好きな長さのケーブルを作れる「ソルダーレスケーブル」とは?

[記事公開日]2025/1/2 [最終更新日]2025/5/12
[編集者]神崎聡

ソルダーレスケーブルキット Free the tone solderless cable kit「SLK-L-10」

ソルダーレスケーブルとは、はんだ付けを必要とせずに簡単に接続できるオーディオケーブルのことです。通常プラグとケーブルははんだ付けで固定しますが、ソルダーレスケーブルではプラグとケーブルをネジで固定するだけの仕組みとなっていて、家にあるような簡単な工具だけで簡単に組み立てることができます。

特にエフェクターボードを自分好みに組み上げたい時にソルダーレスケーブルは非常に便利で、広く利用されています。このページではソルダーレスケーブルの特徴やポイントとなる部分を解説、現行ラインナップを見ていきたいと思います。

ソルダーレスケーブルの特徴

ソルダーレスケーブルのメリットは?

自作パッチケーブル
好きな長さで作ることができ、L/L、L/L(クランク)とプラグの向きも自由に作成できる。

ギタリストやベーシストにとって、ソルダーレスケーブルの最大の利点は、ケーブルの長さを自由に調整できることです。ペダルボードを組む際、各エフェクター間の距離に合わせて最適なケーブル長が必要になることがよくありますが、ソルダーレスケーブルを使えば、必要な長さにカットして即座に使用できます。

複雑になりがちなエフェクターの配列の中、限られたスペースでケーブルを配さなければならないとき、好きな長さに随時コントロールできるケーブルは強い味方となります。

自作パッチケーブル2 縦にエフェクターを並べるような場合でも、自分の思うようにカットして最適な長さのケーブルを作ることができる。

加えて、ケーブルが細身であることが多いため、通常のケーブルでは難しい配列でも可能になったりします。その取り回しの良さと細身のケーブルによる省スペースの部分は、通常ケーブルでは得られないメリットです。

ソルダーレスケーブルの注意点

各社様々な手法を使いハンダ無しを実現しており、いずれも強度について十分なものを持っていますが、やはり引っ張りや折れに対する強度は通常のハンダ付けシールドに及びません。踏みつけたり引っぱったりするリスクが高い部分に使用するのは控えた方が良いでしょう。ギターからの最初の一本とするにはおすすめできません。

一方でボードに固定しての使用や、移動頻度の少ないホームセットアップでは、十分に実用的な選択肢です。何より自分だけのカスタム長さのケーブルを作成できる点は、多くのミュージシャンにとって魅力的です。

音質はどうか?

ソルダーレスケーブルはエフェクターボード内に使われることが多いので、過度な味付けが好まれず、音質変化の少ないナチュラルなものが多い傾向にあります。また「Free The Tone SL-8Pro」など高品質な製品も登場しています。

プラグとケーブルを別で用意できる場合もあるので、自分の味付けが欲しければ、あえてプラグとケーブルを他社製で揃えても面白いでしょう。カスタムの自由度が高いのがソルダーレスケーブルの魅力です。

ソルダーレスケーブルの構造


ソルダーレスケーブル構造図 ソルダーレスケーブルの構造図

ケーブルの内部構造は、プラグ内部に配置された針状のピン(SLEEVE)がケーブルの芯線に直接接触し、信号を伝達します。一方、シールド線はプラグのネジ(SCREW)を締めることで被覆を貫通し、プラグの金属部分と接触して接地されます。このような設計により、はんだを使用せずに信号の導通を確保することができます。

ソルダーレスケーブルの作り方

パッチケーブルを自作してみるゾ!〜Free The Tone SOLDERLESS CABLE

各社からソルダーレスケーブル・キットが発売されていますが、いずれも「任意の長さに切ったケーブルをプラグに差し込んで、ネジやキャップで固定する」というシンプルな作業で完成します。ここではFree the tone「solderless cable kit」の通常版、L型プラグ10本の「SLK-L-10」の自作の手順を紹介していきます。

作業に必要なものは、「プラス・ドライバー」と「ニッパー(もしくは切れ味鋭いハサミでもOK)」だけです。

作業手順

① プラグをドライバーでバラす

プラグをバラした状態

プラグはネジで留まっているだけの状態です。ドライバーを使ってネジを回していき、キャップとプラグを分離します。1本のパッチケーブルを作るのに2つ必要ですから、2つのプラグのネジを外します。

② ケーブルを希望の長さに切る(断面を整える)

あらかじめ接続したいペダル間の距離を測定しておきましょう。ケーブルはしっかり垂直に切断することが望ましいです。

③ プラグにケーブルを垂直に挿入し、ネジを適切な力加減で締め込む

ネジの締め過ぎや締め直しを繰り返すと、被覆やシールド線にダメージを与え、接触不良の原因となるため注意が必要です。

④ プラグにキャップを被せてネジで締め込む

これで片側が完成です。

⑤ もう片側を③〜④の手順で

もう片側にケーブルとプラグを結合させる際、プラグの向きによって形状が確定します。求めているプラグ形状を考えながら装着しましょう。
以上で作業は完了、1本のパッチケーブルが仕上がりました。

ギター博士

ギター博士「自分の好きな長さで作れるから、エフェクトボードの見た目もとてもすっきりするゾ。余ったケーブルも使えるので、『パッチケーブルから音が出ない!』など急なトラブルの時でも、すぐに作りなおすことができるんぢゃ!!とても便利ぢゃのぅ♪」

