フェンダー社は、アメリカのコロナ工場(カリフォルニア州コロナ) 、メキシコのエンセナダ工場(ババ・カリフォルニア州エンセナダ) という二つの直営工場を持っています。エンセナダ工場の生産体制は「コロナ工場以上」とも言われ、フェンダーでは現代志向の「Player II」シリーズとヴィンテージ・スタイルの「Vintera II」シリーズを主軸としつつ、アーティストモデルも積極的に生産しています。
今回は、このエンセナダ工場で生産されるいわゆる「フェンダー・メキシコ(MEX)」のテレキャスターに注目してみましょう。
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よくあるご質問「メキシコ製って、どうなの?」
メキシコとUSAを比べてみよう
メキシコ製テレキャスターのラインナップ
生産完了モデル
よくあるご質問「メキシコ製って、どうなの?」
これについては、メキシコ製ストラトキャスターのページで解説しています。エンセナダ工場について、生産体制について、製品の品質についてなどのテーマに触れています。興味がある人は、ぜひ読んでみてください。
よくある質問「メキシコ製の品質ってどうなの?」 | メキシコで作られるフェンダー・ストラトキャスター徹底分析!
アメリカのコロナ工場もメキシコのエンセナダ工場も、同じ木材を使用して同じ生産体制を敷いています。メキシコ製のギターは求めやすい価格帯のギターを作っているのであって、品が悪いから安いというわけではありません。両工場とも、カスタムショップに所属するマスタービルダーの技術指導のもとで製造技術の維持と向上に努めており、フェンダーの名に恥じない品質のギターを生産しています。
メキシコとUSAを比べてみよう
メキシコとUSAでは、加工技術や仕上がりの美しさに差が出るわけではありません。とはいえ価格の差はかなり歴然としていますね。その違いはどこにあるんでしょうか。人件費の話はさておき、ギター本体の仕様を比較検証してみましょう。
上:メキシコ代表:Player II Telecaster(¥110,000)
下:USA代表:American Professional II Telecaster(\291,5000)
3倍近い価格差が付いていますね。この価格差はどこに由来するんでしょうか。
「Player II テレキャスター」は、現代の若いプレイヤーに向けた標準的な現代仕様のテレキャスターです。対する「アメリカン・プロフェッショナルII」は、USA製の標準機で、時代を見据えつつ、さらに一歩先を行く高機能な現代版に仕上がっています。では、この二本を比較してみましょう。
ボディ/ネックの比較
USAとメキシコ製は、同じサプライヤーから仕入れた木材を使用しています。その意味で、アルダーやアッシュ、メイプルやローズウッドなど主要な木材に有意な差異はありません。とはいえ木目や重量などで優秀な木材が優先的にUSAに振り分けられ、価格に反映されている、と一般的に言われてはいます。しかし同様に、音響上の性能に有意な優劣は見られない、とも言われています。
ボディ塗装に違いがある
分かりやすい大きな違いは、ボディ塗装に見られます。USAはポリウレタン塗装が基本で、メキシコ製はポリエステル塗装が基本。ポリウレタン塗装は塗膜が薄くできるかわりに工数が多くて価格を抑えにくく、ポリエステル塗装は塗膜が厚めになる代わりに工数が少なく価格を抑えやすい、という違いがあります。
音響面では、ポリウレタン塗装は木材の振動を比較的抑制しにくく開放的な弦振動が得られやすい、ポリエステル塗装は硬質な塗膜に由来するタイトな弦振動が得られやすいと言われます。この違いは仕様に由来する個性であり、価格の差こそあれどちらが優れているかは意見が分かれます。
一方でネックについては木材/塗装ともに共通であり、いずれも指板のエッジがロールオフ加工され、良好な演奏性です。ネックシェイプやフレットで仕様上の相違はあっても、品質上の有意な相違は見られません。
電気系の比較
電気系には有意な相違が見られます。
Player II(MEX) :Player Series Alnico V Single-Coil Teleピックアップ、1V1T、3WAYセレクタースイッチ
American Professional II(USA) :V-Mod II Single-Coil Teleピックアップ、1V1T(トレブルブリード回路&シリーズモード)、3WAYセレクタースイッチ
