《ヴィンテージを超えるサウンド》VANZANDT(ヴァンザント)のピックアップ

[記事公開日]2019/12/8 [最終更新日]2024/6/23
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

VAN ZANDT(ヴァンザント)は、アメリカのテキサス州に拠点を構えるリプレイスメントピックアップメーカーです。全てのモデルが手作業で作られる「完全ハンドメイドモデル」であり、1950年代~60年代頃の「ヴィンテージサウンド」を狙ったピックアップが多いです。
VAN ZANDTのピックアップはスティーヴィー・レイ・ヴォーン氏やエリック・ジョンソン氏といったストラトキャスターを愛用した世界的ギタリストが愛用していたことで有名です。そのサウンドは「ヴィンテージを超える」と言われており、枯れたようで枯れきっていない独特な音色が、多くのギタリストを魅了しています。

VAN ZANDTの歴史

VAN ZANDT Pickups社はアメリカのテキサス州において1980年代に創業されました。創業者であるW.L.Van Zandt氏は1950年代まではカントリーを演奏するバンドのギタリストであり、1960年代の初期からはすでに州最大の都市ダラスにおいてピックアップのリワインドや修理を行っていました。彼の修理の評価は高く、リペアされたピックアップは元の状態よりも音が良くなっていたと言います。

程なくしてピックアップを自作し始めますが、Van Zandt氏は多く生産するためにクオリティを落とすことを潔しとせず、ワイヤリング、マグネットからハンダ付けに至るまで、完璧とすることを常に求め続けました。彼のピックアップは世界的な評判となり、甥のJ.D.Prince氏の助けを借り、海外展開をするに至ります。

このように、エレキギター黎明期よりピックアップの製作に勤しんだW.L.Van Zandt氏ですが、1997年に社を残したまま66歳で逝去しました。現在のVan Zandt Pickup社は彼の妻であるGloria氏と、先述のJ.D.Prince氏が引き継いで運営しています。甥であるPrince氏は「もし我々が彼(W.L.Van Zandt)のようにできないのであれば、事業を辞める」と述べており、故人の遺志を最大限尊重しながら運営することを宣言しています。

VAN ZANDT ピックアップの特徴

レンジが豊かでピッキングレスポンスに忠実という、良質なピックアップに求められる要素を持ち合わた上で、Van Zandt独自のオリジナリティをしっかり出しているのが特徴。発祥の地でもあるテキサスを想起させる、カラッと枯れた明るめのシングルコイルの音は、本質的にはヴィンテージ寄りのものと言っていいでしょう。しかし、単なるヴィンテージの模倣にとどまらず、ゲイン量やパワー、弾きやすさなど、現代風の演奏に求められるようにうまく調整されており、その部分にVan Zandtのオリジナリティを感じることができます。

ストラトキャスター用のラインナップをメインとしているため、製品にシングルコイルが多いのも特徴です。その高いクオリティが評価され、使用ギタリストにもスティーヴィー・レイ・ヴォーン氏を始めとして、エリック・ジョンソン氏など、錚々たるストラトキャスタープレイヤーが名を連ねています。

日本発のVAN ZANDTギター、ベース

VAN ZANDTブランドにはピックアップと、ギター、ベースの本体がありますが、これらは同一の会社がラインナップしているものではなく、アメリカの本家VAN ZANDT Pickups社はピックアップのみを生産しています。ギターやベースの本体は同ブランドではあるものの、日本の代理店Taurusが企画する独自の製品となっています。埼玉のPGMが直接に製作するギター、ベースの数々は、ヴィンテージを超えたヴィンテージという意味合いから”Neo Vintage”と銘打たれ、細部までこだわり抜かれた定評ある高いクオリティを持ち、まさにVAN ZANDTブランドに恥じない製品となっています。こちらは「VAN ZANDT」と名乗る本家と違い、ブランドを記す際に「VANZANDT」とスペースを入れずに表記します。

VANZANDTのギター

VAN ZANDTの定番ピックアップ

TRUE VINTAGE

TRUE VINTAGE

1950年代から1960年代初期のストラトサウンドを目指したピックアップ。フェンダーがもっとも丁寧にギターを製作していたと言われる時代のサウンドをモチーフとしているだけあって、弾いていて気持ちの良いサウンドであり、ストラトキャスターの魅力を完璧に伝えてくれるピックアップです。

