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「SGジュニア」は、リアにP-90ピックアップ1基&バーブリッジというシンプル構造のギターです。SGスタンダードやSGカスタムに対する廉価版という扱いで開発されましたが、左右対称ボディのクールさと構造のシンプルさ、そしてストレートなサウンドが特にロック/パンク志向のアーティストに支持されています。1971年に生産が一旦終了となりましたが、現在では60年代のリイシュー(=再生産)がリリースされています。
Paul McCartney: Live from NYC
サー・ポール・マッカートニー氏のサポートを務めるブライアン・レイ氏。P-90の太さと甘さと鋭さを兼ね備えた音は、ロックバンドのアンサンブルにおいて、リードでもサイドでも美しく調和します。
「リアピックアップ1基」というギターは、自分が出したい音を一つに決めている印象になり「潔い」と目されます。本体が軽量でサウンドがストレート、またコントロールがシンプルなので、ダーティーなロックやガレージパンクに特に相性がいいと考えられています。SGのモデル内で「リアにP-90ピックアップ1基&バーブリッジ採用」というギターはSGジュニアのみです。
1ピックアップはサウンドバリエーション的に不利と目される事がありますが、そのサウンドにはどの音楽にも馴染む深みがあり、腕前が試される奥の深い楽器だと言えるでしょう。レスポールジュニアから継承したピックガードも他のSGとは違い、ルックス上の大きなポイントになっています。
The Lemonheads – Half The Time (Video Version)
ギターボーカルの使用例が多いのも、SGジュニアの特徴です。楽器としてのシンプルさはもちろんですが、回路も装飾も控え目で、カジュアルなファッションに馴染むルックスだという点は、無視できないメリットです。
上:Gibson Lespaul Jr.、下:Gibson SG Junior
SGジュニアの特徴である
といった基本仕様はレスポール・ジュニアと共通、いずれも歯切れが良く、力強いサウンドが持ち味です。シンプルな機能とハッキリしたサウンドで「ギターボーカルが持つもの」、「リズムギター(=サイドギター。バッキングを担当)奏者が弾くもの」というイメージが強いようです。
しかしSGのボディシェイプは最終フレットまで楽々手が届くダブルカッタウェイなので、高音までフルに使用する音域の広いフレーズを演奏しやすく、リードプレイにも向いています。キャラクターがハッキリしており安価で買いやすいということから、メインギターに対するバリエーションのひとつとして持っているプレイヤーも多いようです。
Tamaryn – While You’re Sleeping, I’m Dreaming (Live on KEXP)
「Tamaryn」は、ニュージーランド出身のタマリン・ブラウン女史、プロデューサーでありギタリストのレックス・ジョン・シェルヴァートン氏による、シューゲイザー/ドリーム・ポップ・デュオです。アームをつけた白いSGジュニアを操るレックス氏は、空間系のエフェクトを巧みに駆使してムーディーなバンドサウンドを構築させています。
上:Gibson SG Special、下:Gibson SG Junior
「ジュニアとスペシャルの違い」は、デビュー当初は「ピックアップが1基か2基か」しかありませんでした。両者とも指板のドットインレイ、シンプルな意匠のヘッドなど、低価格化を目的とした外観が共通しています。
SGシリーズは全モデルでボディの構造は共通していますが、唯一SGジュニアのみ、「フロントピックアップを持たない」という点が特徴になっています。フロントのピックアップキャビティ(=ピックアップを収めるためにボディに空ける穴)を持たないことになり、ネック接合部分の剛性が上がります。これにより、他のSGよりも明瞭でストレートな弦振動が得られるわけです。
SGジュニアの「バーブリッジ」は、開発者の名前をとって「マッカーティー・ブリッジ」とも言われています。開発者のテッド・マッカーティー氏(1910-2001)は1950年から1966年までギブソンの社長を務め、数々のモデル開発に関わったギターの偉人でした。バーブリッジは現在のブリッジよりも調製範囲が狭くシビアなセッティングが困難ですが、サウンド的には他のブリッジよりも歯切れが良くなる傾向があり、また金属の総量を少なくできること、弦のテンションが柔らかいことが、サウンドのニュアンスとプレイアビリティの両方に影響します。
左:ギブソンUSA「SG Junior」のバーブリッジ。一本の金属棒で弦を受け止める、開発当初の古き良き設計。右:ギブソンカスタムショップ「1963 SG Junior Reissue」のバーブリッジは、オクターブ調整された特別製。
現代によみがえったSGジュニアは、マホガニーボディ&ネック、ローズウッド指板の木材構成にP-90ピックアップ1基&バーブリッジというシンプルな基本仕様をそのまま継承しています。一方でピックガードが肉厚になり、またデザインが若干スリム化して、3層8点留めから5層7点留めに、またロッドカバーが黒の単層から黒白の2層になり、ちょっとスタイリッシュなギターになっています。
カスタムショップ製の1963年式SGジュニアは、1Pマホガニーボディ&ネック、インド産ローズウッド指板という贅沢な木材構成に、当時の者と同じ設計のクルーソンペグを備える本格的なヴィンテージ・レプリカです。バーブリッジにはオクターブ調整のための「山」が設けられており、ピッチに厳しいシビアな現場でも心配ありません。
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