エレキギターの総合情報サイト
ギブソン「SG」は1961年、フルモデルチェンジしたレスポールとして発表されました。廉価版という位置づけだったSGスペシャルは、軽やかなサウンドとシンプルなたたずまいが受け入れられ、特にロック系のプレイヤーに愛用されました。時代に応じてさまざまな仕様変更が加えられたSGスペシャルでしたが、現在ではおおむねデビュー当時の姿に回帰しています。今回は、このSGスペシャルに注目していきましょう。
BLACK SABBATH – “War Pigs” (Live Video)
音楽史上、最も意義深いSGスペシャルと言えば、このトニー・アイオミ氏が愛用した1964年製、通称「Monkey」だと主張する人は多くいます。ピックアップやストラップピンの位置などさまざまなところに手が加えられていますが、この動画ではブリッジも交換されているのが確認できます。
SGスペシャルはピックアップ1基のSGジュニアと同様、SGスタンダードのスチューデントモデル(=廉価版)という立ち位置にあります。ハムバッカーであったピックアップをP-90に変更するほかには、装飾などサウンドに問題のない部分での仕様変更が加えられ、価格を抑えるよう工夫されています。なお1961年の発表当時、SGカスタムが395ドル、SGスタンダードが265ドルだったのに対し、SGスペシャルは195ドル、SGジュニアは147.5ドルでした。
またマホガニーボディ&ネックというSGの構造からなる、低音域が抑えられて中域の立つサウンドに、P-90特有のトレブル感、パワー感が合わさり、ロックにぴったりの元気なサウンドが得られます。ボディが薄くて大変軽量で、ハイポジションの演奏性ではトラッドなスタイルのギターの中では群を抜いています。
ヘッドとネックは、目の前のSGが「スタンダードなのかスペシャルなのか」を見分ける重要なポイントです。SGスタンダードはヘッドにクラウンインレイあり、指板にトラペゾイド(台形)インレイありです。SGスペシャルはヘッドにロゴ以外の装飾なし、指板にドットインレイという仕様です。
ボディに直接マウントされる、2基のP-90ピックアップ。
1961年のデビュー当時はラージサイズのシングルコイルであるP-90が採用されていましたが、1970年代にはP-90と同じサイズのミニハムバッカーに変更、1980年代にはオープンタイプのハムバッカーに変更するなど、時代とともにハイパワー化しました。かつてはカバードのハムバッカーがマウントされているSGスペシャルもリリースされるなど、歴史全体を通すとSGスタンダードとSGジュニアの違いはかなりあいまいです。現在のSGスペシャルはデビュー当時の「P-902基」に回帰しており、オープンタイプのハムバッカー仕様は「SGトリビュート」として存続しています。
かつてのSGスペシャルでは、ハムバッカーがマウントされることがあった。
Gibson Custom Shop「1963 SG Special Reissue」のバーブリッジ。音高の調節のため隆起が設けられているほか、ネジの操作によりブリッジ位置の微調整ができる。
金属の棒一本でブリッジもテールピースも兼ねる「バーブリッジ」が、SGジュニアの基本です。オクターブピッチの甘さが難点でしたが、現在ではサドルに模した隆起が加えられており、イントネーションはかなり良好です。もっとシビアなオクターブ調整を可能とするブリッジも世の中にはありますが、この超絶にシンプルな構造のブリッジにしか出せない音があると認められており、SGジュニアの重要なアイデンティティとなっています。
とはいえ、これまでSGスペシャルにTOMブリッジが採用された例はいくつもあり、仕様は流動的です。
レスポール・スタンダードとレスポール・スペシャルとではボディ構造が大きく異なっており、かなり分かりやすい違いがありました。いっぽうSGスタンダードとSGスペシャルとでは、ギター本体の構造がほぼ一緒です。歴史上一貫している違いは、ヘッドと指板のインレイだけになっています。装飾を除けば、楽器本体の品質にほとんど差が無いというわけです。
そういう背景があったものですから現在では、
というように仕様の違いを設けて、それぞれのキャラクターを立てています。
“Loner” (Official Music Video) – Black Sabbath
ブラックサバスの中心人物であり、サウスポーのギタリスト。超タイトなスケジュールでレコーディングを行った時に当時のメインのストラトが故障、仕方なく控えに持ってきていたSGスペシャルを持ち出したところコレがたいそう具合が良くて気に入った、という経緯で現在ではSGがトレードマークになっています。
