現代的な表現力を付加。

テレキャスター用ラインナップのまとめ

P-90

以上、スウェーデン発のLundgrenについてチェックしていきました。特にモダン系のイメージが浸透している感のあるブランドですが、ヴィンテージ・サウンドの造詣も深い、総合的なラインナップを展開しています。製品をパッシブに絞っているところ、また構造やサウンドには深くこだわりつつも、エイジド加工には決して手を出さないという点は興味深いところです。ぜひ実際にチェックしてみてください。

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