フェンダーでは各モデル用にピックアップも開発しています。Player IIのピックアップは、輝く高域と引き締まった低域が持ち味。対するAmerican Professional IIのピックアップは、テレキャスター王道のサウンドに繊細さを増強しています。
Player IIの回路系はシンプルで、1ボリューム1トーン&3WAYセレクタースイッチ。American Professional IIはシンプルな操作系を継承しながら、ボリューム操作時にEQバランスを維持できる「トレブルブリード回路」を備え、トーンノブのスイッチでリア+フロントを直列つなぎで使用する「シリーズモード」が利用できます。
金属パーツ
金属パーツでは特に、ペグとブリッジに注目してみましょう。
Player II(MEX) :クルーソン型ペグ、6連ブロックサドル
American Professional II(USA) :ロトマチック型スタガード・ペグ、調整済み3連ブラスサドル、2WAYブリッジ
Player IIでは定番系ど真ん中のパーツが採用されています。クルーソン型ペグはフェンダー伝統のスタイル、6連サドルはオクターブ調整に有利です。対してAmerican Professional IIでは堅牢なペグと新しい設計のブリッジが採用され、グレードの差がついています。
付属品
Player IIにはギグバッグとロッド調整用レンチが、American Professional IIにはハードケースとロッド調整用レンチ、サドル調整用レンチが付属。付属品は「おまけ」ではなく、付属品の価格も本体価格に含まれます。とはいえ「ギグバッグはいらないから安くしろ」といった買い方はできません。
以上、いろいろな項目についてMEXとUSAを比較しました。グレード的な違いや価格の差について、まあまあ納得できるのではないでしょうか。シンプルにまとめているPlayer IIに対し、最新の理念を積極的に採用するアメリカン・プロフェッショナルII(USA)、という「コンセプトの違い」がグレードの差となって表れているのが分かりますね。
メキシコ製テレキャスターのラインナップ
ではここから、エンセナダ工場で作られるテレキャスターのラインナップをチェックしていきましょう。テレキャスターのラインナップは、
モダン(現代的)なスタイル
トラッド(伝統的)なスタイル
アーティストモデル
という3タイプに大別できます。それぞれについて見ていきましょう。
モダン(現代的)なスタイルのテレキャスター
Player II Telecaster(左用あり)
「Player II」は、モダン系テレキャスターの基本モデル。滑りの良いネックと押弦に有利な指板&フレット、ロールオフした指板エッジという現代標準の弾き心地、オクターブ調整とサスティンの伸びに有利な6連ブロックサドル、クッキリとした音色が持ち味の専用ピックアップとシンプルな操作系という構成です。モダン系テレキャスターの定番仕様として、ピックガードを外さなくてもフロントピックアップの高さを調整できます。
ボディ形状は伝統にのっとり、表も裏もフラットな武骨な設計。ボディ材はアルダーを基本としながら、カラーリングによりチャンバードアッシュやチャンバードマホガニーも使用されます。左用ありカラーバリエーションも多く、選ぶ楽しさがあります。
Player II Telecaster SH
HH配列のPlayer IIテレキャスターは、アルニコII磁石採用のハムバッカー・ピックアップを2基搭載した、ファットなサウンドが持ち味のモデル。6連のベントサドルは豊かな響きと適度な減衰が得られます。バックコンター採用により、高く構えるスタイルに有利です。
Exploring the Limited Edition Player II Series in Sparkle 3-Color Sunburst | Fender
Player II Modified Telecaster SH
SH配列の「Player II Modified」テレキャスターは、凶暴なリアと艶やかで太いフロントの組み合わせです。フロントのハムバッカーは3点留めなので、高さだけでなく傾きも調整可能。トーンノブのスイッチでハムバッカーをコイルタップできます。
Exploring the Player II Modified Telecaster | Player II Modified | Fender
トラッド(伝統的)なスタイルのテレキャスター
トラッドなスタイルのテレキャスターは、「Vintera II」シリーズとしてまとめられており、指板Rやネックシェイプなど当時の寸法のほか時代ごとのブランドロゴ、ヴィンテージ・スタイルのペグ&ブリッジを採用することで在りし日の名機の姿を再現しています。適度な握り心地が得られるグロス仕上げのネックも、ヴィンテージ・スタイル定番の仕様です。音域も伝統の21フレットですが、細めで背の高いヴィンテージ・トール・フレット採用により、ヴィンテージ・フィールを維持しながらも押弦はラクです。
