アクティブ・ピックアップ完全ガイド:特徴・選び方・交換方法

[記事公開日]2025/5/28 [最終更新日]2025/5/29
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

アクティブ・ピックアップ EMG 81 X Black

ギター用ピックアップとしてはまだまだ少数派であるアクティブ・ピックアップ。電池が必要となるため、敬遠するギタリストも多い反面、手持ちのギターをすべてアクティブにしている愛用者もいます。その魅力は一体どこにあるのか。アクティブ・ピックアップの特徴を探っていきましょう。

森多健司

ライター
モリタギター教室 主宰
森多 健司

新大阪に教室を設立し10年弱、小学生から70代まで、音楽経験皆無の初心者から歴20年のベテランまで、幅広い層に教える。2015年 著書「ロック・フュージョン アドリブ指南書: マイナー7th上で多彩なフレーズを生み出す方法」、2016年 著書「六弦理論塾〜ギタリストのためのよく分かる音楽理論」上梓。

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webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。


  1. アクティブ・ピックアップとは?
  2. 代表的なメーカーとモデル紹介
  3. アクティブ・ピックアップの取り付け/交換方法
  4. バッテリー管理と寿命:安心して使うためのポイント
  5. アクティブ・ピックアップに関するよくある質問

アクティブ・ピックアップとは?

ギターのピックアップにはパッシブとアクティブの二種類があります。パッシブは弦の振動をそのままアンプに伝える役割を果たし、アクティブは拾った弦振動の信号を内部プリアンプで増幅してから出力、電池(通常は9V)で駆動します。

アクティブ・ピックアップの仕組み

アクティブ・ピックアップは、底面にプリアンプ用の基盤がついている以外は、ほとんど通常のパッシブ・ピックアップと大差ありません。コイルの巻数もパッシブとそこまで差はありません。

アクティブ・ピックアップの構造
EMGピックアップの構造
EMGピックアップの内部は、パッシブ・ピックアップの底面にプリアンプの機能を果たす基盤を付けた構造になっています。ポールピースについてはEMGの場合バータイプが一般的ですが、6芯タイプのものもあります。6芯タイプのほうがパッシブらしいサウンドになるということで、より自然なサウンドに重きを置いたモデルに多く採用されています。

プリアンプが付いている以外の特徴としては、アクティブ・ピックアップはパッシブのものに比べて磁力が弱いということが挙げられます。低磁力で信号を拾うことにはメリットもありますが、普通は弱々しくなりすぎてそのままでは使えません。そのため、それをプリアンプの力で増大して出力しています。アクティブ・ピックアップにプリアンプの特性が多く反映されるのはそのためです。

アクティブ・ピックアップの特徴

インピーダンスの低さによる安定した信号

アクティブ・ピックアップはプリアンプで電気的に増強された信号を発信します。パッシブのものに比べシールドを強い信号が通るため、外部からのノイズに強く、安定したサウンドにも繋がります。どんな環境でも一定のクオリティの信号を出してくれるため、80年代のAOR全盛期にはスタジオミュージシャンに好まれたこともありました。

アクティブ・ピックアップは一般的に高域についてはクリアな質感が得やすく、クリーントーンを出力すると、レンジが非常に広く、さらにストレートに音が前へ飛び出してくる印象を覚えます。また、ハイゲインにしてもレンジの広さやトーンの安定度が保たれ、音色に破綻が一切起こりません。

極めて低ノイズ

また、演奏していないときのノイズはほぼ無音というレベルで、パッシブとは比べ物になりません。このあたりの特性が電気的に安定しているがゆえに得られる大きなメリットとなり、深く歪ませても破綻せず、さらにローノイズという点はメタル系のギターサウンドと相性が良いため、そのカテゴリのプレイヤーに好まれる理由となっています。

プリアンプ特性の反映

ピックアップに載せられたプリアンプのサウンドが反映されるため、ギター本体の個性の影響はパッシブほどには受けません。このプリアンプのサウンドが「アクティブ臭い」と言われて敬遠されることが多々あり、アクティブ・ピックアップの音を好まないギタリストが挙げる大きな理由の一つとなっています。しかし、これはどのようなギターでも一定のクオリティが保てるという点においては、長所と言うこともできます。どのように捉えるかは人それぞれですが、アクティブの一つの傾向として認知しておくべき点です。

低磁力

マグネットの磁力が弱いため、弦振動がピックアップ側の影響を受けにくく、長時間振動させることができることから、ロングサステインにつながります。ピックアップをかなり弦に近づけても問題なく、敏感なピッキングダイナミクスへの反応を実現します。

交換作業、電池が必要

アクティブ・ピックアップ同士の交換作業には、ケーブルを差し込むだけで良い場合が多く、ハンダを使った交換に比べ非常に手軽。しかし、パッシブのギターをアクティブ用にしようとするならば、配線が複雑というだけでなく、電池収納のスペースを用意しなければならないなど、ほとんどの場合は非常に手の込んだ作業になります。
そして、最大の特徴は電池が必要というところ。現在まだまだマイノリティな存在ながら、USB接続で充電できるアクティブ・ピックアップ専用電源なども販売されています。

サウンドのナチュラルさはパッシブに軍配が上がる

アクティブは内蔵プリアンプでの増幅を含むため、その過程を省くことはできません。プリアンプにはどうしてもそれぞれに特有の特徴がこびりつくため、出音のナチュラルさという点において、パッシブ・ピックアップに及びません。

枯れたナチュラルなサウンドが持て囃されるブルースやトラディショナルなロックなど、そもそもアクティブが向かないジャンルがあります。また、シングルコイルについてはラインナップが随分と少なく、シングルコイルのサウンドは多数を追い求めることができない点は留意しておくべきでしょう。

