Dean Guitars(ディーン・ギターズ)

[記事公開日]2017/11/20 [最終更新日]2024/10/16
[編集者]神崎聡

Dean Guitars Razorbackシリーズのギター

「ディーン」は近年ハードロック/ヘヴィーメタルの分野で支持を集めてきている、勢いのあるブランドです。国内ではハードロック指向の強いエレキギターのブランドイメージを押し出しており、ESP、ジャクソン、シェクター、B.C.リッチ、アイバニーズなどをライバルとしていますが、ブランド全体としては変形ギターばかりでなくSGやレスポールタイプ、セミアコなど比較的スタンダードなスタイルのギターも生産し、またベースやアコギ、バンジョーやマンドリン、ウクレレなど幅広く手がけている大企業です。

ギター職人ディーン・ゼリンスキー氏がディーン・ギターズを立ち上げたのは、1977年(当時20歳)とも1976年(当時19歳)とも言われています。この頃はヘイマーやB.C.リッチなど、フェンダーやギブソンとはひと味違う独特なギターを生産するブランドが輩出しており、互いにしのぎを削っていました。これらの独特なブランドが、以後ジャクソン、シャーベル、クレイマーがシーンを席巻する80年代への道筋を拓いたと言われています。このときディーン自体は独自性やクオリティに反して売り上げが低迷、ブランドは売却され生産も停止していましたが、90年代に入り、ディーンのMLをメインに使用していた故ダイムバッグ・ダレル氏(パンテラ)の人気が高まります。これを受けてディーン復活を願う声が市場から起こり、満を持して生産が再開されることとなりました。

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1: Dean Guitarsの特徴 1.1: 精悍なたたずまいの「異形」 1.2: 楽器としての高い基本性能とクオリティ 1.3: 大企業ならではの、幅広いバリエーション 2: Dean Guitarsのラインナップ 2.1: ML Seriesと派生モデル 2.2: Cadillac series 2.3: V Series / Z Series 2.4: Custom Series 3: Dean Guitarsの愛用者とアーティストモデル 3.1: デイヴ・ムステイン 3.2: ダイムバッグ・ダレル 3.3: マイケル・アモット 3.4: マイケル・シェンカー 3.5: ラスティ・クーリー 3.6: ジャッキー・ヴィンセント 3.7: マイケル・アンジェロ 3.8: ヴィニー・ムーア 3.9: カール・サンダース 3.10: レスリー・ウェスト 3.11: ジョン・コノリー 3.12: エリック・ピーターソン

Dean Guitarsの特徴

精悍なたたずまいの「異形」

Razorbackシリーズのヘッド Razorbackシリーズのヘッド部分

ディーンの変形ギターは、一目で「ディーンだ」と分かるほど特徴的で存在感のあるデザインでありながら高度に洗練された美しさがあり、またヘッド落ちに悩まされるなどの心配の無い重量バランスを実現しています。特に「V」の字に広がるヘッドのデザインは、圧倒的な存在感を発揮します。

DEAN Dimebag Series ML DEAN Dimebag Series ML

ディーンの象徴的なモデル「ML」は、ボディの上半身がエクスプローラー、下半身がフライングVというデザインになっています。また「CADDILAC」はギブソン・エクスプローラーの上半身にギブソン・レスポールの下半身を、それぞれバランスよく合わせたデザインです。

このような二つのものをかけあわせるデザインは欧米式の「異形」の表現として古くからの歴史があり、ライオンの胴体に人間の頭を持つスフィンクス、半人半馬のケンタウロス、鷲とライオンを合わせたグリフォン、幾つもの動物を合成させたキメラなど多くのモンスターがこのような手法でデザインされています。全くのオリジナルではなく既にあるものを掛け合わせるデザインは、異質で不気味さを感じさせる容貌となりながら、モンスターならその習性や恐ろしさが比較的容易に想像でき、ギターなら操作性や弾きやすさが想像しやすくなります。

楽器としての高い基本性能とクオリティ

ディーンはモデルごとに設計されているネックグリップ、自社ブランドDMTのハイパワーなハムバッキングピックアップ、攻撃的なボディのグラフィックなどハードロック/ヘヴィーメタル/テクニカル系に特化した設計のギターが主流です。
自身もギター職人だった創業者ディーン・ゼリンスキー氏は、ディーンのギターに対して「ギターは細心の注意を払って作らなければならない」「金儲けが動機じゃない」「全工程を職人が志を同じに魂を込めて手作業で行っている」と語っています。「USAカスタムショップ」と呼ばれるディーンのハイグレードモデルは、フロリダとウィスコンシンで、それぞれ数人のトップビルダーによってこの言葉の通りに作られます。

DTM Pickup

通常モデルをアジア工場(韓国や中国)で製造していますが、しっかりとした生産体制が確立されており、ギター本体の作りが良くコストパフォーマンスに大変優れていると評価されています。
自社ブランドDMTのハムバッキングピックアップはディストーションが気持ちよくかかるパワーを持った設計になっており、アーティストの要望に応えたシグネイチャーモデルも多くリリースされています。