六弦かなで

六弦かなで「これはとても便利だね☆かなでの作ったエフェクターボードも配線スッキリしたいな🎵かなでの分も作ってよぉ、ハカセェ!!」

ニッケルプラグのSL-8シリーズ(通常版)と、金メッキプラグのSL-8Pro(Pro版)シリーズでは作り方が異なります。

Free The Tone ソルダーレスケーブル Pro版の作業

Pro版の場合は、皮膜を「8mm」カットします。皮膜をカットしたら、中からシールド線が出てきます。シールドをほぐし、芯線とは「逆方向」に倒してまとめます。後はプラグに差し込み、「溝に沿って」ケーブル本体を倒し、フタをしてネジ留めをします。以上で完成となります。

上記の行程を見るとわかるように、Pro版には皮膜を剥くという作業が加わっています。これによりシールド効果が高まり、ノイズレスなサウンドになります。プラグの構造上、耐久性も高いため、機材トラブルのリスクを限りなく抑えているのも魅力です。

ソルダーレスケーブルのおすすめモデル

ソルダーレスケーブルという発想は1920年代にアメリカで登場しました。日本国内では2012年に発売されたFree The Tone「SL-SLIM」シリーズを皮切りに、国内でのソルダーレスケーブルの開発が進みました。現在ギター用のソルダーレスケーブルは国内ブランドが活況です。

ソルダーレスケーブルキット4種比較
製品名 ケーブル長 プラグ数 プラグ形状 導体素材 シールド 特徴
Free The Tone SL-SLIM 3m(CU-416) 10個(SL-SLIMプラグ) ストレートおよびL型対応 OFC(無酸素銅) 高密度編組シールド 非導電性樹脂キャップでショート防止、簡単な組立
ニッケル、金メッキのプラグもあり
BOSS BCK-12 12ft(約3.6m) 12個(バイディレクショナルプラグ) ストレートおよびL型対応 OFC(無酸素銅) 編組シールド 24K金メッキプラグ、低容量設計、柔軟なケーブル
Providence V206 2m 8個(L型プラグ) L型 VLK1 OFC 錫メッキ超高密度編組シールド コンパクトなプラグ設計、優れた導電性と耐久性
オヤイデ NEO SLD-ZERO L6S6+ 3m(SLD-ZERO) 12個(L型6個、ストレート6個) ストレートおよびL型 精密導体102 SSC 90%以上の高密度編組シールド 真鍮削り出しプラグ、優れた音質と耐久性

Free the tone solderless cable kit

Free The Tone solderless cable kit

2000年代以降、プロフェッショナル向け機材を中心に優れた製品をリリースし続けるフリーザトーン。ブランド発足初期にソルダーレスケーブルをラインナップしました。ライブの現場などでの急な断線などに対応するために、修理の容易なケーブルを提案したというのがその理由。ケーブル/プラグいずれも自社製で、独自の構造によるケーブルは強度も十分であり、幅広く支持されています。

BOSS Pedalboard cable kit

BOSS Pedalboard cable kit

エフェクターブランド「BOSS」から2017年11月にリリースされたソルダーレス・ケーブル「Pedalboard cable kit」。他のソルダーレス・ケーブルと同様にはんだ付けは不要、必要な長さにケーブルを切ってプラグに挿してネジを締めるだけの簡単作業で済みます。

  • BCK-2:ケーブル1本分(プラグ 2本、ケーブル 50cm)
  • BCK-6:ケーブル3本分(プラグ 6本、ケーブル 1.8m)
  • BCK-12:ケーブル6本分(プラグ 12本、ケーブル 3.6m)
  • BCK-24:ケーブル12本分(プラグ 24本、ケーブル 7.3m)

の4タイプがラインナップ。24K金メッキ仕様のプラグはストレート/L字に対応、ケーブルは音質変化を抑えるため低容量タイプを採用、「BCK-2」以外のラインナップでは専用マイナスドライバーが付属します。

BOSS Pedalboard cable kitを…
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Providence Platinum Link V206 model “Vital Link”

Providence V206

日本発の楽器用ケーブルブランドとして、現在では確固たる地位を築いているProvidence。高音質と使いやすさで数多くのギタリストから支持を得るこのブランドからもソルダーレスがラインナップされています。

専用ケーブルとそれに合うように開発されたNP-20プラグのセット。通常モデルよりも柔軟性があるケーブルを採用、プラグは通常のネジに加えてプラグキャップ部もネジ状になっており、二箇所で締め付けを行うことで、演奏中や移動中に抜けたりするトラブルを回避しています。

OYAIDE L6S6+

OYAIDE L6S6+

オヤイデ電気のNEO SOLDERLESSシリーズ「L6S6+」、はんだ不要のパッチケーブル自作キットです。オヤイデ電気オリジナルの音響用導体「精密導体102SSC」を採用したSLD-ZEROケーブル、90%以上の高密度で構成された編組シールドによりノイズの少ないクリアな音質を実現。独自調合のPVC絶縁体、外装シースにはカーボンを含有したPVCを採用。確実な導通と強靭なケーブルの固定を実現しています。

L6S6+には、3メートルの専用ケーブル「SLD-ZERO」、L型プラグ6個、ストレートプラグ6個、専用スパナ2本、リサイクルスティック1本が含まれます。他のキット同様、簡単に作成する事ができます。

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