特別性のピックアップを搭載し、ローズ指板をラッカー塗装して摩擦を軽減し、またボディバランスのためにストラップピンの位置を変更するなど改造を加えて1975年頃まで使用していますが、それ以後も個人ビルダーの手によるSGシェイプのギターを愛用し続けています。
Frank Zappa – Inca Roads (A Token Of His Extreme)
「鬼才」という言葉は、この人のためにある。ザッパのバンドが勤まるプレイヤーもまた、みな超絶な達人です。
個性の強すぎる音楽性から「変人」とも言われるザッパですが、生涯で極めて広範囲な音楽にトライ、現代音楽、ジャズ・ロック/クロスオーバー、電子音楽などのジャンルをポピュラー音楽に応用する先駆者であり、グラミー賞受賞という評価も受けました。
トレードマークのSGスペシャルにはパラメトリックイコライザーを始めとする多くの回路が仕込まれており、どのバンドサウンド内においても美しく響くギターサウンドを奏でていました。
大変な愛妻家であり、奥さんの身体のパーツ全てに名前をつけていたとか。息子であるドゥイージル氏の名前は、奥さんの足の指の名前に由来しています。
「ザ・フー」のギタリストとして余りにも有名。ストラトやレスポール、シェクターの2ハム仕様のテレキャスタータイプなど、年代ごとにメインギターを替えていますが、1970年代後半にはこのSGスペシャルとハイワット製ギターアンプの組み合わせでバイト感のあるロックンロールサウンドを出していました。肩から腕をぶん回してストロークする「ウィンドミル(=風車)奏法」は、このピート氏によって広められました。
日本人で最初のロックギタリストとして有名なCHAR氏はムスタングやストラトを抱いているイメージが強いですが、多くのギターコレクションの中に70年代のSGスペシャルがあります。スモールハムバッカーにラージピックガードという仕様で、自身が青春を捧げたというCREAMの曲を演奏する時に頻繁に使用し、2012年に実現したジャック・ブルースとのセッションではほぼ全編使用しています。
1963 SG Special Reissue
カスタムショップでは60年代当時のスペックを可能な限り忠実に再現したSGスペシャルをリリースしています。しかしモデルによってはギブソンUSAのレスポール・スタンダードを凌駕する価格になっており、決して「廉価版SG」ではありません。
ギブソン・カスタムショップ「1963年式SGスペシャル」は、当時の仕様や製法を限りなく忠実に再現した、ヴィンテージギターのクローンと呼べるギターです。しかしミディアムジャンボフレットを採用、バーブリッジのイントネーション改善など、現代のギターとしての演奏性もしっかり考慮しています。チェリーの「リイシュー」が通常版で、ホワイトは「マーフィーラボ・コレクション」に属し、軽いエイジドがかかっています。
Gibson Custom Shop SGを…
R楽天で探す YYahoo!ショッピングで探す 石石橋楽器で探す
トニー・アイオミ氏の名を冠するSGスペシャルは、初期のブラックサバスを支えた1964年製、通称「Monkey」を再現しています。エスカッションと金属カバーの付いたP-90ピックアップ、オクターブ調整の可能なラップアラウンド式ブリッジ、そして低音側ホーンに移設したストラップピンが大きな特徴です。同梱のステッカーをボディエンドに張り付ければ、トニー氏の愛したSG「Monkey」が完成します。なお、トニー氏が左利きだったこともあり、左用もリリースされています。
Tony Iommi: SG Special
トニー氏が暮らしていたイギリスでは左用のギブソンを手に入れることが大変困難だったそうで、はじめは右用のSGを左に構えて使っていたそうです。
Tony Iommi SG Specialを…
R楽天で探す YYahoo!ショッピングで探す 石石橋楽器で探す
現代の「SGスペシャル」は1960年代の姿を意識した、シンプルなスタイルに落ちついています。もともとは廉価版として開発されたモデルですが、現在ではスタンダードと違ったキャラクターのSGという扱いになっており、それほど大きな価格差は設けられていません。
薄型のボディにクルーソン式ペグとバーブリッジを備え、非常に軽量です。バーブリッジにはサドルを模した隆起が加えられており、オクターブ・ピッチが改善されています。
Mark Agnesi Talks About SG Special Model
