《シングルカッタウェイのパシフィカ》YAMAHA Pacifica SC Professional&SC Standard Plus

[記事公開日]2026/3/23 [最終更新日]2026/3/23
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

YAMAHA Pacifica SC

YAMAHA主力モデルパシフィカに、新しいボディシェイプのニューモデル「Pacifica SC(Pacifica SC Professional/Pacifica SC Standard Plus)」が加わりました。
前年に発表されたパシフィカ上位機種のコンセプトを引き継ぎつつ、しっかりとした個性を持つギターに仕上がっています。その機能や特徴をチェックしてみましょう。

小林健悟

ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

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Mini Trees | “Push and Pull” | Yamaha Pacifica SC Professional | Performance

パシフィカSCの特徴とは?

独自技術で設計された、シングルカッタウェイのボディ形状

最大の特徴は、シングルカッタウェイのボディ形状です。ブリッジプレートの仕様もあってテレキャスター的な雰囲気を思わせますが、表裏を滑らかにカットしたコンター加工、くびれ部分の位置をずらしたオフセット・ウェスト形状、操作系の配置やピックガード形状など、パシフィカのスタイルをしっかり受け継いでいます。

コンター加工は演奏時に右腕や脇腹を圧迫しにくく、オフセット・ウェストは立っても座っても良い具合に構えられる、高い演奏性が得られる設計です。

3Dモデリング技術「アコースティック・デザイン」で導き出した、理想的なボディ鳴り

YAMAHAの「アコースティック・デザイン」は、数値計算や3Dモデリングを使い、振動伝達や音の聞こえ方を設計段階で予測する独自技術。
従来なら実際に試作しなければならなかった試行錯誤のプロセスをコンピュータ上で軽快に進行できるため、斬新な発想や新しい設計を効率よく検証できます。
YAMAHAでは楽器に限らず、オーディオやコンサートホールの設計、果てはヤマハ発動機のエンジン開発にまで利用されています。

パシフィカSCではこの技術を使ってフロントピックアップ近辺と1弦側ホーン部の掘削を採用、最小限の加工でボディに理想的な音響性能を付与しています。
リアピックアップのキャビティを大きく掘削しているのも興味深い点です。

極めて高い演奏性

ボディ表裏のコンター加工に加え、滑らかなカーブドネックジョイントヒールも採用。ハイポジションの高い演奏性を達成しています。
ネック裏はサラッサラのサテン仕上げ、フレットはミディアムジャンボサイズのステンレス製で、極めて滑らかな運指が可能。
上位機種Pacifica SC Professionalにはコンパウンド・ラジアス指板が採用されます。

最強タッグによる専用ピックアップ、そして特殊配線

専用ピックアップ「Reflectone」は、レコーディング機器の有力ブランド「Rupert Neve Designs」と共同開発。同社の前身「Neve(ニーヴ)」のレコーディング機器は「通すだけで音が良くなる」と評され、歴史的なレコーディングの多くで活躍しました。
世界最大の総合楽器メーカーYAMAHAとのコラボレーションは、最強の組み合わせと言えるでしょう。

パシフィカSCに搭載されているフロントのハムバッカーは、太さより密度感を重視した程よい出力が持ち味。
リアはワイルドでありながらまとまり感もあり、ミックス時にはコード演奏に特に有用なチャキチャキ感が得られます。

トーンポットにはYAMAHAエレキギター「REVSTAR(レヴスター)」で実績のある「フォーカス・スイッチ」が仕込まれています。
トーンノブを引き上げると起動し、リアピックアップに筋肉質な野太さをもたらします。
ブースターやイコライザーのような効き方ではありますが、これはトランスを利用したパッシブ回路であり、電源を必要としません。


Pacifica SC Professional | Rosewood | Clean Sound Samples
各ピックアップのポジションに加え、フォーカス・スイッチ起動時の音も確認できる。

安定と信頼の日本製金属部品

ペグとブリッジは日本が誇る世界のGOTOH(ゴトー)製。ペグは軽量なクルーソン型で、裏面のサムホイールにより弦を固定できるロック式です。
チューニングの安定度に優れ、かつ素早い弦交換が可能です。

ブリッジは古き良きテレキャスターの設計を継承しながら、演奏性とチューニング精度の弱点を克服しています。
トラッドな響きの得られる薄型のブリッジプレートはピッキングを阻害しない形状に設計され、支持の厚い3連ブラス製サドルは弦との接点を微調整することでイントネーションを大幅に向上させています。

いずれも最新かつ最高レベルの性能を持つ金属パーツですが、ペグはロトマチック型ではなく、ブリッジは6連サドルではない、あえてレトロな雰囲気をまとった仕様を採用しているのが興味深いポイント。

《比較》従来のパシフィカとの相違点を探してみよう

これはパシフィカSC代表「Pacifica SC Professional(PACP11S)」の画像に、従来のパシフィカ代表「Pacifica Professional(PACP12)」の画像を重ね合わせたものです。
パシフィカSCは1弦側のホーンがやや太くなっており、またピックガード形状にもほんのりとした違いがみられます。
しかしボディエンド側の形状、ボディ表裏のコンター加工の曲線、ヒール部の形状、操作系の配置など多くの設計がほぼ一致しているのが分かりますね。
シングルカッタウェイ化しているとはいえ、ほぼ同じ抱え心地と操作感が得られると考えられます。