なお、現代版のテレキャスターと異なり、フロントピックアップはボディに直接マウントされていますから、高さを調節するためには一旦ピックガードを取り外す必要があります。
Vintera II 50s Nocaster
「50s Nocaster」は「テレキャスター」の名が確定する前の時代、ブランドロゴのみで出荷されていた名もなきギターを再現したモデル。モデル名表記の削られたギターはのちに「ノーキャスター」と呼ばれました。5点留めの単層ピックガード、丸形のストリングガイド、7.25″Rメイプル指板、ブラス製3連サドルが特徴です。
Vintera II 60s Telecaster
60年代式テレキャスターは、8点留め3層ピックガード、カモメ型ストリングガイド、7.25″Rローズウッド指板、鉄製3連サドルが特徴。ヴィンテージスタイルの’60sピックアップにより、生き生きとした輝くトゥワングが得られます。
Limited Edition Vintera II Road Worn ’60s Telecaster
限定仕様の60sテレキャスターは、ボディもネックもRoad Wornニトロセルロースラッカー塗装を採用、使い込んだ感じの味のある風貌です。
Exploring the Limited Edition Vintera II Road Worn 60s Telecaster | Vintera II Road Worn | Fender
Vintera II 70s Telecaster Deluxe with Tremolo
70年代式テレキャスター・デラックスには、ブロックサドルのシンクロナイズド・トレモロユニット装備というアレンジが施され、表現の幅が拡張されています。ワイドレンジ・ハムバッカーはフェンダー独自の構造により、PAF型のハムバッカーより高域が豊かに響く、力強さと透明度を共存させた音色が持ち味です。
アーティストモデル
アーティストモデルについてはアーティストご本人の愛機の外観だけでなく、シグネイチャー・ピックアップを開発することでサウンドまで再現する気合の入り方です。ファンならずとも、各ジャンルに特化した尖ったテレキャスターとして使用できます。
Jason Isbell Custom Telecaster
6度のグラミー受賞を誇るカントリーミュージックの巨人、ジェイソン・イズベル氏のシグネイチャーモデルは、使い込んだ感じのRoad Wornフィニッシュが味わい深い60年代式テレキャスター・カスタムです。ブラス製3連サドル採用のほか、ピックアップもシグネイチャーモデルなところに深いこだわりが込められています。
Exploring The Jason Isbell Custom Telecaster | Artist Signature Series | Fender
J Mascis Telecaster
オルタナティヴ・ロックバンドDinosaur Jr.のギターボーカルとして知られるJ Mascis氏のシグネイチャーモデルは、青いラメのボディカラーとミラーピックガードがまばゆく光るド派手な風貌が目を引きます。ネックにはRoad Wornフィニッシュを施し、使い込んだ味わい深さを演出。シグネイチャーピックアップは、ご自身の愛機を再現する1958年式です。
Exploring the J Mascis Telecaster | Artist Signature Series | Fender
Chrissie Hynde Telecaster
ロックンロールバンドThe Pretendersの活動で知られるクリッシー・ハインド氏のシグネイチャーモデルは、使い込んだ感じのミラーピックガードと6連サドルがポイント。シグネイチャー・ピックアップもあいまって、タイトさの中に丸さと太さを内包するサウンドを持っています。
Exploring The Chrissie Hynde Telecaster | Artist Signature Series | Fender
Brad Paisley Road Worn Telecaster
カントリー・ミュージックのスーパースター、ブラッド・ペイズリー氏のシグネイチャー・テレキャスターは、桐をスプルースでサンドイッチした他にないボディ構造によるアコースティックな音響性が第一に、ローポジションのVシェイプから徐々に平らになっていくネックシェイプが第二の特徴。カスタムショップ製のフロントtpご本人仕様のリアというピックアップ構成は、歴史ある風格を備えたトゥワングが得られます。
