ギブソンの提唱する新しいセミアコ「ES-Les Paul」

[記事公開日]2015/11/19 [最終更新日]2021/7/3
[編集者]神崎聡

ギブソンESレスポール

ギブソンのアーチトップ専門部署、ギブソン・メンフィスより2014年にデビューした「ES-レスポール」は、「レスポールES-335の結婚」と表現される、レスポール的な外観を持った新しいセミアコです。その正体はレスポールに穴を空けたというだけにとどまらない、本格的なセミアコとして利用できるポテンシャルを秘めた新しいギターになっており、そのサウンドとルックス、そして重量の軽さから注目が集まっています。


Gibson 2015 ES-Les Paul Semi-Hollow Electric Guitar
クリーンは深くまろやかで、まさにジャズトーンです。それでいてカラっとしたオーバードライブも得られる、大変守備範囲の広いギターです。

ES-Les Paulの特徴

「チェンバード」とは違う、「セミアコ」として作られるボディ

ES-レスポール最大の特徴は、レスポールのルックスでありながら現行のES-335と同様の工程で作られているという点で、他のブランドからリリースされるFホールを持つレスポールタイプのギターと一線を画している事です。ボディのトップ/サイド/バックが全て「メイプル+ポプラ+メイプル」を3枚重ねた板(3プライ)でできており、プレス加工して曲面を出し、ハイドグルー(にかわ)で貼り合わせています。

ボディ中央には、セミアコ構造の要となる「センターブロック」が設置されます。ES-335ではメイプル材のセンターブロックが普通ですが、ES-レスポールではここにマホガニー材を採用することで、メイプルトップ+マホガニーバックというレスポールの特徴を踏襲しています。こうしたボディ構造により、ES-レスポールは「セミアコにレスポールのテイストが加えられている」と言えます。

一般的なレスポールでは、メイプルトップの曲面を削って出します(カーブドトップ)。また、重量調整でバック材に穴を空けたり(モダン・ウェイトレリーフなど)、ホロウボディにするためにくり抜いて空間を作ったり(チェンバード・ボディ)といった処理が施されることがあります。そのような場合でもギターのトーンはソリッドボディの延長にあり、ソリッドギターの引き締まったトーンに「エアー感」を加えるというアプローチになります。言わば「レスポールにハコモノのテイストが加えられている」と言えるでしょう。

Fホール&ダブルバインディングの存在感ある外観

ES-レスポールの外観上第一の特徴は、ボディトップに空けられたFホールに他なりません。その存在感から見る者に強烈なインパクトを与え、またゴージャスな雰囲気を演出します。トップ材は基本的に一枚板を重ねたものなので、レスポールのようにセンターで分割されていないところもポイントです。また、ボディトップだけでなくバックもバインディングで覆われているのも大きな特徴になっています。背面から見たときの格好良さもまた、ES-レスポ−ルの魅力です。

ES-175と同じ、MHSハムバッカーピックアップ搭載

ES-レスポールに共通して(P-90モデルを除く)搭載されているMHSハムバッカーは「ニュー・メンフィス・ヒストリックピックアップ」と言われるギブソン・メンフィスオリジナルのピックアップです。名機「PAF」の再現を目指し、ワイヤーやマグネットの選定、また製法も追求することで、ヴィンテージのギブソンが持っているピュアで反応の良いトーンを実現しています。これはES-175に採用されていますが、逆にES-335では限定モデルでなければ採用されません。こういうところでも、ES-レスポールはES-335と違う個性が与えられています。

シンプル且つ渋いパーツ類

ギブソンの2015年モデルは自動チューニングシステム、高さ調節ができるゼロフレット・ナット、ザマック(亜鉛合金)製ブリッジ&テールピースといった革新的なスペックで武装していました。しかしメンフィスではその流れに乗らず、ES-レスポールにも昔ながらのパーツ類が搭載されます。クルーソンペグ、ダイキャストブリッジ、アルミテールピースはギブソンのギターにおける伝統的な定番スペックのひとつです。

ES-Les Paulのラインナップ

ES-レスポールのラインナップは、

  • 基本となるモデルと、カラーリングなど外観にこだわった派生モデル
  • パーツやネックグリップに違いを設けたアレンジモデル

この二つに分類されます。では、この二つをまとめてチェックしてみましょう。

ES-レスポール基本モデル

ES-Les Paul 2015

ES-Les Paul 2015

基本モデルは寸法やパーツが全て共通で、ボディカラーに違いがあります。全ての基本となっているES-レスポール2015のカラーリングは、レスポールの定番でもあるチェリーサンバースト、及び退色したルックスを再現したレモンバーストの2種類があります。

ES-Les Paul White Top / Cobra Burst / Burbon Burst /VOS

ES-Les Paul White Top / Cobra Burst / Burbon Burst /VOS ES-Les Paul White Top / Cobra Burst / Burbon Burst /VOS

こちらは特別なカラーリングが目を引くモデルです。明るくまぶしいホワイト、ダークなイメージのあるコブラバースト、ウィスキーの瓶に光を当てたような妖艶な印象のバーボンバースト、そして新品でありながら経年変化のくすんだ感じの出ているゴールドトップがラインナップされており、それぞれに個性を放っています。これらの楽器本体は基本モデルのES-レスポールと同一ですが、特殊なカラーリングによりアップチャージされており、別モデルという扱いになっています。