仕様は60年代風ですが、バリっと現代的なカラーも。ペルハム・ブルーとスパーキング・バーガンディ、いずれもメタリックです。
SG Specialを…
R楽天で探す YYahoo!ショッピングで探す 石石橋楽器で探す
「SGトリビュート」は60年代のSGを意識しつつ、シンプルさを追求したモデルです。ヘッドに装飾があり、2ハムバッカー、TOMブリッジという仕様はSGスタンダードにかなり近いですが、売価で10万円を下回る価格圧縮を達成しているところが注目に値します。廉価版という本来の役割を考えると、これこそが現在のSGスペシャルだと言えるでしょう。ネック材はメイプルなので、滅多なことでは折れません。
Gibson SG Tribute Demo – All Playing, No Talking
太く、芯のある音。安いからって、侮ることはできません。
SG Tributeを…
R楽天で探す YYahoo!ショッピングで探す 石石橋楽器で探す
左から:SG Special、SG Special Limited、SG Special Faded、SG Special 2014、SG Special 2015、SG Special 2015
装飾を排したヘッド/ネックにラージピックガード、オープンタイプのハムバッカー、50年代風の丸いネックグリップ、という現代のSGスペシャルには、グロス(=つや有り)フィニッシュの通常版SGスペシャルと、マット(=つや消し)フィニッシュのSGスペシャル・フェイデッドのふたつが用意されています。
SGスペシャルではボディカラーがチェリーかブラックで、指板材にグラナディーロ(=メキシコ紫檀)がセレクトされています。グラナディーロは希少となったインドローズの代替材で、高密度で硬く、ややきらびやかなサウンド特性を持っています。また狂いが出にくく非常に綺麗であることから、マリンバやクラシックギターで永らく使用されています。
一方SGスペシャル・フェイデッドはボディカラーがチェリーかブラウンで、メイプル材をローストしてローズの色に似せた「ベイクド・メイプル」が指板材として採用されています。指板としての機能に全く問題はありませんが、このため価格が通常版よりもさらに抑えられています。
SGスタンダードのピックアップをP-90に変更したモデルで、60年代当時のSGスペシャルに近いサウンドを狙っています。カラーはチェリーとブラックがあり、ヘッドのダイアモンドインレイ、指板の台形のインレイなどの装飾がSGスタンダードと共通ながら、指板をベイクド・メイプルにすることで低価格化、通常版SGスペシャルと同じ価格になっています。
SGスペシャルのグレードからは、
という4モデルがリリースされました。いずれもボディ塗装をサテン仕上げにしており、導管の凹凸に触れることができる、ウッディーなイメージのSGです。サテン仕上げのモデルはキズが付きやすく、使用する間にどんどん味のあるルックスになっていくのがデメリットだという考え方もありますが、そのぶん塗膜が薄く、鳴りが豊かになるというメリットがあります。
SGフェイデッドはかつてのSGスペシャルを思わせるギターで、
と言った特徴を継承しつつ、SGスタンダード同様にラージピックガード仕様になっています。1ピースマホガニーの「ラウンド」グリップのネックは、SGスタンダードと同じ仕様になっています。また搭載されるピックアップもSGスタンダードと同じ「490R/498T」が採用されており、SGスタンダードにかなり近いギターになっています。
ピックアップカバーを外した「オープン」タイプは、カバーがついた「カバード」よりも高音域の鋭さが向上し、若干派手なトーンになります。
いっぽうSGスペシャルは、
という独特なスタイルで、1970年代の仕様を再現しています。
「SG70」と名付けられたネックグリップは、ネック厚が他のSGと同じ「ラウンド」タイプながら、ヘッドの付け根に「ボリュート(ネック折れ防止用のふくらみ)」が設けられています。またこの時代の特徴であるメイプル材が使用されています。
フェイデッド/スペシャルの両機は、共に木目のバランスをとったマルチ材(何本かを張り合わせた)のマホガニーボディを持ち、HPモデル、Tモデル共に同じ価格設定になっています。スタイルの異なる同一グレードのギターという扱いです。
SGスペシャルを…
R楽天で探す
YYahoo!ショッピングで探す
石石橋楽器で探す
※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。