Brad Paisley Signature Road Worn Telecaster® | Artist Signature Series | Fender
Brad Paisley Esquire
ブラッド・ペイズリー氏のシグネイチャー・エスクワイアは、同テレキャスターと共通するギター本体を、リアピックアップ単体という思い切ったルックスに仕上げた一台。実際にはピックガードの下にフロントピックアップが隠されており、通常のテレキャスターと同様の使い方ができます。
The Brad Paisley Esquire | Artist Signature Series | Fender
Chris Shiflett Telecaster Deluxe
ロックバンド「Foo Fighters」に所属するクリス・シフレット氏のシグネイチャーモデル。クラシック・シリーズの’72テレキャスター・デラックスと比べると指板がローズウッドなっているのに加え、ボディバックにはコンター加工が施されていて身体にフィットするところ、またこのモデル専用に開発された高出力なハムバッカーピックアップを搭載しているところが特徴です。ステージ映えするアークティックホワイトのボディカラーとパールのピックガードが目を引きます。
Foo Fighters – My Hero (Live on Letterman)
幾度となくグラミー賞を受賞しているロックバンド「Foo Fighters」。ライブでは観客総出で熱唱します。
Jim Root Telecaster
“猟奇趣味的激烈音楽集団”というキャッチコピーが付けられているヘヴィ・メタルバンド「SLIPKNOT(スロップノット)」に所属するジム・ルート氏のテレキャスターは、身体にフィットするコンター加工、ハイポジションの演奏性を向上させるヒールカットを施し、ボリュームポットをリアピックアップのすぐ近くに配置、セレクタスイッチを斜めに配置するなど、プレイアビリティを深く追求したギターとなっています。
EMGのハムバッカーを2基マウント
漆黒のエボニー指板
というヘヴィ・ミュージック御用達の仕様が、ラインナップの中でひときわ異彩を放っています。
Fender Jim Root Telecaster
鋭さに特徴のある「いわゆるテレキャスターサウンド」とは真逆の、ピッキングハーモニクスをギコギコ言わせながらザクザク刻むのがとっても似合うギターになっていますね。
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J5 Triple Tele Deluxe
JOHN 5 氏(マリリンマンソン、ロブ・ゾンビ他)のシグネイチャーモデルは、3基のハムバッカーとシンクロナイズド・トレモロユニットを備えた大変個性的なギターになっています。3Wayのトグルスイッチでそれぞれ単体のピックアップを使用する設計で、1ボリューム1トーンというシンプルな操作系にまとめられています。
ブラックのボディにマッチングヘッド、ブラス製ミラーピックガードという組み合わせは、シンプルながら強烈な存在感を発揮します。
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インドネシア製のテレキャスター
「フェンダー」の名義で、インドネシアの工場で作られるテレキャスターも存在していますが、エンセナダ製と近いグレードの扱いなので、こちらで紹介します。
Standard Telecaster
スタンダード・テレキャスターは、歴史あるテレキャスターの現代標準機。表も裏もフラットなボディは、今なお愛されるテレキャスターの王道スペックです。音域こそ昔ながらの21フレットですが、堅牢なダイキャストペグ、イントネーション調整とサスティンに優れる6連ブロックサドル、高さ調節可能なフロントピックアップといった現代標準スペックを備え、ダブルアクション・トラスロッド装備により順ぞり/逆ぞり両面のネックs調整が可能です。
Exploring the Standard Series | Fender
以上、エンセナダ工場で作られるテレキャスターをチェックしていきました。USAに比肩するクオリティがありながら手に入れやすい価格でリリースされている、魅力的なギターです。ぜひ実際に触れてみてください。
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