ES-Les Paul Spliced Top

ES-Les Paul Spliced Top

「スプライスド・トップ」はレスポール本来のトップのように、センターでトップ材を継いでいます。カラーは渋いライトバーストで、新開発の楽器にも関わらず風格を感じさせます。

ES-Les Paul Custom / Black Beauty

ES-Les Paul Custom

レスポール・スタンダードに対するレスポール・カスタムの位置づけで、2ピックアップ仕様のカスタム、3ピックアップ仕様でくすんだヴィンテージ感のある仕上げを施したブラックビューティーがラインナップされています。ブロックインレイが輝く漆黒の指板とゴールドパーツ、層を成しているバインディングとピックガード、またヘッドのダイヤモンドインレイといったルックス上の特徴により高級感のある精悍な面構えになっています。指板がリッチライト(エボニーの代替材)になっている以外は基本モデルと同一のスペックになっていますが、この指板の違いにより僅かにブライトなトーンになっています。

エピフォンからリリースされる廉価版「Les Paul ES PRO」

Epiphone Les Paul ES PRO

採用されている「プロバッカー」ハムバッカー・ピックアップは、1950年代の手巻きハムバッカーを再現することを目指して設計されており、ヴィンテージを意識したサウンドを持っています。2基のボリュームポットにはスイッチが仕込まれ、それぞれのハムバッカーを各個にコイルタップすることができます。

ブリッジ/テールピースともに「LockTone」が採用されているので、弦交換時のパーツ脱落が防がれるとともに、弦振動のロスが軽減されてサスティンが伸びます。また、グローヴァー社製のペグにはギア比18:1の高精度なものが選択されており、レコーディングの現場で特に求められるシビアなチューニングも比較的楽チンです。

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ESレスポールのアレンジモデル

こちらはパーツやネックグリップにアレンジを加えたモデルで、レスポールタイプのラインナップには欠かせない存在になっています。

ES-Les Paul Bigsby

ES-Les Paul Bigsby

その名の通り、ビグスビー・トレモロユニットが搭載されており、ジャズに限らずロックンロールやカントリーなど、幅広いジャンルに対応できます。

ES-Les Paul P-90 VOS

es-les-paul-p90-vos

P-90搭載機は、レスポール系のラインナップには欠かせない存在になってきました。本機は50年代前半のレスポールをイメージした、ゴールドトップにソープバータイプのP-90を搭載させたモデルです。
いま振り返る、P-90ピックアップのサウンドについて

モデル名の「VOS」は「ヴィンテージ・オリジナル・スペック」の略で、何十年という経年変化で「塗装や金属パーツがくすんできた状態」を新品で再現した仕上げです。傷の無い新品でありながら、ヴィンテージギターのような風格を感じさせます。

ES-Les Paul Slim Taper Neck VOS / ’59 Neck

ES-Les Paul Slim Taper Neck VOS

厚みを抑えたスリムなグリップ「スリム・テーパー」を採用したモデル、また逆に厚みのあるクラシカルなグリップを持つモデルです。スリム・テーパーはテクニカルなリードプレイに良好なグリップと云われ、カラーはライトバーストです。’59ネックは頼もしい存在感で根強い人気があり、カラーは渋いタバコバーストです。いずれもナット幅は基本モデルと同じ1.7インチ(約43mm)で、違いは厚さのみになっています。

ES-レスポールの対抗馬

レスポールタイプの外観でホロウボディ、という仕様のギターはES-レスポール以外にも存在します。また、小振りなセミアコ、と考えたら同様なコンセプトのギターは相当数存在します。全てを紹介していくときりがないので、ここでは同じギブソンからのラインナップででES-レスポールに近いコンセプトのギターを紹介します。

Les Paul Supreme

Les Paul Supreme

レスポールの高級機「シュープリーム(=最高権威)」の2015年モデルはトップ/バックにAAAAグレードのメイプルをあしらい、間に挟まったマホガニーをくり抜いたチェンバード・ボディとなっています。ジャズを強烈に意識したモデルですが、ブライトなトーンからブルース方向でもフィットします。

ES-339(349/359)

ES-339 ES-339

ES-335のボディサイズを大幅に縮小し、レスポールとほぼ同じサイズにまでしたセミアコです。339が基本モデルで、数字が上がっていくに連れて高級機種になっていきます。センターブロックがメイプル、ピックアップはバーストバッカー、というように基本的な仕様がES-335と同様になっています。ES-レスポールとかなり近いコンセプトのギターですが、ダブルカッタウェイなのでハイポジションが弾きやすく、ES-レスポールに対するアドバンテージになっています。

CS-336

一見上記ES-339と見分けの付かないルックスですが、こちらはギブソン・カスタムショップ製の全く別のギターです。単板削り出しメイプルトップ、一枚のマホガニーから削り出したことで一体化しているサイド/バック/センターブロックにより、サイズを超えた鳴りを実現しています。

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