相違点はどこにあるのか

ストラップピン位置変更に伴う重量バランスの違い

最も大きな相違点は、シングルカッタウェイ化に伴うストラップピン位置の変更です。
なぜYAMAHAはパシフィカに対してブリッジやピックアップのバリエーション追加ではなく、新しいボディ形状を選択したのか、その答えがここにあると言って良いでしょう。

従来のパシフィカはストラトキャスターの設計をヒントに、ストラップピン位置は12フレット地点にあります。
これに対してパシフィカSCのストラップピン位置は15フレット地点になります。
パシフィカSCはストラップを使った場合、ややヘッド側に重心が移動するテレキャスターに近い抱え心地になるわけです。
この重量バランスがギタリストに及ぼす影響はかなりあり、中上級者ならばアドリブ演奏の内容が大きく変化することもあります。

ブリッジ仕様の違いによる弦振動の違い

従来のパシフィカがシンクロナイズド・トレモロユニットを搭載しているのに対し、パシフィカSCは裏通しの固定式ブリッジを採用しているのは、音響上の極めて大きな相違点です。
パシフィカSCのブリッジはパーツ点数が少なく、基本構造が比較的シンプルで、よりタイトかつストレートな弦振動が得られます。
従来のパシフィカがロトマチック型ペグ、2点支持トレモロ&ブロックサドルという重量感のあるパーツを選択しているのに対し、パシフィカSCでは軽量級のパーツを選択しているのも面白いポイント。
設計こそ最新ですが、ブリッジプレートは薄型のヴィンテージ・スタイルです。
軽めの金属パーツを採用したギターは、程よいサスティンとウッディな音響性能が得られると考えられています。

フレットと指板Rにも違いが

従来のパシフィカがミディアムフレット&平滑な指板という組み合わせだったのに対し、パシフィカSCはミディアムジャンボフレット&やや丸みを帯びた指板、という組み合わせです。
中級以上のギタリストにとってこれは大きな違いで、両者は同じパシフィカの名を持ちながら全く違うギターだと言うこともできます。

品目 フレット 指板R
《従来》Pacifica Professional ステンレス製ミディアム 254.0mm~355.6mm(”10~”14) コンパウンドラジアス
《従来》Pacifica Standard Plus ステンレス製ミディアム 350mm(”13.8)
《NEW!》Pacifica SC Professional ステンレス製ミディアムジャンボ 241.3mm~304.8 mm(”9.5~”12)コンパウンドラジアス
《NEW!》Pacifica SC Standard Plus ステンレス製ミディアムジャンボ 304.8 mm(”12)

フレットは小さい方がピッチの安定度に優れコードが美しく響き、大きい方がビブラートやチョーキングといったメロディ弾きの技に有利と言われます。
また指板は平たい方がメロディ弾きに有利で、丸い方がコードを押さえるのに有利と言われます。

パシフィカSCは、フレットをちょっと大きくすることで指技を有利に運ぶ一方で、指板に丸みを持たせてコードを押さえやすくしています。
一方で、従来のパシフィカは平たい指板でメロディ弾きを有利にしつつもフレットサイズは控えめ、という選択です。
いずれのモデルもどちらかに振り切るのではなく、メロディもコードも良好な、全方位型の設計だと言えるでしょう。
とはいえYAMAHAはフレットの寸法を公開していないので、この違いは実際に触ってみて確認するのがおすすめです。

パシフィカSCのラインナップ

パシフィカSCは上位機種「Pacifica SC Professional」シリーズとスタンダードモデル「Pacifica SC Standard Plus」シリーズの両面で展開、カラーリングはシティポップをイメージしており、全モデルでピンク(Ash Pink)が採用されているのが興味深いポイントです。

Pacifica SC Professional

日本製の上位モデル「Pacifica SC Professional」はローズウッド指板のPACP11Sに5色、メイプル指板のPCAP11SMに2色で展開しています。

世界に誇る日本人の丁寧な作りに加え、高い基準で出荷されることにより、見た目やスペック以上のクオリティを持つギターに仕上がっています。
またこの「Professional」シリーズでは、コンパウンドラジアス指板とIRA処理が採用されています。

241.3mm~304.8 mm(”9.5~”12)コンパウンドラジアス指板

ナット部で9.5インチR、最終フレットで12インチRのコンパウンド・ラジアス指板。モダン系のエレキギターとしては丸みを強調した仕様です。
ローポジションではコードが押さえやすく、また弦高を下げたセッティングができる、最高レベルの演奏性が得られます。

独自技術「IRA」採用

「イニシャル・レスポンス・アクセラレーション(I.R.A.)」は、新品のギターに長期的に弾き込まれたような反応の良さを持たせるYAMAHAの独自技術。
完成した楽器に適切な振動を与えることでパーツ間のストレスを緩和し、楽器本体の音響性能を最大化させます。

Pacifica SC Standard Plus

スタンダードモデル「Pacifica SC Standard Plus」は、ローズウッド指板のPACS+11Sに4色、メイプル指板のPACS+11SMに3色で展開しています。
海外製でありながらYAMAHAの名に恥じない高い基準で出荷される、完成度の高いギターです。
コンパウンド・ラジアス指板とIRAこそ非採用ですが、それ以外の寸法や形状、ピックアップ等電気系やペグなど金属部品は上位機種「Pacifica SC Professional」シリーズと共通であり、上位機種さながらのポテンシャルを持っています。

以上、YAMAHAの新モデル、パシフィカSCをチェックしていきました。テレキャスターライクなスタイルを採用しながら、整理された音色が持ち味の新ピックアップ、的を得た特殊配線など現代の音楽シーンに使いやすいエレキギターです。ぜひ実際にチェックしてみてください。

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