メリット 低インピーダンスによる安定した信号
ローノイズ
クリアでレンジの広いサウンド
サステインが長い
デメリット ギター同士の音色が似る
いわゆるアクティブ臭さが出て、出音のナチュラルさに劣る
電池が必要

サウンド特性と適した音楽ジャンル

アクティブ・ピックアップにも多種多様な製品があり、それぞれに特性が違いますが、大まかに言って、ノイズレスかつクリアーである点は共通しており、これは深く歪ませた際の安定性、美しいクリーントーンに直結します。メタルでは切り刻むような切れ味の鋭いディストーションと、冷たくきらびやかなクリーンが両方求められますが、これはいずれもアクティブ・ピックアップの得意とする分野で、この手の音楽で多く使われるのは必然とも言えます。

また、美しいクリーントーンを生かせば、アルペジオや空間系エフェクトを多用した深い音空間を作るのも容易。安定した歪みのサウンドについては、メタル以外に、滑らかなリードギターの音色が必要なフュージョン系音楽などにもマッチします。

シングルコイル・モデルも存在する

数少ないシングルコイルモデルであるEMG SAのシリーズは、スタックタイプでさえ遠く及ばないほどの圧倒的ローノイズかつ、シングルコイルのジャキジャキした感触を失わない優れたモデル。さすがにトラディショナルなシングルコイルの音は望めませんが、一般的なシングルコイルとして非常に良質です。

通常のストラトのブリッジPUのみをハムバッカーとするSSHレイアウトは日本で人気のあるスタイルですが、EMGのシングルコイルを利用してアクティブサーキットで作り上げることで、安定性と高い汎用性を備えた一本にすることもできます。

代表的なメーカーとモデル紹介

EMG

EMGは、ギター用アクティブ・ピックアップのパイオニアにして、優れたモデルを多数リリースし、多くのギタリストに愛されるメーカー。現在のアクティブ・ピックアップの特徴である、安定した音質、黒い箱状の外観はそのままEMGを連想させます。

Seymour Duncan

主にパッシブ・ピックアップをメインに生産するセイモア・ダンカンは、ディマジオとならんで交換用ピックアップメーカーの二大巨頭とされます。全ラインナップがパッシブであるディマジオと違い、ダンカンの場合は2000年代始めよりアクティブの生産にも着手。現在のBlackoutシリーズはアクティブ・ピックアップとしてはEMG製に並びうるほどに浸透しました。

Fishman

1981年にボストンで創業された、アコースティックギター用のピックアップ専門のメーカー。アコースティックギターのピックアップはアクティブであることが多く、そこで培った技術も活かして、2014年エレクトリック用としてFluenceピックアップを市場に投入。アコースティック専門メーカーが突如発表したエレクトリック用ピックアップは驚きをもって迎えられました。

アクティブ・ピックアップの取り付け/交換方法

アクティブ・ピックアップの交換には大きく分けてEMG、Seymour Duncan系列と、Fishman系列があります。

EMGはかなり昔からソルダーレスを謳っており、端子同士を差し込むだけで交換が完了します。セイモア・ダンカンはそのEMGと互換性を持たせており、相互の交換は同じように付け替えるだけで完了します。FIshmanのピックアップははんだ付けが基本となりますが、複数ボイスチェンジ機能もあって、配線は非常に複雑。スイッチ類を増やさなければならない可能性もあり、自信がない方はリペアショップに持ち込んだほうが良いでしょう。

パッシブ → アクティブは作業が大変になる

どちらの場合も、パッシブからの交換はかなり困難です。電池を収納するスペースが必要なのが最大のネックとなり、そのためにボディにザグリを入れるなどの加工が必要な場合も。ちなみに、Fishmanから発売されているUSB充電式のバッテリーを使えば、電池よりも小さなスペースでの運用が可能なので、ギターによっては特別な加工なしで、そのまま中に内蔵してしまえる可能性もあります。

ボリュームポットには基本的に1MΩが使われ(パッシブの場合は通常250kΩか500kΩ)出力ジャックはステレオ仕様になるなど、部品も少々変更の必要があります。新品で購入すると部品は付属してくることが多く、わかりやすい説明書が添付されるため、ここが問題になることは少ないでしょう。

バッテリー管理と寿命:安心して使うためのポイント

アクティブ・ピックアップの最大の問題とも言える電池。原則的にシールドを挿している間は電気を使っているため、以下の対策を徹底しておきましょう。

  • ライブ前には電池を交換する
  • 弾かないときはシールドを抜いておく
  • 電池の極性を間違えない

変えたばかりならともかく、原則的にライブ前などは交換しておいたほうが無難です。家での練習時にはもちろん、リハーサルが終わった後の本番までの待機時間など、シールドを抜いておくのを忘れると、いざという時に切れている可能性も。

電池スナップに直接電池を付ける場合は不可能ですが、ボディの裏に電池ボックスが付いているギターでは、9V電池のプラスとマイナスを逆にセットすることができてしまいます。これを間違えると、最悪ピックアップの故障につながります。よく注意しましょう。

アクティブ・ピックアップに関するよくある質問

Q&A

電池はどれぐらい持つのか

パッシブとの併用はできるのか

アクティブ・ピックアップが生まれ、はや40年。保守的なエレクトリックギターのハードウェアの世界において、新しいものが定着した数少ない例と言えます。消耗品を内蔵しなければならない煩わしさは避けられませんが、それ相応のメリットがあるのもまた確か。食わず嫌いで試していない方こそ、一度試してみてはいかがでしょうか。また違う世界を見つけることができるかもしれませんよ。

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