大企業ならではの、幅広いバリエーション

弦長24.75ミリリのマホガニーセットネック、22フレット指板、ボディ材はマホガニー、ハムバッカー2基など、ディーンはギブソン系のスタイルを持ったギターを主軸にしており、USA製高級機のほとんどがこの仕様になっています。ボディトップはメタルの世界観を表現するグラフィックに彩られることも、フィギュアドメイプルが貼られることもあります。限定モデルではコリーナネック&ボディといった贅沢な仕様もあり、価格を抑えたモデルではメイプルのボルトオン・ジョイント仕様、ボディ材ではクセのないバスウッド、粘りのあるアルダー、アタックの立つアッシュの他に、軽量で知られる桐(=Paulownia)が使用されるなどバリエーションが幅広く存在し、選択肢が多く準備されています。

Dean Guitarsのラインナップ

ディーンのラインナップは象徴的な変形ギターからスタンダードなモデルまで非常に多岐に渡っています。ここでは日本国内で流通しているハードロック/ヘヴィーメタル/テクニカル指向のモデルをボディシェイプで分類して紹介していきますが、同じボディシェイプのモデルでもボディ材やネック材、またネックグリップまで違いが設けられているなど、非常に多くのバリエーションがあります。

基本的に全モデルがアジア工場で生産されています。USAモデルはモデル名に「USA」が冠されることもありますが、値段を見ればだいたいわかるからなのか、いちいちUSAを名乗らないモデルが増えてきました。

ネックについてはアジア工場製では弦長に「24 3/4インチ(ギブソンスケール)」や「25.5インチ(フェンダースケール)といったオーソドックスなものを採用するのがほとんどですが、USAの多くのモデルでは24 5/8インチ(ギブソンスケールより4㎜短い)を採用し、「V」シェイプのグリップが多いのが特徴です。

ML Seriesと派生モデル

Dean ML Series

故ダイムバッグ・ダレル氏のトレードマークであり、ディーンの象徴となるギターです。ベーシックなモデル「ML79」は

  • メイプル&マホガニーボディ
  • Cシェイプマホガニーセットネック
  • DMTハムバッカー2基

という仕様で、弦をボディ裏から通すノントレモロ仕様とフロイドローズ搭載モデルがあります。

アメリカで作られる「USA ML CHICAGO FLAME」ではボディトップのメイプルが5Aグレードのものになり、ネックグリプはVシェイプ、ピックアップはディマジオの定番機Super Distortionが搭載されます。

「DIMEBAG」や「DIME」の名を冠する故ダイムバッグ・ダレル氏のシグネイチャーモデルは稲妻や迷彩などのグラフィックに彩られ、価格帯ごとにネック/ボディ材やネックジョイント方法に違いが設けられています。またダレル氏が生前愛用していたビルローレンスXL500(リア)、ディマジオSuper Distortion(フロント)、またセイモアダンカンのDimebuckerなど、搭載しているピックアップにバリエーションが設けられています。

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Razorback、STEALTH、REBEL

dean-dimbag-series左から:Razorback、Razorback 7、Razorbolt、STEALTH、REBEL

Razorback【REBEL】 Razorback REBEL

Dixie Rabel Dixie Rabel

このMLをベースとして開発された、

  • 故ダレル氏自身がデザインした「RAZORBACK」と7弦仕様の「RAZORBACK7」
  • RAZORBACKを更にトゲトゲにした「RAZORBOLT」
  • MLをシャープにした「STEALTH」
  • MLを角張らせた「REBEL」

という派生モデルは、すべてダイムバッグ・ダレル氏のシグネイチャーモデルとしてリリースされています(後述)。

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Cadillac series

Dean Cadillac series

「キャディラック」はエクスプローラーの上半身とレスポールの下半身を持つ、ディーンの伝統的なスタイルのギターで、マホガニーセットネック&ボディ、2基のハムバッカーそれぞれのヴォリューム/トーン、チューン・O・マチックブリッジが採用されているレスポールライクなモデルです。
フラットトップが基本ですがフィギュアドメイプルをトップに張ったカーブドトップ仕様もあり、また3ピックアップ仕様、フロイドローズ仕様などバリエーションがあります。
USA仕様では指板がエボニーになり、価格を抑えたCadillac Xではバスウッドボディにメイプルのデタッチャブルネック仕様となります。

V Series / Z Series

V Series、Z Series

フライングVタイプのVシリーズ、エクスプローラー・タイプのZシリーズ、共にUSA仕様は

  • 5Aフレイムメイプルトップ/マホガニーバックボディ
  • マホガニーセットネック&エボニー指板&アバロン貝のドットインレイ
  • ディマジオSuper Distortion2基搭載

というゴージャスな仕様になっており、価格を抑えたVX及びZXは

  • バスウッドボディ、メイプルデタッチャブルネック、ローズ指板、パールのドットインレイ
  • DMTオリジナルピックアップ2基搭載

という仕様になっています。

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Custom Series

Dean Custom Series

変形ギターのイメージが強いディーンのラインナップの中では、スーパーストラト・タイプのカスタムシリーズは異色と言えますが、仕様についても弦長25.5インチ、24フレットのメイプルネックを基本としており、ディーンの主力モデルに対するアンチテーゼとも言える存在になっています。上位モデルの550はスルーネック/EMGピックアップ/フロイドローズ搭載という仕様で、ESPのホライズン、ジャクソンのソロイストをライバルとしています。

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Dean Guitarsの愛用者とアーティストモデル

それでは、日本国内に流通しているものを中心に、DEANのアーティストモデルをチェックしてみましょう。一人のアーティストに対してさまざまな仕様のものが作られており、全体像はかなり大規模なものになります。精緻なグラフィックが施されるものが目立ちますが、これらグラフィックは、ボディの平面だけでなく曲面にまで施されます(いったいどうやって描いているんでしょうか)。

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