現代的な太さを持ち合わせながら、その太さや音圧とヴィンテージ感とのバランスが非常に良く、ハリのある高域も相まって、派手さを感じるサウンドです。適度に暴れた高域や、やや高めに位置するピークのせいか、突き抜けるような明るさがあります。また、シングルコイルらしいレンジの広さも魅力で、ピッキングダイナミクスにも良く追従するため、演奏者の演奏をしっかり受け止めてくれます。

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VINTAGE PLUS

VINTAGE PLUS

1960年代のストラトの音をもとに製作されたピックアップ。ヴィンテージ系の特色でもある空気感や枯れた雰囲気はそのままに、良く伸びるローエンドや、せり出された中域部がよりパワーを感じさせ、それに伴うアタック感もより強くなっています。

PLUSと名が付くだけあって上記のTrue Vintageに比べ、中低域などよりファットになっており、キャラクターはずいぶんと異なる印象を覚えます。ゲインや音圧などはあまり変わらないながらも、ブライトさがやや減退し、その分重心が下がっている分、より鈴鳴り感は減少し、ダークなサウンドに近づいています。

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その他、ストラトキャスター向けピックアップ

BLUES

BLUES

VINTAGE PLUSをベースとして中域をさらに増強させたモデル。豊富なミドル成分は音の太さに繋がり、アタック感も非常にしっかりとしています。中でもピッキングに対する粘り気は特筆すべき点で、軽く歪ませることでまさにその名の通り、ブルースにぴったりのサウンドが得られるでしょう。高域はやや控えめで、鈴鳴り感は希薄。突き抜けるような明るさはなく、ブリッジ側に付けるのが最適です。

スティーヴィー・レイ・ヴォーン氏が使っていたとして有名で、独特の粘りと枯れを同居させたあのサウンドに近づくために一つの有力な選択肢になります。

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ROCK

VINTAGE PLUSのコイルのターン数を増やし、ハイパワーにしたモデル。シングルコイルのラインナップ上、最大のゲインを誇ります。深めに歪ませても音の輪郭を失わないまま強力なドライブ感が得られ、まさにロック向けのサウンドです。歪んだ際にもしっかりとしたレンジ感を維持しており、その分相対的に高域が強めに聞こえるためか、暴れやすく感じますが、ローエンド、密度のある中域ともにしっかりと再生されており、腰高になっている印象はありません。

エリック・ジョンソン氏が惚れ込んだという話は有名で、エリック・ジョンソン・セットとして他製品と抱き合わせで販売されることも多くあります。

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テレキャスター向けピックアップ

TRU VINTAGE TELE

TRU VINTAGE TELE

TRUE VINTAGEのテレキャスター用。ストラト版と同じく1950年代~60年代初期のテレキャスターサウンドをモチーフとしており、ほどよいヴィンテージ感覚の中にしっかりとした太さと音圧を備えているところも共通しています。テレキャスター特有のキンキンした鳴りが抑えられ、ハイミッド中心にピークを持ってきた骨太のサウンドは非常に使いやすいものです。50年代初期のサウンドを狙った「FLAT」と、55年製以降のものを狙った「Staggered」の二種が展開されています。

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ハムバッカー・ピックアップ

TRU BUCKER 4C

VAN ZANDTのラインナップ上、唯一のハムバッカー。1950年代~60年代のヴィンテージハムバッカーをイメージした低出力なモデルです。やはりヴィンテージを意識したモデルらしく、ハムバッカーとしては高域がしっかりと出ており、音の輪郭がはっきりしている印象。それでありながらベース部分には質の良いミドル成分が含まれ、ピッキングに対する食いつきは現代のニーズに対応できる要素です。強烈な個性はないものの、優等生的モデルであり、メタルなどを除けばほぼあらゆるジャンルに対応できるでしょう。

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ヴィンテージを越えたヴィンテージと呼ばれるVAN ZANDTのピックアップ。様々なところから高い評価を得ている、そのクオリティの割には高すぎない価格も魅力です。往年のサウンドが好きなストラト使いの方ならば、一度は試してみる価値があること間違いないでしょう。

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